カセットデッキの選び方。猫から教えてもらったというわけではないが。 以下の要件を満たすカセットデッキの個体を選定する。 要件a) アジマス調整ができている。 要件b) 周波数特性が-20dBのホワイトノイズ録音において、ノーマルテープで18kHz、クローム、メタルテープで20kHzまで届く。
要件c) テープ走行が安定しており、ワウフラッター性能は0.05WRMS以下。 以上。性能についてのチェックは、以下の通り。 要件a) 1) アジマス調整ネジの位置と自分で歯が断つかどうかの判断と工具を確認、無理をしない。2)アプリケーションはWave Gene1.40かAudacityで315Hzのトーン信号を作成、3)この音源のPC出力(私の場合DACを繋いでそのアナログアウトから。PCのイヤーフォン出力は使ってない)をテスト対象のカセットデッキにLine入力で入れて録音。これを3Headデッキなら、録音しながら、3)その再生信号をLine出力を再びPCのアナログ入力から入れて、WaveSpectra Ver. 1.40を用いてアジマスネジを調整する。2Headなら一旦録音しておいて、再生しながら同様にWaveSpectra Ver. 1.40調整するだけである。 TC-K333ESのアジマスネジの位置も分かったので、無事、調整確認できた。調整ネジは固めてあって、そのポジションでほぼ問題なかった。リサージュの形からアジマスがぴったし調整できているのが分かると、やっぱりとても気持ちがいい。このモデルは、古い割に変調ノイズも少ないのがよく分かる。化け物のような高域の周波数特性が伸びていく機体ではないようだが、十分なHi-Fiスペックだと思う。 因みに我が家のデスクトップPCのミニジャックからの入力は、Lチャンネルだけデジタル変換プロセスに問題があるようで、音源はまともだが、変調ノイズで暴れてこうなってしまう。原因はわからないが、まあRchだけでもまともに描ければいいので気にしていない。PCはあくまで音源として使っていて、DACでデジタル、アナログアウトプット用だから、PCでHi-Fi録音する気もないので特に問題はない。 要件b) 1)アプリケーションはWaveGene 1.40かAudacityでホワイトノイズやCharp信号を作成し、2)PCからの出力(私の場合DACを繋いでそのアナログアウトから。PCのイヤーフォン出力は使ってない)をテスト対象のカセットデッキにLine入力で入れて録音。3)カセットデッキからのLine出力を再びPCのアナログ入力から送り込んで帯域測定を、WaveSpectraを用いて測る。 1)アプリケーションはWave Gene1.40かAudacityで、3015Hzのトーン信号を作成し、2)PCからの出力(私の場合DACを繋いでそのアナログアウトから。PCのイヤーフォン出力は使ってない)をテスト対象のカセットデッキにLine入力で入れて録音。3)カセットデッキからのLine出力を再びPCのアナログ入力から送り込んでワウ・フラッター値をwfguiを用いて測る。 これで、性能が満たされていれば、それを大切にメンテして使う。アジマスズレが原因なら、ある程度高域の音質改善は可能である場合がある。要件が満たされなければ、どのレベルで満たされないかを見ながら判断。アカンと思う機体は諦めて、問題を明記してオークションなどで処分。次の候補を手に入れる。 以上。後は、私には十分な製品を手に入れるつてがないけれど、テープについてちょっと別の回に書きのこしておこうと思う。 これで、CDやデジタルソースからのテープ録音については、そんなに無様なことにはならない音質が手に入る。実際カセットテープの音の良さを堪能できるし、全盛期のカセットテープデッキの音質の良さを知らない人に、直接ヘッドフォンジャックで繋いで聞かせても、スピーカーによる視聴させても、デジタルソースとの区別は、ほとんど無理だと思う。CD全盛時代の前半、iPodから始まるデジタルオーディオ、サブスク全盛となる以前、かつての家庭用HiFiオーディオの一翼を担わされていたハードウェアとソフトで、オーディオメーカーのモデルも百花繚乱、投資していた時代は20年余り続き、リスナーも当時の高性能機の音で音楽を楽しんでいた。 この後は蛇足なのと、内容はトートロジーみたいなものなので、お好みで。因みに、理由はわからないが、生成AIのカセットデッキとカセットテープの解像度が上がった気がする。相変わらず不思議装置でゲテモノで、何故かモノラルみたいな1chメーター付きで、機能している装置に見えないけど、以前のものよりはかなりマシである。猫は可愛い。後、ガンダムはガンプラ的解像度は上がったけれど、ガンダムのコックピットでカセットデッキで音楽を聴く画を要求しても、なぜかガンダムさん立ちと視聴するという画に勝手にAIは置き換える。「ガンダムの『コックピット』」が良くなかったのかも知れない。ガンダムのプラ感はある。 ●以下はこのシリーズのエントリとリンク このエントリ自体は、 個人的な中古カセットデッキ選定の要件と流れ
