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Japanese white-eye

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 メジロはウグイスほど薮鳥ではなく、警戒心もそれほどでもないので、少し時間をかければ観察できる。丁度、長年使っているSONY α7IIとSigma 400mm/f5.6のウォーミングアップに水田地帯をうろうろしていたら、目の前に現れたので、モデルテストになってもらった。
 Sigma 400mmはフィールドでどういう状態になっても気楽に使えるからと、中古で数千円で手に入れたもので、単層コートで、アポクロマートレンズですらなく、被写体が遠いと、派手に偽色が目立つが、近距離で使うなら、目立たない。今時のデジタルレンズによる、眼の周りの羽毛すらきっちり見るほどの解像度はないが、足で稼いで距離を詰めれば普通の鳥の写真です、距離があると、一応何が写ってるかわかるぜみたいな画像なら十分である。
 ちなみに高解像デジイチで使う望遠レンズといえども、そのレンズに最適な距離は存在して、それはデジイチで使う限り、CCDの広さや画角、画素指数を上げても、伸びることはない。どうやって距離を詰めるかが、技術だ。
 自分の機材は、はるか昔に置いてきぼりになったような古いものだが、それでも十分だなと思う。

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 クラシックレンズの名球には、最新設計のレンズの解像度や発色すら気にしないで済むほどの高性能レンズも存在する。F値がそんなに明るくもなく、ズームは無理で単焦点だったりするが、それは広角や標準、短望遠域レンズの話で、ヒトラーが狙撃用にも流用できる高額写真機材の持ち込みをプレスに制限した結果、200mm止まりとなったオリンピアゾナーの逸話に代表されるように、長球は存在しない。それでもOld Zeissの長球は、マニアに言わせると、その後のヤシカ、京セラ時代のそれとは全く違う、大きくバカ重いガラスの塊とのこと。ミロター500の縁起でもない子供の棺桶と呼ばれたケースの大きさなど、マニアといえども、普段使いで、車載であろうが持ち歩く気になるレンズなんてのは、オールドレンズの望遠レンズには、存在しない。
 今時は、高性能デジイチ用に設計されたレンズにおいて、望遠レンズで、高画質を求めるなら、数十万円〜百万円を超える投資が必要になる。スマートフォンも、ほぼコンシューマ市場のデジカメをほぼ駆逐してしまった状況だが、望遠領域はそもそも手持ち撮影を前提にしているガジェットとしては、最新の画素子技術や手ぶれ低減機構が進もうが、当たり前の話ではあるが、色々中途半端で性能も知れてる。
 高倍率ズームを搭載したコンデジも今は、スマホにシェアを奪われてプロダクツの多様性どころか存在自体が危うい状況で、一方、非レンズ交換型の飛び道具みたいな望遠撮影に振ったデジカメ、デジイチ用の高倍率ズームによる望遠域側の焦点距離にも制約がある。社会では望遠レンズ撮影など必要としないユーザーが圧倒的なのだが、デジタル一眼は、超高額ニッチェに特化して生き残っていくしかない。私などどっちにしてもこちら方面にそれほど投資する予定のない人間には、中古市場でしか機材を揃えるしかない。

