センサーカメラー動物調査用自動撮影カメラ・クロニクル1

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 1/4世紀以上前に、奄美大島で、自動撮影装置で撮影できたアヒヒゲの画像を探していて、古いパソコンから切り離したハードディスクを繋いで、ようやく見つけた。もちろん当時は、まともなデジカメなど存在しない時代で、フィルムプリントからのスキャンだ。ネガスキャンもやっていたが、ゴミ対策が大変で、プリントからのデジタルデータ化が多かった。ポジはランニングコストがかかるので、撮影作品を生業としているわけではなかったから、全てネガプリントだった。
 ファイルを見つけたのはいいが、当時はMacで処理したため、属性ファイル名が存在しない。普通は、それでもMacの場合は、通常は勝手に対応アプリが立ち上がって動くのだが、なぜか今のシステムで開かない。Mac/WindowsそれぞれのGraphicConverter/Photoshopで、思いつくだけのフォーマットを想定して、属性を指定して開こうとしたが、ダメだった。偶然、Mac上でファイルを選択した上でいつもやるようにスペースキーを押してしまったら、普通にプレビューで画像が出てきた、うーん。後はプレビューの書き出し機能で、好きなフォーマットできたので回収できた。何故そうなったのか、ちょっとわからないが、古いマックのPhotoshopに紐づけられていたファイルだったということは思い出した。ただ、Windows版のPhotoshopに紐づけることを含めて属性ファイル名を変えてみたが読めなかった。
 これはアカヒゲを撮影しようとして仕掛けたわけではなかったのでが、自動撮影装置は、ターゲットとしている哺乳類以外の特に鳥類が、え?って形で撮影されたりする。希少な国の天然記念物、国内希少野生動植物種の画で、通常の望遠レンズなどではあり得ない近接撮影の画像ではある。残念ながら後ピンではある。
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 自動撮影は、フィルムカメラ時代に始まった。1970年代後半、当時、岐阜県の高校の教師の方で、某施設から逃げ出したアライグマが居るというのを、自動撮影装置による撮影で証明された方がおられた。1970年代末から1980年代にかけて、既に野生動物写真の日本のパイオニアの写真家が、自動撮影装置も駆使して、多くの作品が発表されたりしていた。
 1990年代になると、この時代の自動撮影装置は、デジカメ以前のセンサーカメラの組み立てによる機材としては、ずいぶんシンプルかつ使いやすいものが現れていた。ベースとなるフィルムカメラは当時の京セラT-proofだ。
 それ故に、いわゆる、素人のポン焚き写真タイプの動物生息に関する「証拠写真」が量産される。勿論、デジカメ時代になってからの数に比べれば、制約があったが、画期的なことであったし、当時はフィルムも現像代も、安くてなんとかなっていた時代だった。
 希少な動物写真記録で済むはずがないプロの作成する写真としては、アヴェイラブル・ライトによる偶然得られた撮影画像以外では、限界があるのだ。補助光のお世話になる場合、照射角度含め、調整の効く多灯によるTTL制御の一眼レフカメラ以外では、限界があるのだ。これは奄美大島で本格的なノネコ対策が行われる前の画。居住地域がある近辺の三輪内では、こんなニャンコが写っていたりした。この島の希少種含めた保全管理は大変だなと当時思ったものだった。もちろん猫に罪はない。毛並みの良い、栄養状態の良い黒猫だったから、多分飼い猫だったと考えられる。

 Kyosera T-proofというカメラの紹介動画は割と見つかる。これに使われているCarl Zeiss T* Tessar 3.5/35は、本当によく撮れるレンズで、本体の防滴性能とともに、どこにでも気楽に持って行けるカメラとして、フィルム全盛時代には、フィールド系の人たちには愛好者は多かった。
 これを独自改造して、センサー制御して、自動撮影装置にしたものが野生動物の観察、記録、確認用として製品化され、フィルムカメラ時代の末期から、デジタルコンデジカメラが普通に使われる用意なってもしばらく使われていた。
 私も、ブログが長いので、フィルム中心でやっていた時代のエントリもあって、このカメラ&レンズの画像も上げている。
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 これは、製品として販売される前のテトラポットにカヴァーが被されていたものを撮ったもの。ちょっと不思議な巨人っぽいと、カメラの師匠からちょっくら誉めてもらった画だ。これ光線を選んだせいで、モノトーンみたいに写っているけど、モノクロ画像ではない。

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 こんな感じで、アヴェイラブルライトを使って撮影すれば、T-proof(海外版はKyosera T-4、T-5と銘打たれていた)の実力は、それなりに評価されるべきコンパクトフィルムカメラだった。自動撮影装置の話のはずだったので脇道にそれてるが、フィルムカメラ時代の末期となる最後の全盛期、ツアイスレンズ・ブームが起きた時の信奉者の聖書旧約、新約二冊のうちの一つでも、このカメラとそのレンズは取り上げられている。

ツァイス伝説の継承 単行本 – 1999/7/1

折戸 敦生 (著)

