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波乗り越えて

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 屋久島、種子島までの離島の足として、ジェットフォイル ボーイング929 は長く重宝されている。
 ライセンス生産により川崎重工業が、製造とメンテナンスをやっているわけだが、1979年に就航した種子屋久航路だけでも、その後、新規で何隻か追加されながら、どの機体もかなりの長期間、その任務についている。老朽化云々の話をするつもりではなく、それだけ最適解の乗り物だったということの証明だと思う。海上80km/hrで巡航できるので、言ってみれば離島まで高速道路を通したようなものだ。かつてはホバークラフトなども国内で多数就航していたが、トラブルも多く大分空港と大分市を結ぶ定期航路と、大分市を発着して別府湾を周遊する航路以外は消滅している。
 電子姿勢制御の水中翼により波の上に浮上して航行するため、一般の船と違って揺れにくく、多くの乗客にとって船酔いも少ないありがたい船体だ。私も乗り物酔いには強くないのだが、これについては酔い止め薬のお世話になったことはない。
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 一度、屋久島世界遺産関連の仕事をしていたときに、幸運にもキャプテン判断で、コックピットに乗せていただいたことがあり、なかなか興味深い状況だった。ベラベラ喋るわけにいかないが、航海日誌が'Flight Log'と銘打ってあって、流石、浮上して移動する乗り物である故のカテゴライズだなと思った。
 コックピットは、この前部の客室の真上にある。この場所は、少し料金が張るシートに隣接している船体もあり、個人的には一番好きな席である。

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 トラブルは、クジラに衝突、遺物(イルカ)を吸い込んでエンジンがブローなど私も30年近く長く乗り込んで、利用頻度としてはかなりのものだが、驚くほど確率的にはトラブルは少ない。現在のモデルは、異物をエンジン内に吸い込まないような工夫がされていて、その手のトラブルもほとんど生じていない。ただし、機構的にドップラー水中レーダーなどは使えないから、基本的に「有視界飛行」機体である。それ故に、ウォッチャーの数と熟練度は高いレベルで訓練されている必要がある。
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 〜種子屋久高速船(トッピー/ロケット)の運行予測と波高については、あまり知る人がいないようだ。フィールド屋の常として、往復のスケージュールや陸域に限らない状況も見る必要があるので、その辺りはずっとやっている。
 一般のフェリーが、その巨大な船体に比べて、自動車を積むという宿命から、波高が高くなるとすぐに欠航してしまうのに比べて、ジェットフォイルの走破性は高い。最も世のお金持ちがレジャーに使っているいるような、YAMAHA製などの数億円のクルーザーも、波への走破性は高く、海上保安庁が出港を控えた海が大荒れの時に、鹿児島から沖縄まで連れて行かれた知人の話を聞いたことがある。もちろん熟練パイロットも、高給で雇う必要があるが、高性能クルーザーすごいなと思った次第だ。でもB929の場合は、旅客定員約260名だから、その代わりになる乗り物は、多分存在しない。海上高速旅客用の船体として、とてもよくできている。船に弱い人にとっても、酔い止めがほぼいらないと言っても良い船体だ。
 この高速船の利用を予定した場合、国際気象海洋株式会社の沿岸波浪予予測モデルをよく利用する。以前ブログエントリで紹介したWindyでも類似のモデル表示は出来るが、むしろ階級が細か過ぎて、段階的に波の高さで判断する分野においては、スケールが判別、判断できなかったりする。ある意味、分野のプロのために調整された表示ではないのだ。
 屋久島(あるいは種子島)までの航海は、多くが錦江湾の自然の港の機能により、波高は台風でも来ていない限り平穏に通過できる湾内の1時間と外洋部分の1時間によって構成されている。外洋に出ても、種子島、屋久島の位置は丁度、特に東からのあたりに対しては、天然の防波堤の如く機能していて、その西側は一部を除いて波高はかなり抑えられている。
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 つまり、天候により波高が高い日であっても、で囲んだ海域さえ、2m以下の波高であれば、なんとかたどり着けるゆえに、ここの舌のように飛び出す部分の波高と領域の広さを読めば、その日、トッピーが条件付きにでも運行しているかどうか、大体判断できる。その時、島陰にうまく辿り着くために、船体を器用に変針、コースを選んで高い波高を避けられる余地があれば、運休にはならなかったりするが、もちろん安全マージンはかなり取られている。それでも、かなり水中翼に波の衝撃を喰らうような天候でも運行されていたりして、その時は、かなり冷や汗が出るような状況になったりするが、安全である。
 本日、屋久島から知人たちが戻ってくる状況であったが、やはり、午後は条件付きであった。それでも無事に本土の鹿児島本港に辿り着いたと連絡があった。この予測モデルは数日後まで予測が出るが、過信すると、えらいことになるので、人に教える時にはあくまで参考にするように伝えている。気象が読めない人にはむしろ罠になるし、あくまで自己責任ということだ。私も一度、まあ、大丈夫だろうと見ていて、翌日、台風影響が思いの外早く襲ってきたため、危うく帰れなくなるギリギリの状況であった。本土と違って、台風は元気が良いし思った以上に接近が早いのを見誤ることは少なくない。
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 今回、久しぶりに種子島の方での仕事だった。データ改修後、何箇所か色々見て回ることになった。馬毛島の自衛隊基地の工事により、島内では、控えめに言って、ちょっとしたバブル状況が生じていた。
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 JAXAテリトリーのあるロケット発射施設のある南種子町は、流石に、すでに暖かく、ニホンアカガエルの交尾中のペアもいたりして、その他カエル類の凄まじい卵塊の数にちょっと嬉しくなった。熊毛地域の田植えは、南九州よりも圧倒的に早く、冬でも野菜が作れたりする。
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 仕事が順調すぎて、定宿の食事を詰め込むと慌ただしく、戻る羽目になったのは、ちょっと残念だった。
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 かつてと比べると、ずいぶん量を減らしているが、それでも、ご飯の量を減らすなど、本気で食べないと完食には、多少は苦労する。
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 植生や植物は熊毛地域で共通のものがかなり見られて、やはり本土とは違うものが、いくつか見られる。ガジュマルは、生え放題ではなく、神社ゆえに、剪定も行われている。ここの海神様は航海やフィールドの安全をちょっと勝手にお願いなどしている。
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 屋久島の猿川ガジュマルなどの比べると、ささやかなものだが、それなりに気根は頑張って垂れ下がっている。

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by complex_cat | 2025-03-16 16:46 | My Tools | Trackback | Comments(0)

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