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逆襲のフィルムカメラ #9

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 この「逆襲シリーズ」も続けてきたけれど、決してフィルムカメラの逆襲が社会的に生じるなんてことはないだろうと思っている。
 このタイトルで続けた理由は、自分自身がほぼフィルムカメラによる写真撮影から離れちゃったなぁと自覚し始めた所に、それを続ける選択の機会と圧倒的な理由が向こうからやってきたということだった。で、それをやはり自分は手にとったのだ。要するに私に逆襲してきたっていう話。
 フィルムがもう先がない理由などいくらでも上げられる。ずっとそれ以降を考えてきたわけだから。ただ、それがどのくらい確定的で、どの位のタイムスパンで起きて、それまでどうフィルムカメラとつきあうか、もう一度考えてみるのも良いかもしれないと思った経緯がある。

Leica M6 TTL Millennium NSH Special Edition, Summicron 1:2 50mm
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 このブログを始めた頃には、MOは保存メディアとしてDVDなどよりも信頼性が高い、50年ぐらいはいけるかもみたいな話があったので、初期のデジカメの分はMOに焼いたりしていた。そのMOも640MBから容量が倍加して、媒体読み取り装置もアッパーコンパーチブルになって規格が更新された時期もあったが、やがては潰えた消滅媒体。その他SyQuestやそれに続くリムーバブル媒体はたくさん出たが、メディアはともかく、読み取り装置自体が生き残っていけない。PDなどはケース剥いて直接読み取れたりするが、どちらにしても書き込み可能なDVD媒体はデータキャリングや一時記録用であって、保存用としては10年後の生存率を考えても高くない。その上、USBメモリやSD/microSDが安くなり、寧ろそちらの方が書き込みやボリュームなど圧倒的に性能が上がったので、ディスクメディア自体勝負にならなくなった。結局、光記憶型に比べれば原始的と言われていたHDだけが容量がどんどん大きくなって生き残った。ただ、コストが下がればこれもシリコンメディアに代替される可能性はある。
 私もHD数台で、一定期間ごとにHD毎更新みたいなことをせざるを得なくなって久しい。これも、SCSIからFirewire、さらにUSB3にデバイスが対応すべき接続方法も変わってきた。メーカーも下は切り捨てる時期が来る。ハードが壊れなくても読めなくなる事態はありえる。この辺りは、消滅メディアの悲哀とトラブルシュートのコストを長期にわたって食らってこなかった世代は全くピンとこない話だろう。

Leica M6 TTL Millennium NSH Special Edition, Summicron 1:2 50mm


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 個人的なストレージの手間や利用性の限界から、デジタル世界はクラウドがバックアップの要になって続いていくだろうけれど、課金支払いが途絶えたら、保存される保証はないし、数百G単位のデータを、クラウドに残すためにはそれなりの、リスク管理がやはり必要になる。その信頼性とコスト競争がこれから商売になるだろう。今のところ大きな負担はないように見えるが、それも容量次第だ。クラウド空間にだれかが保存維持していてくれてそのための課金もちゃんと支払われているという保証があって初めて残せるし、自分が居なくなった時にその辺り困らないように繋いでおく必要がある。
Leica M3, Super-Angulon M21mm F3.4


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 100年先、モノクロネガなら確実に、プリントだったら保存状況が良ければ、ほとんどコスト0で残せるだろう。長期安定的に銀塩フィルム技術を使ったデジタルコンテンツ保存技術はあるが、これは有名ハリウッド映画など、金になるコンテンツならともかく、個人的利用はありえない。バックアップによる保存作業は普通はプライベートな継代での作業になるわけだから、そちらの方はなんの保証もない。100年後、そんな先に自分の画像なんぞ残ってなくてもいいし、どうせ見られないからどうでもいい、という割り切りも勿論悪いわけではないし、今のこのブログにあげている様な元画像群も、今から曾孫が見てくれたらいいなと想定してるなんてのは、私も含めて大抵の人にはピンとくる感覚ではない。少子化で、こういった資産の継代も価値を見出さないことが寧ろ少数に留まるとも思えない。100年後、自分の骨と、自分の撮影したデジタルデータが消えるリスクとどっちが高いかを考えるところまで行かなくても、この数十年の時間軸の変化でも、政治経済、クラウド管理企業体の存亡とか、いろいろなことが生じる。動的な環境でエネルギーを書けることによるデジタルデータ保存に比べると、フィルムによる保存は、一種の時間凍結タイムカプセルで、どちらのリスクが高いか神のみぞ知るということであって、そしてどちらの道も選択しておくというのも、一つの選択なのだ。
 なんていう話が通じてないツイートもちら見して、「こいつは、デジタルデータの消滅を願っているんだ」みたいなのを読んで、ああ、そう誤解させたのかとも感じた。この部分、やっぱり重要で、データは誰も消えてほしくないわけで描き方に注意すべきであったと思った。
Leica M3, Super-Angulon M21mm F3.4

