「見せてあげよう、ワサビの威力をっ!」って言える所までは届いてない話

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 我家の庭にはガーデニング成分、花っけは乏しく、ほとんどケアせずに繁茂しているものだけが生き残っている。さくらんぼ(品種失念)は一時期良かったのだが、病気が入って終わった。ユスラウメも同様に「落ちた」。柚子は元気だ。ブルーベリーはズンズン大きくなって今年はちょっと楽しみだ。
 月桂樹は優等生でものすごく伐って、剪定のたびにごっそり葉っぱを集めて我が家のカレー、シチューに放り込まれ、ご近所に配られた。
長男と同じくらいの樹齢だと思ったが、今年異変が生じた。葉っぱが、フラッシュ、展葉後、粉を吹いたような症状が現れ、その後枯れていく病気になった。出てくる葉、出てくる葉かたっぱしからやられていき、幹も黒ずんでいった。ああと理解した。糸状菌による「すす病」に感染したのだ。
 対策を検索すると予防や原因となるカイガラムシなどの除去の方向で、スミチオン、オルトラン系薬剤散布などが書いてある。薬剤によっては使用法を守れば別に問題はないが、人にさし上げた先で料理に放り込むものなので、ちょっと他の方法を考えたいと思った。その他、風通しを良くしろとか、既にそういう環境にしてあるので、この悲惨な罹患状態から、健全な葉っぱを取り戻すには無理かなと感じた。

 そんなこんなで、ずっと頭にあった方法を試すことにした。ワサビの塗布だ。ワサビと言っても生わさびですらない、練りワサビだ。ただ、「ワサビ」の抗菌作用については、明確に検証したものがあって、とくにこの紀要にある実験は、チューブ入り加工わさびも検証の対象として実験されている。
 雨宮一彦・中村由紀・新井由紀 (2008) 市販わさびの蒸散状態による抗菌作用 Antibacterial Activities of Wasabi Vapors. 国際学院埼玉短期大学研究紀要 29: 81-85

 リンク先のアブストにもあるが、わさびの細菌に対する抗菌効果を確かめるため,蒸散暴露(気相法)により大腸菌と黄色ブドウ球菌を用いて実験を行った結果、
・チューブ入り加工わさび、生わさびのいずれも暴露温度が35℃時に抗菌効果が高かった。

ペプチドグリカンを保つグラム陽性菌ばかりでの実験で、作用機序の話はここにはないが、ペニシリンのような細胞壁合成阻害じゃない気がする。多分誰かやってるだろう。

・7日間の暴露実験結果は、生わさび、途中で菌が発育; チューブ入り加工わさび、菌の発育はみられず、細菌に対する増殖抑制と共に殺菌効果が明確

ここ面白いところ。むしろ工業製品化されたワサビでもきちんと成分は仕事していて、むしろ効果は高い。

・暴露開始5時間後から徐々に菌数が減少し48時間後には生菌は全く認められなかった。

ワサビすげー。でもポテンシャルは知ってた。かなり前に長男の自由研究でやってた納豆培養実験の時、練りワサビぶち込んだら、発酵が阻害される結果が出たから。芽胞になったらオートクレーブでないと死なないタフネス枯草菌Bacilus属の仲間の納豆菌の足を引っ張るっていうのはかなりのものだと思っていた。

・主な抗菌成分は揮発性のアリルイソチオシアネートといわれ、蒸気で接触させる方法で抗菌効果が明確だったことと整合。

 ちなみに、大腸菌のシャーレを開けてワサビに暴露させたら、大腸菌絶滅したみたいな話は、細菌を扱う実験系の人だと、かなり以前から知られていた話ではあるが、検索して出てきてくれる論文の形になっているpdfがあるのはありがたい。

