剛体化と柔体化 #1
2011年 04月 18日
多くの哺乳類で,特に肉食獣やノネズミ類の仔が,母親に銜えられ運ばれるとき,一種の反射のように取る姿形かと思えます。実際,底足反射やバビンスキー反射みたいに,仔が親のケアや銜えられての移動に対応した姿形です。親にキャリング冴える動物では,仔の背中〜首筋を掴んだときに,これが消失する日齢が割とはっきり観察されるのですが,そのXdayが親の育児と仔の成長と発育の生活史とリンクしているところが,また興味深いのです。
仔を持ち運ぶ側の親としては,仔がぶらぶら重心が定まらない水袋のように脱力されるよりは,コンパクトかつ重心が移動しないような剛体化してくれた方が疲労も少ないはずだから、この姿形は理にかなっていると思います。要するに仔の側も,親のキャリングに協力しているという話。
甲野善紀氏による古武術の介護応用ですが、持ち上げようとする相手が水袋にならないようにするというところがポイントです。
具体的には,水袋の一部分に強い力をかけない(重心が移動するから),重心が下がらないように,遮断する=そこより下に重心が広がり暴れないような支点を作る(太ももに載せる)。そして重心がまっすぐ下にかかるように誘導する,相手より自分の方の重心を低くする,など。車いすの人が,気を失っている(柔体化している)と,この作業は出来ないので、実際,子猫と同じように介助する側に対しての効果的な協力を,車いす側の人から引き出すための手順とも言えます。完全に柔体になってしまった人をこのように扱うのは,無理です。
例えば、太極拳における抜重,脱力は,相手が数十キロの水袋を持ち上げねばならないような力の出し方に誘導するように体を変化させることによって、相手を崩したりこちらへ及ぼそうとする力を無効化したりします。太極拳で云うところの『捨己従人』は,剛体化の逆をやるわけです。合気道などのデモでも持ち上がらない体みたいなのを子供に教えると,結構素直にそうしてくれて上手く行く,大人は半端に疑うので剛体が中途半端に残るので失敗しやすいと,私が学生のときに植芝盛平翁の印可を受けられた方からお話を伺ったことがあります。