ガマの穂

ガマの穂_b0060239_9333368.jpg後輩連れて野鳥の糞の採集です。今年は,ここまで国内でのインフルエンザ禍は生じておりません。ありがたい事です。河口の湿地に広がるガマの穂は,ぬいぐるみのような感触で,中にはぎっしりと綿の着いた種が入っております。これが実ると,このように手で触ってもバラバラと風に飛ばされ風散布,水につかればバキっと割れて水散布という具合に河口の湿地に広がっていきます。散布される種子の数を思うと,尋常ではない量が生産されておりますが,これらの一部が「約束の地」にたどり着いて根付くには,それぐらいの量があっても多すぎる事はないのかも知れません。
 ガマの穂,猫のおもちゃに,手触りといい大きさといいとても良いのですが,与えると爪や口で引き裂かれて,中から綿毛付きの種子が飛び出して,部屋がもの凄い事になります。

 自然界では,通常は特定の生物がどっと増えるという事は滅多にありませんし,餌が枯渇するなど,生じても逆の左右が働いてブレーキが掛かります。そうでない場合,例えば飛蝗の大発生(アメリカでは観測ステーションがいくつか設置されているぐらいの災害です)や病原ウイルスの蔓延,黄海の汚染などによるクラゲの大発生,体内に侵入されると致命的な病原生物エキノコックスの全道的な蔓延(北海道では沢の生水を飲めなくなり,東北まで拡大しております)など,はっきりいって人間自身がその原因を作り出しております。
 ヒトの移動能力とその規模は大量の海外旅行者,物質の流通に従事する人間の数を見てもすさまじいものがあるといえます。数千キロ以上,数万羽単位で移動する渡り鳥たちは確かにもの凄い生物の動きと言えますが,それも年間何億人という規模で移動して,好き勝手なところからいろいろなものを運んでいる人間に比べれば可愛いものです。そんな生物は,自然界には存在しません。
 病原生物のout breackにしても,人類の歴史始まって,素の分布密度を考えると,ついぞここ数百年前までは,例え生じていても局所的な蔓延で済んでいたと考えられます。中世の人口密集と保健衛生分野のテクノロジー遅れによるズレからのペストの蔓延や,大航海時代からの梅毒の世界規模での広がり,天然痘によるインカ帝国の消滅,最近ではエイズの伝搬など,私たち人間が生きていく上で,当然といいきって良いのか分かりませんけれど,避けられなかった人と物資の流れの中で,元を辿れば,人類自身に原因があって降りかかってきてしまった禍は決して少なくないと思います。
 だから,数百万年単位の営みとして行われてきた野鳥の移動などに,その原因を全て押しつけるのは,生態屋としては直感的にちょっと疑問が生じます。まぁ昨年のインフルエンザのように,人間と野生生物どちらが原因か?というように択一的な要因によるものではなく,相補的に機能してしまっている可能性もあると思います。温暖化の影響ばりばりの気象などを除く自然災害(地震や津波など)は別にして,今の地球上でヒトが受けることになっている奇禍について,ヒト側に原因がない事例の方が少ない気がどうしてもしてしまいます。
Commented by kyoko_fiddler at 2005-01-28 10:40
本当は、野生生物保護、自然保護を本当に冷静に考えるなら、人間の生息数は適切?ってところをクリアにしなければいけないんでしょうね。でも、誰だって自分の家族知人友人を淘汰されたくはないわけですから、まぁ、それはいいとしてさ、というところでなんとかしようと温暖化対策だのいろいろ講じているわけなのでしょうが、自然災害も含め、ヒトが受ける奇禍の全ての遠因にヒト自らの過剰生息があるのだろうなと 思うことがあります。地震や津波なんかの環境異常を人間が察知する能力が他の生物に比べて劣るのも、災害に遭う必要があるからなのかもしれないと思ってしまいます。…遭いたくないですけど。
Commented by complex_cat at 2005-01-28 11:23
現在の資産では,全ての地球上の人間が日本人並みの物質・エネルギー消費生活に入ろうとすると,地球の資源量から考えると地球が2.5個分が必要という資産があります。中国はこれから富裕相が増加して,全体的にも食生活が西欧化,高タンパク化して,世界中にそのタンパク源を求めるようになるでしょう。それで多分向こう50年以内に水産資源は枯渇するようになると言われております。日本人がどのくらいそのことを理解しているか分かりませんが,排他的経済海域への動きは,このことと無縁ではないのです。一方で好き勝手に食べ物を食い散らかしておいて,余所の国が豊になって大量の物質を消費する方向に変化していく事を,そうなると俺たちが困るからやめてね,と言っても全く説得力はありませんね。ちょっと減った方が地球のためといっていても,自分がその淘汰に掛かりたいと思う人は居ません。
Commented by complex_cat at 2005-01-28 11:23
一方で,例えば日本の人口が減少して直ぐにそうなるか分かりませんが,今までの国力を維持できるだけのアドバンテイジを国民のマンパワーが作り出せなければ・・・資源を今のような形で使っていく事は出来なくなるわけで,国としても困り,貧富の生活状況は二極化していくわけです。過剰生息という視点で見る人口問題は,いろいろな意味で多くのややこしい問題が沢山絡んできます。