 さて、こういう実験結果があるとふむふむと思ってしまうが、カビと細菌類は全く別の生物で「抗菌」とか言われても一緒くたにはできない。メディアに流布しているイメージだが、都合の悪いものは全部バイキンで抗菌といえばそういうもの全部に効果があるみたいな乱暴な話ではなかったりする。一方で、野外でいろいろな生物を見ていると、野外で最も厄介な敵はカビの仲間であって、特に軟体部を保つ動物や植物はカビとの闘いにかなり投資していると思っている。友人が昔、カタツムリのアイソザイムを調べていて体表面のネバネバがわずかでも混ざると市販のDNAceよりも強力で結果が出ないことに気がついた話をしてくれた。確かに陸生の貝とか、カビ対策ちゃんとやらなければ、軀の表面は培地みたいなものであるから相当悲惨なことになるだろう。陸貝に限ったことではない。
 ワサビの場合、他に、他の植物の侵入、生育阻害をするアレロパシー作用も持っていて、なんでもやれる子みたいな印象ではある。ちなみに、土植えだとアレロパシー作用が強力にでて、ワサビ自体の成長も抑えられてしまうので、農作物としての栽培方法は水耕栽培的になっている。

 他にこの周辺を検索すると、画で見られる分かりやすい実験結果をアップされている「駅弁学習室」のページが見つかった。実験環境やサンプルサイズなど、ためしてガッテンレベルで、とても検証実験レベルではないのだが、先の論文の後に見れば、矛盾はないなと思えるのでご紹介。一方、ここのページでワサビには何の抗菌作用もありませんという結論に至った東京都福祉保健局のリンク先のpdfは読めなくなっている。雨宮ら(2008)の結果を受けて効果検証の決着が着いたと考えていいのか、経緯はわからない。簡単に見えることも、本気で実験的に証明しようと思うとそれなりのセンスと、実験環境のコントロールやサンプルサイズ、更にはドキュメントを制作して論文化、投稿、レフェリーとのやりとりなどコストは半端ないのであるですよ。

追記ー 「駅弁学習室」からのリンク切れとなっていた東京都福祉保健局による実験のpdfはブコメでお教えいただいた。実験による確認は割と簡単にやっているのだが、これはこれで、ああワサビには抗菌作用はないのね、みたいな結果になっている。最初にご紹介いた雨宮ら(2008)には、結果をフォローする他の文献もいくつか紹介されている。全く逆の結果が出ている2つの資料を比べると、効いてる方は、今回の結果とを支持しており、そもそもその効果が怪しいとなると、刺し身などにわざわざ入れられているわさびシートは何なのという話にもなる。結論先急ぎせず、もう少し資料にあたろうかなと思う。片方は行政のワンペーパーまとめ的でアーティクルの体裁にもなんにもなっていないのだが、とりあえず、この件、結果が全く違う「資料」が存在する。ちょっと楽しい。


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 先の「駅弁学習室」の実験結果では、にんにくの抗菌作用はかなりあって、生姜は薬味以外の効果は弱いことなど興味深い。そして、あのスーパーの刺し身や寿司などに挟み込まれているフェイクの葉蘭であるポリマー製のシートだが、ワサビ成分であるアリルカラシ油=アリルイソチオシアネート(Wikipediaでは、抗菌ではなく抗腫瘍効果等があるという整理)が含まれるよう作られているようで、きちんと抗カビ機能が企業、業界の実験検証でも出ていて産業流用されているという理解でいいのかな。シートのコストはそれなりだろうから、EMみたいなおまじないで貼るわけにも行かない。考えてみれば、EMって喧伝している機能があるというストーリーなら、生物模倣センスからも明後日で、考えた人の生物学的見識レベルも色々残念だなと感じる。土壌関係だと、結構横着な、亜鉛Znで高橋尚子の金メダルも知り合いのインポテンツも全部解消、みたいな荒い話が得意の老先生がおられたが、あのあたりの講演での決め付けやビジネスを参考にしたんじゃないかなと思ったりするけど、大いなる脱線話。

