トランスメディア提供アイコン01CSI(Cho-Sugoku-Iikagen)-天の邪鬼スズメバチ処理班


去年,我が家の庭に成立したコガタスズメバチの巣については,結局,コロニーの終焉まで大家と店子関係を維持しました。巣が地面に落下してもコロニーが存続するという想定外の事例が観察できたのと,オオスズメバチやキイロスズメバチに比べれば,思った以上に攻撃性が低いと云うことがその理由です。
 そのVespa analis Fabricius女王,第二億五千万世の娘である王女達は,この我が家の庭を知っているわけで,注意していないとまた作られるなと思ったら,今回は,お隣さんとの境界側のフェンスに作られてしまいました。また,コロニーの成立が早くて順調だったせいか,でかいこと。

巣が作られた位置が悪いので,もしもお隣の小さなお子さん達に事故でもあればと考えると,私の酔狂で観察を継続というわけにも行かないし,長男もユッチの散歩トレーニングを庭で始めたりしているわけで,それで,今年の巣については「よし獲ろう!」ということになりました。ただ,本来ならキイロスズメバチやオオスズメバチとは違って共存できる余地がある種だと知ってしまった訳なので,少々矛盾を感じるのと獲ってしまうことへの痛みを感じるわけです。そこで,「ちゃんと食材にして食べるため」という名目をこしらえました。
 この辺りは,楽しい昆虫料理で知られる内山さんのブログ著作を拝見して,影響されたこともあります。週末,上二人の自由研究に付き合ってくれるAさんを夕食に招待することにもなっているわけで,なぜか笑みが漏れるわけですね。それに,これだけ巣を見る機会があるなら,折角だから,子供達に巣の中をちゃんと見せてやろうという理由もあるわけです。まぁ,極論すれば,例によって勢いですが。

コガタスズメバチは,ヒメスズメバチほどは穏和ではないにしても,昨年の経験で,巣を軽く叩いたぐらいでは,ほとんど襲ってこないことが分かっていますし,比較的巣の近くまで近づいて観察しても大丈夫な種と言っても良いほどです。しかし,舐めると危険なのも確かで,実は昨年,私は10回のノックの内,1回は中から保安部員が急襲してきて実は刺されていたのです。感覚としては,よほどしつこくやっても直ぐにさっと下がれば,オオスズメバチと比べると全く大丈夫と言っても間違いではないのすが,中には虫の居所の悪いというか,個体差があるようですし,恐らく秋に近くなれば攻撃性の増す個体の1匹や2匹出てきてもおかしくないと云うことかなと思いました。
 また,出会い頭に巣から出撃した個体と子供達が鉢合わせになれば,やはり,はずみで何が起きるか分かりません。そういう意味では,今年の巣の位置は最悪だなと判断したわけです。
 さて,巣を処理するに当たって,まず,何をしたかというと,仕事が終わってから速攻で「31」にアイスクリームの買い出しに行きました。少し大目にドライアイスを貰えるような都合の良いお店がそこしかなかったからですが,もちろん,ドライアイスを使って二酸化炭素を発生させてノックアウトさせて働き蜂毎捕獲するためです。

