
特に凝ったわけではないが、気が付いたら、安い安いステレオイヤーフォンが増えてしまった。一家で家族が使っているのも含めて、ステレオイヤフォンはあっという間に5台になった。TRN ORCAがType-Cのものも含めて3台もあるぐらいなので、聴き比べする気もそんなにないのだが、安さに驚いてしまうし、後継のモデルが出ると、前のモデルが叩き売りになったりしている。回路組み立てミスによる逆位相のものは今のところ見つかっていない。この値段で、よほどのロット生産しているのだろうと思われるが、製品も安定している(気がしている)。
ところでAIにステレオイヤフォンを描かせようとしてGrokを使ってみたのだが、ことごとくヘッドフォンになってしまう。これはFireflyの方でも同じだった。今どきはearphoneの方が一般的だと思うのだが、何故かこうなった。
深夜などアナログアンプのヘッドフォン部からの出力を、今の超安価な高性能ステレオイヤーフォンで試聴するととても幸せだ。ヘッドフォンと違って、睡眠時視聴において邪魔にならず、頭の位置も自由にして聴けるのが良い。ついでに変換アダプター内蔵のDACチップも安価でもよくできている。パソコンが変わる毎に付け直すのも面倒なので、安価だなぁということもあって増えてしまった。
KZ EDX PRO Xがかなり安く買えるのだが、一部で評価の高いEDX Liteが1,000円程度で購入できる。ちなみにKZ EDX LiteのKZ EDX PRO Xよりも評価が高いという視聴結果のブログは、購入した後に気がついた。以下が参考となるサイト。
KZ EDX Lite KZ EDX Liteの周波数スペクトルを取ってみた。PC→USB A→NOSTALSIC(USB C & 3.5 mm イヤホンジャック変換アダプター)→ターゲットのイヤフォンという流れ。これは結局NOSTALSICなる製品のDACチップセットの性能も確認しているようなものである。というか、その性能が酷かったら意味のない測定になってしまうので、結果から見て、門外の簡易テストとしては十分かなと思っている。外耳と内耳のシミュレーションモデルにコストを全く掛けていないので、多少共鳴が出ているとは思うがそんなに酷くないはず。 実際、PCで作ったテスト音源(ホワイトノイズ&チャープ)を出力してデジアナ変換してアナログアンプのヘッドフォンジャック出力からのものを使う方法もあるが、トーンコントロールパスして、とか考えると条件が面倒くさいのと、実際あまり大きく特性が変わらないのがわかっているので、今回はそういう流れ。 驚くほど全域スムーズだ。妙に落ち込んだりするところがない。私の空気録音環境の問題もあって共振が出ている結果かなと思ったが、低音から中高音に連なる部分のハーマンカーブに重なるようなスムーズな状況と20kHzでスパッと落ちているカーブを見て、そんなに卑下したものではないのかもしれない。 音質は、下のTRN MT5と比べると、高域までフラットに伸びていて、癖のある落ち込みもない。最初視聴したときに違和感があったのだが、多少エージングが必要だったのかもしれない。音質には慣れた。それなりに投資している人に言わせると長岡鉄男氏がいうところの「病院のご飯」かもしれないが、なかなかどうして、今どきは病院のご飯も美味しくないと患者が来なくなる。なかなか高性能だと思う。 これを介して、マイク付きピンジャックのイヤーフォンをUSB接続するとマイクも機能するので、この値段で極小のUSBオーディオデバイスとしてちゃんと機能しているのだなって、少し驚く。Web会議用のヘッドフォンマイクは、今はイヤフォン3.5mmピンプラグではなくて、中心はUSB接続の製品になっているのは、それだけこの部分の性能が上がってコストも下がり大量に生産されている結果だろうと初めて理解した。気がつくと世の中進んでいる。 高級オーディオに用いられもするオペアンプが数百円の時代である。音質的にも、一定レベルのスペックは出ているので、なんら問題ないのかもしれないし、実際に問題ない。
トップの画像の右上に移っているのがこの製品だが、KZのイヤフォンのケースは、プラスティックの質や特性をそのまま生かしたものだが、デザインが良くて、シースルーやペイントも含めて、とてもポップで決して安っぽくないなと思う。

こちらが、TRN MT5。これは1,500円台。個人的には黒曜石風の金属ケースのデザインは◎、ゴム紐みたいなケーブルは△なので、ゴム紐デザインが気に入らない人は、リケーブルして使ったら良いのではないかと思う。私は慣れた。
