齧歯類の歯について
2010年 06月 22日
NHKの動物番組でビーバーの歯が木材を囓って伸び続ける無根歯をメンテしているという古来からの説明がでてきた。柔硬の二重構造はノミでも包丁でも同じなのだが,ものを削って刃が立つならこんな楽なことはない。齧歯類の顎と歯の構造を見れば,そこのすりあわせははっきり分かるし,そうやって歯を摩耗させ切っ先を尖らせるメンテをしているだろうと考える方が無理がない。顎を(追記:「左右」か「前後」か両方か、このダイレクションについては検証が必要)に摺り合わせる行動は観察すれば分かる。小型齧歯類では昆虫食が好きな種も多くて,囓ることができないケージに入れて昆虫やソフトフードだけで飼えるが,勿論歯が伸びすぎて死んだりしない。囓ることによる摩滅の延長線上で歯がメンテされるわけではない。もの囓っても確かに摩耗させることにはなるだろうが,実際に無根歯が伸びることに抗するだけの効果があるか,微妙。材料工学的に検証は可能だと思う。
動物園でよく言われる,囓らせておかないと調子が悪くなると云う話も 囓らせるということが歯ではなく結果的に顎筋のメンテに必要なのではと思ったり。
齧歯類の顎骨の良い標本を借りて画像を取ってからと思っていましたが。それについては後から追加します。獨協大の哺乳類頭蓋の画像データベースが使えるかと思いましたが,霊長類以外は下顎骨月の標本画像がないので,やっぱりそのうち,撮影してアップします。
以下は,twitterで@musinju73さんに説明させていただく形を取っています。実は,あとでメモ代わりになるかなと思っていて書き込んだようなつぶやきなのです。並べたものは,上の説明と重複するのですが,囓ってメンテ説が何で違うんだ?ということについて順を追って説明したつもりです。Exciteは,Togetterもtwitterも,大変乗っけにくい,「セキュリティの高い仕様」になっているので,コピペしてテキストを貼り付けるしかなかったことを御了承願います。一応Togatterまで作ったけれど,貼れないのでは同じ。
齧歯類が硬いものを齧らないと歯が伸びすぎてというのは巷に伝搬している動物トンデモとして息が長いです。http://complexcat.exblog.jp/1998515
モノを齧ることで摩耗しますがメンテは無理で,というか顎を左右に動かすだけでメンテできるような構造になっているのに,不確定なものを齧る行為でと考えたところが,かつての博物学時代の「専門家」の誤謬ですね。今泉氏あたりも少年向きの本などで荷担してますが。
あと,飼育している齧歯類で歯が伸びすぎて死んでしまう個体が出るのをネズミ屋なら知っていますが,顎関節障害の結果と考えた方がつじつまが合いますね。全部同じ餌ですから。
まず,硬いものといっても,ケージに入れた場合のステンレス網などを想定しても意味がないので,自然下にある木質や種子のからなどが,想定されます。あと小石や岩でもOKとしてもいいです。それをどのように顎の自由度で動かしたら歯が研げるかということ。摩滅ではなく。
いえ,この分野,厳密には検証されていません。が,本来は硬いものを囓って歯を摩耗させてメンテしているという事の方の証明事態の方も困難です。そういうレベルの話ほど,論文化されにくかったりします。順を追って書いていきます。
一方で,歯と顎の構造は明確で,同じ歯同士を左右にすりあわせれば,エッジを綺麗にメンテしたまま間違いなく研ぐことができます。二つの戦略の適応度を考えれば,後者の方が圧倒的に無理が無く,メカニズム的に簡単で,利用性を得た囓るものの硬度や形状にも左右されません。
更にどのように囓るものに歯を当てるかなどというややこしい問題も生じません。齧歯類の顎骨を前提にして,それを動かしてどのように歯を研げるものか想像してみて下さい。昨日の番組は曲がりなりにもそれを図示して表現していたため,更に面白いことになっていましたが。
歯の構造,硬度を持ったものが硬いとはいえ木質等で,研ぐことができるのか,齧歯類の歯はもの凄く摩耗されるように酷使されるというイメージから,囓って研いでいると考える人は普通に発生しそうですが,顎骨や歯自身を確認してちゃんと説明された人は居ません。
