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奇跡の猫族

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嘘か誠か確認する手だてはありませんが,もしもこの通りのことが起きていたのだったら近来まれに見る猫族の痛快なニュースです。
 上記の事件で,ライオンが少女の声を仔ライオンの悲鳴(distress call)と認識して,暴漢と戦ったという考え方は,研究者らしい説明の付け方ではあります。反応のきっかけは,そうなのかも知れません。もしそうなら,スピーカーから少女の声を聞かせて反応を見るような検証実験も出来るでしょう。逆に,私としては少し疑問が残るのです。情報が少ないので,ライオンの雌雄なども分かりませんし,そういった意味では,そもそも本当にあった話なのかどうか,検証すら出来ないことは,ここでは置いておいて,考えてみます。

 視覚,嗅覚が発達した彼らが,最終的にヒトの子供をヒトだと認識できず危険を冒して犯罪者を襲うということが,あり得るのかなぁと思います。とりあえず犯罪者を襲った後,仔ライオンでなく誤認であったと知って,それ以上そこに留まることを良しと判断せずその場を立ち去った(少女を襲わなかった)というのも,プロセスとしては成り立ちそうですが,本当にそうなのか・・・ライオンたちが犯罪者に襲いかかる前に,誤認と気づくことが出来ない条件だったのか・・・
 分からない方が良い話なのかも知れませんね。3頭の怪傑ライオン丸。科学的ではありませんが,「その時は,そうしようと,思った」のかも知れません。
画像は,草原?に横たわる,天の邪鬼な遺伝子はライオンと共有しているかもしれないチコベイ。
Canon EOS Kiss Digital N, Carl Zeiss Tessar T*

 某国で野生化したイエネコは,体重7〜11kg,最大で17kgとか聞いたことがあります。もちろん通常のプロポーション,超豚猫だったなんてことはありません。これは,同じく野生化したアナウサギが,ワレンという集団巣穴内に何百頭とあまりに高密度で生息しており,これを利用できる限り餌には全く困らない。そのため,大型の遺伝形質だけ選別されたと云うことのようです。
 17kgのニャンコ,一緒に暮らしたら,じゃれても,ずたずたにされるかも知れませんし,あまりの威圧感と破壊力に,ご近所や周辺の猫の迷惑を考えると,公陳丸やチコのような飼い方は出来ないでしょうね。あんまり書くと,迷惑顧みず輸入して後先のこと考えずに飼う困ったチャンに売ってしまう困ったチャンが出てくるから,止めておきます。合法的に売り買いできる大型猫品種として品種固定したら,猫のセントバーナードです。エンクローズドで暮らせる大きなお屋敷が必要ですので,宝くじ当たったらまず,猫屋敷建てなきゃ。3,4頭居れば,きっと泥棒も来ないだろうと猫馬鹿妄想。いけない,いけない。世の中大きな動物を飼っているだけで偉くなったような気分になる方が居られますので,このくらいにしておきましょう。私は,公陳丸やチコの大きさが丁度良いと思います。



近代生態学は,様々な生物の振る舞いを「種の保存のため」という理由で説明する世界を一転させてしまいました。同胞のために自己犠牲をしたり,その種全体のことを考えて振る舞うのは,最もエゴイスティックで困ったチャンとされている人だけであって,他の生物種は,自己の遺伝子のコピーを最大限残すことだけのために振る舞うというセントラルドグマは,ほぼ固定した感があり,利他的行動においても,この視点での分析が進み,証明されてきました。 また,自分の子供でなくても,自分の遺伝子を共有している仔を変わりに残せるならば,そういった振る舞いをする遺伝子は,進化的プロセスの中で固定されて居るであろう云うことに着眼した概念が包括適応度(inclusive fitness)です。これは膜翅目(ハチ・アリ目)などの不妊カーストの進化を説明したものです(一方では,女王によるコントロールだという仮説も過去には存在しました)。しかし,ここで,こういった概念に100%従った場合においても一つの疑問が生じます。なぜ,ヒトにおいて,直接の血縁関係のない同胞への利他行動が内在しているか,それを可能とする高次の大脳が持つ,複雑な認識や心理を司れる機能。その起源は,やはりヒトに近い哺乳類には全く内在していないのかということです。もちろん,膨大なデータにより検証されてきた分野のバックグラウンドとは無縁の愛情物語は本来の動物の存在価値を歪めてしまう可能性も含んでおります。ペットショップではないので,本来的な素の野生動物の素晴らしさを伝えると云うことを動物園の第一の使命と考えたときに,「可愛いから良いでしょ?」みたいな直立レッサーパンダのフィーバーに大して,分野の専門家から苦言が出てくるのは,そのネガを見ているからだと思います。