 最近、オーディオ業界の未来のなさを感じる投稿が、分野のyoutuberによって、自虐的に語るエントリが目立つ。自分のところの視聴者40代後半以降、ほとんど爺ぃばかりみたいだ、みたいな話で煽ったりしているのを見て、笑ってしまう。
 若者がクルマ、オーディオ、カメラにお金をかける時代は終わっており、大多数の経済状況の問題もあって、市場は急速に萎んでいく予感がある。
 メジロ可愛い。
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 エントリの誌面を埋めるつもりでダラダラ書いていたらどうでもいい話が長くなった。このメジロ、見渡した限りは密源はなったので、どうも小さな昆虫でも見つけて食べているのかと思ったりしたが、それらしいものはいない。カラスウリなどの枯れた果肉から糖分でも摂取しているように見えたが違うかも知れない。 
 メジロ可愛い。欧米からの研究者がやってくると、このインドネシアから極東にしか分布しない特徴的な眷属を見せると、割と喜んでくれるのだが、今、ハワイでは侵略的外来種になってしまっていて、固有種のミツスイなどを競争的排除則に従い、個体数に栄養しているだけではなく、ベリー型の種子散布をおこなっている植物の固有種の存続も危ぶまれる状況が生じているようで、大変よろしくない。
 日本産の生物が海外で侵略的外来種になってしまっている事例は沢山あるあるが、メジロ Zosterops japonicus はハワイでは有名な侵略的外来種で、Global invasive species databaseにもちゃんと載っている。
"Zosterops japonicus (Japanese white-eye) is a small songbird that has been introduced to the Pacific region from Asia. It is an arboreal species that can be found in a wide variety of habitats. It is known to consume the fruit of certain species of invasive plants and aids in their dispersal. There is reason to believe that some competition may occur between Zosterops japonicus and native bird species that inhabit similar ecological niches, but current research has found very little evidence of negative impact."
外来種植物の種子散布を助けるみたいなことが書いてあって、少しわかりにくいのだが、長い進化的スケールでの共進化関係にない生物は、長い進化的な時間で培われた共生種群に対するケアを在来種のようには共生的サービスを担ってくれない一方で、外来種に関してはそこそこ働いてくれる確率が圧倒的なので、結果的に、外来種の種子を散布させてしまうということのようだ。


 先のデータベースサイトでは在来鳥類への影響は明確にされてないみたいな印象を持たれる人もいるかも知れないが、検索するとメジロの生息域拡大は、在来鳥類に対する負の影響として明確であることを示した研究は、川上・樋口の2003年論文など、すでにたくさんある。メジロの日本からのハワイへの移入は、1929年にオアフ島、1937年にはハワイ島と、ほぼ移入されてから1世紀近くの年月が経ってしまっている。

Kazuto Kawakami, Hiroyoshi Higuchi (2003) Interspecific interactions between the native and introduced White-eyes in the Bonin Islands. IBIS 145(4): 583-592.

ハワイではメジロは海抜ゼロメートル付近から 2,790mまで分布する問状況について、なぜそこまで外来種として成功してしまったのか遺伝的特性から解明しようという研究で、ハワイのメジロ個体群における高山適応や寒冷地適応に関する遺伝的データなどが示されている。導入が複数回に渡ったことも、個体群の適応範囲を広めたようだ。
Venkatraman, Madhvi (2023) What makes a successful invader? Population genomics and adaptation to novel environments in the invasive Japanese white-eye (Zosterops japonicus) Venkatraman_umd_0117E_21836.pdf (3.03 MB)

 英語版Wikipediaのメジロの項では、現在のハワイでの分布域の拡大は、E.O.ウィルソンが提唱した「タクソン・サイクル(Taxon cycle)」で説明しているドキュメントがあった。タクソン・サイクルは、種が新たな生息地に移入し、分布範囲を拡大し、その後衰退、場合によっては絶滅に至る過程をモデル化したものだが、新たに移入された種(ステージ1)は、在来種(ステージ3)の生息地における抵抗力の欠如により、その生息地で急速に増殖するという話になっている。至近要因については、ニッチの欠所に広がるだけの話ではなく、先に書いたように、共進化で脆弱なライフラインで維持されてきたハワイミツスイのような種が、食性が広く広くミツスイの利用資源がなくても他でも命をつなげることができるジェネラリスト的なメジロに勝てる要素はなさそう。すでに、ハワイミツスイはメジロとの競争で排除されて大幅に分布域や個体数を減らしているとのこと。
 可愛い小鳥なのだが、人の好き勝手な行為により、現地の自然環境に干渉する勢力となってしまって、困り物とされるのも、残念な話だ。

 少なくとも、日本にいるメジロは、こうやって眺めて、排除される鳥類種のことなど考える必要もなく、気楽に可愛いなぁなどと愛でていられる。
こちらでは、後、1ヶ月半もたたぬうちに春に突入するだろう。






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by complex_cat | 2025-01-18 19:31 | Wonderful Life | Trackback | Comments(0)

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