Neoteny love〜キャラ萌え型トランスフォーム欲求

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S・J・グールドがミッキーマウスの描かれ型におけるネオテニー的変遷を書いた話が,彼の著名なエッセー集の中に収められている。これは,随分昔に読んだのだが,ネットでもこの辺りを紹介しているエントリは多い。このあたりからヒトの進化の特性として,幼生成熟することで脳の強力な可塑性をもとに強力な学習能力を獲得して,それがヒトをヒトたらしめているという説を話していく魅力的な話しだ。人類=ネオテニー型進化説については,実は余り明確な根拠がないのだが,何となく頷いてしまう説であるということはおいておいて,最初のミッキーマウスは今,描かれる造形にても似つかない,ある意味リアルなネズミに近い見てくれをしていた。
 
 いわゆる,丸顔でつるんとしており相対的に眼とおでこが大きく頭に比して手足が短い,強力な幼児信号を発生するいわゆる萌え型に多くのキャラがトランスフォームしていくことはよく知られている。
 残念ながら故人となってしまった彼だが,もし,今,日本の多くのアニメ,コミックのキャラを見たら,再び,この話に続編が書かれたかも知れない。いや,そっち方面日本文化の独壇場だよね。ミッキーマウスにあやかって,ちょっと動物キャラを並べてみる。あんまりコピペは好きではないし,枚挙も嫌いなのだが,そういう比較をぞろぞろやったエントリも無いので,以下にちょっと貼ってみる。




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当然このブログなので,冒頭にあるのは,猫キャラ,“What's Michael?”のマイケル。こばやしまこと氏が丁寧に自分の猫のスケッチから起こしたキャラで,リアルな猫そのものを彼のコミックタッチにしたもの,という感じ。で,この有名なマイケルダンス(急逝したキングオブポップのそれじゃないよ)も,今の「踊るアフラック」の猫よりも,もっとその辺の猫っぽい。

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初出のエピソードはブラックなので,少し飛ばすが,この画を見て,「マイケル」だと分かる人はそんなにいないだろうと思う。
 ちなみに結婚した頃,公陳丸と一緒によくワイフのヌードを撮っていた。友人や師匠ののファインアートヌード作品を参考に見たりしていろいろ試したが,自分には女性を撮る才能はないなと思って諦め全てお蔵入り。子供が産まれて以来,ネーチャーフォトと猫写真以外には浮気をせず,人物は,家族写真としてしか撮らなくなった。最近,奥様のみを被写体にしている「嫁フォトグラファー」の方のブログ作品を見たけれど,なんとなく眩しい。その人の画が,もしもお子さんが生まれたら,以降どうなっていくのか,とても興味深い。美形の奥様のキャラもあって,きっとずっと良い雰囲気で続くと思う。あ,脱線した。

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で連載を重ねる毎に,彼はもっと擬人化されてこの辺りのキャラに落ち着いていく。白猫は彼の奥さんのポッポ,一緒に踊る二人の子供達(ミニケル)。ここで興味深いのは,このように,幼児化へのトランスフォームがどんどん進むと,あるところで限界が来る。そうなると次には、更にそのジュニア版が設定される。作者の萌え的なキャラを描きたくなるという無意識の欲求からなのか,どう見ても元の主人公を幼獣・幼児レベルまでトランスフォームさせるわけにはいかない「壁」があるため、その壁を越えたキャラを描きたい?がためなのか,理由はよくわからないが。
でそういう流れは・・・そうだあの有名なコミックでもあった。

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「ケロロ軍曹」,初出のキャラは,それでも十分な幼児信号をバンバン流しているが,当初はどちらかというと,スターウォーズに出てくる帝国軍側の戦闘員みたいな造形。
 いや,吾輩は地球侵略に来た宇宙人でありますから,それでよいのでありますっ!

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それが,いまでは,この造形に落ち着いている。まん丸顔,強調する口の部分の領域の変化。黒目の部分は逆に減少しているのだが巧みなトランスフォーム。我が家の次男は,答案用紙にも隙あらばケロロ軍曹を落書きするような子供ですが,この造形じゃないとコピーしなかったかもと思えるほど,シンプル且つ素晴らしいガンオタ・キャラだ。
 まぁ,アシスタントで作者よりも画を描くのが上手い人が普通に入ったりすると,どんな連載モノも変わっていくけどね。後で,単行本一気読みなんかするとショックを受けたり。

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で,これが幼児化したチビケロ。幼なじみである彼らの回想シーンや彼らの後輩などに使われる造形の基本。壁を越えちゃった幼児版キャラと成獣?キャラそのまま不連続に混在させて描いていた漫画家も居ましたな。「軽シン」とか。 私は填ったりしなかったが,その辺りを逆手にとったみたいな混在をやったのはこの人ぐらいか。なんか凄いアート的判断に思えてきた。

