チコの状態をチェックしにやってきているカラスが現れるようになって、このまま放置はまずいなと思った。そこで、ちょっと実験をした。
チコの状態というのは、カラス自身がチコを襲ってもチコが反撃できるのかどうかという意味だ。物騒な話だが、そう疑う状況がいくつかあった。一番顕著だったのは、ある日から数日間、チコがものすごく警戒して、ゲートより先に出ていかなくなったのだ。偉丈夫で、去勢猫にもかかわらず、近所の猫を従えるほど、武闘派で、更に、GPSロギングによると数ヘクタールのテリトリーを持ち、あちこち駆けずり回っていた彼も、今は引退興行をたまにする老探偵みたいな日々を送っている。ハイエナのように集団で採餌する猛禽とも言うべきカラスによるフィジカルなアタックに対しては、若い頃のようには行かないだろう。チコのコンディションの変化を見切る能力はカラスにはある。日々、あらゆる場所で採餌機会をカラスは冷静に観察している。
これは被害妄想でも何でもなくて、一度、チコの体調が落ちた時に彼が温水器の上で寝ていたところ、1mぐらいのところの壁にカラスが体当たりしてものすごい大きな音をたてて威嚇してきた。私はその場にいなかったがおそらくチコの反応を見ていのだと思う。その時点で彼らが襲えると判断したら、彼らにとって、最悪の場合、チコは数キロの肉の塊と同じになっていたかもしれない。チコは野外での様々な対処を知る猫だが、カラスが停まっていたお向かいのアンテナ方向への警戒レベルを異常に上げていたのに私もワイフも気がついた。
子猫ではない成猫となると流石に襲撃が生じるまでにはかなりのプロセスと条件があるので、反撃能力が落ちているとはいえ、チコが襲われるまでのハードルは決して低くない。まあ、通常なら起きないだろうと思うが、怪我を負わせられるレベルも含めリスクの芽は早めに摘んでおこうと思ったわけだ。
子猫がカラスに襲われて目を潰され舌を引き出される、みたいな状況は、SNSを見ると結構見るが、これは実際には一朝一夕では生じない。周辺にとどまるのが常態化するほど、意図せぬ給餌が予め存在し、そこに餌資源としての一定の利得があると判断されるだけの相当段階的な学習機会があったことを示している。
我が家を合わせて4軒で管理しているゴミステーションは、成立当初、やられていたが、今はきっちり管理が行き届き、ディフェンスされていて荒らすことができないし、ここ2年はテープを張ることで、お向かいの軒にかけられたツバメの巣も襲われることがなくなった。被害対策は、そのまま資源利用遮断になるのは、有害鳥獣対策の基本でもある。その上、今回、彼らのデータベースにはリスクの高い『スナイパー』として登録されているパターンの人間が現れれば、カラスにとっては、多分魅力のない場所になってくれてないかなって思っている。現状、捕獲はできないから、これが対策としては限界だが、他にもっと魅力的な場所があれば、少しでもリスクがかかり、嫌なことを経験した場所はカラスの採餌のための周回ポイントから外してもらえる可能性がある。
ユッチとチコが庭に出たときカラスたちはそれぞれ仲間に信号を送っている。その声で、私は5:00頃に外に飛び出したのだが、彼らのアラームコール、警戒信号でもあると思うが、集団化はバーンド・ハインリッチの示した採餌効率を上げるための前哨戦ともなりえる。つまりライバルである仲間を呼び寄せれば餌の取り分が減るのになぜ仲間を集めるのかという疑問に対して、ハインリッチは、集団で獲物を漁れば解体も容易で、採餌処理時間も短縮できるという解答を観察から導き出した。
結果として、照準で捉えるかというタイミングで、件のカラスたちは見事に反応して逃げた。銃を知っている個体が混ざってる。カラス怖いではなくて、彼らも必死になってアセスメントしながら、利得の高い場所を確保、周回して餌にありついている。人間社会との関係で、不幸な関係は生じないように、人間側が気をつけるしかない。
さて実験と言ったけれど、簡単な作業で、実際のところ鳥獣被害対策用の追い上げ用の銃(おもちゃ)を持ち出して照準を決めただけだ。無論、バックストップもないし威嚇でも撃つことはない。そもそも電動のトイガンとは言え、野生動物を好き勝手に撃つこと自体が禁則行為だ。勝手な害鳥判断で、殺傷能力がなくてもトイガンで鳥獣を撃つのは、明確な鳥獣対策として確立した方法として研究者や行政指導のもと、住民合意の上で鳥獣被害対策として行われない限り、通報案件だということを記しておく。
