使役馬とサラブレッドの間
2016年 01月 17日
チャリンコ生活も、1年を超えた。なんにも分からん状態から、まあ余り知識は増えていないが、クロスバイクからシクロクロスまでフレームから組み立てたりして、パーツとメンテナンスの基本の基本ぐらいは理解した。フルサスMTBのショック交換からクロスバイクのディスクブレーキ改造、軽量MTBフレームとロード用カーボンフォークで前後700C/26インチの軽量逆ファニー車作りなどもやった。
一息ついている感じだが、シクロのISISのクランクの調子が悪いので、ISISのBBを交換した。クランクは無事だった。で、同じISISのBBにも種類があることを初めて知った。規格沼・工具沼ってのはあるから、いろいろ手を出さないほうがいいのはわかっているが、中古部品流用だとどうしてもこうなる。TRUVATIVのクランク、シクロクロスやMTB用なのだが、使った限りは悪くないし、Shimanoと規格が違いすぎるのだが、中古が出回ると安いし、オクタリンク的な特性があるので、手を出す。
腐ってもサラブレッドとも言える数十万¥を超えるロードバイクならば、たとえ簡易シェルターがあれど、外置きはありえないし、室内保管があたりまえ。高額なモデルの場合、人によっては雨天走行は冗談で、雨天時にはグレードの低いものを別途購入用意して回す。それも多分室内保管。こちらのJR駅でも有料自転車通車場はまずない状況では生活車にするにしても、使う車両は安旨ワインみたいなのがベストになる。実際、自転車は濡らすとCRCぶっかけようがいろいろなところから錆は進むから、かなり厄介だ。
時々軽い不調を訴えるが、大抵は足に棘が刺さった(パンク)とか、手綱が切れかかってる(ブレーキパッドの摩耗orワイヤーの不調)とか、日本のガラパゴスの一部と批判される向きがあっても、大陸の大量粗悪低価格製品とは一線を引いたタフさで、役目を果たす。デザインや数の利点から、無名大陸輸入商品もピンきりで、安価なものは大抵手を出さない方が無難というのは間違いないけど、フォールディングバイクやルック車(注1)含め、デザイン的多様性については、眼だけは惹くものが有って面白い。
そしてある時、ご主人の長い人生の中途で、くたびれ、錆が浮き、まあこれ以上走らせるの無理かなというところで寿命を終える。あるいは、怪我直せばまだ走れるけど、そこまでケアに金かけないよと決断した主の手許を離れて墓場に向かう。アルミフレームバイクのようにいきなり腐食が来てポッキリとか逝かないクロームモリブデン/鉄製のボディは壊れるべきところしか壊れない。そもそもそんな心配をご主人に想起させるなんてことはさせないのが、主人思いの愛馬の勤めである。シティサイクル偉い。
馬は、サラブレッドの超高額馬でなくても、所有できれば自分など十分幸せで、一頭一頭個性があって、まあ、そういうこと。で、そういう考えかただと、猫と同様、馬も増えるかもしれない。餌は食わないけど、あちこち不調になったりして又中古パーツを当ててみたいな維持管理コストが最低限。
競走馬との生活でも、ブリティッシュスタイルの乗馬でもなく、生活馬カテゴリーで、コストはそんなに掛けないっていう暮らし方はある(かもしれない)。
自分が自転車に求めた方向というのは、以下の自分流の「生活車」の模索であったのだと理解した。
①シティサイクルよりも遥かに高速巡航できて、今の自転車のテクノロジーの恩恵に預かれる。
②「効率化を極めて空気抵抗を減らすバイクウェアを身に纏って」みたいな乗り方ではなく、スーツや普段着で乗る(最低限グローブ&メットは身に付ける)。
③都市の縁石、舗装のつぎはぎ、未舗装路、ちょっとした林道など、多様な道路環境に適応できる。
④金額は、自転車駐車場のない駅前放置など盗難を前提としてとてつもなく高額ではない。高くてもシティサイクルの1.0〜1.5倍程度
注1)ルック車について、自分が最初のMERIDAのクロスバイクを購入した時ピンときていなかったが、自分なりの解釈を書く。
マウンテンバイク(MTB)やクロスバイクの人気に合わせて、デザインを似せたローコスト自転車がかなり販売されるようになった。量販店などで大量に売られて、それに対する評価もネットであふれるようになって、自転車屋さんでも購入を勧めないというのは現状での基本のところ。多くが、ノーメンテナンスで売られている故、調整ができる人間でないと最低限の性能を引き出せないという問題と切り離して考える必要もある。
