minolta SR505 with MC/MD Rokkor

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minolta MC/MD Rokkorレンズは,描写も柔らかく名玉が多いのですが,マウントアダプターを介して,デジタル一眼で使えないために特殊な大口径やシフトレンズ,バリフォーカルレンズなどは例外ですが,それ以外は,二束三文になりつつあります(実際はコンバージョンレンズ入りのアダプターがαマウント用に存在しますが,素で使えない,或いは,スーパーセイバーであるEOS用がフランジバックの関係で存在しないという意味です)。
 画像,一寸Olympus OMのカタログを意識しました。

 それで,この描写が素敵なチープ・レンズを本来の銀塩フィルムで末永く堪能しようと思うと機械シャッター機が欲しくなり手に入れたSR505は,minoltaブランドの最後の機械シャッター機です。これ以降,アナログ制御AEとは言え,電子制御シャッターを搭載したXE(ホットシューなど一部の部品はSR505と供用)が主戦機となり,最高級機X-1ももちろんソレノイドが仕事をする電気カメラで,その後の世界初の両優占AE機,“Just my type!”のXDへと続きます。いわば,このメーカーが電子カメラ一本でやっていく前夜に中継ぎのように登場したカメラで,日本の一眼レフカメラ黄金期の朝ぐらいに当たるカメラでしょうか。

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この時代にあって,ユーザーインターフェイスに定評のあったこのメーカーは,キヤノン様やニコン様などのプロ指向,光学兵器指向とは異なった物作りをしておりました。情報集中ファインダーと呼ばれたファインダーを覗くと追針式の露出計と一緒に,シャッター速度やレンズの使用f値が表示されています。フィルムが装填され,ちゃんと給送されていることを示すフィルム・インディケータは,最後の普及版銀塩機であるαSweet IIに形状記憶合金を使った裏板のロック機構がありますが,それに連綿と連なるメーカーの意匠を感じます。
 さて,本機の特徴として,当時のミノルタが誇ったCLC (Contrast Light Compensator)が付いていることです。上下二分割の評価測光のようなもので,空の明るさに露出が引きづられて,アンダーにならないように補正がかかるというもので,もちろん電気的アナログ制御,この後継機のAE機であったXEにも採用されていましたから,結構,メーカーが自信を持っていたメカかと思います。実際,縦位置にしたら機能しませんが,そうやって補正の実際を知ることが出来るので,条件にもよりますが,1.5〜2段分近くは補正が働いていることがあります。
 因みに,MDレンズを見るとOMショックの影響はこのメーカーにも働いているようで,MCに比べて全体的に小ぶりに設計されております。MDレンズは,世界初の両優占AE機,XDの登場と共にMCレンズから仕様変更されたものです。簡単に言えば,当時,絞り優先のAEシステムしか持たなかったminoltaが,シャッター速度優先のAEをカメラに組み込むときに,実際は,シャッター速度優先モードであっても,絞り込まれてからそれに見合ったシャッター速度を選び直してシフトするという,いわば,フィードバックがかかるような,瞬間絞り込み絞り優先AEと同等の制御をやる仕様にしていたわけで,そのための信号ピンが存在するレンズということです。両優占AE機を最初に出したのは,絞り優占AE機を作っていたminoltaですが,Canonのようにシャッター速度優先AEを基本にしたカメラを作っていたメーカーの方が,実際には,その後の両優占が標準化する時代に入って,システムの構造上,圧倒的に有利でした。
 そのこともあって,それからずっと後のOlympusがOM-2Programで,同じようなことをやって絞り優先AE機にプログラムAEモードを載っけたカメラを作りますが,XDは,そのOM-2Pと同じく,若干シャッタータイムラグが大きいという特性を持っております。現在のような絞り情報を電気的にレンズと本体がやりとりするような仕掛けはマミヤが電気接点だらけのレンズシステムを持ったZEシリーズを出すまでは存在しなかったので,デジタル制御の高速フィードバックではありません。一種のカラクリ機械制御をカマして達成していた,フィードバック技術なので,これは致し方ありません。ただ,このXDの延長線上にプログラムAEやプログラム・シフトの種が撒かれているわけで,技術における「偶然と必然」を感じないわけにはいきません。プログラムAE等というものは,いわゆるコンシューマ・コンパクトカメラでは通常の露出制御方式であったにも拘わらず,レンズの開放f値でファインダーを覗かせて,測光を行うという,一眼レフの基本的仕様やプロがプログラムAEのような露出制御モードなどは必要としないという思いこみから,なかなか搭載されることがなかった技術でありますが,実際は,拍手を持って報道などの現場から迎え入れられたAEモードであったわけです。
 最後にファインダーですが,minoltaの誇るアキュートマットが出てくるのは,このカメラの開発年代から遠く先のXG-Sからで,お世辞にも余り見やすいファインダーとは言えません。もちろんEOS Kiss D Nの何十倍も見やすいのですが。
 いろいろな意味で,この時代のカメラは,現在デジタル一眼にまで繋がる,日本のカメラの進化における共通祖先形質が見られるということで,なかなか興味深い遺産でもあります。でも,このままだと,本体はともかく,描写の素敵なレンズまで遺物と化してしまうのですよね。だから,何処か,マウントアダプター出してくれないかな。素通しの奴を。M型ライカデジタル用でないと構造的に無理かな。