同条件で、PC→USB A→NOSTALSIC(USB C & 3.5 mm イヤホンジャック変換アダプター)→TRN MT5からの空気録音。内耳のシミュレーションにコストを掛けていないので、多少共鳴が出ているとは思う。
ただこの変換アダプター内蔵のオペアンを使う同条件では、KZ EDX Liteより、音圧が、やや低いと感じる。真っ当なアナログアンプのヘッドフォン端子でドライブさせている限り、相性は素晴らしく良いのだが。
TRN MT5 音作りの結果なのか、いくつかあるステレオイヤーフォンの周波数特性で、7kHzあたり一旦沈めるチューニングが強いもの、弱いものがある。これは強い方の製品だということだと思う。いや本当はその逆である。その周波数帯域の両側を持ち上げてる度合いによりこの谷が強調されるわけだから。
TRN ORCA Type-Cの出来が良かったので、多少違和感があったが、TRN MT5の方は、むしろ耳障りになりにくい傾向の音に聞こえた。引き算は重要かも。
個人的にはアナログアンプのヘッドオン出力にコストを掛けている製品での視聴をおすすめする。パソコンほかデジタル機器からのものより、音質がコントローラブルなのもあるが(PCからならソフト的なグラフィックイコライザーを使えば問題ないが、私はクラッシュしたので外した)、そのあたりは日本のオーディオ帝国全盛期での資産が上だと思う。安いデジタルヘッドフォンアンプを使ってみれば、また印象は変わるのかもしれない。
ハーマンカーブ(ヘッドホン/スピーカーの音質を最適化するための目標周波数応答曲線)から逸脱してるなんてことはない。この値段で、リケーブルにも対応している。
私には、TRN MT5の方が音が好みだった。MT5はゴム紐みたいなケーブルだったので、ケーブルはこちらの方がまともに見える。ブラインドテストして5,000円以下クラスでは、多くの人が見分けがつかないかも。

TRN ORCA TRN ORCAは、本体にディップスイッチみたいなハードによる3帯域のグラフィカルイコライザー的な機能が内蔵されている。ハーマンカーブセオリーに則ったチューニングがなされているが、その辺りの自由度があるのは良いと思う。評判の良さを教えていただいて、その通りの侮れない性能だったわけだが、上記2つと比較するとたしかに、Type-Cモデルは音響モジュールとの相性と合わせて設計されたDACチップ内臓で、音質については、最初に視聴したときにはかなり驚いた。
私は、普段の試聴はアナログアンプのヘッドフォン出力からのものが多いが、今時はそんなアナログオーディオを介在させて試聴する人もほとんどいないだろう。PCかSmartphone/padからの出力になると思うが、それらのアナログピンジャック出力(それもほとんど消滅したようだが)と、しっかりリソースを何年も投入されたアナログオーディオ、どちらが良い音に聞こえるかというのも、条件次第や好みもある。結構微妙な話かもしれない。どちらにしてもPCからなら、デジアナ変換が必要になるが(一部のデジタル入力を持つアンプやAVアンプは別)、Type-C出力か評価の高いヘッドフォンアンプをPCとデジタル接続して使うのが定常スタイルだろう。それでもアナログオーディオアンプなら、音質はいじれるものが普通だし、今の超低価格イヤフォンの高性能ぶりが、その組み合わせでも堪能できる。 でも、これらの激安の高性能イヤフォン、できれば良い性能のかつてのアナログアンプに繋いで試してほしいなと思う。私はそれでとても幸せになったから。
UGGPRO C5
ついでに、Bluetooth stereo earphone、UGGPRO C5 の周波数スペクトル。「安旨」なのかどうかは微妙だが、そこそこ聴ける製品ではあった。そういう意味で駄目な激安イヤーフォンの方が今は少ないのかもしれない。大陸製品のおまけみたいに安売りしていたが、今はAmazonからもネットからも跡形もなくなった。購入価格は2,000以下だった記憶がある。
このタイプ、失敗したなと思ったのは、「耳からうどん」部分がないデザインは、うっかり落とすととんでもなく転がっていって、今生の別れになったりする可能性が高いということ。一度、旅客機の中で落として「あー、短けえ付き合いだったな」と思ったが、奇跡的に落下したものを確保できた。耳当てフックになっているゴム部分がすぐに外れるし、安かろう製品であることは確かだ。音質もかなり凸凹があって、ソースをそのまま再生しているとは言い難いが、まあ、聴くに耐えないなんてことはもちろん無い。連続使用時間も国内便での使用ぐらいなら何の問題もないと思うし、旅行先や道中でなくなったときのショックも少ない。手に入れようと思ってもロットどころか製品も消滅しているようなので、似たようなものを選んで購入すればよいと思う。激安製品カテゴリーはこだわりなき世界だが、帯域特性を見る限り、それでよいのじゃないだろうか。
