夜会

チコが，完全にツンデレのつん状態。ほとんど家にいない。で，真っ黒になって戻ってくる。ワイフがGPSで今通っているテリトリーをチェックした方が良いのではと云う。あまり感心しない顔で餌皿を覗きこんでいると思っているとさっさと出掛け行こうとするので，外で呼び止めた。闇の中，畑の真ん中で好いおっさんが「ちこー」と猫の名を叫ぶ，彼が走り寄ってくるので，しゃがんだところの肩に飛び乗る。
　外だと君はなんで，デレに戻るの。背中に乗ったまま，ひとしきり甘える。
暗闇で，フレーミングさえ分からないので適当にショットを打つ。望遠ズームしか手元に持っていなかったのでこうなったが，それでもAFが一応作動する。
　夜間戦闘には，α700は，使える。

公陳丸まで出てきた。付き合いの良い奴。人一人と猫二匹が，真っ暗な畑の中で静かに遊ぶ。
　宮沢賢治が，夜森林の中に蓄音機を持ち込んで一晩中踊りまくったという話を聞いたことがあるけれど，猫と夜会をするのが，小さいときからの夢だった。

ふと見たら，既にチコの姿は，あっさり消えていた。忙しかったんだ。一晩は無理でも，付き合ってくれた二匹に感謝する。


今朝，恩人の訃報を聞いた。明日は告別式。まさか，そんな状況とは。冬に仕事でお会いしたときも，お元気そうで，本当に，思いがけない話だった。
　その人と共に，私はもう一度ロシアに行きたかった。既に叶わなくなってしまった。でも，その人の魂は，ツルに乗って誰よりも早く天に昇っただろう。

　ご冥福を。

追記ー訃報のメール見て，弟子から電話が入る。彼女は３年お世話になった。二人でちょっと相乗作用的に感傷の波に陥りそうになりそうになったので，そそくさと電話を切る。

　人の人生は，早い。私も道の中途で倒れるだろう。それもしょうがないのだ。

最近ふと，そんなことを感じる。