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


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 レンズの良さに加え、レンズ性能を引き出すために細かいAFのステップが設定されていたことも重要だ。一眼レフと異なり、コンパクトカメラのAFでは無限遠を出すのは、それなりのシーケンスが必要になり、特に照度が低い場合、絞り開放だとどうしても甘くなったのだ。
 このT-proofは、遠方の稜線や三日月の輪郭が甘くなることはなかった。それなりの性能だった。
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 このホンドタヌキもT-proofの改造モデルT-4によるもの。当時のコンパクトフィルムカメラでも、それなりに合焦速度やシャッタータイムラグは早く、使えるレベルに合った。
 撮影作品に振った資材でない限り、本体のレンズに近い場所にインストールされた1灯のストロボ写真では、網膜反射も起こりやすく、証拠写真以上の作品は無理であった。昼の部、アベイラブル・ライト下であれば、なかなかの「作品」が撮れることもあった。ストロボの光に反応するデバイスでサブのストロボを光らせたりしてもカメラレンズの光軸上近くににストロボがある結果、こういうのはしょうがないのだ。まさか、人の赤目回避機能みたいに網膜を閉じさせるよう二回光らせるとかやれないし。
 そもそもコンパクトカメラのストロボ光量制御というのは、写ってるものが何かわかればいいやぐらいの制御だ。ちなみに今時のセンサーカメラは夜間モードで、フィルターなしで、赤外線写真になっているけれど、正面1灯という状況は同じである。プロが計算してわざわざセンサーカメラで作品撮影の補助に使うとなると、昼間で、通常ならあり得ない距離からの画や動画が撮れることが最も大きな長所だろう。作品になるレベルの画を遠隔で撮影するとなると、今は今はモニター画を遠隔で送って、自分で構図やシャッタータイミングを決めて撮影する選択肢もあるので、やはりプロが作品撮影のツールにするということにはならないだろう。それでも、デジタル時代になれば、圧倒的な量により、結構すごい誰も見たことがない動物写真は、集まってきている。実際にセンサーカメラだけで作品を作っている方もおられる。

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 ちなみに、T-proof以前、どのようなカメラが、自動撮影機材の選択肢にあったかというと、モータードライブ/ワインダーを装着できるフィルム一眼レフカメラだ。メジャーメーカーの主戦機から選択肢はあるけれど、置きっぱなしにするので、あまり高額なカメラは使いたくなかったというのが多くのフィールドワーカーの判断だったし、数をかけようと思ったら、結局、高額撮影機器を使えば、それは大変なことになる。
 実際に、後述、ご紹介する浜田太さんは、機材を複数回盗まれて大変だったとの話だ。明らかにストーカー的に、彼が高額な自動撮影機材をセットするところを見張っていて、後をつけ、そして盗んでいくというのをやっていた人間がいたのだろう。
 私の場合、T-proofの自動撮影機材セット以前、重宝したのは、多くのカメラがAF化してしまっても依然としてマニュアルフォーカスで、置きピンでセッティングできるこのカメラRICOH XR-P
 このカメラはある意味物凄いカメラで、AFを必要としない当時の海外の一眼レフユーザーからは、かなり評価された。フィルムカメラ時代のAF一眼レフは電池の消費量が凄まじく上がっていた。なにしろそれまでの露光計ぐらいしかカメラに電池が必要なシーンがなかった時代から、AE露出制御のために色々電子部品を動かすようになったわけだが、、それなどと比べても全く次元が違う電力消費になっていった。
 RICOH XR-Pは、まずストロボを内蔵していない。その上にAFもなく、それで電源は単四電池を4本も積んでいる。ワインダーこそ動かしているけれど、シャッターチャージと精々36枚のフィルムを一挙数本に撮るぐらいだとしても、電池など全く減らないのだ。カメラ界のスーパーカブ50みたいなところがあった。また、このカメラ、シャッターは1/2,000まで使えてAEのモードはてんこ盛りで、プラスティッキーなボディもある意味面白くて、ペンタックスーリケノンマウントで、普段使いでも色々悪くない使い潰せるカメラだったのだけれど、唯一の欠点がシャッターフィーリングが最悪なことで、コストをかけてないカメラの弱点であった。
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 既に遥か昔の話になりつつある。最初は自動撮影装置を使っての撮影を考えていたのだが、当時の私の持つ装備では、長時間漆黒の闇の中でイリオモテヤマネコを待っている間、ストロボをスタンバイさせておくことはかなり電池の消耗が大変だとわかっていたので、カメラを持ったままシェルターで待機することにした。
 ある意味私の運命を分けた、学部生時代の撮影だった。私はその当時、何人か、本気なら紹介するよって言われてその道をぼんやりと考えていた動物写真家ではなく、観察者でありたいと思ったのだ。撮影は証拠写真レベルで満足してしまう欲のなさと才能の無さだったのを自覚したのだ。