パーツは廉価なものまで一定のクオリティが保証できてしまうシマノの技術力でなんとかなっている部分もあるが、フレームは明確な自転車メーカーのようなノウハウがなく、強度を確保したうえでの十分な軽量化ができないため、かなり重く仕上がっている。
例えば、メーカー製のものであればクロスバイクで12-13kg、MTBフルサスで今時は14kgを超えなかったりする。Giantが出しているナイナー(29er, 29インチタイヤホイールのこと)の次世代ランドナー(荒れた道を含め自転車にテントなど荷物満載を前提とした長距離ツーリングバイク。ランドナー直系だと'GREAT JOURNEY'ってもっと本格的なモデルもあるが)みたいな、’TOUGHROAD’っていうモデルがあるが、前後キャリア着けて、11.9kgしかない。Shimano製の油圧ディスクブレーキまで付いていて、2016年モデルで140,000円しかしないといえば大げさだがチャリンコに関わっているとそんな感覚になってくる。
ロードでは国際自転車競技連合(UCI)のレギュレーション縛りもあって、最近、EU圏外の新興メーカーは簡単には実績は作れないけれど、チャリンコメーカーの「トヨタ」みたいな売上キングのGIANTでしか出せないだろうなと思う。
因みに、MTBで29インチが26インチを席捲するかと思われたが、戦績が残せず、各社、ワークス、アスリート向きの主力モデルが、両方の特性を出せる27.5インチに移行したため、「大量に余ったのを回してる」わけじゃないだろうとは思うが、チャリを買う段階でもしもこのモデルを知っていたら、購入していたかもしれない。Giantは世帯が大きいため、戦略もトヨタに似てきた。シクロクロスでもグラベルクロスでもなくて、別にロード派生のグラベル寄りの'ANYROAD'とか、大会の存在しない日本では仮想グラベル複合コース適合車の'REVOLT'とか、クロスバイクからMTBスペクトル成分を増やした'GRAVIER'とか、特にクロスロード製品において適応放散的な商品カテゴリー開拓路線である。この’TOUGHROAD’もそういう範疇に入る。傾奇者には魅力的。
一方、ルック車カテゴリーに入れられるのは、平気で16kgを超えていたりする。後ろの変速ギアもスプロケット型ではなく、シティサイクル同様の方式でボスフリー型で、アップグレードを考えたら、ハブ、ホイールごと交換しなければ不可能。ボスフリー型にはかつて8s(速)のものも有ったが、構造的に根本だけでギヤをハブに固定しているので、テンションが強化されているリアディレーラーを含めた構造には8s以上の多段は無理があるので、現状7sどまりだ。7sまでなら、コストがかからないボスフリーで済むので、スプロケットのものは基本的にないと考えた方がいい。故に、現状では、7s以下のものについては基本コストの掛かったコンポーネントの最も安価なものであっても使用されていない。因みに1980〜90年代のオールドモデルだと、現代に繋がるスプロケットでも7sが当たり前ではあった。
そのあたりのコストのかけ方で、その商品の立ち位置がルック車側にあるのかはある程度は見当がつく。勿論コスト下げていてもシマノのパーツであれば、調整次第でそれなりに乗れるものもあるし、コストをおさえていても、大した不安なく移動の道具として使えるものもないわけではない。街の自転車屋さんに持ち込んでも、お手上げに近い瑕疵のあるものは少なくなっているが、それこそ自転車屋さん自身が整備をすること前提で売っているモデルと違って、自己責任ということになる。
また、ホイールは、クイックレバー方式ではなく、大抵ハメ殺し的な構造になっているが、ルック車じゃない信号としてその辺りコストをかけようとしているモデルも中にはある。「ルック車」というのは、見かけ有名メーカーMTB、クロスバイク擬態という意味であるが、確かにデザインだけで売ろうという工夫がいろいろ見られるという意味でも「ルック車」なのだと思う。
納得して乗っている人の自転車をわざわざ腐す必要はないと思っているが、重量、パーツのクオリティや整備性、アップグレードの発展性、耐久性、整備と確率的安全性などについて、値段なりであることに納得できていれば、という但し書きの商品だと考えれば良いのかも。「定価」については、販売価格のお買い得感を出すための設定だったりして、余りあてにならないような気もするので、あくまで販売価格の話。そのグレー領域に入るメーカーチャリもあるから、色々ややこしいが、きいたこともないメーカーのMTB、クロスバイクはあれほど並んでいたホームセンターから消えていったので、訴訟、クレーム等のリスクなどからか、ネット販売はともかく、店舗販売では売る側としての結論は出たのではと感じる。