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冤罪で牢獄に繋がれた男の歌

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 かつてはボクシング世界チャンピョンも狙えた男。無実の罪で22年牢獄に繋がれた男の歌。Bob Dylanはこの歌でルービン・カーターの冤罪法定闘争への支援を行った。穴リア地心地でライブも行ったようだ。日本でも当時Diatone Pops best10で1位になった曲。


「こんな国で恥ずかしい」まで含めて、権力側による犯罪とも言える事件として、まるで「袴田氏冤罪事件」を謳った歌のよう。

冤罪で牢獄に繋がれた男の歌_b0060239_18515067.jpg
歌詞カードコピーは何だなぁと思ったので、OCRにかけてみた。今は精度高い。
詳細チェックはしていない。


ピストルがひびいた酒場の夜
パティ・バレンタインがおりてきて
バーテンが血の海にたおれているのを見る
「たいへん、みんな殺されてる!」
というわけで、ハリケーンのはなしがはじまる
彼こそ権力が罪を負わせようとえらんだ男
なにもしなかったのに
独房にいれられた、 だがかつては
世界選手権もとれたはずの男
三つの死体がよこたわるのをパティは見た
そしてもうひとりのベロウという男、
あやしげにうろついていたが
「おれじゃない」 と彼はいって、肩をすぼめた
「おれはレジから盗んでいただけ、わかってくれるだろう
おれはやつらが出ていくのを見た」 と彼はいって、息をつぎ
「おまわりを呼んだほうがよさそうだ」
というわけでパティがおまわりを呼び
やつらは赤ランプをぴかぴかさせながら現場に来た
あついニュージャージーの夜
アルフレッド・ベロウには仲間がいて、
そいつは警察のやっかいになったことがある
ベロウとアーサー・デクスター・ブラッドレーは
餌物をあさっていたのだ
彼はいった「おれは二人の男が出ていくのを見た、
やつらはミドルウェイトに見えた
やつらはよその州のナンバーの白い車にとびのった」
そしてミス・パティ・バレンタインはただうなずいていた
おまわりはいった「ちょっと待て、 こいつはまだ生きている」
そこでみんなは彼を病院へはこび
そいつはほとんど目があかなかったが
犯人を見ればわかるはずだといった
朝の四時にやつらはルービンをつれてきた
病院へつれてきて病室へあがらせた
傷ついた男は死にかけた一つ目で見上げ
いった「なんでこいつをつれてきた? 「こいつじゃない」
というわけで、ハリケーンのはなしがはじまる
彼こそ権力が罪を負わせようとえらんだ男
なにもしなかったのに
独房にいれられた、 だがかつては
世界選手権もとれたはずの男
アーサー・デクスター・ブラッドレーはいった
「よくわからない」
おまわりはいった
「おまえのようなだめなやつにはチャンスなんだぜ
おまえにはモーテルのしごとをみつけてやったし、
ベロウともはなしをつけている
ルービン・カーターの裁判はうそだった
犯罪は第一級殺人、 だれが証言したか?
ベロウとブラッドレー、ふたりともいつわった
そして新聞は、みんなつきあった
彼のような男のいのちが
バカの手ににぎられていいのだろうか?
あきらかにでっちあげにされた彼を見ても
どうにもできず
もう刑務所にもどりたくはないだろう、 真人間になって
社会におかえしをするんだ
あん畜生奴は強気で、ますます強気になりやがる
やつのけつに火をつけて、おっぽりこんでやりたい
この三人殺しはあいつだとつきとめたい
ただこのような国に生れたことを恥じるだけだ
ここでは正義はゲームでしかない
あんなやつ紳士のはずがない」
ルービンはパンチ一発で敵をたおせた
があまりそのことをしゃべりたがらなかった
それがしごとだ と彼は言った、 金がほしいからだ
それがおわったらすぐにでも
ニジマスの川がながれ 空気のうまいところへいって
山道で馬をのりまわしたい
どこか天国へいって
背広とネクタイをつけたすべての犯罪者たちは
自由にマーティーニを飲み、日が昇るのを見る
一方ルービンは三メートルの独房に仏陀のようにすわる
生きながらの地獄の無実の男
これがハリケーンのものがたり
だがまだおわったのではない、彼の名前がはらされ
ついやされた時間が彼にもどされるまでは
独房にいれられているが、かつては
世界選手権もとれたはずの男
一方、おなじ町のぜんぜん方角ちがいの所で
ルービン・カーターと二人の友だちが車にのっていた
ミドルウェイト級選手権第一位挑戦者
どんなわなにかかるとも知らなかったが
おまわりが道ばたによせてとまったとき
このまえもそうだったし、 まえのまえのときもそうだった
パターソンではいつもそうなのだ
もしあんたが黒人なら街頭には出ない方がよかろう
おまわりとのごたごたがいやならば
四ヵ月のちにゲットーは焔がもえさかり
ルービンは南アフリカで戦って名をあげていた
一方アーサー・ブラッドレーは
いぜんとしてどろぼうから足をあらわず
おまわりは彼をしめつけ、
だれかに罪を負わせようとしていた
「あの酒場での殺人をおぼえているだろう」
おまえは逃げていく車を見たといっただろう
法律の味方をしたいとおもわないか
あの晩おまえが見た逃げていく男は
このボクサーだったかもしれないな
おまえは白人なんだろう」
だがそのときやつらは彼を牢屋へぶちこみ
男をネズミにかえようとした
ルービンのカードにはすべてしるしがつけられ
裁判はブタのサーカス、 彼にチャンスはあたえられず
裁判長が呼んだ証人はスラムのよっぱらいとか
彼を過激派の住所不定だと見た白人とか
ほんとうに頭のおかしい黒人とかで
彼が引金をひいたことを疑う者はいなかった
がピストルは出てこなかった
検事は彼こそが犯人だと言い
全部白人の陪審は賛成した


