Multiple paternity


Multiple paternity_b0060239_15372535.jpg奇禍により,兄弟猫として短い時間しか私たちと一緒に暮らせませんでしたが,ジタンとアッシュの画像を見ると,この子達のパパは1匹だったのかなぁと思います。
 哺乳類では,いくつかの種で,その存在が知られていますが,‘multiple paternity’というものがあります。「複数の父性」と云う直訳になりますが,これは雌親が1回に産む1産の中に複数の雄親の仔が含まれるという事です。即ち同じお母さん猫が産んだ子猫ちゃんたちが「異母」兄弟ならぬ「異父」兄弟となっていることを意味します。
 猫では体毛のパターンからかなり以前からmultiple paternityの存在が示唆されていましたが,遺伝的な解析が行われ科学的にも検証されております。雌猫は一回の毎の受胎のチャンスに複数の雄猫と交尾をして多様な形質の異なる子猫たちを一度に産んで育てる事が出来るわけです。便利でしょ?
 一方で,雄猫の方も,既に他の雄と交尾を済ませていた雌猫とでも交尾する事で,ひょっとしたら「滑り込み」で自分の子を受胎して貰えるかも知れないと云う可能性が出てきます。ただ,これは,雌を独占しにくい力の弱い雄にとって有利であるということです。普通で考えれば,他の雄の仔が混ざる比率がたかくなるということは,雄にとってはあまりありがたくない事です。雌側の排卵のタイミングもありますから,ずっと雌を独占して比較的長期間交尾していれば,雌が産む仔が自分の遺伝子を持っている比率は確率的には高くなるという事ですが,あくまで確立としてはそうであっても,間男(生態学用語では,このように振る舞う雄を「スニーカー」と呼びます)がさっと来て交尾していったらほとんどそいつの子供だったという事も起こりうると思います。
 交尾した第一雌を放っておいて,他の第二,第三雌のところに行けば,そこでまた自分の子が受胎される可能性を上げられるかも知れませんが,一方で,第一雌が未だ交尾可能であれば,自分の子供の生まれてくる割合が減少してしまう事になるわけで,最も良いのは,全ての雌への他の雄によるアプローチをインターセプトしてしまう事で,これは,非常にエネルギーが必要な作業になります。
 さて,猫の‘multiple paternity’を考える場合の基礎情報はこんなものにしておいて,
ちょっと面白いアブストラクトを見つけました。

L, Pontier and D, Natoli E. (1999) High variation in multiple paternity of domestic cats (Felis catus L.) in relation to environmental conditions. Proc R Soc Lond B Biol Sci. 266(1433):2071-4.

遺伝子解析で,農村地域と市街地域における猫のmultiple paternityの割合を調べたもので,農村地域では一腹の仔が2頭以上の雄親由来であった比率が0-22%と低いにもかかわらず,市街地域の猫ではこの比率は70-83%にも達するという事で,市街地では雌猫は,ほとんどといって良いほど2頭以上の雄の子供を宿しているという事です。
 調査地におけるOSR(operational sex ratio=繁殖に参加している雌雄比率)や個体群密度が正確には分からないので,はっきりした事は言えませんが,農村部は雌を独占する事が出来るが,都市部では性的成熟に達するとすぐに交尾を始めるため,雌を独占しにくい。農村部では3歳まで繁殖に参加できないと著者達は述べています。密集型で,餌をどこでも得やすい環境では,猫は乱婚型になります。雄は性成熟に達するとすぐに交尾が可能になりますが,農村部では3歳までは繁殖に参加できず,繁殖できる雄が雌を独占するという状況にあるという事が示唆されております。このあたり,何が原因なのか結果なのかが分からなくなりますが。

Multiple paternity_b0060239_1543644.jpg
画像はよくありませんが,夕方,屋久島で見つけた黒猫の兄弟です。ひょっとしたら単一雄親の仔たちではないかと思います。
 おそらく,人間と暮らすようになって,特に市街地では餌資源が与えられる状態で分布様式が変化したところでは乱婚型という婚姻システムになり,相でないところでは一妻多夫型の傾向が強い動物と考えればよいかと思います。配偶個体の分布密度などに合わせて,繁殖様式を代える事が出来るわけで,特に雌側に生理的な準備が出来ているという事で,こういったところもなかなか猫というのは面白い動物です。
 ちなみに野生のアフリカゾウでは,40歳を超えるまで,雄の交尾確率は,ほとんどゼロです。雌側が,干魃や餌が枯渇した時期など様々なハードな問題に対応できるスキルと知識を蓄えた中年以上の雄しか相手にしないからです。雄猫が繁殖能を持ってから3年ずれるというのは,猫の寿命を考えると妥当な線でしょうか。厳しいです。


