謎の黒い機体っていうと「グリフォン」とか「ブラックオックス」とか、やたら強くて正体不明のレイバー、ロボットみたいだが、この黒々としたアンプのジャンクが手に入った。
十分なクオリティでスピーカーを鳴らしていながらも、どうもスコーンと抜けた音がしないKENWOOD A-1001を、処分する決断をした。ほとんど1日中鳴らしっぱなしで、視聴時間はそれなりにあったので、そんな曖昧な自分ごときの耳でそういう決断に至ったこと自体が、何やら不遜にも思えたし不思議だった。でも、あかんのである。長く聴いているから余計そう思うのと、PC音源については、ソフト的なものをかまそうと思ったが、諦めた。
KENWOOD A-1001は1995年製KENWOOD KA-1001GからLPプレーヤー用Phono入力を外して、他の高級ミニコンポを歌ったCDプレーヤなどとの連動連携を取れるようにしたモデル。古いと言ってもパワードサブウーハーの出力端子を持っていて、今のAVアンプのマルチチャンネル以前、X.1チャンネルの最初の2.1チャンネルの流れの製品だ。ニア・スピーカーにプラススーパーウーハーを足す流れ。だから、これもジャンク修理したマランツのサブウーハーSW7001も、十分なパフォーマンスで鳴らしている、私には贅沢なアンプだ。だったはず。
導入当初は、デジタルアンプであるTEAC A-H01の性能に驚きながらも、メインアンプは、アナログアンプを結果的に選択することになった。TEAC A-H01&QUAD L-iteの音は気に入っているのだが、デジタル出力制御のおかげで、ダブルアンプで鳴らすことができている。解像度や、音圧、音質的に過不足は全くない。SW7001はこちらで鳴らすことにした。ただ、驚いたのは、小型スピーカーでも、A-550では、低音がうまく鳴らされてる。KENWOOD A-1001は素養の良い音で鳴っているピュアオーディオということで、BASS、TREBLEコントロールも、ラウドネスも前世紀の遺物的な扱いをして、フロントパネルから廃していたこともあるのだろう。
修理がかなり面倒になって放置してあるYAMAHA A-500(¥49,800; 1982年頃; 8Ω, 70W+70W)の音が、A-1001よりもどうやら我が家の小型スピーカー陣とは相性が良いなと思っていたので、最悪部品取りでいいかという割り切りで、初めてのオークションサイトから、A-550のジャンクを入れた。音が出ないということだったので、おそらく、リレーの故障その他だろうと思ったのだが、リレーを交換したら、今度は、あっさり音が出た。アンプの音なんか嘘です、アンプに音色などありません、と言ってもやっぱり解像感その他、違うし、好みの音があるというのは、コンビニの飯、どれも美味しいよね、これで十分だよみたいにいっていても、それが無理になるみたいなのと同じかもしれない。SN比?ダンピングファクター?高長波ノイズ?わからないけど、確かにある。そして、このKENWOOD A-1001は、確かなパーツで造られ、高級ミニオーディオで売り出したほど、素養が良い分、内部の回路を改造して、音を修正しようという人たちが発生したアンプでもある。私には、それは無理だなと思った。
ややこしいことには、実家に置かれていたYAMAHA A-5(¥45,000; 1979年頃; 8Ω, 40W+40W)というCPの良いDCアンプがあって、
その系譜のモデルに同じモデル名のA-550というのがある のだ。これは名前が今回の機体とダブルので、海外製品かと思いきや、
購入してこっちの方のA-550を使っていたという人のブログ記事が発見できた 。そしてそのA-550はその後のA-5の改良バージョンYAMAHA A-5D(¥49,800; 1981年頃; 8Ω, 60W+60W)ともフロントパネルは違っていて、見た目は旧型のA-5と同じなのだ、そしてこちらも、先のデータベースサイトには載っていない。ちなみに、このA-5の系譜では、フラッグシップモデルA-9が1979年で、最終的に人気のあったA-7の改良版A-7Dが1982年あたりとあるので、A-三桁モデルと生産年が、被りながら代替わりしていく流れだったのだろうと思う。
私が手に入れた方のYAMAHA A-550のデザインは、インプットセレクターについてみると、その後に続くYAMAH高級アンプの基本デザインとなったA-750、A-900、A-1000、 A-2000などのパネルと類似デザインとなっている。
YAMAHAのアンプといえば、シルバーカラーのリッチで精細なイメージがあったが、SANSUIみたいな漆黒のカラーモデルも、この頃から出していたことを550周辺の画像を見て初めて知った。この黒黒艶々とした筐体の色は、中古の状態がとても良かったこともあって、SANSUIのアナログアンプの人気シリーズ同様、精密感を演出していて、素直にいえば、視聴している音に影響するぐらい、とても素敵だ。
A-500周辺の黒い機体をスペックを拾いながら見比べてみると、大きな違いとしては、先に述べた通り、ミューティングスイッチがA-500 とA-25は共通だが、A-520ではここのスイッチは、トーンコントロール部分をパスするスイッチになっていて、そしてA-550では"RICHNESS"スイッチ、マニュアルを読むと、低域限界45Hzを約1オクターブつまり20Hzあたりまで下げて、その下の超低周波はカットするモードとなっている。"RICHNESS"は上位モデルの高A-1000では、A級動作になったりするのだが、それとは全く違う。コストのかかるA級回路とはいかないまでも、別回路を乗っけて、微妙な音の変化を楽しむということで、付加価値をつけようとしたのだろう。
以上、つまりどういうことかというと、
【A-5】 【A-550】 【A-5D】の系列、それとは別に
【A-500】 【A-520】 【A-25】 【A-550】 の系列が存在する。