これは齧歯類で肉食になると腸管が短くなるという過去の博物学的研究が拡大解釈された誤謬と類似した負の遺産だと思っています。当時の科学的思考の限界でそういった分野では,珍しくありません。http://complexcat.exblog.jp/11854563/
実験室内で時々歯が伸びすぎて顎が使えなくなって死ぬマウスがでます。顎関節にトラブルがある結果と以前書いたとおりです。同じ飼育ケージ,同じように餌を食ってケージのメッシュをがりがり囓っていてもそういう個体は発生します。
勿論柔らかい餌だけ与えて,囓ることができないケージに入れても,正常個体なら歯が伸びすぎて死んでしまう個体は居ません。むろんビーバーが違う方法により解決している可能性もありますが,一つの分類群の持つ解法として,ある意味一番面倒なものでよくよく考えれば非現実的。
てな説明で,「齧歯類は硬いものを囓って歯が伸びすぎないようにメンテしている」説の否定については大体勘はとれるかと思っておりますが,いかがでしょうか。
考え方として,齧ることで摩耗させて仕上げは歯をこすり合わせる,でも帳尻は合うのではという主張もできそうですが,実際に齧ることによる摩耗への寄与はほとんどなくてもという感じ。尚,齧歯類は授乳期から咀嚼筋を鍛えてる節があるので齧る行動は生存上必須な行為かも。
齧歯類の無根歯が伸び続けるのは,研磨していつも尖った鑿(ノミ)のように使えるのに必須だと思います。齧ることにより,尖端は鈍摩するけれども伸びるのに抗するほど歯がすり減っていくのとは状況は違うし,間違っても齧って歯が尖ることはないと考えます。
追記1-良質問を沢山頂いたので,整理がてらお答えしてみます。重要なのは,やっぱり画がないと不親切だなと思ったので,週末にでも知り合いの標本を借りて参考になる画を撮ってみようと思っております。
堅いものを齧らないと齧歯類は死んじゃう伝説。
ほとんど定説になっております。案外こういうのは反証するのは大変です。最初に,磨耗の度合いやプロセスなどを説明した論でなくても。
番組のCGがいやに派手だったのでホンマかいな、と思ってたところ。やっぱりホンマではなかったのですね。
NHKも専門家に取材してあの画を描いていると思います。齧歯類扱っている人でも,この話は不意打ちになります。
丁寧な説明で、都市伝説を粉砕!でも、都市伝説レベルじゃないなぁ国語辞典レベルでも、かじってすり減らすと書いてある・・・。
簡単な話とは微妙に違う話なのでそういう部分は,きちんとした説明を作っても,普及が難しい気がしております。つまり,ものを齧って確かに歯は磨耗するが,それに依存した形で,伸び続ける歯を削り,尖らせメンテしているわけではないと。一方で,多分齧り続けないと,額筋が維持されないとすると,あながち齧って歯をメンテしているというのが嘘ではなくなってきます。この辺が,自然科学事象の説明の面白いところだと感じます。
私は歯に神経が通ってたら痛くて削れないだろうなーと明後日の想像をしていた。
単なる消費物レベルて新陳代謝交換されていくサメなどの歯から,一生もの,後,根っこのないドンドン伸び続ける歯など色々ありますね。
なるほど, なっとく
イヤーまだ,早いかもしれませんよ。私が勘違いをしていたり,大嘘つきである可能性もありますから。
そういう意味では,レフェリード・ペーパーレベルにつめてお出しした情報じゃないと,やはり無意味というのは在ります。トンデモの多くは,専門家にさらすことなく,俺が正しいと思っているからいきなり本を書いちゃった先に,展開しています。反証するためのネタとして,ちゃんとした仕事が出るべきだし,本来なら,それは自分でやら無いといけないと思っています。思っているから,一寸だけ開示しました。
↑爪の古くなった外層を落として爪をとがらせるという意味があるそうだから、そんなに間違いでもないような気がする。…てのが俗説かもしれんので、識者およびはて猫諸子の意見を待つ。
例えば,シカの角研ぎは,先端を樹でこすって尖らせるためと考える人は少ないです。完全に匂い付けと物理的マーキング。猫の場合だけ爪メンテとされてきたのは一種の擬人化かもしれませんね。彼らは,口でも相当メンテしていますし,そもそも樹を齧るときににこすり付けるようにして尖らせたり,道具としての機能が上えるようなことができるのかということは誰も問題にしないですしね。
ひぇ~、もう齧って削っているもんだと信じて疑ってなかった。「猫は爪を研ぐ」は正しいんですか?
