昨年の秋、チコが奇禍に遭い、家族全員で彼の命をつなぐことに必死になって半年ばかり、先週、大幅に減少していた彼の体重が、久しぶりに4kg台に戻った。事故から二日目、入院中のチコを家族で見舞った時の画。彼の下半身は動かないし、激痛で唸り声を上げていた。 チコの体が汚れているのは、浣腸排便処置で何度も糞まみれになって、体の負担もあるから、簡易なシャワーで洗われているから。もちろん彼もグルーミングなんぞできる状態ではない。 彼が自宅の方が落ち着いて眠れるしご飯も食べられるからと、そのまま痛み止め処置をしてもらって退院指示が出た。以来、クリニックとの往復が続いたし、彼の体調や処置必要性もあって入院退院も何度も繰り返した。
当初は、下半身麻痺で匍匐前進のみ、排便は垂れ流し、と云う状況が濃厚で、それに対応していくことも覚悟した。部屋に厚手のビニールシートを引き、その上にペット用の排尿マットを敷き詰め、このまま、ハンディキャップを持った彼を最期までどうやってケアしていくか、家族で話しあった。この状態を受け入れられる人以外は、我が家にはゲストとして招くことは不可能になった。
破断された腸骨と大腿骨の痛みが引く頃には、ともかく抱いて外の日に当てた。彼の大嫌いな(!)チュールも口から詰め込んだ。なんとか流動食や小粒の固形飼料と水を口にしながら、痛み止め入りのテープを貼り直しながら、ひたすら彼は眠る日々だった。
この状態を家族の誰かがそばで見守る。結果的に時間的余裕を上手く作れる次男がかなり動いてくれた。
事故直後、MRIで彼の体の内部の状態を見た大学病院で、主治医の見立てと同じ、彼の心臓、腎臓への負担から手術を諦めざるを得ないと云う説明を受けた後、かなり絶望的な状況を感じたまま彼を連れて家族の元に戻ったわけだが、それから半月、内臓系、神経系へのダメージがなかったこともあって、彼は驚異的な回復を見せた。1ヶ月を待たず、彼は再び自分の足で歩み始めた。主治医も驚く速さだった。匍匐前進がやっとだろうと云う最初の予想を覆す回復だった。
今は、どこにパトロールに行くにも、SPがつく状況ではあるが、好き勝手、少し違和感があるかなと云う様な足取りではあるが、年齢なりの速度で歩いて行ってしまうまでになった。出掛けたい時は、玄関で野太い一声、「おーう」って啼くだけ。お付きのものがスタンバイできていれば、ドアを開けて彼を解き放つ。
後脚に負担がかけられないこともあって、少し、前肢が太くなった。再び外の風とお日様を友とできたことで、食欲も上がり、毛艶も良くなった。動き回ることは彼のリハビリにとってもとても良い効果が出ている。
彼が動き回れる様になって、第二の難関、排便の問題が表出して、相当猫に拘っている人でも習得に時間がかかると云う圧迫排便の技術を私自身が、身につけざるを得なくなったが、それでもうまくいかないときには、最悪週に2回のペースで、何ヶ月も主治医の先生のもとに通うことになった。しかし、これも、彼自身の食生活の調整で、問題が消滅した。いわゆる牛乳がぶ飲み療法であり、彼自身が編み出した方法だ。これにより彼の排便は、下痢をする一歩手前の一番負担が少ない軟便に調整された。彼がそんなことができるなんて、主治医の先生も私たちも間違っても考えなかった。 半年後、血液検査の結果を見て、主治医の先生は一言「チコちゃん、強いです。」 各数値は、チコの年齢や経緯から見たら驚異的なレベルにあったのだと分かった。 主治医の先生は、夫君とクリニックを経営されているが、私が知る中でも相当タフな獣医さんだ。
彼女が勤務医だった頃、私たちの当時の主治医だった動物病院でチコの担当医になってもらってからのお付き合いで、2011年に最初にチコを診察していただいたのをエントリに挙げていた。奇しくも、今流行のコロナウイルス類似のウイルスネタだった。で、以来足掛け9年以上にもなる。2014年にご夫婦で動物クリニックを開業されたのをきっかけに、当時主治医の先生が、「あっち病院立ち上げたばかりでとても大変だからお客さんになってあげて」って言ってくださったのをきっかけに、そのまま我が家のホームドクターになっていただいた。以来、チコの命は何度か救ってもらっている。
当時からチコの体重測定値がカルテにあったので、全部ファイルで送っていただいた。適当な架空データではなく、リアルなチコの体重で、欠損値補完と予測ができる状態空間モデルをrstanのscriptで回してみたかったのもあったのだが、これは本来の目的ではなくて、別のちょっとばかり面倒な個体群管理用のmodel製作の参考のために作った。うん、ちゃんと走るってことが重要。
まあ、状態空間モデルは、ベイズ解析でもかなり高度で便利なもので、いかにも、「らしい」結果が出るのだが、モデルやパラメータの固め方次第で、結構危うい部分もあるので、注意は必要だ。
彼の体重は、中央値と95%上限値の間ぐらいで推移してくれるシナリオだとありがたいけど、まあ、流石の彼も、現状維持がいっぱいいっぱいだと思う。
ちなみにとりあえず、エンドユーザーとして R & rstanを使った限りにおいては、Windows版だとメモリー容量を上げられるはずが、やっぱり転ぶスクリプトとデータの組み合わせがあったり、同じスクリプトがnoteマシンだけで転ばずに走ったり、Mac版ならインストールも楽だし、メモリ管理気を使わずに楽だろうと思っていたら、最新のOSXに対応したRのVer3.5からメモリ管理が面倒になってたり、.Renviroファイルでメモリー量をディレクトリ片っ端からセーブしまくっても、メモリー上げてくれなかったり、めんどくせー。
ともあれ全盛期にはほぼ筋肉の塊で6.8kgも体重があった彼が、年齢を重ねて筋肉量が落ちて老化していくプロセスがよくわかる。😸―人年齢換算ってあまり信じてないけど、彼の年齢だと、人間だと80をとうに超えてるわけで、そりゃ筋肉量も落ちるだろうと云う話ではある。
その上で、今回のトラブルにより、ドラスティックな2kg近い体重の激減があったわけだが、彼の回復に伴って1kgぐらいは取り返せた感。家族も一緒によく頑張ったな。4kgを超えたら毛艶も本当に良くなったので驚いている。
毎朝、メニューが気に入らない、これしかないで、彼と喧嘩しているのだが、彼の選り好みも、彼の生きるための戦略だと思うと、無碍に無視はできないし、そのお陰で、現在の負担のない排便調節のやり方に彼自身が自力でたどり着いたのだから、甘やかすとかではなかったりするわけで、なかなか簡単ではない話。でも少しはこっちの身になれよ、チコ。
PS-なぜこのタイトルをつけたかというと、チコの体の中に彼を理想の状態に引き戻そうという営みがずっと進行していて、それは彼の見かけ上からの判断、観察モデルからは見えなかった部分があったのだなって感じたことが大きい。