PS -その後、ミラーレスフルサイズデジイチ全盛時代が訪れ、フランジバックの制約はL/M型ライカレンズまで外れてしまったので、セミクラシックレンズをデジイチで使う人間にとって天国のような時代が訪れたのでありました。デジイチも、当初はフォーカルプレーン開いたら剥き出しになるCCDの保護をどうするんだ見たいな話が出ていて、現在のミラーレスの仕様を見せたらみんなひっくり返ったと思います。そこからの進み具合の速さを感じました。この記事が書かれたころには、まだまだ予測できない未来でしたがあっという間でしたね。

Commented by Lilywhites at 2006-01-16 23:20
機材もウワーですが、かっこよく撮影されておりますね!
MCとMDの違いを今度調べようと思いつつ未だ良く判っておりませんが、懸案のXDを思い出してしまいました(笑)。本当のRokkorの実力はよく判っていないので、知ってしまうのが怖い気もしております。SR505もファインダー優秀そうですね。今時のデジ一と比較してはいけないんでしょうが、MF用デジってやっぱり待ち望んでしまいます。
Commented at 2006-01-16 23:24
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by summilux35 at 2006-01-17 00:03
父親の嫁入り道具ならぬ結婚時に持参したものは、汚い長靴とカメラ1台だったと母に聞いたことがあります。この1台はMinoltaのSR-T 101でした。
いまでも押入の段ボール箱の中にありますが、動くかどうかはわかりません。数年前はシャッター幕はちゃんと動作していたのですが、そのころは写真に興味がなかったので箱に放り込んでしまってしまったのです。
そのうち探してみようかと思います。
Commented by complex_cat at 2006-01-17 06:59
Lilywhitesさん,MDは,本文で書き足そうと思っておりましたが,XDが両優占機能を載せたので,それに対応するために,実際の絞りの情報を本体側に伝えるピンが入った仕様変更後の設計の見直し等によりややコンパクトなレンズ群です。MCはそれ以前の仕様です。
件の件はもう一度,確認してご連絡します。
Commented by ayrton_7 at 2006-01-19 01:46
あらゆるマウントが使えるデジタル一眼レフカメラが出来るとありがたいのですがね。
その為には、ミラーが無くて、液晶ファインダーで焦点を確認するような仕組みが必要かもしれません。
Commented by complex_cat at 2006-01-19 07:27
ayrton_7さん,Zeissについては,ニコンFマウントで,絞り羽根を9枚に増やしたPlanar 50/1.4と85/1.4が出たのと,中国のフェニックスによるOEMかと思いますが,ヤシコンマウントの一眼レフが出てました。技術流出というか機関部デッドコピーでゲリラみたいな製品を出される前に,どこかの日本メーカーがちゃんと出して欲しいものです。
Commented by complex_cat at 2006-01-19 07:28
summilux35さん,お父様のお話格好いいですね。それ以上に,写真歴がそれほど長くないと言うことをお聞きして,やはり,才能のある方は無駄に長くカメラいじっている私とは違うのだなと感動しました。
SR-T 101は,SRの元祖的カメラですね。ちょっと前まではオークションでよく見かけましたが,状態の良い実機は,少なくなりました。
Commented by ayrton_7 at 2006-01-20 12:30
さっそくZFレンズ予約入れましたよ。
フイルム需要が少ないだけに、フイルムカメラの製造には踏み切りづらいでしょうね。僕も2年間ほどデジカメばかり使っています。
Commented by complex_cat at 2006-01-20 17:01
いいなぁ, ayrton_7さん,D200による作例は出てましたが,素晴らしいものでした。マウントアダプターを使えば,5Dでも使えますね。最新のT*コートと9枚の絞り羽根の威力,是非また拝見させてください。どちらかというと,P85のほうが気になります。どちらも,P1.2的なレベルを彷彿とさせる出来に仕上がっていないかとちょっと期待しております。
Commented by KimesdarK at 2019-02-11 17:12 x
Interested in HARD ROCK? How about KISS? The band is on a tour this 2019 year all across USA and Canada. Click on https://wearefreckled.com/blog/welcome-to-the-new-store/ to know more about KISS concert in 2019.
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by complex_cat | 2006-01-17 22:00 | Camera in 3-4 chome | Trackback | Comments(10)

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