 しかし,今年の巣は巨大であるばかりでなく,ツタや下から伸びているゲットウやそれに混ざって出てきたススキを取り込んで,ビニール袋を被せるための前処理が大変です。大きな太い枝や草の茎を咬み込むように巣が作られているので,これらを一本一本巨大な植木ばさみで,切っていきます。当然巣に震動が伝わるので,慎重に,かつ,切る順番や位置を確認しながら。重要なことは,これを日が落ちて暗くなってからLEDライトの下で行うということです。流石に昼間と違って,夜間だと,彼らは,飛べないこということではないのですが,索敵は蜂にとっても難しくなるようで,やばいと思ったらライトを消して,ばばっと振り返らずに全力で走って巣から離れると,オオスズメバチでも追ってこられません。これは,かつて森林の中で調査サイト内に作られた蜂の巣処理で覚えました。勿論,熱赤外に近いところまで,彼らは見えているはずなので,直ぐに距離は取らないと追撃は容易でしょう。見えないだろうと舐めていると危険だと思います。
 悩みながら,蔓を一本プチンと切る〜巣に震動が伝わって,もの凄い勢いで巣の表面にワーカーがわさわさ出てくる〜ライトを消して走って下がる〜また,落ち着いたら,次のポイントを考えながら切る〜時々デジイチの望遠で,剪断した位置を撮影,確認して,次の戦略を立てる。下に落下させないように・・・まるで爆弾処理です。
 実際,爆弾処理のように完全装備で刺されないようにしてやるのがプロなのでしょうけど,私の場合は,フットワーク重視なので,下はズボンですが上はTシャツ。いえね,最初はフルフェイス被ってとか考えていたのですが,そんな面倒くさいこと,この糞暑い夏の夜に私にやれるはずがないのと,コガタスズメなら,襲われても,殺されるほどの個体が一挙にという事態は無いと踏んでの天の邪鬼です。よい子は絶対マネしないように。
 途中で,ワーカー達が興奮状態の一歩手前ぐらいになるのです。数匹,斥候のために飛翔を始めたりするのですが,そうなったら,家に入って,軽くご飯を食べたりしてほとぼりを冷ます。おっと,重要なことは,ご近所にもちゃんと連絡して,夜中とはいえ,出てくることがないようにして貰っておくと言うことです。一度,私道に近所の学生さんが車で入ってきて,窓を開けたまま電話を始めたので,飛び出していって注意をしましたが,まぁ,事故の無いようにいろいろ気は使わねばなりません。
 それと,興奮して飛び立ったものの,上手く飛べず,下に転がってじたばたしている個体もかなり出てきます。こう云うのは,さっと出て,まふっと踏みつぶしておく。ええ,矢張り非常事態,いわば戦闘なので,手加減は出来ません。なぜ上手く飛べない個体が出るのか,ヘルベルト・ハインリッチの仕事を思い出せば,彼らは夜になれば代謝が下がったままで,飛翔できるほど翅が上手く動かない個体がほとんどだからではないかと思いますが,この辺は,ハインリッチみたいに熱伝対持って片っ端から蟲の体温を測ったりしているわけではないので,飽くまで想像です。


作業が4時間近くに及んでも,巣の位置が複雑で,すっぽりビニル袋を被せられる目処が付きそうも無いという状況で,持久戦を覚悟しました。私は,盆とはいえ明日から仕事で離島ですし,一度徹底的な撹乱を与えてしまったスズメバチは,通常なら,手負いのクマと同じと考えるべきであると昆虫に詳しい知人から脅かされていたので,もはや中途で「やっぱり今晩は獲るのを止めておこうかな〜」というわけにはいかないので,今回は最初から覚悟を強いられました。まぁ,時間をかければ何とかなるだろうと思って意識を再度集中させようと思ったその時,私の背後の闇の中から私を呼ぶ声がしました。「やべぇ,チコが帰ってきちゃった。」
 もはや一刻の猶予もならんと思った私は,最後まで残しておいたトラップの可能性のある太いコードじゃなかった,直径3cmアイビーの枝を,枝切りばさみで一挙に両断すると,後は,後ろを見ずにチコの方向に走り出しました。
 一応,義父だとは認識していたものの,なんだか恐ろしいエモノを持ったまま,こっちに走ってきたのを見て,チコはびっくりこいてちゃんと父ちゃんと同じ方向に逃げ出してくれました。その後べっとり甘えて,どこかに避難してくれましたが。
 で,トラップの起爆コードを切ったわけではなかったつもりだったのですが,一挙に球巣は落下してバラバラになってしまいました。一呼吸置いて慎重に巣の転がった地点に戻ると,この状態に至っても,攻撃行動を見せる個体はほとんどおらず,ばらまかれた巣板に乗っかる個体の他は地面を団子状になって右往左往しています。これを残すと,どういう事態になるか分からないので,走っていってパンパンパンと,震脚の応用で踏みつぶすと,あらかた作業は終わってしまいました。耳の尖った息子のイレギュラーな動きに慌てて,あれほど慎重に進めて巣をワーカーも含めて丸ごと確保するという当初の目標からはほど遠い状況に。
 でも,無事,終わりました。サーティーワンのドライアイスも出番なしだったけれど。誰も怪我もせずに,トラブルにもならず。
 後は,冷凍して,土曜日には1品となる食材なんで,まぁ苦手な人は,クリックしないように。私だって,今回,初めてまじまじと眺めて,やっぱり初めてだったワイフとおそるおそる引っ張り出して撮影してタッパーに入れ,土曜日の出番まで冷凍庫に。
 作業中の写真は余裕もなくて少ないので,その分たっぷり撮りました。ご興味のある方だけ,クリックしてください(と悪魔のささやき)。

