Digital対応のDiがモデル名に入ったレンズではない上に改良型のフィルター径が62mmになる前の72mm、仕様の古さから、オークションでも5k未満の値段の品だ。最短撮影距離も300mmで82cmと現在の後継モデルが50cmのところ倍近いがそこそこ寄れる。フィールドで振り回すレンズとしては、むしろこのくらいの値段と思うとむしろ気楽である。最短撮影距離や大きさなど、各種スペックは今のものに比べて落ちるが、画像自体は、撮影画像を見る限り、古い高倍率ズームとしては決してそんなに悪くない。
デジタル対応レンズではないとなると、使い物にならないのかどうなのか。そもそもデジタル対応レンズって何が違うかっていうことについて、あまり整理されて説明されたサイトがない。フィルムからデジタル化の頃にはカメラ雑誌でもその辺りについての特集があったが、すでにそれは過ぎ去って誰も気にしないかという感じ。
Wikipediaを見ると、すでに時代がフルサイズデジイチが一般化した今でも「APS-Cサイズのイメージセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラに限定したレンズだ」レベルの解説で終わってる。ここからのコピペでデジタルレンズ=APS-Cサイズデジイチ用のレンズだと簡単に書かれているサイトがいくつか存在する。説明としてはAPS-Cデジタル一眼がほとんどだった頃では、その定義で一般向けには良かったかもしれない。それらのテキストが書かれた当時でもフルサイズデジイチは存在したので、現在検索で引っかかってくる技術系サイトではないところでは、書き手が、フルサイズ用のデジタル専用レンズの説明を省いたというか、むしろできなかったということだと思う。
デジタル専用レンズというのは、私の理解では以下の特性がある。
①CCDの構造上なるべくCCD面に対して平行な光を入れるような光学設計
いわゆる
Olympusなどのフォーサーズシステムにおけるレンズ設計の優位性などで盛んに使われた、テレセントリック的特性を持った光路が確保された設計によるレンズ。これは実際に撮影してみて、周辺光量がガタ落ちになるかどうか見れば、実用上使えるのかダメなのかすぐにわかる。確かにフォーサーズはそれを標榜することもあって解像感は素晴らしいが、一方でフィルム時代のフォーマットにこだわったフルサイズデジタル一眼も相当数のモデルが各社から作られていて、性能も圧倒的だ。そして確実にカメラの性能を発揮させるには、そこに留意した専用レンズがふさわしいというのは本当だろう。ちなみに、フルサイズデジタル一眼がもはや特殊ではなくなった現在にあって、カメラ側でこういった周辺光量低下については補正する機能が、歪曲収差補正などと合わせて、当然のごとく入るようになった。最初からデジタル専用設計レンズの場合、ともかくレンズ自体が大きくなることは確かだ。
SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)

②レンズの後玉とCCD面との間での反射の極少化
これはCCD面は、フィルムに比べると一種の鏡のようにより光を反射するのでそれが再びレンズの後玉で反射した場合、画像が影響を受けてしまうというのは想像しやすい影響だと思う。だから後玉のコーティング技術や焦点をどこかに結んでしまう凹レンズか平面レンズよりも反射しても拡散してくれる凸レンズ面を後玉に持ってくるという設計は必然となる。尤も、膜面リアルタイム測光(Olympusはダイレクト測光と呼んでいた)のフィルム機はフィルム面からの反射も前提にしていたわけで、フィルム時代においてもレンズ設計において、一定の反射対策は取られてはいる。
SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)
③高解像度
これはちょっと語弊がある。基本的に解像度がデジタル専用設計レンズの方がフィルム時代よりも高いというのは、コンパクトカメラなどを考えるとそうかもしれないが、一般的化しても良いのかちょっと微妙かなと感じる。フィルム時代でも設計や工作精度は一定の水準にあり、デジタル時代になったからといってレンズの方にレンズ設計製造のコストパフォーマンスを圧倒的に押し上げるブレークスルーが起きたわけではない。各社の沼レンズと言われる高額レンズではなおさらだ。
特に当時の国家予算並みの開発時で作られた半世紀前のクラシックレンズの解像度や描写力の高さについては、散々このブログでは示してきた
(『標準的なクラシックスーその2』など参照)。ただ、高画素で小型のCCDに対応できるズームレンズなどを作らざるを得なくなったので、それなりにはレンズ性能をあげねばならなくなったというのは確かだろう。
SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)
実写してしまえば、一目瞭然だが、極端な逆光条件などで撮影をしない限り(というか全く差が出ないとなると各社のデジタル対策仕様が嘘ということになってしまう)、想定どおり、TAMRONらしい発色の良い、解像感も十分な画を吐き出してくれた。
特に私は、フィルム時代のミノルタαレンズを大量かつ普通に使ってきているが、やはりデジタルにすべきかみたいに悩むことはあまりない。無論、高額な最新のデジタル対応レンズで撮ればそれ以上の世界が得られないはずはないのだが、デジタルの普及レンズあたりと比べて、半世紀近く前のオートフォーカスフィルムカメラ用レンズで撮影しても、十分に実用の範囲内という意味である。
SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)