 というわけで、練りワサビのチューブからねりねり出したのをバケツの水で溶いて、月桂樹にぶっかけたり、黒い糸状菌の酷いところは、歯ブラシに歯磨き粉のようにつけて塗りたくった。
 糸状菌繁茂していた部分は後退して、地衣類は変わらず。

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 同時にやられた葉っぱは早めに除去しながらの作業だったが、展葉から香辛料としてのローリエの大切な成分である二次代謝産物が蓄積され葉っぱが肥厚するまでにかたっぱしから全滅していた葉っぱが、見事に健全なまま復活した。まあ、一例報告だし、倉庫を建てたせいで、色々抜去したため、周辺スッキリして初めての春〜夏を迎えようというところ、温度環境や紫外線暴露も夏に向かって変化していてこの事例だけでは何とも言えないのだが、とりあえず、結果として、病気の樹として切り倒さずにすんだ。

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 最初噴霧器を使おうと思ったが、水で練りワサビを解いた程度では孔が詰まってしまうので、柄杓で掬ってまんべんなくかけたり、バケツに枝ごと突っ込んだ。溶け残った練りワサビの成分が乗っているが、収穫の時に洗えば済むこと。固形物の残滓の乗った部分、葉っぱも変質していないので大変都合がよろしい。
 本当にわさびが効いたのなら結構なことだが、まともな対照実験デザインにすらなってないので、とりあえず報告だけ。

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 今回の件は確信が得られるような状況ではない。ただ綺麗に肥厚した葉っぱを収穫してご近所に配りに行く。もちろんチコも一緒。一応、ワサビぶちまけたまでの経緯をお話ししてお渡しする。糸状菌衰退効果があるならば、アレロパシーには注意ですけど、ダメ元で試すのは自由かなと思うって言ったら、その家の奥さんは、結構楽しそうにバラに試そうかなと仰った。


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 チコは、ここのお宅ではなく、別の他所様の家に、好き勝手侵入して(先輩の公陳丸が、そこのおばあちゃん猫の友達となり、先に屋根裏への入場パスを手に入れていて、そこにくっついて行った形)、屋根裏に入り込んでしまったクマネズミを獲りまくって味をしめたので、彼にとっては、我が家以外のお宅の家は、チェックすべきハンティングサイトという認識になっている。今回も私に付いて行ってあわよくば家に侵入しようとしているのが笑える。残念ながら、フリーパスは発行されなかった。この時も、私にしつこく中に入れてもらえるようネゴシエートしろと言ってくるので、しょうがないので抱っこして戻った。
 彼が通っていた家のように、夜中台所に行ったらチコが居てね、みたいなのは、義理親としてもかなり恥ずかしい。

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 ちなみにチコの通っていたお宅は、その後、ユッチまで狩りに行くようになって、完全にクマネズミも殲滅された(近くで鶏が飼われていて餌は大量にあって増えた模様)、公陳丸、チコ、ユッチの三頭による狩猟圧は、さすがに効いたようだ。彼女の場合は、器量よしで一見性格も黒いのがわかりにくいから、養女にならないかとお声がかかったほど。今は、鈴ちゃんがいるから良かったなと思う。

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 あのネ、貴方が家に入ると真っ直ぐ寝室だろうとどこだろうと探索を始めるからごめんね、ということで、抱っこして強引に連れて帰った。15歳を過ぎたが、暖かくなったこともあるけど、やっぱりこういうところは、全然変わってないよ、チコ。
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Commented by oratie at 2017-06-04 12:40
チコさん、風格が出てきましたねぇ。
blog始めた頃は少年でしたが。
Commented by complex_cat at 2017-06-05 03:03
oratieさん、いや本当です。
でも、変わらずチコはチコだなぁと思わされてますねぇ。
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by complex_cat | 2017-06-03 09:49 | Wonderful Life | Trackback | Comments(2)

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