Retina IIIc
2005年 01月 28日

Kodak Retina IIIc, Rodenstock Herigon 2/50

結構思い入れがあって,投資した割に,まともに働いてくれなかったカメラがいくつかあります。私はデシケータに放り込んだままというカメラ・レンズがあるのは,許せなくなるのですが,いわゆるタンスの肥やしになってしまうカメラは,皆無ではありません。
私の場合は,独KodakのRetina II/III系のモデルがどうもそのようになってしまっております。このRetina,ともかく巻き上げ機構など可動部が弱くて,巻き上げレバーがスプリングで戻るのに任せず,そっと手を添えて戻すのが作法とか。そうしないと内部のピニオンギアがぶっ壊れるそうで,写真を撮る事のみに意識が向いてしまう粗忽者の私には,かなり難しい話でした。実際,貴重な文化遺産?である1台はそれで潰してしまいました。
ファインダーはそれほど見やすくないのですが(大形ファインダーのII/IIICと通常ファインダーのII/IIIcがあるようです),レンズが秀逸で,シュナイダーとローゼンシュトックの両方のモデルが当時供給されていました。また,II/IIIは,その後のレンズ交換式であるIIISの前のモデルですが,前玉を交換する事により,通常のままの使用による標準と広角系,短望遠系が使用できました。このあたりは,今のデジカメのコンバージョンレンズと同じ方式といえます。またRetina IIのバリエーションには,あのおフランスの名玉アンジェニューを載っけたRetinetteという仏バージョンがあり,そのあたりもRetinaファンと呼ばれる人たちの魅力になっているようです。
Herigon 2/50は,残念ながらバルサム切れというレンズのトラブルで最近はお蔵入りにしていますが, 最後の写りは,このように素晴らしいものでした。中判を使う方でしか,ローデンシュトック・レンズの写りなどなかなか縁がないのですが,Retinaはそれを経験させてくれる数少ない35mm版カメラでした。細かい作りや,ファインダーを始め,中途半端なコストのかけ方を感じる部分があり,Leicaのように生き延びることが出来なかったのは,何となく分かります。IIISは一眼レフであるRetinaFlexとバックフォーカスを合わせる事で,レンジファンダーから一眼レフへの過渡的な橋渡し役を果たし,その後のRetinaFlexは,日本製一眼レフの攻勢に破れ,Retinaの名を冠したカメラは,この世から消滅したのでした。IIISの交換レンズの一つであるCurtagon 4/28は私のブログではたびたび登場しますが,35mmや勿論標準50mm135mmなど各種揃っていました。しかしいわゆるRetinaファンからは,邪道とまでは申しませんが,レンズ固定型のII/IIIが「いわゆるRetina」として人気があるようです。
ちなみに,このカメラの名を冠したクラシックカメラショップの「Retina House」には,デッケルマウントアダプターやProminant<>Lマウントアダプターなどでお世話になりました。非常に素敵でユニークなクラシックカメラショップだったのですが,デジカメへのもの凄い潮流の中,これ以上そういった商売が無理であると判断されたかと思いますが,廃業されてしまいました。既に一昨年前のことです。「Retina House」は既に消滅しております。
チコとかー君,近くに住んでいたらよい友達になれたかも知れませんね。って昔から,そういう相性を考えてしまう,猫馬鹿ですねぇ。