 デジタルに移行する前、AFカメラに当たり前のようにポップアップストロボが実装された時に、もう一つ大きく変わったことは、内蔵されたスロロボのチャージ時間の圧倒的な短縮と、それを達成するためのバッテリーの変化とそれに伴う給電の強化だった。そう、当時の私のカメラは、置きピンができるからそれで十分なはずだったわけだが、AFカメラではなかったし、ストロボ関連装備も貧弱だった。だから彼が現れるまで待っていた。片足だけで80ヶ所以上、島の凶暴な蚊に刺されながら。どうでもいい話だが、毎日、あり得ないくらい蚊に刺されていると、体はほぼ反応しなくなる。蚊の唾液腺にやばい病原生物がいない限り、当時、自分の体をその方向には持っていける自信はついた。
 デジタル一眼レフ時代になって、劇的に変わったのは、フィルム時代よりも圧倒的に電力が必要になったため、電池が全て充電可能なリチウムイオン充電池となり、モデルによっては増槽パックなども供給されたことだろう。
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 リレーによる自動起動撮影を駆使したエポックとして、有名な作品がある。
 これは、マイク・オールドフィールドのアルバムカバーに使われた水飲みツバメの写真だ。Stephen Dalton、 彼は Phaidon Press の「The Photobook」に掲載されている 500 人の写真家の一人だ。
 彼はブログもやってないし、Twitterもやってない。しかし彼のネーチャーフォトが書店の棚から買えるようになる前から、自然を撮影した高速フラッシュ写真の先駆者だった(彼は自分で、高速シャッターを作ったし、油に浸した紙で作った高速コンデンサーまで作っていた…)。彼は史上最高の写真家の一人だ。("One the greatest photographers who you should know about but in all probability don't"より)


The Complete Mike Oldfield

Oldfield, Mike/EMI Import

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 デジタル一眼レフの性能が上がりすぎて、大掛かりな仕掛けや準備をしなくても、今やデジカメ手持ちの直接狙いで、Stephen Daltonが撮影したクオリティ並みかそれ以上のツバメの飲水行動を撮影できないことはない状況になっている。技術の進歩とは恐ろしいものだ。

 自動撮影装置に使われる技術やセンサーなどの電子装置は、その黎明期から、動物写真家などが「作品」を撮影するための、強力なツールであった。元は狩猟用(ハンティングの意味で「ゲーム用」と説明された時代もあった)センサーカメラが、今のように野生動物の自動撮影の一般的なツールとなっても、デジタルにはなったが、一眼レフカメラで作品を撮るのは、この日本自然科学写真協会記事で紹介されている中田一真氏など、撮影するべきものが「作品」である限り必然ではある。
 今はデジタル一眼レフの性能が圧倒的に上がった結果、デジタル分野の中判カメラを使う必要は無くなったが、フィルム時代では、フィルム入稿を前提にした場合、モータードライブで駆動できるハッセルブラッド 500ELX系のカメラを使うのは必然だった。田中光常氏、宮崎学氏、岩合光昭氏、島田忠氏、栗林慧氏ら、目眩く才能の一斉開花により日本のネーチャーフォトを牽引し、海外での評価も不動のものとした的写真家の方々。あるいは、イリオモテヤマネコの研究者であり、図鑑などに貴重な学術、ネーチャーフォト作品を供給し続けた先駆者の安間繁樹氏、現在もアマミノクロウサギの撮影、研究家では第一人者の浜田太氏など、皆、多灯ストロボとモータードライブ/ワインダー付きのフィルム一眼レフとセンサースイッチセッティングを駆使して、撮影しておられた。先駆者ではよく使われる組み合わせだった。複数箇所に仕掛けるため、資材も高額になり、盗まれたりして、大変な目に遭う話もよく聞いた。

 スマホのカメラモジュールを流用したセンサーカメラ(自動撮影カメラ)で使い物になる以前は、自動撮影カメラというのは、いくつかのハードルが存在した。その結果、それらのハードルをかつてどのようにクリアする必要があったかという話を中心にまとめていこうと思っている。今のセンサーカメラによって、それらの問題が解消された部分というのはあるのだが、実は今でも根本的な問題がクリアされていない部分もある。
 次回は、それらを整理することで、今のセンサーカメラがあっさり突破してしまった壁や特性、そして弱点について、またそれを回避するための使い方をまとめてみようと思う。

Commented by umi_bari at 2024-04-30 09:31
何か凄いことをされているのに驚きました。
正に神業ですよ。
お見事バグースです。
アラック、フィルムカメラからデジタルへの移行に遅れ、
さらに、デジタル一眼レフからミラーレス一眼への移行も
遅れました。
まあ、やっと買えた、Nikon Zfで楽しませていただいていますがね。
Commented by complex_cat at 2024-05-01 09:56
アラックさん、
野生動物生態記録は特殊な分野ではあります。
お金さえあれば最新機をどんどん更新していけば最上級のスペックは手に入るのですけど、そうも行きませんもんね。
私は、フィルムがコストよく使える間はフィルムで、それが無理になったなら代オチのデジタル一眼ってやってきてます。鳥の分野だと、最上級機が手に入らなければ、ミラー一眼の方がミラーレスよりはコストかからないですし性能上です。中古も豊富なので。性能は一般には頭打ちなので、後は取る側の人間の限界ですね。ゆっくりいきましょう。
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by complex_cat | 2024-04-21 22:05 | My Tools | Trackback | Comments(2)

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