Commented by kyoko_fiddler at 2005-01-28 12:34
子供の頃、レミングという動物の存在を知ったときに、このネズミみたいなのは、大挙して海に飛び込むとき、何を思うのだろうな、と思ったことがありました。案外、なんかすっごく楽しい衝動にかられているのかもしれないと。神の言った、という「産めよ 増えよ 地に満ちよ」という科白、こうなることも折込済みだったのかなー、と思ってしまいます。過剰生息も大枠でみたら、必要なことだったど、確信犯的託宣?…これではまるで光瀬龍のSFですねー。
Commented by complex_cat at 2005-01-28 16:50
実は,レミングは集団自殺しません。大繁殖のため,生息場所の餌が枯渇すると大挙して餌場を求めて移動するのです。その場合,渡河もしますし,おぼれ死ぬ奴,崖から落ちる奴いろいろで,その大群の移動を生物学的センスのない人が観察して「集団自殺」をしていると思いこんだだけというのが今の定説です。オーストラリアで過剰に増えたアナウサギが食い荒らした草原から移動して大群で農業地域の防除フェンスの渕にぶつかって溜まっている状況もどことなく集団自殺に見えてしまいます。
 でも,地球の神様がもしおいでなら,大繁殖してやりたい放題のヒトを愛でてくれるとはあんまり思えませんが,でも,「産んで増えて,カタストロフィックに絶滅してね。」なんて言っているわけでもないと思います。ただ,まぁあまり正しい振る舞い方ができないだけだと,そのしたい放題の能力があまりにも高いので・・・・ははは・・・自分たちも危なくなってきているという事かと。突き詰めれば,人類皆,「俺たちに明日はない,」状態かと。他人事なら,確信犯的託宣に填ったかどうか別にして,「馬鹿だね〜」で済むんですけど。
Commented by kyoko_fiddler at 2005-01-28 23:18
あーそうなんですか… じゃぁ昔みた図鑑のイラストはウソなんですね。なんでレミングだけが?って思ったんですよ。長年の勘違いがすっきりです(^^) 
いずれにしても、俺たちに明日はないんですね…。しかも他の生物まで巻き込んで、ハタ迷惑な俺たち。
Commented by complex_cat at 2005-01-28 23:54
大きな声では言えませんが,そういった話を監修してきた,哺乳類学の非科学的な話の元締めみたいな方がおられます。「鼠の歯は,堅いものを囓らないと削られることがなく,やがて伸びてものが食べられなくなって死んでしまう。」などというのも,その類の広く伝搬している誤った哺乳類学についての情報です。これはネズミを研究している研究室でも,未だに信じている人が結構おられる誤報です。これもそのうち特集しようかなと思っております。
Commented by kyoko_fiddler at 2005-01-29 00:30
えーーーーーーっ!ネズミの歯、違うんですか!?
そうなんだと思ってましたよ。だって本にそう書いてあったもん。
実はそうじゃありませんでしたーっていうのはティラノサウルスが直立してませんでした、以外にもいっぱいあるんですね。
歯で思い出しましたが、このあいだ、ケーブルテレビで観たのですが、フグを飼っている人が、柔らかいえさを与えたのが原因で、フグの歯が伸びすぎてしまい、えさを食べられなくなってしまったので、歯医者に連れて行き(人間の)削ってもらってました。あれは本当の話なんだろうか、ヤラセだろうか。…アメリカの番組でしたけど。
Commented by complex_cat at 2005-01-29 08:40
フグの件は分かりませんが,ネズミは確かです。歯を噛み合わせて下顎を左右に動かして見てください。出来ますよね。上下すりあわせる事で,ネズミは上下の門歯をノミのように削りだして,彼らが使うべく形に歯を保ちます。ネズミがものを囓って,都合の良い形に歯を削りだせるというのは,ネズミの歯の使い方や採餌行動を全く観察する気がないか,分野の仮説検証のセンスのない人間が勝手に考えた「お話」です。たまに顎関節に機能障害を持った個体がおります。上下のすりあわせ面が僅かにずれてしまうと,最早どうしようもなくなり伸びっぱなしで餌が食べられなくなります。こういった個体を飼っていましたが,ニッパーで歯を切り削ったりしておりました。顎の可動域や機能は,与える餌の種類により影響を受けるので,或いはまともな餌を与えないとそうなるという話がありますが,当たり前ですが,離乳前からネズミの顎はトレーニングを受けるようになっております。
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by complex_cat | 2005-01-28 09:47 | Wonderful Life | Trackback | Comments(9)

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