Unbreakable

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以前チャンチンモドキ(別名「カナメノキ」)についてのエントリを上げたことが有る。ウルシ科のとても不思議な植物だ。故人となられた堀田満先生の世界有用植物事典によれば、まずインドから中国南部に割と広く分布しているが、日本では西日本、それも天草、鹿児島県北部と分布が局所になっている。材は、今時、針葉樹以外金にならない雑木だと思っている人も少しは減ったと思ってはいるが、赤褐色の環孔材で、比重は重すぎず軽すぎずで加工に向いていて、椅子など家具向きとされている。樹高30mにも達するので、有用材が取れるということで、今のようなスギ・ヒノキの針葉樹一辺倒のプランテーション的な林業世界以前では重用されたろうと思う。
 現在、環境省RDB対象種で、その極端な分布域の局在化みたいなのも判断に寄与していると思うが、かなり人為分布的な匂いもする。
 アカネズミを実験飼育していたときに、この不思議な5つのピットのある実を試しに与えてみたが、全く興味を示さなかった。昆虫食も大好きだが、種子食者としてのスペシャリストがかじりもしないというのも驚きだが、一方、この樹種に興味が湧いたのは、これをシカがドングリ同様、冬の食料にしているという話を聞いたからだ。この強固さを知ると、噛み砕いているとは思えにくいのだが、ならば丸呑みで、粗繊維消化能力に依存した食べ方とはやっぱりちょっと考えにくい。実際に、シカのこの種子に対する採餌行動を見ていないのでなんとも言えない。
 実は、シカが食べているという話を聞いて叩いて簡単に割れると思ってペンチ、ハンマーなどを試したのだが、凹みも付けられないという状況にかなり驚いたのだ。発芽時もこの種皮が割れることはなく、ピットの一つから発根、葉芽も出てくるということなので、相当に丈夫なのだろうということはわかった。で、慎重に電動ノコギリでクロスとサジタルに切ってみた。実際検索すると同じような画が乗っているサイトも有るが、やっぱり自分で見て確かめたかった。
 構造的な強靭さは特にクロスに切ってみれば一目瞭然で、その種皮の分厚さとともに、詰まったハニカムみたいにも見えるその構造は、むしろペンチなど受け付けない強固さは当たり前という特徴を持っていた。ハンマーで叩いても、金属台座の上で無いと、下に置いているものが凹んでしまう。

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 ここ10年ぐらい動き回って、何箇所か個体を見つけているが、重力散布種子だということも有って、そんなに広がっていかないと思っているが、まとまった群落になっている場所が鹿児島北部にはある。尤もあまり動物が喜んで食べそうにないようなものでも(例えばアブラギリの実)、利用する動物種がいたりする。鳥類については貯食行動でかなり分散距離を伸ばせるので、意外と広がっていくものもある。

世界有用植物事典

堀田 満(編集),新田 あや(編集),柳 宗民(編集),緒方 健(編集),星川 清親(編集),山崎 耕宇(編集)/平凡社

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ちなみにこの本は、雑草雑木がなんの役に立つんですかみたいな行政官の不用意な言葉が堀田先生の怒り、まあ、モチベーションにもなっていたような気がしている。むしろ、ほら、こんなに役に立つんだから、普通種だろうがなんだろうが全部きちんと保護してね、みたいな返歌であって、生物多様性保護概念の結晶みたいな本である。もちろん役に立つから残すというそういう理屈に乗ってあげただけで、なにも学術的に価値がある=研究者にとってのみ価値があるみたいな勘違い是正をするより、堀田先生にとっては明確な戦い方ではあったかなと思う。ちなみに、研究者も、(現在までの所、自分には)研究的価値が見い出せからどうでもいいと切り捨てることも、一種の間違いでは有るというメタ批判から逃れることはできない。
 環境省生物多様性センターのパネル展示でもそうだが、マテリアルとして人類に有用だから大切だみたいな誘導だと、生態系維持構成要素として保全視点は皆無であり、それははっきり言って間違っている。
 ちなみに、うっかりアマポチを想定してなのか、リンク先は詐欺まがいの高額を設定している業者?もふくまれているので、注意しましょう。『¥974,809 より』とか酷いものである。

追記ーブックマートコメントを頂いて私もいろいろ知見が増えたのだが、チャンチンモドキは重要な食用樹種でもあるようだ。
”ヒマラヤ登山の、トレッカー達はすぐれたエネルギー源としてチャンチンモドキの甘いお菓子を持っていくことが少なくない。そのため「トレッカーズキャンディー」という名がついた。旅人達はまた、乾燥され粉にされた皮が、いろいろな料理に酸味を加えるトッピングとして使われるという、この果実の別の使い方をカトマンズのホテルやレストランで発見するだろう”

”ネパールで知られる「チャンチンモドキ(lapsi)」の甘くてすっぱいお話しは、さまざまな用途の果樹の話である。新鮮な果実から、ピクルス、木材、「トレッカーズキャンディー」、そして種子から得られるある種の燃料まで様々な生産物の原料となる。”
 全く知らなかったのだが、ネパールではチャンチンモドキはその果肉を用いたお菓子(lapsi)の原料として有名で、”多くの世帯は自分達の土地でチャンチンモドキを育て、果実の販売を主な定期的な現金収入源の一つにしている”そうだ(引用は森の恵み:アジアの食べ物、香辛料、工芸品と樹脂」チトラリ・ロペス&パトリシア・シャンレイ編 藤間 剛・太田誠一・福島万紀監訳

 ずいぶん大きな種なので、種子食視点でしか目が向いていなかったが、次回、機会があれば、果肉が付いている状態の実を手に入れねばならないなと思った。






第2回プラチナブロガーコンテスト



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Commented by umi_bari at 2018-01-08 18:20
すいません、アラックには難し過ぎる話でした。
御免なさい。
Commented by complex_cat at 2018-01-09 22:45
アラックさん、感想ありがとうございます。
もう少し分かりやすく書く努力をいたします。
読んでくださってありがとう。感謝します。
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by complex_cat | 2018-01-08 15:43 | Wonderful Life | Trackback | Comments(2)

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