になります。
Edit | Del 現在のカセットデッキを取り巻く状況
中古カセットデッキを手に入れるための基礎知識
現在のWalkmanタイプのカセットプレーヤー
中古カセットデッキのアジマス調整、メンテナンス周辺
廉価イヤフォン性能とカセットデッキをカセットプレーヤーにする
Walkmanタイプのカセットプレーヤーとポータブルカセットデッキ
ワウフラッターと中古カセットデッキ
中古カセットデッキ選定の要件に関する注意事項
まともな音楽視聴が可能なカセットデッキを手に入れて、整備して使っていくというのは、一台数千円ぐらいの中途半端な投資ではなかなか苦しい時代になってしまった。カセットデッキがオーディオの中の主要なハードウェアから離脱してから時間が立ちすぎた。デジタルオーディオがアナログに入れ替わったというよりは、カセットデッキの終焉期ではレンタルCDをこれまでの延長で高音質でカセットテープコレクションにコピーするという利用の需要が終焉した。その次代に吐き出された状態の良い現役だった高性能モデルを安価に手に入れられた時代は遥かに遠い。 サブスクでもなんでも、デジタル音質が保証されている楽曲が選び放題でどうやってでも聞けるこのご時世に、カセットデッキを手に入れてそれで気持ちよくカセットテープを聞こうなんてのは、やはりかなり横紙破りな感覚と価値観かと思う。それほど大上段に構えなくてもいいのじゃないかと視聴されている人も居ると思う。それでもランダムアクセスが可能でデジタル録音が可能なCD/DVDやMDなどのディスクメディアが記録媒体となり、MDのiPodの登場の先、サブスクの手前ぐらいでCDレンタルが無意味化した今、それは純粋にカセットの音で聴きたいという需要もあるとも思う。それなりにカセットテープの音の魅力みたいなものは、あるのかも知れないし、そういう方の求めているものは、私が今回つらつら書いているような方向とは必ずしも一致していないだろうというのは、前提にはしている。 また、今のこの時代に、この複雑なアナログオーディオに対して、常人には信じられないほどの性能とそれが維持されていることを要求し、そのために凄まじいエネルギーや投資をされている方もおられるので、そういう方が要求する機体や基準とはこれまた違うと思っている。 多少はアナログオーディオや当時のモデルについて、多少の知識があったが、1980年代から後半、お気に入りのアーティストのCDソフトを揃えることにしか投資していなかったので、まあ、知らないことも多く、モデルについての知識は多くが空白であった。 SONYがオーディオ装置としてのカセットデッキの最後の時代に、高性能機を送り込んだ系譜のK333,555,777,222のレン版3桁の中級機の初期のモデルが、安価になっているのでその辺りで妥協した。
この時代(1984年発売)の、このクラス(¥79,800)のカセットデッキだとスペック等は以下の状況。
①周波数特性はクローム、メタルテープを使っても20kHzにはギリギリ届く。ノーマルテープだと18kHzには届く。
②ワウ・フラッター性能は0.04%WRMS(±0.06%Wpeak)。因みにダイレクトドライブではない(当然、クオーツ制御ではない)。
③クロームテープやメタルテープの検出穴を使った自動対応以前のモデルも有り、マニュアル操作で設定。一応、TYPEI-VIでカテゴライズされるようになっている。
④3Head機、ヘッドは劣化している可能性はあるが、性能が維持されていれば、音質の良い巻線改良型レーザーアモルファスヘッド
⑤バイアス調整はある。自動バイアス調整は無し。出力調整はあるが、行くライジング調整はない。
⑥アジマス調整概念が、自動調整モデルも一般的ではな維持台で、ユーザーで一般化していないので、調整がしにくい。
⑦クローズドループ・デュアルキャプスタン機。中古で性能が維持されてないと最悪テープが破損するレベルの悲惨なことになるので注意が必要。また、カセットテープによっては、シングルキャプスタンでは問題なかった磁性体汚れがひどいことになる場合がある。それもあって最近はmaxell UR一択になっている。
⑧SONY後期モデルにあるパッドプレッシャーリダクションがない。若干走行性能維持リスクは有る。
