猛禽類の識別は、門外が習得するまでには、専門家に付いてしつこく教わらないとハードルが高いが、ミサゴはその腹部と翼の下面の特徴的な白い羽毛とダイビングによる魚食採餌行動で、すぐに分かるようになる。 白い部分の多い、美しい「鷹」だが、一般的なワシ・タカの猛禽類とはかなり分類群が遠いようで、独自のミサゴ科に分類される。ミサゴ属ミサゴ Pandion haliaetusには4亜種が居て、南半球オーストラリアとタスマニアに生息する P.h. cristatus VIEILLOT, 1816については、別種扱いにする解釈もあるようだが、分布の広い世界種で、1種というのは、魚食いに特化した「鷹」のスタイルが、それほどニッチェがなく、得意な種のみが脚からのダイビングによる採餌に適応できた結果なのか。何れにせよ、「鷹」としてやっていることはかなり変わっている。 コウモリにもウオクイコウモリという魚食専門の種がいるが、鋭いくちばしで急降下したり、槍を差し込むみたいに捕食するスタイルではない魚捕りは、かなり特殊な解法となって、そんなにゾロゾロやるタイプの種が出てくるようには思えない。
わかりやすい「漁師鷹」だから、鳥屋ではない、動物行動屋にとっては贔屓したくなる鷹でもある。
日本語のミサゴは語源が「水探り」あたりからきているとか、採餌ダイビングの音から「ピシャゴ」みたいな諸説があるが、まあ、わかりやすい。ただ、英語名の'osprey'については、14世紀の古フランス語辺りに語源を求める説明があるが、何やらよくわからなかった。'fishing hawk'、'see-eagle'など色々呼ばれたりもするけど、なんとか鷹/鷲と呼ばれずに独自の1 wordを当てられているのは、何か理由があるのだろう。
空を見上げれば、大抵、逆光になるので、こいつを撮る場合、それなりに光線状態を選ばないと、美しい羽毛は撮れないが、まあ、あんまり気にしない。
上手いこと、獲物の魚ゲットしたところの画像は沢山ある。距離が遠かったのでトリミングしているため、細密感のない画。
日本沿岸で、
採餌環境(河川から浅海)と営巣環境(それなりの樹高、直径のある樹木山林、崖地)が両方とも揃ってないと彼等は暮らしていけないのだが、冬季には西日本に移動してくる個体も多く、カツオドリと同じ湾内のポイントを採餌場所として選んでいるのが面白い。
で、カツオドリは、あの独自のダイビングスタイルで採餌をするわけだが、それ故凄まじい距離移動して、彼等のダイブする水深(それほど深くはない)にめちゃめちゃ魚群が湧いているような場所に到達しなければならない。そしてまた戻ってくる、移動能力が高いから可能なのだ。それでも、
スウェーデンーアフリカのモザンビーク間の10,000km以上を移動する個体群が居たりする。 ただ、元々ボリュームのある大海を超えていくような種ではなく、沿岸部を移動している模様。太陽コンパスはともかく、磁気ロケーションは使ってないのではないかという分析結果が出ていることもそれを裏付けているようだ。
鷲爪からダイブする方法は、浅いところに獲物が居ないとどうしようもないのだが、嘴から突っ込んでいくスタイルに比べて、逆に浅瀬や河川でも上空からダイビング採餌が出来るという利点はある。その為、逆に採餌領域は広くはないだろう。それ故、採餌場所が重なったのかもしれない。
猛禽らしく一夫一妻型だが、稀に一夫多妻型も確認されているが、鳥類のmonogamyってそんなものである。それ故、paternity(父性、配偶者の産んだ仔が、自分の遺伝子を持っていること)を保証するために、雄の交尾回数や交尾タイミングはそのような戦略をとっているというデータもある。これも、メス側の受精確実性を上げるなどの利益もあるので(営巣投資はかなりしている上に、スニーカーが簡単に接近するようなテリトリアリティは持たない。カモ類のように強制交尾が存在する生殖器を持たない)、paternityのみからの説明にこだわらなくても良いのかもしれない。
画像は過去のものからも合せてある。以下が関連エントリ。