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長く短い旅、終わる。

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 先週末から、家族はターミナルケアの体制に入っていた。ユッチは今朝、未明2:36にこの世を去った。
 チコもそうだったけれど、彼女ともずいぶん長く一緒に旅をしてきた。それが、終わってしまった。長くて短い旅だった。
 
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 幼な時から運動能力の高い子だった。お隣の家の天井裏に、鶏の餌についてしまったクマネズミ集団が巣食った時には、公陳丸、チコたちと共に、マウスバスターズに参加して、殲滅させて、感謝状が来た。「うちの子にならない」ってその家の方からトレードの話まで来た。
 よそ様の家に勝手に押しかけて、勝手に狩りをしていたわけだが、そういうことが可能だった世界が、彼らの共同テリトリーとなった圃場周辺のエリアでは、維持されていたのだ。本当に、泡沫の夢。今では、創作でもあまり見ないファンタジーのようだった。
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 ずっと来た時から、健康体だったけれど、去年の8月から、焦点発作またはミオクローヌスを発症して、癲癇様の発作を時々起こすようになっていた。ナッチが脳腫瘍的なトラブルを契機に障害が発症し、一生を終えたので、恐らく姉妹ならではの類似の遺伝資質かなとも思って、家族は皆、注意するようにしていた。特にキャットフードを開けたりプラスティックの袋を上げる音には過敏に反応し、発作のきっかけになるのがわかっていたので、そういう音を避けるように家族動いていた。ワイフと次男がきちんととデータ記録してて、すぐに出してくれた。最初が2023/08/03、次が10/13、11/08、今年になって01/15が最後。それ以降、今年になってからは一回も発作は生じていなかった。でも、老衰は避けようもなく、どんどん体重が減り、運動能力も落ちていった。
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 そんなに肥満になっていないのに、彼女は全盛期4.8kgも体重があって、そこそこ立派な体躯だった。4.2kg止まりだったナッチより一回り大きくなった。子猫の成長は早く、その期間はあっという間だが、その時は、それでもまだまだ一緒に暮らせる時間はたっぷりあって、彼らとの時間はすっ飛んではいかない。晩年はそうはいかないで時間は飛んでいく。昨年末には、飛び上がれた場所も普通にあったし、二階にも上がって、好きなところで寝ていた。子猫時代と違って、たった3ヶ月で、彼女自身の時間は大きく進んでしまった。
 本当に先々週までは、1日にパウチ8回以上、多い時は12回もねだりに来てよく食べていた。先週になって、彼女の時間が、文字通りものすごい勢いですっ飛んでいっているのを、感じた。保護された時の彼女の推定出生年月は2006年4月なので、18歳を迎えるかというタイミングだった。
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 NGOにナッチとともに保護された野良猫の仔だったが、体毛が純血のアメリカンショートヘア風の美猫で、ナッチほど神経質ではなかった。我が家では女性のゲストに特に人気があった。子猫時代は、その身軽さで、どこにでも飛んでいく「飛行少女」だった。

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 我が家に腰を下ろしたときに、パソコンを打っている私の手に前脚をかけてくつろいていたりしたが、程なくして、彼女は毎晩、長男の足元で眠る猫になった。
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 チコやナッチが居間とするリビングには食事以外では現れず、ひたすら長男の部屋と二階の子供たちの部屋で過ごす子だった。


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 マウスバスターズの後も、外には出かけていったが、遠出はすることはなかった。


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 爪で引っ掛けてパウチの餌を食べたり、かなり色々やる子だった。天然系のナッチと比べて、知性派と呼ばれていた。おかげで、色々な要求を通すことを覚えた。

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 ある事件を境に、ナッチとは袂を分けだのだが、それも雌猫の野外でのindepedent行動のようにも見えて、わたしたちもそれを受け入れるしかなかった。
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 片時も相手のそばを離れなかった時間は、彼女が単独で過ごすか、長男と一緒に過ごす時間となった。

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 実際には、ナッチと行動を共にしなくなってからの期間の方が長いのだが、先に亡くなったナッチと姉妹で過ごしている写真がかなり出てくる。ほぼ、我が家に来て1、2年間の画像だと思う。
 
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 トイレのポーズも眠るポーズも、驚くほどシンクロしていて、それは一緒に過ごさなくなってからも続いていた。

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 チコとも折り合いはあまり良い方ではなかったが、こうやってみると、彼がユッチをそばに置くのを許していた時もかなりあったのを思い出した。身体能力が高く、好奇心も強い子だったので、庭からお隣の圃場、ベランダも含めチコのいる場所には、ナッチがよく真っ直ぐ向かっていた。お隣の家のクマネズミ駆除の現場もそういう正確もあってちゃんと「参加」していた。
 私の布団に明け方に彼女が、短いパトロールから戻って潜り込んできて眠りについたことは結構あって、布団一枚挟んで、その上でチコが寝ている時も、布団挟んで二匹で揉めたのも、何度かあったのを思い出した。