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グールドのエッセイがミッキーマウスを扱っていたために,同じアメリカのアニメ・コミック・キャラで不世出の犬キャラ,スヌーピーを挙げて同様に彼のエッセイを紹介する方が散見される。初出の頃はこんな感じ。これが1950年代。

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同じく踊るスヌーピーが60年代には,この造形。今と近い。70年代には,日本でも人気キャラとして既に知られるようになりキャラグッズなども人気を博していた。ただ,初期のピーナッツブックスを読破している人しか知らない話として,作者のチャールズ・M・シュルツ氏はこういう体つきに変化せざるを得なかったスヌーピーの事情についての挿話を描くことで律儀にも体形の急激な変化を説明したということ。これは,日本のコミック作家どころかディズニーでもやれなかった,彼だけのキャラ修正における,読者に対するインテグリティの発露だと思う。

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残念ながらその当たりは,個人的な事情として少年期の私にスヌーピー(当時の全巻)を読ませてくれた叔母の遺品に当たらねばならないのでここで画とともにはご紹介できないが,少年期しっかり記憶したその内容は「失恋したのでやけ食いで太った」という非常に・・・なんだ,・・・彼らしいお話。

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チコもその時代,子猫とも今の成獣の雰囲気でもない独特のしゅーっと細いキャラをしていた。スヌーピーの初期の画を見て,シュルツ氏も愛犬の亜成獣時代をモデルにしていたのではと勝手に想像したりしている。

パンダの親指〈上〉―進化論再考 (ハヤカワ文庫NF)

スティーヴン・ジェイ グールド / 早川書房


 S・J・グールドの一連の進化学エッセイは,日本では考えられないようなfundamentalism的トンデモ的な攻勢により進化論,科学否定の圧力に抗するため,グールド自身途中から腫瘍との闘病生活もありながら,もの凄いエネルギーで書かれている。ともかく理系分野で無い人にも興味を引いて貰うために間口切り口が用意されていたし,また,それで科学エッセイを書くことが出来た希有な存在であった。日本の場合,その当たりのリテラシーの問題なのか,ちょっと新鮮な切り口で生物系ではない人たちの注目を引くことがあって評価されてもその科学のコア部分はトンデモ風味だったりする書籍も普通にベストセラーになってしまう。
 邦訳版初出の「ダーウィン以来」の翻訳を手伝っていた先輩研究者が「いやね,いきなりシェイクスピアの一節とかが出てきてもおかしくない広い造詣をちりばめてあるので,高度な進化学的理解を持っているのは前提として,ただの英語論文読みの生物屋では歯が立たないって思い知らされるような仕事だった。」ということで,学生時代に既に翻訳の達人達による訳本をずんずん読めた私たちの世代は幸せだった。いや,またグールドが法螺書いているという口さがない先輩達も居たが,少なくとも,マクロ生物系西も東も分からないガキだった自分みたいな人間にとっては,彼が果たした役割は絶大であったと思う。
 ちなみに,その癌をおしてユーモアと科学センスでグールドが戦った勢力はブッシュを大統領に押し上げたもの達の一部であり,それらに対する危機感は決して被害妄想ではなかった。グールドと互いにけちょんけちょんにけなし合っていたドーキンスですら,共同戦線を張らずに得ない状況にあり,別の方面ではフライング・スパゲティ・モンスターなどという日本では考えられないようなアホ・ジョークの塊のように見える科学リテラシーを守るためのカウンター兵器まで編み出さざるを得なかったんだなと歴史が通り過ぎた後の種明かしとしてようやく今,そう理解できている。いや,日本でもネット見ているとやっぱり心配にはなる。
 科学リテラシー否定は,世界をあらぬ方向に変える力の台頭とも無縁ではなく,日本でも,政治家だけでなく,「科学者」ともてはやされている人たちの考えていることや発言をよく見ていきたいと思っている。こういう優れた「古典」(あんまりかなと思ったが,出版業界の物流とスピードから行くと,既に古典化してしまっている)が読まれることを願う。

What’s Michael? 9巻め (KCデラックス)

小林 まこと / 講談社


ケロロ軍曹 (1) (角川コミックス・エース)

吉崎 観音 / 角川書店


スヌーピーの50年―世界中が愛したコミック『ピーナッツ』

チャールズ・M. シュルツ / 朝日新聞社



追記

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Neoteny love〜キャラ萌え型トランスフォーム欲求_b0060239_1214315.jpgponさんからのご指摘で,アップするためにスキャンしてたのに忘れてました。ぼのぼの。追加。左が初期の描画、時間経過すると右側。
こんな造形でも,明らかに萌え変異してます。というか,やたら動物マンガが出てきたとき,最初はかなりリアルに書かれていて,だんだん必要な部分以外は情報を落としていくというキャラの修正が掛かるのは書き手の手間の問題もあるかな。

