チコは、高齢で衰えるとともに、行動は制約を受けて変化していった一年だった。彼は、大怪我でハンディを追っているので、そこから自力で回復したにはしたが、現状維持もだんだん難しくなるであろうことは、覚悟はしていた。
家族が、1日に何度も何度も同行していた外出も、今はゼロになってしまった。 チコといえば、食事を詰め込んだらすぐさま外に飛び出していくような日々だったが、ある意味本当に引退、隠遁生活に移行したともいえる。
チコが最後に外出したのは、今年の春ぐらいだったと思う。

彼を保護者なしで、外に出すわけにはいかず、ああ、こんな時間にも、家族の誰かは外に引っ張り出されるのだなって思った生活は、2年ぐらい続いたのだが、今は懐かしい。
彼の状況に合わせて、ここまで家族全員で支えてきた。家族交代で、外でご飯を食べたり、本を読みながら見守ったりした日々を忘れることはない。

外で、大きな器から水を飲むのも定番の行動だったのだが、それももうしなくなった。一つには、足がもうそれほど上がらないので、肉球が耐えられないというのを自ら悟ったのかもしれない。もう外を歩けないのだ。

チコは、豪雪の2011年の冬でも平気で出かけていく猫だったので(途中で救助に行った)、寒いのには強い子だったのだが、脂肪も筋肉も落ちて、めっぽう寒がりになった。こたつの中で生まれて初めて眠るようになった。
こたつ布団を押しのけるのも苦労するので、こたつの一角は開けっ放し。上から降り注ぐ熱がワイフは苦手で、もともとこの下に引いてあるホットカーペットしか使ってないので、まあ特に問題はない。茣蓙風マットは掃除しやすいからという理由。

チコも私たち家族も大変になったのは、彼の心臓の機能が落ちて、胸水貯留が起きるようになったこと。1ヶ月に一回ぐらい、水を抜く処置をしなければならなくなった。これはかなりチコに負担がかかるし、下手すると寿命を縮めかねないので、入院させて酸素チェンバーの中で彼の調子を整えてから、チコをお任せしてきた主治医ご夫婦とそのスタッフも状況を見ながらかなり面倒な処置をしなければならなくなった。心臓、腎臓の状況もあるため、主治医からの説明を聞く限り、処置中に何が起こるかわからないほどの状態なので、いきなり危篤状態というのも覚悟している。
そして普段から、そのための薬を朝夕に飲ませるというのも、彼と家族の負担を増やしている。彼は主治医の先生への信頼が高く、病院での処置にも投薬にも、柔軟に対応することができる猫だったから、なんとかなっている。ナッチのように一度の投薬で吐きまくって、部屋のどこかに逃げて隠れてしまうような猫だと、家族による経口投薬すら簡単ではなくなってしまって、詰んでしまう。

それでもチコはチコで、相変わらず、口の肥えた大食漢であるところでなんとかなっている。あまり食べたくないものを出すと、平気で全く口にしないとかやられるので、ともかく食材選びは彼の生命維持にとって命綱みたいな状況になった。