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Telemetry覚え書き14

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チコにGPSロガーを着けて、彼のホームレンジについてテレメトリ調査をやったのは、かれこれ8年前。当時と今と比べて、GPSモジュールは小型、かつ感度、精度とも相当上がっているというのが、スマホなどを触っていると感じる。しかし、GPSロガーというカテゴリーの製品が良くなったかというと、どうもほとんど当時のキャリーオーバー製品ばかりで、小型でバッテリーライフの長いGPSロガーはあれば便利だと思うが、そういうことはなかったりする。ネットと一体化したスマホのGPS機能が圧倒的となり、GPSモジュールが高性能化してもスマホのように最新のものが搭載された新製品が出なければどうしようもない。スマホと違い、ただのロガーの市場は、スマホと、モニタ付きGPS専用機が安くなったこともあり、8年前にくれべれば、更に小さくなっているはず。
 プロツールとしてのGarminのフィールド用GPSも、スマホかあるいはカーナビライクなインターフェースを意識せざるを得ない状況になっていて、高性能化とともに結果的に使いやすくはなっている。何しろ、最初に買ったGerminのGPSは森林に入った瞬間に衛星をロストして、それから再度衛星を捉えて復帰するまで、ものすごく条件が良くても相当時間がかかった。カーナビもスマホのGPSアプリの使い勝手とともに、コストが落ちてクルマにはカーステ同様標準装備となり、可搬形のものはほぼ市場は絶滅寸前のような気がする。後付の専用機は専用機で必要なので、消えてしまうとやっぱり困る。


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 さて、動物の測地点の集合データは、地図上にプロットしようが、それは単に生データのディスクリプションに等しいものであって、そんでどうした、みたいな話。実際の動物調査においては、専門分野では、それから何を読みとくかというのが、そこからが本当の仕事だけれど、ここでは余りお見せしてこなかった。本のさわりだけ。
 チコとGPSロガーは、今どきのものに比べても、測地点の精度はなんとか使えて、ただ、8時間程度のバッテリーライフのロガーなので、1年以上作動し、衛星回線でデータを収集して自動的に遠隔で切り離して回収できるようなデバイスとは比べるべきもないが、それは、当時は装着する動物に余裕のある中、大型獣用のものが、限界であった。今は、金に糸目をつけなければ、切手一枚レベルのデバイスが存在して、数週間ぐらいは遠隔でデータが得られる。基地局が必要にはなるが。
 ともあれ、実際の動物用GPS機材のデータの収拾と解析の実習として、とても興味深いものであった。 
 測地点間距離は、たとえば5秒ごとにロギングしていれば、ヒュベニの式で近似できる。緯度経度をJGDの直行系座標に変換していれば、もっと単純な計算で二点間距離の近似は可能だ。
 それにより、チコの移動速度が出せる。移動していなければ速度は0km/hrになるからこれを時間軸でプロットしていけばチコの活動パターンを近似したグラフが描ける。チコが夜半に出撃して、翌朝までの簡易なアクトグラムだ。
 深夜0:15過ぎに、10分ほど測地不能になっているが、GPS衛星を完全にロストする直前の座標は、家からかなり遠かった故、これはチコがどこか遮蔽物の陰に潜り込んだ可能性がある。未明4:10過ぎにチコが戻ってきて、義父を叩き起こして腹ごしらえをして家で爆睡してこの期間中も記録が消える。今どきのスマホ内臓のGPSモジュールは、室内に入っても、窓際ギリギリでなくてもそこそこ測地されたりするが、これはロガーのモジュールが旧いことによる限界。もっとも、障害物が多いと、地点誤差は大きくなる。野生動物調査用のロギングは、測地精度レベルが一緒に記録されるので、測地誤差が大きな地点データについては、ソーティングして簡単に排除できる。改めて見直すと、チコが時速70kmで移動していることになっている地点がいくつか混ざっている。チコがバイクやタクシーを拾ったとは思えないので、当然、衛星が数拾えなかったりするなどの異常値で、簡易ロガーでも、移動速度をパラメータ化しておくと、割と簡単にネグることができる。
 チコの深夜活動では、細かくイベントが生じているが、基本狩場に移動する時と帰宅するときに大きく動くだけではなく、深夜にかなりの動きを見せていた。特に、見かけピークの位置ではなく、0移動データがなくなるタイミングを見ていると薄暮型だけでやりくりしていない、放蕩息子の動きがよく分かる。普段から、力いっぱい好きな食べ物食ってる個体だからやれるとも言えるのかも。
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 ホームレンジの質的、量的評価には、カーネル密度推定法がベーシックなものとして有名。チコのこのデータ等、べらぼうにたくさんのデータが得られる場合、利用環境解析と合わせると、Local Convex Hullの方がいろいろ便利みたいなのだが(Rのライブラリーにもちゃんとある!)、カーネル法はなにしろMS-DOS時代から平賀源内が作りましたみたいなアプリが動いていた。私も実はQGIS & Rの導入前に、動いていたのが動かなくなって、慌てて使っていたことがある。その名も「ホームレンジャー ('Homeranger')」だっ!。今でもダウンロードできる。MacでもOS7の時代、HyperCardで動いていたソフトも有った。それ故、基本なパラメータとして、いろいろな動物でいろいろな環境で算出されたデータがたくさんあって、参考、比較には便利だったりする。
 ちなみに、このクラスのロガーだと、チコの「しらみつぶしセンサス」の結果もあるのだが、緯度の精度と経度の精度がかなり違っていたりするのが、点の並びから分かる。
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 カーネル密度推定法は、それなりに役に立つが、GISソフトに今では結果的に、標準化されてなかったりするので、ちょっとだけノウハウが必要になる。実はGIS分野のオープンソース・ソフトウェアのQGISでもVer 1.4〜1.7ぐらいの時にはサードパーティーのリポジトリにあるプラグインにホームレンジのカーネル描画するものが存在していたが、リンク先にもあるように今はまともにサポートされて動くものがない。かなり前に見限って、Rがホームレンジ解析専用のライブラリーも充足している故、スクリプト組むことになってる。私もその口。ちなみにカーネルをグラデーションコンターで描画させると、ピーク地点周辺は色の変化が激しくて分かりやすいが、値が低いところでのグラデーションがほとんど似たような色になってしまうので、結局、99%、95%、90%の信頼限界は、線描画を入れないとさっぱり分からない。それが、これ。R便利だよR。



