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給水行動

給水行動_b0060239_10564737.jpg

奄美大島,前のアーティクルでご紹介した,金作原に行く途中の荒れ地で見た,アオスジとミヤマカラスアゲハの吸水行動です。

給水行動_b0060239_10571534.jpgこちらは,イシガケチョウのそれです。今の時期,車に撥ねまくられているのは,ほとんどこの蝶です。蝶のロードキルというのは,余りみんな気にしないのですが,個体を追っかけてデータを取っている研究者にとっては,人一人が撥ねられたのと同じとは申しませんが,話を聞く限りでは個体がクルマに跳ねられたショックは決して小さくはありません。私も泣くかも知れませんね。

給水行動_b0060239_17552678.jpgモンキアゲハ。止まっている場所に水はありませんが,水たまりの直ぐ横です。人工給餌でごまかすのではなく,自然状態で口吻を伸ばしたところの画が欲しいですね。こういったところで,蝶の多いところで,立ちションをすると蝶が集まってくることは,昔から男の子には,少なからず経験のある方が居られて,知られている話です。曰く,泡盛を飲んで出した尿は集まりが良いとか,いろいろあります。くれぐれも,市街地で真似する場合は自己責任でお願いします。このブログ読んでなんて言わないように。
 で,今は,この蝶の吸水行動については,最近では,採水目的ではなく,ナトリウム摂取行動であるということが知られております。




給水行動_b0060239_1058277.jpg筑波大の上久保真理さんのナミアゲハを用いた仕事(pdfファイルをダウンロードしてしまいますのでここのクリック注意)で興味深いのは,
蒸留水(0.000M以下),0.001M, 0.01M, 0.1M, 1Mのナトリウム水溶液を与えた実験の結果,
1) ナミアゲハは0.1Mのナトリウム水溶液を最も好むという野外から示唆されていた濃度選好性を実験的に証明した。
2) 精包の重さは0.01Mで最も大きく,それ以上でもそれ以下でも減少する傾向が示された。
3) 精包が大きくなると,雌の体内に注入する時間が長くなる。一方で雄自身が精包増大に伴い,少しは雌への注入速度を大きくすることが出来るが,結果的に最も注入効率が高いものは0.01Mを摂取した場合の値となった。

 交尾時間が延長すると,無様にお尻をくっつけてもつれ飛ぶ時間が延長するわけで,その結果天敵に襲われるリスクが増大します。蝶の雌は,複数の雄と多数回交尾をするのですが,雄にとって見れば,自分が交尾した後,他の雄と交尾する回数を少なくすることが,自分自身の遺伝子を持った子供をより沢山産んでくれるための戦略となります。
 一方で,交尾時間の延長に対する捕食リスクの増加と,大きな精包を注入されてしまった雌が,次の雄と交尾するまでの時間の遅延効果との関数で,雄が好んで吸水するナトリウム溶液の濃度が決まってくるのかなぁとこのお仕事の要旨を見て考えたりします。

 授精を巡る競争はsperm competitionと呼ばれ,一般には精子間競争と訳されています。本来は,雄同士の自分の遺伝子を持った次世代を生産する競争において,授精のタイミングという特異な最期の最期の土俵の上で繰り広げられる競争のお話だと思っております。そういう意味では,ある雄の個体から注入された精子レースのような精子間闘争とは全く意味が異なりますので,私には「精子間競争」の訳語があまりに知恵がないような気がしてしまいます。「授精を巡る競争」というのは,私自身の勝手な訳語です。
 一般に専門のテキストを読んでいると例えば‘mating’という語も,配偶者獲得から交尾そのものを意味するような表現として使われていたりするので,紋切り型の専門用語訳だと,分野外やビギナー学徒の方は誤解するだろうなぁと思ったりします。
 一時期は,学会でスパコン,スパコンと騒がしく,分野ではsuper computerではなく,今も昔もスパコンといえば,こっちを意味します。
 ご紹介した研究は,スパコンの中でも生理生態的な蝶の生理特性と行動を結びつけた素敵な仕事だと思いました。うん,楽しいです。
Commented by aperture at 2005-06-03 18:06
アオスジアゲハは青條揚翅蝶、ミヤマカラスアゲハは深山烏揚翅蝶と表記するそうですが、蝶の和名は味わいがありますね。イシガケチョウ(石崖蝶)は三重、和歌山以南に分布と図鑑にありますが、この奇怪なデザインの翅を一度見てみたいものです。奄美大島や八重山諸島で見ることができるそうですが。
Commented by complex_cat at 2005-06-03 18:18
apertureさん,コメント有り難うございます。
 生物種名はカタカナ表記に統一されてしまいましたが,これは,何故そのよう名前で呼ばれているのかという部分の情報が欠損しますね。二本獺なんて,漢字の書き取りみたいになって大変なので,カタカナ表示は楽なのですが,例えば三斑鶉と書けば斑が三つ入った鶉なんだと分かりますが,ミフウズラなんて,ミフーズラなんて聞こえて,なんだか分からなくなってしまいます。
 ここの画,南九州にも多い蝶ばかりで,奄美の固有種などではないので,ちょっと気が引けます。蝶の数の多さを画で表現できるようなものだったらよいのですが。
Commented by marmotbaby at 2005-06-03 22:43
透き通るように冴え冴えとした月夜、風もないのにカヤの葉がさざめいている....それも、不自然に重く垂れ下がっている様子.....そっと近づいてみると、鮮やかな緑色の翅(はね)を持つ、モンシロチョウくらいの蝶たちが、頭と翅を逆さにして、規則正しく群棲していました。
昔みた、夢の話しです。たしか、真夏の夜の夢でした。あまりにリアルな夢で、しばらくは、本当にそんな生態の蝶がいるのだろうか?と調べたくなるほどでした。勝手に「緑葉蝶(みどりはちょう)」なんて名前まで付けて。
すみません、ふと、なつかしく思い出してしまって。
Commented by complex_cat at 2005-06-04 09:11
marmotbabyさん,なかなか,暗示的?な夢ですね。アサギマダラという蝶が,集団越冬で海岸に落ちる沢沿いの木に,鈴なりにとりついているのは見たことがあります。緑色の羽の蝶は,居たかも知れませんが思い出しません。蛾なら,オオミズアオというマニア受けの大型の蛾などが緑系に見えます。
Commented by aperture at 2005-06-04 10:08
アサギマダラ(浅黄斑蝶)はきれいな蝶ですね。アサギマダラとツマグロヒョウモンが群れてる写真を京都市内で撮ったことがあります。
http://www.flickr.com/photos/twin_lens/2714794/in/set-236352/
Commented by complex_cat at 2005-06-04 11:26
flickr拝見しました。流石,配置や配色など絶妙ですね。この時期ツマグロヒョウモンもよく見ますね。
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by complex_cat | 2005-06-03 10:58 | Nature Islands | Trackback(1) | Comments(6)

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