とりあえず,ここがただの癒しの猫ブログだと思ってられる方もお出でかも知れませんので,ワイフと二人で巣の中身を採集しているとき,横で監督していた耳の尖った娘たちの画を。

ナッチの横には,意味無かったけれど,31の箱が。良い思い出になったなぁ(しみじみ)。


スズメバチについては,生でミルキーな体液をチュウチュウとやるというのは,彼らの食性から考えると余りよろしい行動とは思えませんし,やる元気もありません。炒めてパスタか,炒飯の具,ぐらいかなというのが,私の限界です。

はいはい,お腹が減ったので,川エビを捕ったり,干潟でアサリを掘って食べるのと一緒。罰当たりなことはしていないはず。どうか,迷わず成仏して下さい。
 クロスズメバチの場合は,直径1mは越えようかという巣を作るわけで,かつては食料の流通が難しかった奥深い山村ではタンパク源としても利用性が高く,貴重であったのだと思います。

結構,巣板内にはたくさん入って居て,それでも,小さめのタッパーに1/2ほどにはなりました。初心者としてはこれぐらいの量で丁度良いという感じです。ほっておいて,これが,全部ワーカーとして出てくる時期には・・・あるいは,大変だったかもと思いました。
 美味しいと味をしめたら,イヌイットのお嬢さんたちがきゃーきゃーアザラシの寄生虫を奪い合って食べるみたいな状態になるのかしらん。

蛹は,割とシャリシャリするということなので,そっちは控えめに獲って,後は鳥さんの餌にするために外に。ワイフは,この私につきあえる奇特な女性ですが,流石に,羽化直前で動いている個体は,怖いということもあってビビっておりました。幼虫は気色悪いだけで実害がないと割り切れる彼女はやっぱり理系か。
 そっちは,まだ体が柔らかいし,攻撃能力はないのですが,一応,エーリアンが出てくる前みたいなスリルを楽しむ元気もないので早々にお外に持って行きました。

何にせよ,トラブルになるか一番心配していたのは彼女なので,ホッとしたのもあって,私同様,随分楽しんで観察していました。
 「この,巣の中で幼虫の大群がシャリシャリ出す音が,夢に出そう」とは言ってましたけど。あ,そのうち,ウニウニ動いている動画もアップしますね。


というわけで,Aさん,無事「下ごしらえ」終わりまひた。不慣れなので,余り調理イメージが出てこないのだけれど,設宴に使いま〜す。
 内山さんのレシピを参考にしながら,あれを越えたいですね。
CSI:科学捜査班 シーズン6 コンプリートDVD BOX-1
/ 角川エンタテインメント
ISBN : B001A15IIC



