ジネズミ
2005年 05月 12日
先頭の仔が親の尾を銜え,その仔の尾を次の子が次々と銜えて数珠繋ぎ状態になり,俗に言う「キャラバン」というフォーメーションを採って,親子で移動します。だからロードキル(車両轢死)を見つけると,複数の幼獣がまとめて轢かれている場合が結構あります。
今回は,チコベェや公陳が捕ってきたわけではないです。(追記ーチコのエモノは小さいのは生きたまま持って帰ってきますが,この個体も生きてます!)
ジネズミやトガリネズミなどの食虫類は,最も原始的な哺乳類の性質を残しているユニークで興味深いグループです。
通常,両性爬虫類以下の分類群には,毒を持つ種が結構多いわけですが,哺乳類にはほとんどありません。これの理由については,私は一つのアイディアを持っており後述します。その毒を持つ哺乳類には,いわゆる単孔類に属するカモノハシ(雄の後ろ足の爪に毒腺)と,この食虫類に属するブラリナトガリネズミがおります。
第一に,哺乳類だからでしょう。答えになってませんね。
お母さんのおっパイを吸うのに,毒腺を仕込んだ牙を持たせるわけにはいかないでしょう。だから,もしも毒牙を持ったとしても,最初からそれが機能したら大変です。毒牙の発達タイミングを間違えれば,下手すると親子で心中になります。これは,進化的に毒牙を持ちにくいということになると思います。だから,より母子間がドライで相互グルーミングなんてのもやるような社会性もなく,授乳期間が僅かで,成長が早い小さな動物しかこういう物騒なものを装備するリスクを犯せなくなります。
毒牙というものを持たなかったために,これは,基本的に捕食を行う肉食目の話になりますが,高度なハンティング,更にそれを可能にする複雑な脳を発達させることが出来たのだと思います。いや,原因と結果が逆かも知れないけれど。
そういった意味で,毒腺を仕込んでいる僅かな種類のうち,口に毒腺を持っているのは1種だけ(これは,stochinaiさんのエントリで間違いだということが分かりました。いずれにしても,超マイナーというのは間違いなさそう。)というのは,とても分かりやすい結果だと思います。
二つ目は,毒の性質が消化酵素から転じたものが多いのですが,最適な細胞破壊作用が生じる適性温度の問題があるかも知れません。哺乳類は恒温動物ですから,このとりあえず体温下で死活しない毒を持つ必要があります。これが相手に注入された場合,当然,温度環境は変化しますが,どういった場合でも,活性を持たなければなりません。これは哺乳留の体内ではなかなか再現不能です。変温動物は,結果的に熱くなったり冷えたりしますから,相手の体内で死活しないような毒液を調整進化させるには,自分の体内の実験室でシミュレーションが可能です。哺乳類の場合は,基本的には温度が低下すると思われますが,そういった特性の酵素群や細胞破壊因子を進化させるのは少し面倒です。そのために,毒を持つような生物が少ないという可能性があります…なんて話を考えました。
以上,2チャンネルなどに問題提起がありましたが,まともな解答や説明を見つけられなかったので,凄く気になって気になって,とりあえず自分で考えたお話です。検証自体は出来ておりません。
ジネズミのあまりの可愛さに思わず書き込みさせていただきました。
親子で連なっている姿(キャラバンと呼ぶのですね)想像するだけで、ちょっと幸せです。
蛇類ではこれに関連して,筋力アスリート型と化学武装型にはトレードオフの関係があって,ハブも毒を持たないで高速で強力な筋肉を持つ無毒のアカマタに仕留められます。このあたりの話も面白いと思います。
あと本文中の「一種だけ」という部分は,今回の件で私の間違いということが分かりました。訂正せねば。
こちらこそ,エントリの題材に出来る知見を有り難うございました。