 ライオンの仔殺しの話が出たときに,こんな不快な話はライオンのイメージを損なうので聞きたくないと云う反応が多くの方の感覚かと思います。しかしながら,これは全く人間の都合だけ考えた傲慢な考え方だと思います。勝手なイメージで「良」のイメージを押しつける作業は,自然の営みや,その存在価値を,人間に都合がよいかどうか非常に表面的な部分判断するわけで,利益誘導が前提にある自然破壊ををどんどん強化していきます。その結果,浅薄な価値判断で多くの生物を消滅させてきたその先のツケを,私たち自身が払うことになってきております。

 私も含めて,昆虫や魚類,羽毛のある爬虫類(正確には「ワニ」,或いは直接的な恐竜の子孫ですけど)と呼ばれる鳥類,植物などに大きく依存してきた近代生態学の成果において,哺乳類に関わる人間は,一つの役割があると思うのです。それは,心理という高次の大脳機能が振る舞いに置いて介在することへの理解と,遺伝的なものによって呪縛される範囲とそうでない部分の見極めについてです。ドラマ「不機嫌なジーン」は,分野の人間からは噴飯ものの混乱させられるような勘違いが散見されました。インスパイアされるネタ本である,「利己的な遺伝子」の著者,ドーキンスが養子を貰っているということに言及した落ちなどは考えも付かなかったでしょう。おっとこれはネタなのですが,そういうことが人間はできてもおかしくないのです。自由意志によって。そういった,遺伝子からの呪縛からの逸脱を,ヒトだけが持っているのか,私はそのところが非常に気になっております。
 昨今ブームになったプロファイリングの全能感のような能書きは,しばしばヒトが自由に選択し,自分自身として感じられる心理も,非常に反応機械的な部分で説明されることが多く,パターン化が可能であるということでもあることからだと思います。しかし,生物種としてのヒトではなく,個体の分析であるこの分野については,進化的,生物学的概念が無用とされてしまうのは,私の歯がゆいところです。逆に言えば,猫やライオンなどでも,プロファイリングが可能のような気がしており,それは,彼らが,高次の大脳活動を持っていることに他なりません。私自身は,猫を通して,その祖先系にどのような性質が内在しており,それが,ヒトとの関わりの中で,今のイエネコにどれくらい保存されていて,また,どれだけ変化しているのか知りたいと思っています。彼らと最も良い暮らし方をするために,どういう存在であるのか,この魅惑的な謎をずっと知りたいと思っております。
Commented by nekoromochi at 2005-06-29 15:58
ウニャァーっ≦⌒▽⌒≧З
アンビリーバボなニュースですよね。
BBC Newsにはも少し情報が載ってるみたいですよっ≦⌒ω⌒≧З
(よそ様のblogでリンクされていたものですけれどね)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/4116778.stm
Commented by complex_cat at 2005-06-29 17:48
nekoromochiさん,どうも有り難うございます。
 このBBCの方のアーティクルによれば,この地域では,ライオンにかなり人も家畜も襲われていたようですね。警官が来たから銃を知っている彼らはあっさり逃げたと書いてますが,ここでもライオンは私に危害を加えなかったと女の子が言っており,更にコメントしたエチオピアの野生動物保護観察官らしきWondimu氏で検索したら別のAP伝がありました。
http://www.smh.com.au/news/unusual-tales/lions-rescue-girl/2005/06/22/1119321771149.html?oneclick=true
では,ライオンは警官が来るまでそれなりに時間があったにも拘わらず,立ったまま,犯罪者が戻ってきたりする事態に備えるように彼女をガードしていたように見えたという話が楽しいですね。愛はサバンナの霧の中に・・・
 未成年を誘拐してrapeして暴力で脅迫して妻にするという無法が横行しているというか,地域の既婚女性の70%以上がforce mariageだという話を見ると,貧困と内乱と無法の先,ライオンたちは「こいつら裸のサルの雄どもは,状況次第で見境が無くて,野蛮すぎて話にならない」なんて思っているかも知れませんね。