はい,どうやら怪しくなってきましたね。昔の子供向けに書かれた,なぜなに本は,自然科学にいざなう扉として機能していましたが,深く考えない一問一答的な理科教育の弊害も沢山含んでいると思っています。猫の爪は、多層の鞘状になっているので、先端が摩耗した鞘を外していくことでメンテされます。
囓らせるということが歯ではなく結果的に顎筋のメンテに必要なのでは」/飼ってたハムスターが檻をしょっちゅう齧っていたので素朴に信じていたけど、ストレスによる異常行動(常同行為的な?)だったのかなとか
齧ることが,物理的に磨耗させて歯をすり減らし,更にちゃんと機能するような整形が崩れないように機能しているとは逆に考えにくいですが,咀嚼行動を維持すること自体は,上顎の門歯の裏側に下顎の門歯の前面を左右にこすりつけるようにして削り,さらにいつでも機能が落ちないように尖らせるという顎筋の維持の問題があって,いらないとは思えません。そのあたりが,一寸ややこしいのですよね。
興味深いなあ。そう説明されると確かにそうかも、と思う。
そうかもと思うというところで,止めておかれる姿勢は,まことに正しいと思います。生物事象は,観察していたら,勘違いしないかというと,それもなかなか難しいからです。これを検証する実験計画は,かなり複雑です。
フグの歯が伸びすぎるから定期的に切る、もしくは硬いものを食べさせるべきという話もそうなのだろうか。
魚の場合は,そこまでのメンテを必要としないのと,実際,歯よりも硬いものを齧った結果,消耗が激しいというのは現実としてあると思います。養殖ものの歯を切るのはストレスにより噛み合いが始まるため商品である他の個体やインフラにダメージを与えない,扱い時の事故をなくすという意味合いもあったかと思います。
なるほど、そうだったのか。/エナメル質のエッジを立たせるのは葉食動物に広くみられますが(偶蹄類やゴリラなど)、そっちの場合はどうなんでしょう?
エッジの確保は勿論ありますが,齧歯類ほど,触れたら落ちるほどのエッジの維持は必要ないですね。すりつぶしで歯の尖頭部分は,何れにせよ磨耗していきます。ウサギなどの食痕は本当にすっぱり切れています。
硬いものをかじらなくて歯が伸びすぎてしまったネズミとされる写真を何かで見たが、あれは別の原因によるものだったのだろうか。
実験室のマウスなどで一定の割合で出ます。其れは同じ飼い方をしていても出現します。そもそも飼育マウスの維持管理における観察の誤謬から,この説が広まったと記憶しています。そのことは,条件は同じで,しかも歯が伸び続けていたときも同じ環境で飼育ケージを齧ったり,餌を食べていたわけで,齧れなくなったからではなく原因と結果が逆です。下顎を上手く動かして歯をすり減らしメンテできなかった個体の歯が伸びて,それが「発見される」ことはマウス飼育施設では普通にあります。
カマキリの卵もにたようなものの気がする。きちんと調べて書かんとなぁ。←いつになるんだよ?
そっちも興味深いですね。宜しくお願いします!
じゃあなんで尖らせるかって言うと、硬いもの齧って歯先が摩耗するからだよね。歯をメンテするのに固いものを齧るのは必須じゃないけど、実質的には齧って摩耗、尖らせるのは磨り合わせ、なんじゃないかな?
尖らせるだけではなく,きっちり磨耗させること自体が,ものを齧って行われていないということです。イノシシの画像を見ていただくと分かりますが,こういう具合に歯を削りながらなおかつ鋭くメンテするのは,ものを齧ってではなく,同硬度のものとのすりあわせるしか,そもそも上手くいかないのです。石や木に好きにこすり付けてよいですから,齧歯類の下顎の歯を綺麗にすり減らしができうるか。かつ整形できるかやってみると参考になるかもしれませんね。
うわあ、都市伝説全然疑ってなかったわー。と思ったけど、自分の信じてた説は「硬い物を齧って歯の伸びすぎを防止する」であって「硬い(略)歯を尖らせる」ではなかったような。バリエーションの一種?
