ハチノスツヅリガ
2005年 04月 25日



お隣さんとお話ししていると,苺が成っても成っても全部ヒヨドリに食べられてしまって,一個も口に入っていないと云うことです。こんな低いところで食いたい放題やっているヒヨドリもかなり偉そうです。ウチの子に,見張り番させましょうか? 多分当てになりませんけどと私。
ウチのサクランボも,去年,収穫できたのは,たったの1個(!)でした。今年は,全部袋でもかけようかと思ったり。ちゃんと農作物を収穫することを考えると,実際害虫や鳥獣による被害との戦いになるのだということですね。
Nさんからお話を伺ってみると,二年間蜂の巣に手を入れずに,層板がもの凄く発達したところで蜜を採るつもりだったそうで,その方が,蜂蜜はどっさり採れる気がすると仰います。定位置での養蜂ですので,このようなパラサイトが入り込む確率は高くなるだろうと思われます。今年は,分けて貰おうと目論んでいたのに,あぁ惜しかったなぁ。こいつらの防除方法は,公式には認められていないけれども,ミツバチ,人に無害のウィルスを使う方法,バクテリアとそいつが生産した有毒タンパク結晶体とのミクスチャー(いわゆるBT剤と呼ばれるらしいです)を蜜蝋に染みこませて致死感染で全滅させる方法などがあるようですが,市販のBT剤はこいつらには聴きにくいと云うことです(吉田,1981)。ただ,文献が古いので,現在ではもう少し良いものが出ている可能性もありますね。文献には,最後に,細心の管理に勝る防除方法はないとも書いてありました。
因みにBT剤が何の略かというと,この有名なバクテリア昆虫病原菌の一種である Bacillus thuringiensisから来ております。実はBacillus thuringiensisの遺伝子はδ(デルタ)エンドトキシンという特定の殺虫タンパク質を生み出す性質がありまして,この殺虫タンパク質を生産する遺伝子を組み込んだ作物としてトウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、ワタなどが実用化されていることは以前のアーティクルで触れました。Bacillus 属と言えば納豆菌Bacillus nattoも同じ仲間の枯草菌,そのタフな仲間はこういう使われ方もしているのかと思ったら,これがいわゆる遺伝子組み換え作物のコアに当たる生物でした。
バイテク関連のWebによれば,「このBt遺伝子を農作物に組み込むことで農作物を害虫から守り、農薬・殺虫剤の使用量が削減され、収穫量を増やすことができる。また、穀物を汚染することで問題になっている毒性のカビ菌を大幅に減少させるという利点がある。 」だそうです。
まぁそうでしょう。しかしそこの場所にはないか余り存在していない培養バクテリアをまき散らすことは,遺伝子操作作物を植えること並に生態系保護にとっては控えめに言って注意が必要,はっきり言えば,やめんかい!ということになります。生産農家にとっては害虫の問題は切実ですし,兼業農家レベルの作付けでもないNさんの畑は,まぁ極論すれば実際は趣味の畑,趣味のミツバチであるのですが(失礼),Nさんに話そうかどうしようかちょっと迷っております。
一番良いのは,周辺の畑から,土着昆虫病原菌を釣ってきて分離・培養してこいつの検濁液を蜜蝋に染みこませておくことです,なんてそんな面倒くさいこと,いや現実にそのタイプの菌が連れるかどうかも分からないことを農家にやってねと平気で言える消費者は居ないですよね。

二ヶ月前にご紹介したハチノスツヅリガですが,お隣のミツバチの巣箱の11箱の内,8箱が,エイリアンに襲われた宇宙船のように,ねばねばの糸が張り巡らされ,巨大な繭の塊が出来,あちこち蜜毎巣を食い荒らされておりました。... more