フロンティアでは,少年達は,走る。その先に何があるのか見極めたいという衝動に突き動かされて,走る。
走る。ちょっと畏怖を感じる存在を肌で感じて呪的逃走をするように,彼らは走る。
暗い道無き森の中を(私が引きずり込んだのだけれど),ピー(精霊)に出くわさんとするように,走る。
海に注ぐ小川を跳び越え,転けながらも走る,走る。
無意識に息を止めることが一瞬もない良い香りの中,吸い込む大気はすこぶる清浄で,走って激しく萎んでは膨らむ彼らの肺を満たす。
石と水が有れば,ずっとでも遊んでいた少年期を思い出すようなある意味何にもない時間。
見たもの,触ったもの。
・・・・拾ったもの。全て忘れても良いよ。空の空は空。
与えたかったのは,ここで共有した時間だけ。まぁそんなのも泡沫の夢。
漆黒の闇を抜けて,山奥の集落までのドライブもおまけのようなものだ。
少しだけ,いつもと違った時間を一緒に過ごせたのならそれで良い。
ほんの,ささやかな贈り物。
僅かなハムと野菜を挟んだサンドウィッチにも似た。