Commented by complex_cat at 2005-06-29 18:10
 生臭い話なので,自分のブログにだけ書きますが,現地の既婚女性の70%以上が,このような拉致,共生結婚の被害者だということで,ヒトの雄ってこんな生物だったのか,このような形で本当に社会が維持されているのかと云うことについて,多くの文化人類学の研究者が悩む内容の話となっているような気がします。ヒトの父性とか消し飛びますね。しかし,無法のようで,結婚を承諾させるという一種の暴力による契約が存在し,それで女性を縛っているところが,完全な無法社会の話と違うところで,ある意味カルト宗教のやり方と同じです。こういったrapist達も子供にはお父さんしているのだろうか,娘は,そういった契約など無視して好きあれば相手から逃げるか,殺してしまうと云うことを学ぶかも知れません。
 生態屋としても,長期的に無法は許されたり,大多数を占めることは無い(長期的に安定した戦略にはなり得ない)と信じておりますが,ライオンの目を見られないくらい恥ずかしい話だと私は思います。
Commented by Nezumineko at 2005-06-29 19:29 x
一瞬、凄く感動的なニュースだと思いましたが・・・。
他国の風習を自分たちの尺度だけではかっても、いけないような気もするし。
Commented by complex_cat at 2005-06-29 19:58
いえ,これ,風習として固定化されたものではありません。伝統的文化への敬意と「風習」だからしょうがないと考えることの危険性とを区別する必要があります。こういうシステムで,安定した社会は作れません。プリミティブな民族でも,このような「風習」を持っている部族はありません。これは風習ではなく,内乱と施政者がやりたい放題をやって経済と秩序が崩壊した,現在のアフリカにおける根深い問題です。
Commented by Nezumineko at 2005-06-29 23:23 x
私など最近は動物番組とサッカーの試合でしか、アフリカを見ていませんでした。サッカーの名選手たちの身体能力を見ていると、餓えた人々の姿は見えなくなりますね。ただ、エチオピアと言えばマラソン、マラソン選手と言えばストイックなイメージもあります。
一部の地域とはいえ、70%と言う数字は信じたくないですね。誤報であって欲しいです。
もし真実だとしてもライオンたちがいなければニュースにもならなかったのですね。コレをきっかけに虐げられた人たちに救いの手が差し伸べられるのを祈りたいですね。
Commented by wolf_japan at 2005-07-01 13:20
こんにちは。ねころもちさんが言及している(と思われる)よそのブログのオオカミと申します。
先日動物病院に定例予防接種にいったときに、この件について質問したところ、獲物としてではなく保護対象として「ありうること」というコメントをいただきました(笑)。
そう考えた方が夢が広がると思いますね。
Commented by complex_cat at 2005-07-01 14:21
オオカミさん,わざわざお越し頂いてのコメント,嬉しいです。
私も,もしも,警官隊が述べているとおりの行動なら,あの神秘的な眼の奥でライオンが何を考えていたのか分かりませんが,彼らは‘care’に当たる行動をしていたのだと思います。哺乳類は,そのフレキシビリティや時には命を落とすことさえある好奇心や感情が支配する行動と取ることがあります。それは,より複雑な事態に対応するために複雑な経験を持つことが,場合によっては適応的かも知れないからだと思います。そうでなければ,人間の懐で暮らすなどということを選び取るような存在(イエネコ)など絶対に生まれてこないでしょう。あくまで進化生態的な見地からしか,私は夢を見ることは出来ませんが,件のライオンたちは,きっと「分かっていて」,少女を保護対象としてくれたのだと思います。
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by complex_cat | 2005-06-29 10:00 | Miracle of Felidae | Trackback | Comments(8)

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