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 QGISのGeoreferencerを使うか、shapeファイル出力させてて、再度、GIS上にカーネルを載っけるために、こんなパッチパターンで描画出力するというのも可能。チコが一晩猫らしく頑張った足跡と数千円のGPSロガーのおかげで、学生実習レベルだとそれなりに使えるのじゃないかと思ったりする。
 それぞれの面積も、スクリプトの流れで簡単に引っ張り出せるから描画と同時に計算も終わってる。

area of homerange (99%) = 0.8835598
area of homerange (95%) = 0.5688469
area of homerange (90%) = 0.4047420
area of homerange (50%) = 0.07911848

 チコの一晩の行動エリアは、99%限界エリアで、当時の彼の年間ホームレンジの約1/4程度の0.88ha。今は、引退興行みたいな感じになっているから、かなり縮小している。

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 でかけた猫が何をしているかGPSロガーを首輪につける行為は以前から結構見るが、ロガーの動物への装着は、どれくらいトラブルにならないように考えているかは重要だ。私もチコにつけたのはデバイスの大きさや性能が、かろうじて及第点みたいなレベルであったので、それほどは使っていない。野生動物に対しての市販のGPSロガーの使い道は、バッテリーライフも含め性能が中途半端なので、あまりないことも確か。バッテリーライフの延長だけではなく回収用ビーコンと遠隔操作による脱着システムがインストールされていないと、飼猫のように毎日脱着させてもらえるわけではないので、使いようがない。データ収集と解析の演習用ぐらいで考えるのがいいところだが、野生動物につけて頑張って再捕獲、回収をやっている学生さんもおられるのも分かっている。
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 当然、装着された個体の負担になるし、ぶらぶらさせていてどこかに引っかれば当然事故も予想されるが、あんた、そういったこと、一切考えてないだろみたいな装着方法のものも結構目につく。素人の遊びは、生き物の命を奪う事故と直結するなら余りホメたことではない。彼らが分野の研究者がどれだけ神経質に装着方法を練ってきたか知るはずもないので、難しいところではある。でも想像力の問題だと思うぞ。
 後、これとは違うが動物に装着するライブカメラの流れがあるが、当然、猫につけた場合、周辺の盗撮になるので、住宅地周辺ではやらない常識も必要だろう。このことについては、猫サイズの動物でも装着できて使い物になるレベルのライブカメラデバイスとなると、流石に一般的ではないので、あまりトラブルにはなっていないようだが。

追記ー流石に今は、かなり小型のアクションカメラで猫にも十分つけられるものが出てきているが、バックヤードが広く、住宅も土地がゆったりしていて空間的に、ピーピングになりにくいような海外の事例は良いかなと思っている。この子とかニャオニャオ鳴きもカカカ鳴きも、ババ堀りもいろいろみせてくれる

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4年前のチコ。このロガーは小さくてよいのだけれど、データ読み取りとそのマネージメントがいまいちって云うところ。ちょっと設計が古すぎるのだよね。





Commented by nezumineko at 2016-06-06 22:29
ウチの黒ネコにも装備してみたい。
外には出しませんが、狭い家の中でも行方不明になります。
Commented by complex_cat at 2016-06-07 06:31
> nezuminekoさん
LOC8TOR でショッピング検索してみてください。
ロガーは後で、どこにいたかが分かるのと、室内でのロガーによるGPS測地はあまり期待しないほうが良いと思いますので。
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by complex_cat | 2016-06-05 17:13 | Cat Family | Trackback | Comments(2)

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