追記2-そういえば「アラレちゃん」なんかも,初出では「やっぱりお色気で戦うのかしら」なんて感じのセリフを自ら口にする「少女」だったのが,気が付いたらウンコを枝先に突き刺して振り回す「幼女」になっていた。
 後,あわててスキャンして調整せずに貼ったので裏面が見えたり・・・後で貼り替えます。

Commented by pon at 2009-10-15 09:48 x
What's Michael懐かしいです。テレふぃんカード持ってます(笑)。
スヌーピーは小学校6年か中1の時に買った竹の物差しをいまだに使っています。英語との2番目の出会いでした。
ちなみに1番はLettermen。小学生なのにレターメン聞いてたおばさんのようなこどもでしたな(笑)。
スナドリ猫さんは出てきませんか?
Commented by complex_cat at 2009-10-15 12:24
ponさん,ご指摘有り難う。我が家にはほぼ全巻揃っているので「ぼのぼの」もスキャンして準備していたのでした。彼とスナドリネコさんの絡みの1巻と25巻から。
Commented by pon at 2009-10-16 10:08 x
かなりそぎ落とされていますね、というか雑になってる?
でもスナドリネコさんには哲学がある・・・
Commented by どらねこ at 2009-10-16 13:11 x
考察、とても面白かったです。
岡崎二郎さんのアフターゼロにも幼生成熟する動物を作り出すお話がありましたね。
Commented by complex_cat at 2009-10-16 21:38
ponさん,私も同じように思いました。動物マンガが流行った時期があって(相原コージの「勝手にシロクマ」とか),あの頃に筍のように出てきた作品の中では,独自の存在感ですね。
 しまっちゃうおじさんとか好きだったなぁ。
Commented by complex_cat at 2009-10-16 21:40
どらねこさん,ネタはいろいろなところから引っ張ってますね。幼生期の可塑性が人類の潜在能力だったみたいな説は,魅力がありますけど。
Commented by りえろん at 2009-10-16 23:29 x
「ぼのぼの」ではフェネックぎつねさんが好きです。
スヌーピーは書かれてる英文の手書きフォントが好きで、よく真似してノートに書いては「読みにくい C」という英語の評価をくらってました。
Commented by complex_cat at 2009-10-17 08:19
りえろんさん,ぼのぼのは基本北米大陸を舞台にしていながら,色々登場しますし,絵柄見てモグラとタヌキとリスの物語だと思っていたら,ラッコとアライグマだったりw
 スヌーピーは英語版とその解説が,当時の週刊誌に載っていて,結構英語の勉強になった人もおいでになる十もマス。
Commented by ホワイティ at 2009-10-17 19:32 x
「ぼのぼの」の作者は、宮城県出身で、地元のテレビ局のキャラクターもデザインしており、毎日目にします。あまりマンガは見なかったのですが、ちょっと哲学的ですね。あ、スヌーピーも谷川俊太郎さんの訳で言い回しが独特でしたね。
動物ものは、こどもたちが見るので、どんどん内容も絵もわかりやすくなるのでしょうか。
逆に、ドラゴンボールや、ワンピースなどの主人公が、大人にならないのにマッチョになるのが、私個人的にはどうも違和感があります。
あれには、どんな意味がありますか。
すみません。もしかしたら、まったくズレたことを書いてしまってるかもしれません。

Commented by complex_cat at 2009-10-18 07:45
ホワイティさん,いがらしみきお氏の「かむろば村へ」はローカル色豊かな,農村のミステリー,珍騒動を描いたものでしたね。主人公の目がアライグマ君でした。
 「ドラゴンボールや、ワンピースなどの主人公が、大人にならないのにマッチョになる」理由は,強さのインフレに耐えるための設定でしょう。「北斗の拳」などの主人公の場合,強さが完成された成熟マッチョ男子の場合だと,まだ見せていない引き出しが別にあったことにするしかありませんが,少年の場合は「厳しい修行や体験を経て」更に強い相手と戦って勝ってもおかしくない演出をする場合,楽だと思います。幼生成熟はそういう意味でも楽なんだと思います。
Commented by pon at 2009-10-18 15:44 x
たくさん食らいついてすみません。そういえば、「動物のお医者さん」も結構読んでいて、当時スナネズミを飼っていた我が家ではお酒を飲ませようとしましたが、うちのネズネズ(名前)は飲まなかった記憶があります。
シベリアんハスキー流行りましたよね。当時。
Commented by complex_cat at 2009-10-18 20:21
ponさん,小動物にお酒飲ませたら駄目ですよw。
 ちなみに菱沼聖子のモデルとなった方は,私の先輩の奥さんです。あの番組の後,捨て犬にはスキー犬が増えました。
 全国の獣医学科に今まで動物を触ることすらできなかった学生さんも入ってきたりして混乱しました。「でも,彼ら,試験やると上位に来ちゃうんだ。」と当時の教官が嘆いていました。
 善し悪しは別にしていろいろ影響力を持った作品でした。
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by complex_cat | 2009-10-15 05:43 | Oracle of Cat King | Trackback | Comments(12)

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