SONY MDR-ZX310
小変更が行われながら、かなり長くエントリークラスの密閉型ヘッドフォンとして販売されている製品。私の手元にあるのは一度イヤーパッドを交換しているので、本当にかなり古い。何しろモデル名さえ刻印されていないので、正直同じ製品なのかわからないが、まあ同じ眷属、購入価格も同等なので似たようなものでしょうというところで。周波数特性の図では、完全な密閉状態で空気録音を録れているわけではないので、密閉型のヘッドフォンになると、特に中低域は音圧のかかり方が実際とは違うと思う。 密閉型の確実な低音からの音圧がかかる感覚は、今の高性能イヤーフォン全盛の時代にあっては、特に若い世代にはむしろ違和感もあるのかもしれないが、私にとっては馴染みのあるもので、それ故に、ああ、ヘッドホンで聴いてるなという変な安心感がある。でも、イヤフォンのように耳に直接当てて視聴をしているのを忘れるなんてことはない。今のイヤーフォンはあまりにも自然な音で鳴っているので、イヤーフォンで鳴っている音を聴いているのかダイレクトで聴いているのか一瞬わからなくなることがある。 ヘッドフォンの場合、このまま居眠りすると首が動かせないので凝るのだが、こういう安価な製品の周波数特性を、初めて自分でビジュアライズしてみている。時代の進化はありがたい。 ヘッドフォンのドライバーの音声発生は小型スピーカーと同じではない。遠くまで空気を振動させる必要はないから、仕組みは異なる。20kHZまでは10kHzあたりの落ち込みがあるもののなんとか頑張っている。密閉式の音圧のかかり方で、低域が出ていないなんて印象はないのだが、中低域と高域の痩せ方と解像度は、安価ゆえに求めてはいけない製品。バッと両耳をこれで挟んで、ちょっと音を確認するとか、そのまま枕にひっくり返る、みたいなのにはこのカテゴリーの製品としてはチープゆえの軽さが幸いしている(多少負け惜しみ的だが、ものは褒めよう)。
おっと、モデルを間違えていた。310は販売価格18,000円ぐらいのもの。安いのはこちらの方。
ついでに忘備録的にハーマンカーブ(Harman Curve)をリンク先からお借りしてみている。イヤーフォンにおけるハーマンカーブは赤いラインの方。ハーマンという名前を聴くと、オーディオメーカーであるハーマン/カードンを思い出すが、Harman CurveはDr. Sean Oliveと彼のチームによって開発されたもので、この会社の創始者である
Sidney Harman及び彼の業績とは直接は関係ない。この研究は、ヘッドフォンの音質を評価し、より自然でバランスの取れた音を再生するためのリファレンスとして設定されたものだ。人の耳の感知能は周波数特性に対しフラットではないし、試聴室の音響環境特性とイヤフォンのそれは全く違うので、このような補正カーブがリファレンスとして見つけ出されたということだ。
それ故に、この音響工学成果が反映された商品開発として、今のイヤフォン/ヘッドフォンの特性はこのカーブを参考にして構築されているものがほとんどだ。むしろ今はそのセオリーを無視した例外のほうが少ないようだ。相当な投資が行われた業界の研究成果を応用することは、CPを上げることでもあるのだから激安で戦わねばならない製品開発がそれを利用しているのは当然でもあるのだ。
ハーマン/カードン(harman/kardon)のブランド名で知られるHarman International Industries自体は韓国のサムスン電子傘下の多国籍企業になっている。オーディオ・ブランドとして、JBL、harman/kardon、Infinity、Mark Levinson、Lexicon、AKG、Arcam、Studer、Soundcraft、CROWN、dbxなど、名だたるオーディオ・ブランド、企業をその傘下においている。このような、かつてのオーディオブランドの有名どころとその資産は、韓国資本になったと言われていてへーそうなんだって思ったのは何年前だったろう。
Harman International Industriesの創設者である工学博士のSidney Harmanは、音響機器の分野で多大な影響を与えたが、Harman Curve自体は彼の個人的な業績とは直接的には無関係だ。だが、Harman Curveは、Harman International IndustriesにおけるDr. Sean Oliveが率いたプロジェクトチームの研究成果ということではあるようだ。