チコの昼寝のための邪魔にならない音楽選定の話から、少し脱線する。
LPレコードが聴きたくなって、5Kでリニアトラッキングのフルオートプレーヤーを手に入れた。実際、Technicsのリニアトラッキングプレーヤーは、
現在でもオークション大人気の SL-10 を筆頭に、相当なモデルが作られている。 SL-10は販売時、定価100,000円のモデルだったわけだが、電池でも駆動する、ある意味巨大ウォークマンみたいな機能も持っていた。その眷属のSL-15(上位モデル)、SL-7(下位モデル)とは別系統で、中堅としてのSL-DL1、SL-DL5、さらにクオーツ制御の、L-QL1、SL-QL5。更にワウフラッターカタログ値は落ちるが、実用上何も問題はなく伝統のベルトドライブ方式の超軽量、安価モデルの SL-J11 。他にはFMで音源を飛ばして野外などでのFMラジオ試聴を可能としたモデル、 SL-3FM などなど、派生モデルはかなり生まれている。 ちなみにこの辺りのデータ、仕様については、このサイト『
オーディオの足跡 』に全面的に頼っている状況があるが、アナログオーディオファンは、オークション情報含め、参考にしているはずだから、割とアクセスは稼いでおられるかもしれない。唯一無二の本当にありがたいデータベース的サイトである。
リニアトラッキングプレーヤーは、レコードが作られるカッティングマシンの駆動時と同じ理屈で溝がトレースされる。「針がレコード盤を直線移動するため、歪発生の原因となるトラッキングエラーや、チャンネル間アンバランスの原因となるインサイドフォースを極めて0に近くできるメリット」があるということだが、この辺りの機械制御技術は当時の日本企業のお家芸だったわけで、マイクロなど、基本的な部分のこだわりがあるマニアックな立ち位置の企業を例外として、Yamaha、東芝Aurex、日立Lo-D、SONY、AIWAなど、Technics以外の国内オーディオメーカーのほとんど全てが追従して、モデルを投入していた。
今回、リニアトラッキングプレーヤーが欲しかったため、オークション検索していてそのことに気がついた。
PioneerのPL-L1 のリニアトラッキングメカなど、凄まじく凝ったモデルなどもある。最初の方に販売されていた三菱DIATONE のDiatone x-11はチューナー付きアンプにカセットデッキと更にこのリニアトラッキング プレーヤーを縦置きに配置した普及型のオールインワンシステムだったけど、当時のオーディオメーカーとしてのプライドとして、
LT-1 などというモデルも出していた。国のGDP、産業を牽引したオーディオ業界の百花繚乱、当時の適応放散を見るようだ。
さて、かつてのターンテーブル/レコードプレーヤーを今のAVアンプで鳴らそうとすると、一つの問題がある。今のAVアンプには当然レコードプレーヤーのPhone入力が存在しないのだ。レコードプレーヤのカートリッジ、針の部分はエジソンの蓄音器の発明を祖先系とするが、電気信号を発生する段階になっても、レコードの溝に刻まれている音声信号を拾って再生するいわゆる一種の特殊マイクにすぎないわけで、それのアンプ出力と音域別のバランスをとって他の電気入力信号と同様の扱いにするためのフォノ・イコライザー が、かつてのオーディオアンプには標準で内蔵されていた。いわゆるphono入力というモードだ。それが今のAVアンプには存在しないので、別個にフォノイコライザーを購入してアンプとの間に介在させる必要がある。
追記ー詳しい方に教えていただいたが、「レベル合わせ以外に、溝を刻む時に大きな振れ幅になる低音を抑えてスクラッチノイズに負けがちな高音を強めてカッティングしてあるのを元に戻す役割も」ということで、文字通り帯域別に、音圧のバランスをいじる機能が持たされているということのようだ。
で、レコード針部分のモジュールカートリッジには大雑把にMM/MC型がある。後者はよりデリケートな信号を出し大きく増幅してやる必要がある(サテン製などMC型にもかかわらず高出力でMM型のように扱える例外もある)。ちなみにカートリッジ形式はこの二種類だけはなく、LPレコード再ブームで、現在仕様でBluetoothで音を飛ばせる製品などを作っているオーディオテクニカ社のVM型などMM型の派生など、非常に種類が多い(参考:
SPU?MMC型?マニアでも全部は知らない「カートリッジ大辞典」 )。今回MC型を使えるモデルやそのためのフォノ・イコライザー アンプは高額なので、諦めて、定番のそれを手に入れた。フォノ・イコライザーといえども、むしろそれによって音が変わるわけなので、高級オーディオ専門メーカーのものは、値段が一桁も二桁も違う。
音楽配信に押され、CDが売り上げを落とす中、変わらぬファンのおかげもあってか、むしろ
Record盤/CDの売り上げの逆転現象が起きている というじょうきょうにある。結果的に、LP周り製品生産、販売は、小規模では或るが案外手堅い商売として残っている。もう一方のアナログテクノロジーである写真フィルムは、かつては全国津々浦々に存在した現像インフラの存在・維持と切り離せないので、レコード盤のように、復活できるということはないだろう。
ちなみに、同じメーカーのもっと高額のものが以下の製品だが、MC型が使えるわけではないので、上記の製品で、私とその音響システム的には十分だった。聴き比べなどできてないので、評価は私的には一応白紙。以下も同様。
高額製品となるとこんなのが出てくるが、それを手に入れるよりは、かつての高級オーディオアンプを中古で入れた方がお釣りが来るくらい。
大陸のベンチャー企業の安価なものも販売されていて、自分の耳を頼りに内部のコンデンサーなど交換、魔改造できる人には、良いおもちゃになっている製品もある。この手の廉価モデルの中には、Bluetooth内蔵のものや、真空管アンプタイプのものなど、結構安価で販売されていて、そちらもかなり適応放散している。これもRecord盤需要が、背景にあると考えるべきなのだろう。
ちなみに、今時現行製品として売られているプレーヤー/ターンテーブルはフォノイコライザー 内蔵タイプのものばかりと考えて良いと思う。つまり今時のオーディオ機器に繋げるにしても、フォノイコヘッドアンプなど余計なものを入れる必要がない。Bluetooth内蔵のものも少なくないから、ベルトドライブ方式によるワフフラッターのカタログ値が気にならない人は、そちらの方が使い道があるだろう。視聴する音楽にもよるけど、ピアノの音のふらつきなどが気にならないと言えばわかりやすいかも。数値性能的にダイレクトドライブとベルトドライブでは、余程凝ったメカ(ダイレクトドライブではない高額製品には「糸ドライブ」なんてのもある)でない限り、一桁性能が違う。検索していて気がついたが、USBメモリ記録やBluetooth内蔵などの現行品では、日本がオーディオ製品大国であった百花繚乱時代の主流であった
ダイレクトドライブの機種は今ではこの6モデル しか無いようだ。DENONのモデルは、コンベンショナルな製品だから、イコライザー アンプは必要だろう。程度にもよるが、この金額を出すなら、状態の良い古いプレーヤーの名機にフォノイコライザー繋げるのも間違ってない選択という気もする。
かつてのphono端子/入力モードを持つアンプを使用するかフォノイコライザーを別に用意する必要がある。私の場合、かなりそちらに意識が動いたが、設置スペースと電気代がかかるかなというしょぼい理由から、諦めることにした。安く組んできたAVアンプ周りのスピーカーの扱いと接続が面倒になるということもある。垂涎の的だったオークションでの高額オーディオ製品の落札金額を眺めながら、今、経済的苦境や終活的判断などから、名機を売り払う人も少なくない気がしている。
Amazonでの新規の音楽ソースの中にもLPレコードという選択肢が出てくるのが普通になってきて、結構驚いている。アルミ腐食リスクもあって、永久保存メディアとしては弱点を持つCDは、下手するとこのまま光磁気ディスク同様、クラウドや配信サービスの前に廃れるかもしれないが、予想に反して、LPは残るのかもしれない。なんとなれば、アナログオーディオは、音楽を聴くという目的において、それなりの年月、詰められたテクノロジーであり、数十万円から数百万円を投入するマニアも少なくなかったわけだ。また、レコードプレーヤー自体が、ハウスミュージック文化の中で、ターンテーブリストという「楽器」の演奏者を生み、まるで特殊なメロトロンのような楽器年tのターンテーブル、そしてメロトロンの音源テープのようにLPレコードが使われているという状況を見ると、こう言ったレコードの需要は確かに存在するのだ。
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