伸びすぎを防止というのは,ものすごく間抜けなんです。だって,それなら,伸びなきゃいいわけですから。というと鶏が先かですが,固いものを齧る必要があるから伸びるんだろ?になりそうですね。あ,でもね,多くのネズミは,種子と昆虫食で,芋虫なども好きなんですよ。地面を掘るのも石を咥えることがあっても基本はあの小さな前足で掘るだけです。硬いものにあたらず,磨耗させるシーンが発生しない状況も多いのです。ものを齧って磨耗する状況はありますが,それによって無様に伸び続ける歯を磨耗させるのが目的というのは,話が逆だと思います。常に鑿のように尖らせて,微細な咬合のメンテナンスがされる範囲内で調整するために,歯が伸び続けていると考えたほうが自然です。咀嚼器官は微妙な機械なので,一寸でもずれると,上手く機能しません。人間でも差し歯入れたりすると舌咬んだりしますでしょう。「硬いもの」という形状も硬度も不確定なものを齧ってグラインダーで適当に削るみたいに,それでOKという代物でないことを理解するかどうかで,最初の立ち位置への疑問が出てきます。
聞き齧りではイカンということか
すいません。この説も,当初は聞きかじりでした。自分で考えてみたくなって,生きているネズミを手元に何年も置いて観察して,顎骨見て,やっぱりそうかという状況です。
なんと。「齧歯類はモノをかじって歯を研ぐ」という話は誤りという話。尖らせるのではなく、歯の伸び過ぎを防ぐという話もあったような。
尖らせる機能も含んだ意味での磨耗です。というか,そもそも「伸びすぎを防ぐ」という考え方がおかしいのは上に書いたとおりです。「伸びすぎを防がないと死んでしまう」,というストーリー自体が,顎間接異常などで歯が伸び続けて死んだ個体の個体を見て思いついた人の,最初のボタンの掛け違いという話です。
自分の画でなくて申し訳ないのですが,この上下の門歯の咬合を見ていると硬いもの齧らなくてもこれすり合わせればいいんじゃねというまさにその位置にありますね。 むしろこれがずれてしまったら,上手く削れないだろうということは容易に想像できますし,何か適当な形状や硬さのものを齧ってこの精緻なクリアランスを持った位置に持ってこられる方が不思議という気がしておりますが,いかがでしょうか?
うわー、知らなかった。
今回思い切って書いてみましたが,皆さんのおかげで,論を補完することができました。画も含めてもう一寸描いていくかもしれません。
先端が磨耗すると鑿として機能しないから,常に咬合部分をすり合わせてメンテする必要がある。その場合,当然歯がちびていくから,そのために,無根歯として少しずつせり出していく。そういう精緻なメカニズムである。で,何らかの顎や筋肉の障害によりメンテナンス機能が失われた個体では,歯が伸びすぎてやがては死んでしまう。
鑿(かんな)として機能させるのは,そうやって歯の幅の分だけの溝をずっと深く掘っていくという方法で専断されない物体は少ないからです。其れにより,顎の力で割るのではない方法で,かなり硬いかつ種皮の厚い種子でも中身を取り出して食べることができるという得意な能力を得たわけです。
ネズミの場合,種によって食べることができない種子が出現しますが,これは,種皮の厚さの問題ではなく,上顎の門歯をフックさせて,下顎の門歯を前後させてごりゴリゴリ深い溝を掘っていく方法で位置取りが上手くいか無くなる,「大きさ」が不適合な種子が利用できないのです。決して硬過ぎて顎の力で割れないから,では無いわけです。何ゆえに裁断型のあごの構造ではなく,鑿(のみ)型の構造を持ったのか,そのほうが圧倒的に餌にできる種子が増えるわけで,ここでなるほどと思うわけです。だから下顎門歯は特に,斧やナイフではなく,鉋かノミのようでなければならないわけです。
歯が伸び続けることと,そこがリンクしているわけです。そうやって考えると,齧ってないと歯が伸び続けて死んでしまうシステムなんぞを持っているなんて,粗いシステムを持った間抜けな動物であるはずがないと思えるでしょう?
