奄美の沢は,ハブの存在に阻まれて,通常で考えれば,普通の人はまず入らないと考えて良いと思います。しかし,古くは,日本の戦前から高度経済成長期までの流通を支えた旧国鉄の枕木用の広葉樹の伐採,そして今は,林道開発など公共工事のための測量など,意外と人の出入りを感じるものです。で,ゴミや砂防ダムなどがない沢を見るととほっとするのがちょっと悲しいところです。
山はそれほど高くはありませんが,小規模でも水量がそれなりに流れる沢が無数にあって,日本本土には生息しない生物を多く抱える奄美の突出した生物の多様性を支えてきました。
オオタニワタリとシマオオタニワタリ,今はどちらもレッドデータとして記載されていますが,オオタニワタリの方が希少性が高い事になっていて,実際にシマオオタニワタリの方をよく見かけます。これもシマオオタニワタリです。標本用として撮った画よりも少し露光を切って,見えている雰囲気にしてみました(雨天の沢の中はかなり暗いです)。二番目の画の沢の両岸に写っているのも,ソーラス(胞子嚢群)が葉っぱの葉肋から葉縁までの距離の2/3を超えませんので,シマオオタニワタリです。
ヒカゲヘゴは,ヘゴと異なり葉柄部分に棘がないとされています。どちらかというと,林縁の明るいところで生育し,本土の林で云えば二次林のアカメガシワやクサギなどの陽樹とニッチェ(生態学的な位置)が近いように感じます。食材豊かな奄美ではあまり食べないように感じておりますが,南西諸島ではこの新芽は皆好んで料理に使っている山の幸です。まぁ,木性シダといっても,ゼンマイなどと同じように食べられるわけで,癖もなくサラダで美味しく頂けます。
オオタニワタリの胞子嚢が葉肋から葉縁までの距離の2/3を超えているところの画像が見つかったので,アップします。