ちなみに、一時期話題になった高校生鷹匠にしろ、追い払いは戦略なければ広い地域で見たら効果は0である。つまり対象の利用資源を削って生存率と繁殖による増加率を下げ、個体群を小さくするという効果を目指さなければあまり意味はない。最近はドローンを応用する方法にコミットする人達がいるが、追い払ったら成功みたいなレベルだと、その先の運用効果はほとんど白紙に近い。慣れや動物側の対応方法が生じない形で、継続的に人為資源アプローチへの手段を奪うというような明確な効果がなければ、少々追い払いが上手く行っていようが、その効果は全て一過性。分野素人の思い付きの作業に分野素人のメディアは喜んで取材するかもしれないけれど、他の場所に移動して単純に餌場が移るだけであれば、加害メタ個体群が減少していくようなことはないだろう。
この地域にカラスが集まってきているのは、住宅地内、あちこち新旧住民の軋轢のあるところでの生ごみの不始末と1㎞圏内にロードキルや釣り人の餌や雑魚放置等経年採餌場所が点在するから。後、自分の畑に生ごみ捨ててる人もいる。カラスの周回ポイント化。マナーアップで餌は減少傾向のはずだが微妙ではある。実際、集合住宅の学生さんや、ゴミステーション清掃係をやったことも存在も知らない人のゴミ出しマナーは、どうしても抜けがあって、選別からやり直して、尻拭いをするはめになったりするのだが、最近は大分良くなった。
ロードキル動物は、タヌキ、イタチ、テン、アナグマ、ノネコなど。カラスが5,6羽集まっているところに行くと、ほとんどスキンだけにになっている。仲間を集めると採餌量はそれほど減らさず、効果的に解体、採餌処理時間が短縮できる。これもハインリッチが書いている。メイヤーの弟子にして、ウルトラマラソンマスターズ部門レコード保持者、虫の体温を測りまくった人が(彼については
過去エントリーで触れたことがある)。
カラスは高度知能を有するので、状況やリスクを深読みしてくれる場合がある。捕獲対応できているイノシシが杭を一本立てただけで襲っていた圃場から離れてくれるのに似ている。他の場所に行くだけだが。春には何年もやられてきたツバメの巣の防衛にご近所が成功していたし魅力のない餌場化は重要。
話を戻すが、チコに対して威嚇によるアセスをカラスが敢行するシーンをワイフが確認していなかったら、私も彼らの鳴き交わしは猫を警戒してのことだと思っていた。でも、そもそも警戒してまでここに居る理由としては、餌を探索しつつ、チコにちょっかいを掛けて襲うくらい弱っている可能性あらば、餌にできるかもぐらいのことは考えている結果だと思う。動物の分布状態をタイムラプスしてカーネル化すると、狩猟圧や天敵等の脅威がないこととと資源(餌、配偶性)の分布の二つでほぼ説明できたりする。畑への生ゴミの投棄は各自ご自身の土地だから止められないが、きっちり埋めてないと彼らを誘導することになる場合もある。カラスがいろいろなところで増えてしまっていても、そこまで気を使う人は少ない。
チコと自動小銃の電動トイガン。一応R18指定がつく分、少し強力。至近距離だとレースのカーテンなどきれいに撃ち抜く威力があるから注意が必要だ。環境分解性のBB弾は、バレットのような形状でもないしライフル回転はしないで飛んでいくから、20m先では空気抵抗でほとんど威力を失う。だから、まあ、脅しとして使える限界距離は短い。怪我をさせずに、痛みだけで引いてもらう方法が、サルの被害対策では使われるが、別に追い払って終わりではなく、防除柵やモンキードッグなどと組み合わせて総合的に人為資源利用をさせないように加害個体群を縮小、兵糧攻めするためだ。そのあたり理解していない人が、明後日の記事を書いたり、間違った運用をする場合もあるが、分野の関係者ではとっくに共有されている話ではある。その場合、火薬量を落とした装薬銃を使う人もいる。装薬銃の火薬量を落とした弾丸が必要だったり、半矢にできないので、かなりの経験者、プロの仕事になる。
このモデルガンは有害鳥獣対策、特に猿の追い上げに限ってよく使われてる機種の中では気に入っている。ずっしり重いが、銃床を畳んで格納すればコンパクトで、野外戦、建物の中、振り回すに便利な突撃銃としてよくできている本物の設計通り。ライトなサバイバルゲームにもわりと使われているのじゃないだろうか。
鳥獣対策分野はいろいろな人が参入してきて、そもそもなぜ追い上げするのか被害減少の道筋となる利用資源遮断からのポピュレーション減少と人為資源採餌スキルの低下を求める兵糧攻めがその目的だという作業機序がわからない人もいたりするが、きっちり理解した上で二機振り回す強者の農家のおばあちゃんもいる。やれ女子高生鷹匠だ、ドローンだみたいな騒ぎは、実はちょっと食傷気味になるのは、メディアが取材するときこのあたりをちゃんと理解していないからに他ならない。
分野の専門書にも写真が載っていて、多くの人はそんなことは知らないわけで、「あ、イラストやさんで見ました」って言ってきたりする。おっと、最近は
いい画像も紹介されている。私の持つ東京マルイ製のH&K MP5A5 HGはリーズナブルなようで、同じものを構えている方もおられるようだ。