この高倍率ズームレンズがモデル名の最後に'MACRO'と着くのは300mm側でもそこそこ寄れるということだ。このフィルム時代初期モデルの最短撮影距離は300mm側で82cm、28mm側で1.26cmとちょっと制約がある。フィルム時代でも最終モデルだと全焦点距離で49cmだからこのレンズが潰れたら、後期モデルが手に入ればそれに越したことはないのかも。
SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)

28mm側。寄れないので室内撮影で広角側でちょっと遊ぶのは使いにくいかもしれない。屋外でこんな感じで周辺環境のメモなどに使う限り、便利なズームだ。マクロが本気で必要な場合は、それ用のカメラをもう一台用意する方が早い。
SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)
広角側を捨てて、APS-Cサイズデジタルで使えば、もう少し拡大倍率は上がる。望遠側は450mm相当になるので、等倍マクロぐらいまでは行く。安く手に入るレンズで、レンズ交換が御法度な場所で一本だけ嵌めて出かける時には描写はそこそこで使える。
SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)
まあ、どうやって撮ってもそこそこの画が撮れるのは、α7IIの本体側の性能に寄与している部分が大きい。既にα7IVが出ており、その上級機でほとんどビュー画面消滅がないα9も2代目になっている。メーカーがこのスピードでいつまで走れるか走るのかわからないが、中古、代落ちで十分なカメラライフが可能な状況ではある。SONY α7II, TAMRON AF 28-300mm f3.5-6.3 ASPHERICAL LD (IF) MACRO (model 185D)
個人的には、3千円で手に入れたデジタル設計ではない高倍率ズームレンズで、これくらい写ってくれればかなりありがたいなというところである。
追記ーさて、こういう高倍率ズーム、私の場合、どういう状況で使う理由が生じるかというと、レンズ交換を一切したくない環境で、広角から望遠まで使わねばならない場合である。その任には、長々とEOS Kiss XとSigmaの18-200mmズームを使ってきた。いわゆるキスデジは、本当に丈夫なカメラで、スマホではない、昔の携帯電話、ガラケー並のタフネスさを感じていて、多くのフィールドを共にしてきた。
で、似たような仕事を少し負わせたいなと思ったわけだが、α7IIは防滴仕様になってるが、そこまでのタフネスさはないのではないか、むしろ、10〜20k円ぐらいで手に入るKiss Xの後継機を購入しておいて次々に使い潰す方がいいかなとも思ったりした。

キヤノンのAPSーCデジタルで18〜200mmは38〜360mm相当、広角側が少し弱い以外は十分な性能もあり、手ブレ低減機構もないシンプルな初期製品故、壊れようもなく今も現役ではある。似たような高倍率ズームを嵌めてα7IIをフィールドで使ってみようというわけだ。上述した通りTamronの28-300mmズームの系譜では20世紀の初号機であり、特に広角側で寄れないというのが、若干のネガではある。したがってあくまで300mm側の使用が多い状況で標準〜広角が使えれば多少はありがたいという想定に上手くフィットしてくれるか。