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 要求ははっきりしている子で、晩年は、相当構えコールが激しい子だった。それには次男が散々付き合ってくれた。彼が社会人としてこの家を出ていく、ああ、もうどうやってもユッチのケアができなくなるっていう当日に、彼女の魂は特別な羽を纏うと、肉体を離れて遥か遠くに飛び立っていったのかもしれない。出来過ぎだよ、ユッチ。
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 次男に見守られて、最後の外の空気を吸いに出かけた時。丁度1ヶ月前だ。それ以降、パッタリ彼女は外に出ることを要求しなくなった。彼女が体力も、体調の変化もしっかり理解していたのだろうと思った。
 すっかり痩せてしまった様子がわかるけれど、でも、まだ、1週間前に比べれば元気だった姿。
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 一番ふっくらしていた時代のユッチ。彼らをターミナルケアを経て見送ると、太れる時に太っていた方が、最後の余力は残せるかもしれないと思うようになってしまった。老衰し筋肉も落ち、限界がきて弱っていく彼女の体は最後は2kgを切っていた。ナッチのように神経に関わる腫瘍からの発作で、急に昇天するような事故を家族で回避して、天寿を全うさせることができたといえるのかも。
 ずっと甲高い声で、家族を呼んでいたユッチが、昨晩は、何度か静かな甘い声で、交代する家族に向かって鳴いたのだが、苦しくて不快な状況を訴えて、なんとかしてくれって言ったのか、お別れの言葉を投げたのか、両方かもしれない。チコにも、最後の時に助けてくれって私は呼ばれたのだが、私は助けてやれなかった。傲慢でも、今でもそう思っていて、時々苦しくなる。
 でも、よく頑張った。待ってたんだよね、君は。最後は、深夜に戻ってきた長男が、ずっとずっと彼女に話しかけて、その1時間後、見送ることができた。

 ユッチとナッチを保護してくださった方々がおられたおかげで、生まれて、数週間で命が終わっていたかもしれない運命の子が、私達家族の所まで辿り着いて、一緒に長い旅をして一緒に眠り、一緒に夢を見た。見事だった。

 猫は死ぬと、どこにいくの? なんの苦しみもない世界にいくはずだ。さようなら。

Commented by STOCHINAI at 2024-04-01 20:15
やはりネコの寿命はヒトと比べると短いのですが、そこそこに長く、子どもの頃から一緒に暮らしているとかけがえのない思い出をたくさん残してくれるものです。もちろん、ヒトの寿命にも限りがありますので、いなくなったからといって、いつまでもすぐに新しいネコを迎え続けることができないというのも厳しい現実で、いつも数匹いた我が家でももう新しいネコを迎え入れることはやめています。チコちゃんのうちのネコちゃんたちの行動は時折、ここで楽しく読ませて頂いてきていましたが、寂しくなります。可愛い写真と楽しい行動記録をありがとうございました。なくなったネコちゃんたちのご冥福を心からお祈りいたします。@5goukan
Commented by complex_cat at 2024-04-01 21:36
> STOCHINAI様
いつも見守りいただき、ありがとうございます。
チコたちはじめ猫たちの冒険は、これで終わりとなりました。
わかっていたこととは言え、家族であったcomplex catsたちをとうとう全て失ってしまいました。
とても喪失感に襲われています。
Commented by sknys at 2024-04-04 20:43 x
ネコは死にざまをヒトに見せないと言いますが、近年は家族に見守られて亡くなることも少なくないようですね。
村上春樹は「僕はときどき今でも、静かに森の中に消えてしまった野生の雄猫ピーターのことを考える」とエッセイに綴っています。
スターリング・ノースの名作 「ラスカル」(Rascal 1963)を思い浮かべるまでもなく、野生に帰って行く動物の姿には目頭が熱くなっちゃう。
野生を捨てた人間の不幸は還って行く場所がないことかもしれません。
「楢山節考」(1956)を42歳で書いた深沢七郎は偉大だったなぁと思ったりして。
ユッチさんのご冥福をお祈りします。合掌。
Commented by complex_cat at 2024-04-05 09:38
> sknysさん
雄猫ピーターも、家に戻りたくても戻れなかったのかもしれません。

私のような動物行動学知見でものを考える人間は、周辺の雄猫のテリトリーの外側にはじき出された、捕食者に襲われたなどの可能性を考えながら、電波タグをつけていればと後悔しながら必死に探したろう、というようなことを考えます。
 批判ではなく、おそらくこの1/4世紀において猫と人間との関係は、かなり変わったと思います。飼育形態も変わり、猫と一緒に暮らすと考えた場合の責任の取り方が変わったのかもしれません。妻も少女時代の猫たちとは一瞬の間、今生の別れが来るのを何度も繰り返すのが当たり前の飼い方をしていたと言っています。いずれにより、永遠の別れはやがて来るとは言え苦しいです。長男が、フリーレンの気持ちが少しわかる気がしたと言っていました。
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by complex_cat | 2024-04-01 15:25 | Cat Family | Trackback | Comments(4)

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