屋久島の山中、知らない人が見たらかなり奇態なものが林床に転がっていた。既に役目を終わっている。このイスノキの虫癭(ちゅうえい)は、「イスノキエダチャイロオオタマフシ」と呼ばれている。
これをネット販売されている方もおられて、そこによれば、これ自体がタンニンを豊富に含むため、染料や革をなめすのに使われたり、お歯黒に利用されたとある。ちなみにイスノキは、シカの加害がひどいところでは林床に目についていたものは消滅していっているが、本来は広く分布している。イスノキの材はアカガシ同様、固くて有名だ。私も霧島で手に入れたイスノキの木刀を持っていた。
シカの植生被害が深化した地域で、そういえば学生時代あれだけ目にして、同定できるようになっていたイスノキの実生をほとんど見ないなって、植物の専門家に聞いたら、側枝が出にくいし、踏圧に弱いのも特性だと言っていた。シカが桁違いに増加したちいきで、早々と林床から消えていく種については採餌効果だけではない可能性もある。
植物の虫癭は、半翅目や双翅目、いろいろな昆虫の種群によって様々な植物種の葉や花、実など、植物体のあちこちに作られる。この長い名称を持つ「虫こぶ」はモンゼンイスアブラムシが葉っぱの内部に寄生してコロニーを作り、葉の成長を捻じ曲げて自分たちの都合の良い形に魔改造してしまったことにより作り出される。
この穴、綺麗な円形でまるで人工物みたいだが、これもちゃんとアブラムシが錬成したもの。オカリナみたいに鳴らすこともできる。照葉樹林帯で遊ぶかつての山ザル少年少女のアイテムでもあったらしい。
ある意味、物凄い錬成の技。林内での採集許可を取っていなかったのでもちろん現地にそのまま触らずに来たが、確かに、なんだかわからないアーティスティックなアイテムとして売り物になるかもしれない。
友人の畑に不思議なトゲトゲのウリみたいな果実が成っていた。彼も植えた覚えがないという。熱帯果樹の栽培をいろいろ試す人が多いので、種子が、なにかに運ばれたか?みたいな話になったが、事実は分からず。正体も最初分からなかった。
キワノ、別名ニガトゲウリと言うらしい。果実だとわかって口に入れてみたが、味については酸味も甘みも中途半端な味で、食感と見た目の珍しさを楽しむ果実らしい。まあ、スター・フルーツなんかも、それほど主張が強い味ではなかったりするので、その範疇。しかしこのネタのようなトゲトゲの外観から中身、更には食用果実だというのはちょっと想像しにくい。これ食べられるんだよ、って言われても、そうなの?っていってかぶりつく人はあんまり居ないと思う。
皮付きイノシシ肉をハムのようにくるっと巻いてまとめて冷凍にしたものを頂いた。一瞬骨のない尻尾のそれみたいに見えるが、こんな部分はイノシシにはもちろん無い。切りジャケを幼年期、ああ云う魚がいるみたいに勘違いしたそれを思い出す。
皮付きイノシシ肉は、焼いて処理してある革の表面を「お髭のおじちゃん?」みたいにマクロ的に見る人は、敬遠されそうだが、本当に美味しい。もちろん、毛の部分が喉に支えたり、イガイガしたりしない。皮膚から下、一番美味しい部分を残らず食べるための方法。
焼肉を考えたが、一番ラクなボタン鍋にしたら本当においしかった。
鹿肉を頂いた残り、ブラウンソースと併せて煮込んだ。ただの白い小麦粉と玉ねぎ、ワインをぶっこんで、セロリはなかったが、ちょっとだけ調味料を借りれば、凝った本式のものでなければ、簡単に作れる。料理自体錬成なのかもしれないなと思う。
オーブン料理は、ちょっと知人宅の囲炉裏ではできない。温度管理の感は必要だが、ダッチオーブンがあればなんとかなる。次回はこれをやってみようと思っている。