Hurricane -Bob Dylan

 どちらがどうとか比べることはどちらにとっても失礼なことだが、袴田巌氏は、死刑判決を受けていた。1966年8月18日に逮捕され、再審無罪判決が確定した2024年10月9日まで58年間、冤罪による死刑の恐怖に苦しみながらも、そして姉上や支援者とともに闘った人。そのダメージと取り返せない人生の痛手は、想像すらできない。

 袴田氏がRubin Carterと同じ、ボクサーであったことも偶然だが、日本ボクシング協会が長年にわたって袴田氏を支援してきたのも、共通したものを感じる。冤罪に苦しんだ二人に親交があったことを、メディアも伝えている


2024年10月9日 ‐ 検察が上訴権を放棄。袴田巌氏の再審無罪判決が確定したその日、洋楽の趣味が近いこともあって、末っ子に、この曲を教えた。そうしたら翌日の今日、彼が言った。「父さん、ハリケーン、聴いたよ」

 え?っと一瞬、アメリカを襲っているハリケーンの話かと勘違いするボケをかましてしまったのだが、彼はちゃんと視聴してくれて、そして、Bob Dylanが畳み掛けるように歌うその内容も含めて、こんな曲があったんだ、すごい歌だと言ってくれた。
 Rubin CarterとBob Dylanの支援になるとは思えなかったが、アルバムDesireは、LPもCDも買ったのだった。

 家族でこの曲を再び聴き直した。
 「このジプシーバイオリンがイヤーワームになるだろ?」「そうだね」「この部分、すごい字余りだろ?」「うん。」「ともかく彼が伝えなきゃいけないって思ったことを歌に乗せたんだ。」「英語の曲で字余りってすごいな。」「それでも彼だから、歌になっている。彼がノーベル文学賞を受賞したの、伊達ではないと思っているんだ。」

 そう言えば写真の方、色々関わりがあって、やり取りしていただいた、京都の著名な写真家の方の仕事の中に、その方は音楽家でもあった故に、Bob Dylanのアルバムの日本版のジャケット撮影があったと伺ったことを思い出した。私の縁も、色々あるなぁと思ったりする。


Commented by sknys at 2024-10-21 20:40 x
ディランは苦手なんですが、〈Hurricane〉を聴きたくてアルバム(LP)を購入しました。
このプロテスト・ソングもノーベル文学賞(2016)の受賞に繋がったのかと思ったり‥‥。
英覆面ユニットSAULTの《UNTITLED (Black Is) 》と《UNTITLED (Rise) 》(2020)もジョージ・フロイド事件に端を発したBLM(Black Lives Matter)を象徴するアルバムとして大きな話題になりました。
Commented by complex_cat at 2024-10-26 20:37
sknysさん、私もそんなにディランを聴いている人間ではないのですが、このアルバムは手に入れました。本当に圧巻です。Saultって、R&Bの女性ユニットなんですね。意外でした。UNTITLED (Black Is) はかなり実験的なアルバムに感じました。
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by complex_cat | 2024-10-10 20:36 | Incoherent Music Box | Trackback | Comments(2)

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