
猫が水を飲む場合,シンクや風呂場の水滴を舐めたりもするわけですが,一方で水入れの容器は大きいほど喜んでのみ,我が家でも水飲みは全員洗面器になってしまっています。チコは外のでかい瓶で飲むのも好きなので,こっちの水替えもワイフと二人で毎日やっています。

チコも小さいときから,小さな器で飲むよりも,こちらがより大きな器を用意せざるを得ない欲求を確かに見せていました。

水槽を洗っているときなども,すかさずやってきて水を飲もうとするので,しょうがなく綺麗な水で満たしてやると喜々として水を飲みます。透明容器は,舌の動きがよく分かって宜しいです。

なぜ,大きな器で飲みたがるのか,舌の動きなどから深い方が飲みやすいのではないのかとか,最初はあくまで飲水機能的な問題と考えたのですが,確証はなく,また,舌の動きなどを詳細にシミュレートするなどの必要もあって特にアイデアもなくそのまんまの特に進展しないネタでした。

大きな器などで飲むのとは別に,水道などの蛇口からの流水を好む個体もいるのは結構知られています。画像が見つからなかったのですが,我が家ではナッチが一時期流水派でした。
なぜ猫は大きな器から,或いは流水を飲むのを好むのだろう。

で,ふと思いついた仮説は,彼らは水を飲むとき,採水だけではなく舌の洗浄もやりたいのではないかということです。彼らの舌は体表の様々なものを舐めとって掃除することに使われたりするわけです。犬は,執拗に全身をグルーミングしたりしませんが,それはチームで追跡するタイプの犬と違って,猫は待ち伏せ型で,獲物に気づかれないように体臭を消して軀をいつも清潔に保っておかなければならない圧力が強いからではないかと思ったり。だから,舌も体表の汚れなど余計なものが付着するわけで口腔内も含めて洗浄欲求が出てくるのではないかという気がしてきました。

実は,火山性降下物の攻撃を受けたときに,チコが帰宅時頻繁に洗面器の水を要求するので,まあ,じゃりじゃりで喉が渇く氏口の中が気持ち悪いのだろうと,普通に考えたわけですが,大量の水をたたえた器の方を好むのは,舐めている間に舌に付着していたゴミなどが溶け落ちても,容器内の水の質や味も変化しにくいのではないだろうかとふと思ったわけです。器が小さければ,再び口の中に入ってしまう量も多くなるわけで。まあ,そんなにややこしい書き方をしなくても,何かを洗い流すなら,水が大量にあった方が都合が良いのは当たり前なわけで,流水も勿論悪くないので好む個体が居るのではないかと考えたわけです。
水を飲むという行為にだけ着目すると,容器の違いは説明できないのだけれど,結構よいとこ突いてないかな。この仮説を検証するには,ちょっとした実験をしかければ,何とかならないかなと考えている今の状況。

小さな水入れに水を入れても,断固として大きな器を要求するその様子は,それによって,口の中に入っていく採水効率が変わるからとは考えにくいので,ずっと不思議だったのです。チコもやってきたときは小さな水入れで水を飲んでいたのですが,体が大きくなり外に出掛けるようになって,公陳丸同様「大きな器」要求は明確になりました。

てなわけで,
洗浄要求が明確なのであれば,なみなみと称えた水鉢を猫に用意することは,決して不可思議な我が儘ではなく,いくら綺麗で新鮮な水で,飲む量に対して必要十分な量が満たされているとしても,小さな水鉢を用意するのに比べて,彼らの健康維持において有効且つ理に適っていると考えられます。新鮮な水を絶えず用意しておくことは,猫と暮らす鉄則ですが,舌を洗浄するものと考えると,その重要性はより説明できるかも。

「猫の採水は,舌や口腔内の洗浄を兼ねていて,大きな器を好む」説,ふと思いついて結構気に入っているのですが,もう一寸考えてみます。

家の近くの湧水の中にXacti DMX-CA65を放り込んで撮影したもの。
ふんだんに綺麗な水が飲ませられるのは,取りあえず,良い環境か。
追記ー過去経験や,飼育条件などで,個体差もあると思います。室内飼いだと,それほどからだの汚れを気にしないとか,グルーミング頻度も個体差が相当あります。
手痛い目にあった場合,他の所から水を飲まないというのも,あり得ます。基本的に哺乳類行動の場合,~の傾向があるという具合に見ることと,他の個体と異なるオプションをとる行動多様性こそ彼らの宝ですので,その視点のない論考は,場合によっては意味がなかったりします。自戒を込めて。
追記2ーこの記事以降、
猫の水飲みのメカニズムがかなり詳細に解明されました。非常に興味深い結果で、水の凝集力を利用して舌を水面に貼り付けて、水の塊を引っ張り込むようにして飲む、犬とは全く違うメカニズムをによることが明らかにされたのです。この方法だと、おそらく容器が大きく水量が大きな器ほど、採水効率は上がると思います。と我田引水的な理屈を考えてみました。まあ、彼らは床にこぼれたミルクだって舐めますけどね。