○生産年代はそれぞれとても近いが、前者が1970年代後半〜1980年代前半。後者は1980年代中頃〜1980年代後半。うちに来た個体も、アラフォーだ。
○A-5XX系は派生モデル、発展モデル、海外モデルなど、少なくとも4モデル存在するようだ。オークションのオーディオ関係で、多くの人が頼りにしている有名なオーディオ・データベースからは外れている。
○私の整理や、根拠としたサイトの書き手の勘違いでなければ、前者の系譜と後者の系譜に同じA-550というモデル名が、割と近い年代で、存在していた。ちょっと不思議ではあるが、人気データベースからも外れているので、検証は難しかった。
◯私の手に入れた方のA-550は、スペックなどから見ても、このかなり売れたと思われる500系の中では、最終型、一番のフラッグシップということのようだ。検索すると、安く手に入れられる個体が生きていて、いまだにアメリカでも人気はあるようだ。私にとって満足いく音でアナログソースもデジタルソースも鳴らしている。
○修正追記として。 A-5系のモデルにA-560というのを見つけてしまった。フロントパネルはA-5Dと共通で、こちらはブラックボディも存在したようだ。生産技術分野の知識がないので、よくわからないが、モジュール変更後のロットや輸出向け、現地生産などの結果などかもしれないが、スペックを見ても、なんとなく矛盾する部分もある。いずれにせよ、CPの良いモデルを作り、数を売る激戦のレイヤーで、色々出てたのだなぁと思う。ありし日の日本のオーディオ連合艦隊の全盛期、それだけ商売になっていたのだろう。生産台数などのデータがあると、もう少し色々、考えられるかも。
○この黒いA-5系のモデルだが、スペックを見るとA-5DのようにA-5の改良化型というよりは、A-5Dのフロントパネルや操作系を取り入れて変更しただけのモデルに見える。
○こうやってスペックを並べていて思いついたのは、手元のA-550以外のスペックと正体が不明なのは、アメリカ市場向けのモデルなのではないかということ。パワーを上げてあるがあるが、高調波歪率のスペックは落ちている(厳密に比較できているかちょっと微妙だが)。コストダウンや市場を意識しての出力チューニングの可能性は感じた。 尤ヴィンテージオーディオ関係のデータベースや交流サイトは海外にはいくつかあって、そこで検索するとヒットする。登録すれば、スペックも、あるいは調べられる可能性がある。海外にもスペックマニアはごまんといるはず。
○その後のYAMAHAの高級モデルにもあまり採用されなかったブラックボディが、この年代において目立つのは、1980年代当時、圧倒的なSANSUIのヒット商品SANSUI AU-D607系を意識したマーケティングの影響はなかったか気になった。YAMAHAの黒い筐体は、その後は、ほとんど現れなくなった。やはりこのメーカーが持つアンプ・デザインのアイデンティティとは違うるからか。スピーカーのヒット作NS-1000MやNS-10Mなどは漆黒のツルツルのイメージなのだけれど。そちらに合わせたイメージとしたら、年代的には後者だけれど。
○このモデルA-550はコアなビンテージオーディオファンには、特に訴求するものは何も持っていないようだが、海外のレビューでこんなテキストを見つけた。
...They were overall...well built. Back when the world was still seen as an endless supply of natural reserves..and an endless garbage dump..and we could afford to put quality into gear for reasonable costs.
「この系譜のシリーズは、総じてよく造られていた。この世界が、まだ天然資源をゴミにして出しても無限のゴミ箱と見做されていた時代、我々は見合ったコストで、品質の高いオーディオ装置を持つ余裕があった。」
○ちなみにこっちのA-550の新品参考価格は、63,110円、もう一つの方のA-550は、これよりは2,3万円は下がるとおもう。オークション価格は、この時代のアンプはジャンクが殆どなので、状態の良いものの価格を想定した場合、あまり参考にならない。数百円のリレースイッチを交換すれば治る症状のものも多いと思う。
調べた限り、完全動作品は、平均27,129円と性能に見合った金額だと思う。1970年代後半にDCアンプが出てきて、帯域、高調波歪率、S/N比が飛躍的に伸びて、アンプ性能が飛躍的に上がった時代の量産機の眷属。A-750以上になると、性能も上がるが、重くてバカ高くなるので、手が出しにくくなる。そういう意味で、とんがった個性はないけど音は悪くなくて割と手頃なのかも。
○スペック並べてみて感じたけど、ローエンドモデルにもMMだけではなくMC phono入力対応になっている。それだけ音楽ソースとしてはLPレコードが最上位にあって、当時ですらややマニアックだったMC対応を謳うことは、オーディオメーカーの矜持としては必須だったのだろう。
このディスクリートアンプは、数千円出して引き取って、私のようなものが好きな音楽を流すツールとして、音が出なくなるまで使うにふさわしい。かつての高額名機でもいいのだが、このあたりの中古を修理して使うの、省エネ、省資源的な味わいがある。しかしながら、これをPC音源で駆動して鳴らすのに介在しているのは、まさしく、無限のゴミ箱を前提にした物作りのおかげで、購入できる幾多のデジタル商品とデジタル⇔アナログ変換デバイスの恩恵ではあるのだが。
いずれにせよ、感じることは、今、私の音楽空間には、チコもナッチもユッチもがいないのだ。どんなに彼らの安眠を邪魔しない、落ち着いた質の良い小音量で音楽を流したとしても。
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