⑨Dolby Cまでは搭載。
⑩HX-proは未搭載
ここで、発売年、メーカー、モデル、購入金額に関係なく、完動品が前提として、ゴムベルト、ブーリーゴム、ピンチローラーなどのメンテナンスや交換が施されていれば言うことはないが、とりあえず、①、②、④、⑤、⑥が満たされていれば、十分かなと思う。それが私のカセットデッキ選びの結論と言える。
つまり、私の音楽視聴の要求レベルでは、以下の2つの性能が満たされていれば、マスター録音に使用できる機体となり、それなりに気持ちの良い音で奏でられる録音テープを作ることができるという結論だ。勿論、それ自体で日々の音楽視聴には十分以上だ。
ノイズリダクション⑨は必要とあらばDolby Cまでで十分だと思う。⑩HX-proはスピーカー視聴レベルでは、有無はあまり気にしなくて良いと思うが、搭載機は年式がより新しいことになるので、故障リスクは多少違うかも。
a) 周波数特性が-20dBのホワイトノイズ録音において、ノーマルテープで18kHz、クローム、メタルテープで20kHz付近まで届いている。
b) テープ走行が安定しており、ワウフラッター性能はカタログ値にも近く、0.05WRMS以下である。
a)に拘るのは、不思議に感じらられる人も結構いると思う。人の可聴範囲の上限値は年齢とともにどんどん下がり、若い頃でも高域の限界値の音が聴こえる人間は少ない。中年以降だと、14kHzぐらいまで聴こえたら御の字の聴覚性能だ。その上のオン効きは音として出ていても聴くことができない。しかしより高域まで(デジタル音源では20kHz)無理なく出力できているオーディオ機材は、それより下の領域の音域の音質、情報量が圧倒的なので、顕著に音質に影響する。高域が出ていないカセットデッキで音楽を聞くと、ソース音源に比べて寸詰まり感、低出力感はすぐに分かる。
b)については、他のカセット視聴が可能な機材で視聴するとその機材のワウ・フラッターの揺れが嵩増しになるので、低いに越したことがないのだが、逆に言えば、高性能で、低いワウフラッター値を持つカセットデッキで録音されたテープは、基本的に多くのカセットデッキで気持ちよく視聴できる理屈になる。私の場合、録音テープができると、それをそこそこの性能が維持されているオートリバース機に放り込んで視聴するというやり方をしている。
2機のオートリバースデッキは、製造年もメーカーも、基本性能もバラバラだが、一つ言えることはそれなりの音質で録音されたテープは問題ない音質で再生できるというレベルにあるということだ。最近、FIIOなど、ウォークマンタイプのカセットプレーヤーが複数販売されているが、中途半端なラジカセレベルになるしか無いため、FIIOは録音機能を最初から外している。どうせ高音質録音は無理なので、会議の録音ならスマホがあるし、録音機能を無くすことで、テープの再生音質に全振りできるということだと思う。で、実際に、再生音質だけあるレベルにもってくるというのは、そんなに難しいことではないし、録音音質がそんなに高くなくても、十分な性能で録音されたテープの再生音質は十分だなというカセットデッキは少なくないのだ。
FIIOなどWalkman類似の小型カセットプレーヤーについても、機械動作性能となるワウ・フラッター性能は決して高くない。それも低ワウ・フラッター値のカセットデッキで録音されたテープであるのなら、音のゆらぎ(変調ノイズ)の嵩増しは最低限にできる。a)b)の性能が満たされているカセットデッキが1台あれば、その機体に負担をかけずに、あまり性能を期待されないオートリバース機でもトレイ型の1990年代以降のカセットデッキでも、悪くない音で聞ける可能性が高くなるため、普段の視聴の機材の自由度が上がるのだ。勿論一台だけ所有するとなると、a)b)性能の確保は絶対だと思っている。
因みに③も本当はどうでも良い。なぜなら現在生産されているノーマルテープ以外のテープは存在しないので、過去の未使用品か限定生産ですぐに消滅するような生テープしか存在しないから、録音する場合は、質の良い最低限のノーマルテープ(maxellUR)一択だから。その意味で①の性能が満たされていれば良い。
④はアジマス調整やソースの音との比較が瞬時にできるので、本来メーカーが謳った性能が維持されているか、簡単な視聴でも十分確認できる。2ヘッド機だとあまり良い音ではないモデル、個体であっても、その辺り、テストするにもちょっとだけ面倒になるからだ。
私が音源がCDになりデジタルになり、何が一番嬉しかったかというと、回転型アナログメディアの録音再生機機の呪縛から離れることで、ワフフラッターが、感知限界どころではなく、測定限界、つまり時間軸の変調ノイズがほぼなくなったことだった。それでノイズや揺らぎが気になる場合は、音源の問題だろうから、こっちの責任じゃないよねって思えるようになった。
