デジタル時代にカセットデッキを手に入れる話 #8
2024年 09月 26日

1.はメタルテープが開発販売される前の製品であると云うことで、基本、古い個体が多いカセットデッキの中でもとびきり大昔の製品であると云うことである。怒涛の音質向上のための開発がなされる以前の個体というわけで、性能維持も含めてかなりハンディがある。全くないわけではないが、一般には手を出すのはやめた方が良い。尚、年代が新しくなるとテープのタイプの判別や知識をユーザーに求めるのは販売戦略的によろしくないと、自動的に判別したりする仕組みを作ったり、名称もメタルはType IVとなったりしている(ノーマルがType I、クロームがType II、デュアドフェリクロームがType III)。そういう呼び方をしているモデルは基本的にメタルテープ対応製品だ。勿論、今時未使用のメタルテープなど頭のおかしな値段でしか購入できないし、磁性体が経年劣化していない保証もないから(メタルテープ全盛時にもBASFなど、それはあった)、基本性能が高く、より後年に開発されたモデルを判別する以上の意味はないと思っている。 2.は、ヘッドの素材の選択は、音質と経年による摩耗とのややこしい問題だが、A&D(旧AKAI & Diatone)のGXヘッドは、音質と耐摩耗性を高次元で達成したものでそれを選択すれば、かなりリスクは回避できると思われる。その音質で録音・再生できるレベルの個体が、まま安価で手に入ったお陰で、手元のカセットデッキのいくつかは、ヘッドがLC-OFCを使用したレーザーアモルファスヘッドとなっている。耐摩耗性は馬鹿みたいに固くてガラス鏡面でツルツルの1970年代のSONYのカセットデッキの性能を牽引したF&F headには負けるが、音質は固すぎず、ボヤケもせずにとても良い。 中古デッキで気になる、耐摩耗性については以下の通り。使用履歴にもよるが、GXヘッドは、A&D(旧AKAI)のエポックで音質と耐摩耗性を両立させたヘッドだ。私にとっても憧れのヘッドだが、残念ながら手に入れるに至っていないので、評価にはその補正が入っている。 GX=フェライト (Ferrite)>センダスト (Sendust)≧アモルファス金属 (Amorphous Metal)>>ハードパーマロイ (Hard Perm-alloy)>パーマロイ (Perm-alloy)の順。 ちなみに音質は私の独断だが、こんな感じか。 GX=アモルファス金属 (Amorphous Metal)>>センダスト (Sendust)≧フェライト (Ferrite)>ハードパーマロイ (Hard Perm-alloy)≧パーマロイ (Perm-alloy) ちなみにパーマロイというのは、高耐久性や高音質が求められないラジカセ用のヘッドとして一般的だ。 レーザーアモルファスは、新品の音質は素晴らしいのだが、同じアモルファスヘッドでも、コバルトアモルファスヘッドよりも耐摩耗性で劣り、内部構造の経年的な耐久性で、トラブルは起こしやすいようだ。調べてみたら、カタログ値の帯域のはるか手前でドロップしていたりする。 3.はテープの音質に簡単に影響してしまう変調ノイズ狩りのためのワウフラッター性能を上げる機構で、勿論コストがかかる。最終的にはWalkmanにもその機構を乗せたほどだ。誰にでも回転ムラによる音の劣化はわかりやすいが、ダイレクトドライブはゴムやプーリーが介在しないので、理屈の上では経年劣化に強いという長所もある。それでもDDだからと油断は禁物で、精密機械動作品は、どこが破れてくるかわかったものではないし、DDでなくても回転性能が良いモデルはあるし、経年劣化に関してモーター自体に弱点のモデル(YAMAHA K-1000など)もある。回転系メカとしては究極だが、モデルが限定されるので、当然ここにチェックが入る完全動作品は高額になる。メカがシンプルに見えるが、制御系はやっぱりディスクリートやチップが劣化、破損することはあるので、生きている個体は貴重故に高額。 4.は二つのキャプスタンの間に安定したヘッドタッチでテープを回すわけで、完動品でトラブルなく動いていれば、その性能が満たされている可能性は高い。当然うまくシンクロしていなければ、テープやメカニストレスがかかるわけで、まともに動かないはずで、中古品にとっては0か1かみたいな話ではある。ただ、これもシングルキャプスタンでも、音質に定評のあるモデルは少なくないので、コスト管理が進んだ時代には、必殺技として外してくるモデルもあった。その分、こだわりを捨ててチェックを外せば、元値はそれだけ安くなる通りではある。実際に、採用メカは思ったほどはワウ・フラッター性能がブッチギリを担保するかというと、そうでもなかったりする。実際に、このメカはSONYの1970年代黎明期の製品でも達成されている。当時のワウ・フラッター性能は0.14ぐらいなので、先入観は危険である。 5.周波数特性は、ワウフラッターと同様、ラジカセとカセットデッキの間の深い谷間を示す性能部分。全盛期の一般のラジカセがそこそこ音が良いと言われるものも13,000Hz止まり、カセットデッキは黎明期から15,000Hz上限を確保していた。人間の聴覚は、加齢により50代のオーディオ評論家は下手すると12,000Hzも聴こえない人もいるわけだが、そこでカットされた結果の音質は、どうせあんたの耳じゃ聴こえないからカットしても関係ないでしょっというようなことにはならない。それ以前の高域からハーモニックスのゆらぎなど、音声パターンでは微細になりすぎてわからない部分の解像度が落ちている可能性もあるから、間違っても音が変わらないということはない。デジタルデータとは違うのだ。アナログオーディオの帯域性能記述は、デジタルでスパッと20,000Hz以下がデータとして取り扱わない形で切られるのとは意味が違うので、高域に余裕があるということは、結果的に、その下の帯域の音質も担保されることになる。 6.最近はDolbyなどノイズリダクションを回避する流れも大きいが、SN比はそれなしでの音質がデッキの素の音質でもあり、素養の良いのは、この値も良い。ただ、これも例外があって、当時、フィルムカメラのような商品テストみたいな雑誌やその特集には限界があるので、カタログ数値性能を絶対的に信頼すると、安く音質の良い機体が漏れるモデルは多くなる。でも大抵はそういう機種の評価はしっかり知られていて、オークションでも安値にはならないけれど。 7.物価や、その時代のカセットデッキのオーディオにおける地位のようなものも反映するのだが、技術や資材が投入されたものはやはり発売当時の値段もそれなりに高額。またCD、デジタルオーディオが普及し始めると、価値の低下から、基本スペックはそれなりなのに、思いの外発売時の価格が低かったりする。でもその意味は、海外外注や以前と数が売られていたラジカセの部品共有などにより下げられているわけで、投資が減少した結果でもある。それ故に、カセットデッキ全盛期のモデルを脅かすような基本性能の高い製品は、あまりにも安くなった時代には、作られるケースはほとんどなくなった。その時代においても、それなりの値段はしているが、Dolby Sやダブルカセット化によって低い寝付けにならないモデルもあるので注意が必要。勿論、中古個体では、高額だったからと言って昔日の性能が維持されているかは個別の問題。 8.DCアンプ構成は、1980年代後半からプリメインアンプだけではなく、カセットデッキでも、内部アンプに採用する高性能、高額モデルが登場した。低温や高音の最終的な再生音質も、それに左右されるから、上級機の激戦区では差別化のために必然だったとも言える。