お子さんに話したら分かると思いますが,「ネズミって硬いものずっと齧っていないと歯が伸び続けて死しんじゃうなんて,伸びないようにすればいいじゃない。なんて馬鹿なの死ぬの?」って言われたとしたら,そうだね,間抜けだねって答えて,疑問が生じるかどうかという話なんです。
ネズミは,硬いものを齧らなくても大丈夫です。但し,顎筋のメンテ上,齧る行動は必須かもしれない。それは動物園の経験則から言ってもありえそう。もしそうであれば,ここはもう一寸ややこしい話になるのですが,少なくとも,齧って歯をすり減らさないとだめということではないし,そんな危うい歯のメンテはやっていないということになるかと思います。
ネズミ偉れーじゃん。
きちんとした自然科学による生物理解は,相手を敬愛する材料を発見できます。それは決して安っぽい擬人化なんぞでは示すことができないものだと思っています。
反論,疑問も含めて,ありがたいところです。抜けや加筆必要もあると思いますので,追記は,まだまだ続けます。ホント,楽しいですねぇ。
追記2-ブックマークへのお返事,追加分です。
空条承太郎は誤っていたのか。
すいません。使役系の話に成ってからあんまり読んでないもので。そういっているのは,この説の蔓延の仕方からいくと至極当然だと思います。彼に限らず。
信じていたが「ものを削って刃が立つならこんな楽なことはない。」に目鱗。そりゃそうだ。(^_^;)
ひょっとして鋏で硬いもの(実はアルミホイールなど)を斬ると,構成刃先が付着して切れ味が復活したように見えて,「鋏が研げた」と勘違いする状況がありますが,このあたりもトンデモ解釈が生き延びてきている理由に微妙に影響しているかもしれませんね。
じゃあ闘莉王は背が伸びすぎるからヘディングし続けるというあの話も嘘なのかも!
何かをやり続けるというストレスをかけて伸びるのを抑えるという発想は,分かりやすいのでしょうね。しっかりかみ締めることで歯の伸びを抑えるとか。そういうの好きですけど,研究者の発想が子供が納得する漫画レベルでは危ういかと。
常識を疑え! > そういや齧歯類は歯の堅さはどうなんだろう。柔らかく研磨されやすいのかしら。
ダイヤモンドを研磨するのはダイヤモンドなので,同じ硬度以上のもので研磨するのが理想だと考えるわけで,歯の研磨は歯でというのは,至極自然な解法だと思うのです。歯は決してやわらかくありませんよ。少なくとも「硬い樹」で研ぐことはどんなに齧り回数が多くとも難しいでしょう。
うさぎは寂しいと死ぬとセットだった。
寂しいというのを同評価するか,要するに社会性を求めている高等動物がロス的失望感で孤独死するということでしょうね。哺乳類ではありえるかもしれません。ウサギといってもペット用のアナウサギ(rabbit)は,ソリタリーの(hare)とは違いますから,ストレスにはなる場合があるかもしれませんが,ほったらかしにして他のケアーもない状態でしょうから,何が原因で死んだか,実際に見ても孤独で死んだと検証するのは難しそうです。もしもそういうように見える現象があっても,私は,多分というか間違いなく単なる飼育の失敗だと思いますが。
うは、ずっと信じてた。
この話は,生物系でも,事前に疑問を持っていた人に出会ったことはまだ一度もありません。良い子のなぜなに本にも普通に書いてありますし,国語辞典にもあるそうです。あるプロフェッサーに教えていただき,進化生物学的な検証を行っていくと,とても不具合が生じることがきっかけで私もそうかと思ったレベルです。
実は伸び続ける歯は,実は特定の大型のシカの角やマンモスの牙とセットになっていて,どちらも,あるいはこすって削らないと無様伸び続けて,それで死んでしまう器官として紹介されたりしてきたのではないかと考えています。角も牙も相対成長的な説明で,異常に大きいわけではないし,伸び続けて機能不全に陥ったりすることもないことが明らかになっています。要するに「ネズミの歯」の都市伝説を補完できてしまうと勘違いされて使われてしまったこれまたつくり話です。「レミングの自殺」と同様,猟師の迷信をそのまま信じ込んだり,科学的検証能力と技術を持たなかった動物学者,あるいは博物学者がそんなに珍しくなかった時代の勘違いの遺物ですね。