その技術革新によってもたらされた圧倒的な恩恵までの時間の流れを遡って、下手するとピアノ曲などボヨヨンと由来で聞けなくなるのは特に珍しくもなかった時代より少し増しになった時代のオーディオ装置を手に入れて、オー感知限界並みに音が揺らがないとかやってるわけなので、やっぱり酔狂なのだなと思う。
「だってカセットテープの音ってデジタルオーディオにはない不思議な温かみと良さがあるのですもの(目を輝かせて)」みたいな感覚はよくわからないが、このあたりは科学的に証明するのはできていないしブラインドテストで、それと分かる人はいないのではないかと思う。そうなるとこのような録音視聴に何が意味があるのかを説明するのは、なかなか難しいのかも知れないが、デジタルも含めて音楽ソースが固定しないと退屈しない。ワイフと二人のCDコレクションの山を漁ったり、録音済みのものテープから選んで視聴したり。
カセットテープの良いところは、テープ面をベタベタ触るのはご法度だが、久しぶりに扱っているとCDよりは遥かにハンドリングに神経を使わない。ガチャッと出し手ガチャッとデッキに放り込んで再生ボタンを押す。オートリバース機なら、どっち向きに入れようが、再生ボタンの方向が間違っていてもなんとかしてくれる。
久しぶりにCDケースからCDを外すときのあのステイのロックの硬さはストレスだし、裏面に傷つけないようにするというのも、意外と神経使うのだなと思ったりする。LPよりマシかなと思うが、それより薄く小さいのもなんとなく面倒という気がすることがある。ものぐさの極致には、むしろ良いのかも。
カセットデッキの音質や変調ノイズの確認に、よくピアノ曲を録音するようになった。お気に入りのピアニストや、この機械に聴いてみるかと思ったアーティストの録音テープが増えていくのも悪くないのだ。
世界的ピアニストでありながらオオカミの保護センターを作ってしまったHélène Grimaud。平井和正のウルフガイの時代に既にウルフマンと呼ばれたオオカミ保護管理に乗り出した人たちが居たが、彼女の活動もその系譜とも関係がある。藤子ヘミングは猫だったが、こちらはオオカミがジャケットに載ってる。
20世紀最強のピアニストの一人と呼ばれたこともあるAlicia de Larrocha(1923–2009)。活躍の中心となった年代は半世紀以上前だが、精力的に世界各国でのライブや録音を残した、音質がどれも思った以上に良い。この人はMozart作品で有名だが、Albéniz: Iberiaなど彼女の同国スペイン人作曲家によるピアノ作品で14のグラミー賞ノミネートで認められ、そのうち4回(1967(Granados: Goyescas – Book II, Escenas románticas (Erato Records))、1971(Granados: Goyescas – Book II, Escenas románticas (Erato Records))、1974(Albéniz: Iberia (Decca)、1991(Granados: Goyescas, Allegro De Concierto, Danza Lenta (RCA))で受賞している(List of awards and nominations (https://en.wikipedia.org/wiki/Alicia_de_Larrocha))。
超難曲だが、彼女故にあまりにもスムーズに弾きこなされている。Albénizのピアノ曲、彼女の奏でるAlbénizの旋律にはジャズの即興演奏で一つの世界を作った、クラシック分野にもファンが多い、Keith Jarrettの演奏との共通点も感じる気がする。別にオマージュではなく、クラシックピアノからスタートしているKeithの中に、似たものがあるのかも知れない。Solo concertに似た旋律があったようなと思うこともある。彼にもひょっとしたら、影響を与えていたのではという気さえするが、素人の勝手な発想。Keith Jarrettの即興ピアノ集が好きな人にもおすすめ。
自分が知る彼女のポートレイトは中年期以降、友人は深い尊敬を込めて「ラローチャ小母さん」って呼んでた。意志の強い芸術追求型で、世俗的な富にも名声にも興味がない超然としたところもファンが多い。
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カセットテープをいじり出して、それがきっかけで色々思い出す。