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 退色がないことから、美術館ではデジタルデータ化による美術品の記録が進んだが、これは美術館スタッフによるバックアップやメディアの更新などを最新の注意で進めて初めて意味があるし、部分消滅レベルだったらちょっと不注意な扱いで、当然リスクは0ではない。そもそも人の手を介してやる作業頻度が上がる方法は、それを専門とする人間が担保されないと、まあ、今風に言えば、全部自己責任で後は知らねー、みたいな話である。
 タッパーに撮影フィムを無造作に放り込んで、屋根裏部屋に、みたいなコストがかからない方法で、家族が誰も興味なくても一定の生存確率が保証される場合とどっちが大丈夫かと思うとこれはなかなか難しい話だが、どっちも愉しめばいいだけだという話として書けばよかったのだろう。私の死後、クラウド空間に画像を残しておくというのも、流出消滅リスクに加え、家族に管理コストを強いるわけで、そこは残される側の選択だろうけど、まあ、残せるのは、数枚の画と思い出程度というぐらいに欲張らなければ何ら問題はないだろう。なんてことをこれだけ写真取ってきた人間としてありえるかっていうのもあるけど、まあ、どっちにしろそれ以降のことは分からない。いろいろ考えると、家族が困らないようにするというだけの話に落ち着く。
Leica M3, Super-Angulon M21mm F3.4


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 自分を人生の危機から救ってくれた人間の一人である、一人の叔母の死を迎えて、少しいろいろ考えてしまった。奇しくも、恩師の一人が亡くなった乳癌の発見の遅れとしての最期だった。
 これらのフィルム写真機材を預かりに上がったその足で、叔母の家に向かった先、最後の別れの会話をすることができた。叔母は、「気がついた時にはね、スキャンかけたら全身に転移していて、本当に星空のようだったよ。」と経緯の説明を冷静に始めた。
 最後に「いろいろ思い出をありがとう。あんたが甥っ子で、とても楽しかった。クッキー焼いてくれたの忘れない。」とも。

 僅かな資金をポケットに入れ、まだ、日本人が海外で活動するなど、ほとんどの人間が考えてなかった頃、外に出て、奇跡的な成功を収めた叔父を支え続けた気丈で気を使いすぎる叔母だったが、最期まで、叔母のままだった。
 その時のフィルム写真は、取り敢えず、残っている。
Leica M6 TTL Millennium NSH Special Edition, Summicron 1:2 50mm


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フィルム終焉のシナリオは以下の要素で述べることができると思った。

①フィルム生産の終焉
 この辺りは、風前の灯のように見えて、現在結構まだ生産されてる なという印象ではある。それでも、パイの極小化にともなって、現像料も含めフィルム関連の値段はじわじわと上がっている。フィルム生産は、ある程度の生産設備が必要なので、ベンチャーで小さな町工場でという訳にはいかないし、昔日のFujifilmのテクノロジー全開で作られたフィルムは、一旦生産終了になったら、テクノロジーと生産工場ごと疎開させて新たに小さな工場で再開するというのはは難しいかもしれない。先進国以外のふぃるむ工場は、かなり枯れた技術で作っていたものを引き継いだりしているとは思う。ポジはネガよりもさらに「大規模な暗室生産ラインや特殊な化学物質などを必要とするため、ある程度の需要が見込めないと生産を継続するのは困難(Wikipedia) 」なので、特殊高級画材のような形で生き残れるか分からない。

②現像インフラの終焉
 数の経済効果が大都市のようには見込めない故、現在フィルム現像が可能なお店は、本当にこちらのような地方都市では限られている。Fujifilmが現像システムのメンテや保守部品の交換が地方都市の小さなDEPでは止まってしまったので(可能であってもおそらくコスト的に引き合わない)、カラーネガ現像が地方都市では無理な状況は秒読みで、ブローニー同様、大都市送りにしてもらうにしても、窓口自体がなく生る可能性がある。直接、福岡やお江戸に送って、引き受けてもらえるかどうかという状況になるのは容易に予想がつく。
 これらは、フィルム生産の終焉の通達と同調がとられるだろう。

③現像・印画資材と機材の終焉
 この中にはネガやポジなどの透過原稿スキャンデバイス生産の終焉も含まれる。とくにブローニーはオプションが少ないので微妙だなと思っているし、トイカメラメーカーが安価なフィルムスキャンを出しているが、それよりは、デジイチに直付できるスライド(フィルム)コピアなら、凝ったデバイスでなくても行けそうだから、最悪自作という道もある。ネガ画像、ソフトはメジャーなものは消えるかもしれないから、これも自作的フリーが頼りになりそう。こういうのは脆弱なソフトだから、OSのアップグレードについていけるかというのも、かなり危うい。結局個人の資産とコスト投下に頼る話になる。
Leica M6 TTL Millennium NSH Special Edition, Summicron 1:2 50mm

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 ときどき委員会などで通過する徳山の煎餅屋さん。目移りがするが、買って帰ると、すぐ家族で食べつくすぐらいで我慢する。
Leica M6 TTL Millennium NSH Special Edition, Summicron 1:2 50mm
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 同、いつも立ち寄るインド料理やさんの青年。とても気さくで、いろいろ話してくれる。
Leica M6 TTL Millennium NSH Special Edition, Summicron 1:2 50mm
 ブローニー判に対応したフィルムスキャナーは、今となっては、そんなに選択肢があるわけではない。EPSONやCanonの上位機種を購入するのが確実だが、ホルガを生産販売している企業関連で、こういうのもある。割りと安いが、スキャンの画質など、このレビューを拝見する限り割りと悪くない模様。

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エーパワー

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Commented by arak_okano at 2015-12-15 17:38
逆襲シリーズに涙します、バグースです。アラックもやりたいのですが、本当に環境が厳しいですね。冷凍室のポジフィルムさん、ご免なさいね。
Commented by complex_cat at 2015-12-17 23:19
arakさん、
フィルムフォトを撮り続けるって,かなり金力と根性がいるなと思いました。
でも、それなりのペースで、頑張ろうと思います。何よりも、画がやっぱりいいわ~と思えるものが、時たま撮れます。
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by complex_cat | 2015-12-12 12:58 | My Tool | Trackback | Comments(2)

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