一つにはマクロ生物系の仕事が実験検証,追試で追い込んでいくよりも,現況の分析,解析的に事象を読む特スタイルが圧倒的なので,妙なものが残ってしまうことも起きやすいということだと思います。一方で,これを厳密に解析,実験するデザインは,飼育ケージデザインや顎筋の問題や顎の機能不全の再現や,観測の難しさなどから,メカニズムを証明するには一寸苦労すると思います。バイオテクトニクス的に3Dシミュレーションで検証のモデルを作るしかやっぱり手が無かった。
歯の咬合部分でメンテをやりくりしている現象は解析できませんが,丸い球体型のケージの中で,ソフトフード摂取が可能な種を選んで飼育してみるといいかもしれません。歯が伸びすぎて死ぬかどうか。
しかし,ここまでの論は,そういう実験をしなくても良いという話のつもりですし,むしろそういう実験をやって歯が伸びて死ぬことを証明するまでして,説を主張するのはどちらかという問題でもあります。
リンク先をおっていったら,内容を誤解されておられるようなので,追記。
前半,読み取り方の問題で,多分言いたかったことは前半ではなく後半なのだと思いました。
ネズミを間抜けというのは,そういう浅い知識で「僕の考えた齧歯類」的なものを考えついた,まさにそういう人によって作り出された,藁で出来たネズミ人形が間抜けという意味で,生き物がそれなりの適応の結果得ている形質で,間抜けなものはありません。この区別がついていないと,浅薄な知識でトンデモ的動物を考えだしても間抜けだと思わないわけで,そのことに対する批判の意味で書いております。
間抜けだと思う動物は,私には存在しません。知能や自然荷物に至った適応戦略の問題ではないのです。
鑿(のみ)と鉋(かんな)の違いについては,一般にげっ歯類の歯は(鑿)で例えられることがあるので,ここではわざとくさび形のものを打撃で対象に食い込ませていく使い方ではなく,少しずつ壁を剥離していくような方法で固いものに対しても最終的には剪断できるイメージとして使いたかったので,鉋を持ち出しました。もちろん鑿も鉋や彫刻刀のように使ったり出来るわけなのですが。ここにおいては,そのまま「彫刻刀」の方が良かったかなと思ったりしました。
尚,限られた時間内に高速で書いて誤字が多いのはここの仕様ですw。見逃せば刻印として残ろうというもので,コピペされにくくていいとすら思っています。自分の言葉で考え直すわけですし。
おかげで,いろいろ優秀な出版社のエディターの方と知り合いになれて楽しいですぞ。皆さんご指摘くださって,その書き方において,内容の価値をスポイルすることは一切無いかたばかりで,とてもありがたいです。
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なんて形式ですが、これを貼り付けられないエキサイトブログはちょっと不便ですね。
前歯が伸びて弧を描き、前歯の裏側に巻き込むような形で伸びてたネズミの頭蓋骨の映像だったと思います。10〜15年以内だと思うけど、放送番組・放送局とも全く記憶になくて。
実験室のネズミの骨の異常だったということなのかも。見ていた記憶がある人が他にもいればいいのだけど。
伸びるから削る、がただの間違いだったのは衝撃でした…。
ありがとうございました。
現在チンチラを飼っていて、過去5回ジャンガリアンハムスターを飼いましたが、ハムスター達は誰一人囓り木を囓りませんでした。
チンチラは囓り木が大好きです。
チンチラもハムスターもケージを囓りますが、私はそれを脱走を企ててるのだと思ってました。
歯のメンテのためなんですかね?
ところで、実は記事が長くて携帯では全文表示されず最後まで読む事が出来ませんでした。多分ほとんど終わりまで読んだとは思うのですが。
申し訳ありません。
取り急ぎスマホから。
20年間手の届く距離でネズミ(ラット、マウス、ハムスター、他)を眺め続けていましたが何も口にしてない状態で歯軋りしている様子はほとんど見たことがありません。
不満な時、寝てる時などに1、2秒歯軋りすることはあります。
インコ類などは木にこすり付けたり嘴をすり合わせて研いでるような行動は頻繁にしていますが、ネズミの場合は見逃す程度の少ない回数で歯が研げるんでしょうか?