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我が家の異父兄弟の一年半前の画です。勿論,異母兄弟でもありますけど(そうでないと困る)。チコベイは行方不明事件の後,ますます声が大きくなりました。朝のパトロールから帰ってきた彼の一言は「今日も絶好調!」(by 埃かぶっていて久しぶりに電池入れたミャウリンガル)だって。
私には,「今日も美味しいものがあったら食べさせて! それでまた出かけてくるからね! 早く!」と聞こえます。まぁ同じことですね。CANON IXY Digital 400

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コンシューマデジに手をやいていた頃の画像で,目まぐるしく動きまわるAkiraとチコを室内で追うには,当初から少々無理がありました。ストロボ炊けば止まりますが,シャッタータイムラグの酷さは変わらないし,作画的にはひいき目に見てもよくありません。とは言っても貴重な記録なので,プライドを捨てて,バシバシポン炊きです。
 ブログを拝見していると,(コンシューマ)デジカメを用意しながら,AFのタイムラグのない固定焦点レンズの携帯電話デジカメで猫を撮られている方が意外と多いのは,何となく理由が分かります。広角側で良いからAF固定のタイムラグ最少の固定焦点モードを着けませんか,メーカーさん。
CANON IXY Digital 400

Commented by みかん at 2005-01-30 00:41 x
こんばんわ。さっそく寄らせてもらいました。チコちゃんはもちろん、お子さん方が可愛い!!皆でお布団に居る図など、ほのぼのと幸せになりますね。

ところで「複数の父性」は、はじめて知りました。そうなのかぁー。すごいなぁー。面白いですね。猫って。
Commented by kyoko_fiddler at 2005-01-30 01:17
はみがきしているお子さんが、チコ君に「おつかれしゃん」という
お子さんですか? (^^)
うちの猫かーの兄弟達は、明らかに異父兄弟でしたね…。雌猫3匹、母娘でいましたから、当時そこらじゅうの雄猫達が取り巻いていました。シーズンになると、どういうスイッチが入るのかわかりませんが、いつも一緒にいる壮年の息子たちはめったに姿を見なくなりました。シーズンが終わると戻ってきていたので、行動の自由度が高いと、血族婚を避けるなんらかのシステムが働くのかもしれませんね。今はもうシーズンだろうがなかろうが一緒にいますからね。
Commented by complex_cat at 2005-01-30 08:20
みかんさん,いらっしゃい。同じお名前の猫が主人公の猫漫画の名作がありましたね。書きたい思いだけ先行してしまい,推敲もまともにしていない読みにくいテキストをお読み頂いて恐縮です。
Commented by complex_cat at 2005-01-30 08:26
kyoko_fiddlerさん,多くの哺乳類種においてIncest tabooを犯しても,必ずしも悪い事ばかりではないことが分かっています。例えばハムスターは全世界に何匹飼われているか分かりませんが,これらは全て最初に捕獲された7頭から出発しています。最近の行動生態学では,データの積み重ねによってむしろ利用資源が重なって,次に作る仔の生存率が下がるからという要因で「激しい仔別れ」や同じ場所での血縁者どうしの交配が避けられている事が説明される事が多いのです。しかし,猫の場合は実際に「血族婚を避けるなんらかのシステム」を機能させているのかも知れません。わからんことがまだまだ多いです。
Commented by complex_cat at 2005-01-30 08:37
Akiraとチコはこんな感じで育てられたので,まるで兄弟。いっさいべたべたする事がないのですが,いつも兄弟猫のような不思議な距離が保たれています。チコもそのあたりが鬱陶しくないようで,気に入っているようです。
Commented by kyoko_fiddler at 2005-01-30 12:13
実は、上の書き込みをしたあとに、思い出したことがあって。今は貰われた家で幸せに暮らすかーの姉妹のふじこちゃん(峰不二子からとったのかしらん)という猫が、かーのおじさんやおばあさんと同じ毛色なんですよ。かーの母親が、そういう遺伝子を持っているのでしょうけれど、もしかすると、これはボスの子かもしれないなぁーと。まったくいなくなるわけではないのですから、いなくなっているのではなく、カワイコちゃんさがしてウロウロしている結果、定位置にいる確率が低いだけなのかもしれませんし。かーの父親のアタリはつきません。付近に茶トラの猫がいないんです。黒トラばかりで。でお、かーともう一匹は(どちらも♂)茶トラでした。最初にエンドウマメを選んだメンデル氏はラッキーでしたね。猫を選んでたら絶対わけわかんないぞ。
Commented by complex_cat at 2005-01-30 13:39
メンデル先生,賢かったですね。公陳丸も,「あんたとパパとママは・・・・わ・わからん」ですもん。雑種猫のブリーダーやっていれば,少しは分かるようになるかも。今時何匹も猫を飼われていても全て血縁がないというのが一般的かと思います。親子猫を飼うのも夢で,女の子が来たら一回ぐらい産婆さんをしてみたいと思っているのですが,縁がありません。
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by complex_cat | 2005-01-29 14:26 | Cat Family | Trackback | Comments(7)

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