本日のタイトルは,もちろん,これのオマージュ?ね。
追記ー動画をアップします。


 流石に幼虫も肉食なので,マンディブル(大顎)がガチガチ動いています。蟹や海老なら,食欲をそそることはあってもマイナスには働かないのですが,私ですら,食べたことがない昆虫は,まだ食材として私の目には探査像に入ってきません。寧ろ,情けないことに注意しべき生き物の警戒信号が頭の中で鳴り響いてしまいます。
 皆さん,貴重な情報も含めて書き込み有り難うございます。とっても参考になりました。美味しいよ!という書き込みも多く,ありがたいです。久住高原で調査をしていた頃,蜂の子も確かに食べたのですが,調理法と鮮度が今一だったのか,妙な舌触りのみで味は印象に残っていません。私が今まで食べた昆虫で,アリストテレス,ファーブルがその味を賞賛したカミキリムシの幼虫を凌ぐ食材は無かったのですが,さて,どうなることやら。
 明日は,蜂の研究者である恩師の還暦祝なのですが,でも,私の感ですが,恩師の元に少し持って行くという状況は無いかも知れません。まだ,美味そうに見えてこないけど。

by complex_cat | 2008-08-15 00:58 | Wonderful Life | Trackback | Comments(13)

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Commented by dojou7 at 2008-08-15 09:57 x
お疲れさまでした^^;
いいな~、私はまだ食べたことありませんが、クロ取りのおじさんいわく、おいしいとのこと。
Commented by ayrton_7 at 2008-08-15 11:42
御馳走になるのは、巣なのですか?それとも幼虫なのでしょうか?
緊張感とは裏腹に、のんびりした耳の尖った娘さん達の様子が良いです。笑
Commented by kyoko_fiddler at 2008-08-15 11:53

忘れてたけど、私はハニカムも駄目だったんだ…。
ハニカムにみっしり詰まったにょろむし…
ホラー映画よりも涼しかったです。

Commented by kancoffeem at 2008-08-15 17:06
巣の中はきれいにびっしり詰まってますね。
蜂の子は何回か食べたことがありますが、あまり旨いとは思えませんでした。
見た目のせいなのか、若かったのか(笑)
蜂には何回くらい刺されたんでしょうか?
Commented by りんご酒 at 2008-08-15 22:11 x
>蛹は,割とシャリシャリ

土蜂は蛹が一番おいしいです。クリスピーで。
Commented at 2008-08-15 22:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 猫柳 at 2008-08-15 23:09 x
お疲れ様でした。
これは、ごちそうですね(笑)
シンプルに油で炒めて、塩をひとつまみパラリと・・・
幼虫はピーナッツみたいで美味しいですよ♪
うちの子供達も、最初は「えー!! 食べるの?」とか言っていましたが、結果、味をしめてしまいました(苦笑)
Commented by complex_cat at 2008-08-17 11:10
dojou7 さん,油でかるく炒めるのが好みですね。
美味でした。
Commented by complex_cat at 2008-08-17 11:11
ayrton_7さん,ミツバチは蜜蝋なので食べられるのですが,こちらの巣はセルロースを唾液で固めたもので,食べられません。
Commented by complex_cat at 2008-08-17 11:12
りんご酒さん,なるほど,参考になりました。蟲の中でも素揚げで食べると美味しいものがあるなという感が取れました。
Commented by complex_cat at 2008-08-17 11:13
猫柳さん,思いの外,食する週間のある方からの書き込みで,大変勉強になりました。
 私も食べて,美味だと思いました。
Commented by complex_cat at 2008-08-17 11:15
kyoko_fiddlerさん,ダブルショッカーでも,見ちゃったんですね(笑)。
 流石に動いているところを見た状態では,最初食指は動きませんでした。
Commented by complex_cat at 2008-08-17 11:17
kancoffeemさん,調理法によると思います。ただ火を入れただけでは,余り濃厚な味があるわけではないので,それが冷めると,美味しいものを食べているイメージがないので,美味しいと判断できない場合も多いかと思います。
 昔,私が阿蘇で食べさせられたときの印象はそんな感じです。

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