食べる、齧る以外でよく目にする歯を使う行動では毛づくろいと巣材の手入れがありますが、やわらかい巣材でも力を入れて噛んでいるので、あの時は削れてそうだな~とは思います。
やわらかい餌だけを与えると途端に歯が伸びすぎるのも経験していますが、そういう餌を与えるときは体の弱った時のみで同時に爪も伸びるのでこれは餌のせいじゃなく齧ったり研いだり?ができてないだけだとは思います。
ウサギは牧草を食べないと歯が伸びすぎたり、噛み合わせが悪くなる。切断後適切な食事に変えると歯が伸びなくなる、ペレット中心を続けるとまた切断することになる、というのもありますがこれはどうお考えですか?
6年も前の記事にすみませんが、とても気になる話だったので…
ツイッターで拡散されていて今日はじめて目にしました。
実はげっ歯類は、授乳中から口移しで給餌することが詳細な研究から知られていますが、この端を尖らせる行動「仮説」については、相当な実験設定がないと簡単に証明できません。
現時点ではかなり可能性の高い「仮説」レベルの話を、意図して割りと断定的に書いているのは、種を明かせば、これ、ちょっと研究コンテンツの一つなので、余りそこに踏み込んで書きたくなかったということがあります。
というのは「なるほど」と思いましたが、「伸び続けたら死ぬなんて間抜けじゃん。そんなわけないだろ」とするのはいかがなものかと。
人間の爪だって、放っておけば生活に支障を来すレベルまで伸び続けるわけです。ある環境で摩耗要因を前提とした回復機構が、摩耗から離れて過剰になってしまうのは、全く無理なからぬことです。
他の論拠は興味深いですが、「間抜け」などという感情的な理屈を持ち出すのはいかがなものかと。
「間抜け」という言葉に含まれる否定的な意味の強さ、ご指摘はその通りかなと思います。
摩耗要因を前提とした回復機構が、摩耗から離れて過剰になってしまうのは、全く無理なからぬことということについて、これも最近、書籍が散見される「ざんねんな生物」的な表現が私も違和感を感じます。それは、Gさんの「間抜け」に対するお考えと同じだなと感じました。つまり一定の適応環境から外れることが想定されないゆえ成立する生活史や戦略、整理特性も存在して当たり前なので、私は「ざんねんな生物」という表現も、ちょっと違うのではと思っております。
随分前の記事ですが、これを書いたときには、まあ、門歯をなにか硬いものを齧ってメンテするという発想自体が、実際のネズミ類の行動や門歯を長く観察していれば、全く筋がよくない仮説であることは明らかであるということを伝えたかったわけです。長らく少年向けの動物本にも書かれていましたし未だにそういう話が出ることに対して、ちょっと表現が過激になった次第です。
この記事については、随分前に書いたものでして、今読み返すと、もう少し門歯の精緻な先端形状や伸びる速度などに言及した話を根拠に盛り込んだ方が良かったかなと反省しております。
ところで、人間の場合は、放置すれば生活に生活に支障をきたすようにならないように爪のメンテナンスがどのように行われてきたか、どのような負荷がかかっていたか、ちょっと興味が湧くところです。ヒトや家畜を別にすれば、爪のメンテナンスで苦労する哺乳類というのは、自然下の淘汰圧が普通にかかる動物の野生個体群を考えると、ちょっと存在しないのではと思ったりします。そしてそのような動物が存在した場合、それは、また、興味深い生活史や戦略の存在を示唆するだろうと思います。
重複しますが、補足として、
間抜けと書いた対象は、逸脱条件があれば歯が伸び続けるであろうと判断したその仮説とした方がよかったかなと思いました。仮に逸脱条件がなければ、どのようにメインテナンスされているかということについて、硬いものをかじるという考えに至った提唱者はネズミをきちんと観察していないだけではなく、門歯関連の現象理解がなされていないのが私から見るとあまりにも明らかなので。
そのあたり、この記事では全く上手く表現できていない故、その部分のご指摘は大変参考になりました。