検索したらすぐ見つかる、要旨はこんな感じだ。上記の紹介記事は9,800円払って中身は読んでいるように思えなかった。私も文献の元の存在を確認できればよかったレベルなのでアブストだけだ。
つまり、ダイアウルフの設計図を確認しながら、オオカミの基本フレームにのせて粗いレプリカ(のつもりの生物)を作ったということだ。別にダイアウルフを復活させたわけではない。ダイアウルフ風のオオカミの変種、品種を遺伝子操作で作ったと言った方がよい。ところで絶滅種を復活させようという流れが、今、その分野でものすごい資金が集まりつつあって(バイオ技術主導で行くととんでもなく危うい状況がいろいろ指摘されている)、バイオレスキュー(絶滅危惧種のバイテクアプローチ)むしろやばいエネルギーも感じていて、種を絶滅させてもいつでも復活できるみたいな勘違いや考え方が蔓延するとまずいなと、いろいろ危機感を持ってみているのだが、古代種の復活なんて話でもないのだ。でも、哺乳類ってのは本当に魅力があるし破壊力がある。金持ってて、何も考えずに欲しいって思う人はそれなりにたくさんいるのだろう。インスタでペット、サーカス、ショーなどの需要のために繁殖された個体群からのものが溢れている。そっちは小さくないビジネスなのだ。完全なる商業活動否定派ではないが、猫も目を引く新品種は商品価値が高いのでいろいろやられているのは気になっている(
猫の値段と幸福度〜高額ハイブリッド・キャット アーシュラ(Ashera) )。
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この粗いレプリカをダイアウルフと喧伝している研究成果の意義としては、遺伝子操作の一つのオプションとなる技術の証明ではあるし、希少で目先に変わった「商品」を生み出して高額で売りたいペット産業には、応用技術事案も含めて良い話なのかもしれない。
で、理屈と意味が混乱をもたらして、これでニホンオオカミ作れたら、日本で復活できるんじゃあ、みたいなコメントが記事に対して書かれていた。このエントリの主旨は、その問題についてだ。
「オオカミ放獣、失われた生態系を復活させる」みたいな方向に根拠のない空想が伸びるのはダメなのだ。ニホンオオカミの現物の個体群が、もしも手に入ったとしても今の日本の環境には大きな問題がある。
オオカミの1パック(群れ)のホームレンジ面積は、知床半島の1/3〜1/1ほどの大きさと言われる。最近は、GPS衛星通信テレメトリー技術のおかげで、データはたくさんある(後で文献追加するが、すぐ出てくる古いものだと、例えば、P. Ciucci, L. Boitani, F. Francisci, G. Andreoli 2009. Home range, activity and movements of a wolf pack in central Italy. 243(4)。イタリアの話だが、これだと200㎢ぐらい)。
もちろんパックの群れサイズが大きくなればそれだけ餌資源が必要になるし、小さいパックだったらそれは小さくなるみたいな単純な話ではない。その環境に見合った群れサイズでないと群れの探査、採餌能力が満たなくなり、収支がプラスにならないので、群れ間のばらつきはあるものの、大きすぎることも小さくすぎることもない、その環境に適正なパックサイズに収束することになる。
ニホンザルでも自然の上りから維持されている野生軍の個体数はおおよそ決まってくるし、100頭を超える群れが出現したら農作物など人為資源依存が進行した結果だとわかる。アニメや映画などで適当な群れを描いたりすると、その環境について製作者がちゃんと理解してデザインしているかあるいは理解していないのか、何かの伏線なのか、みたいな楽しみ方はある。
これは大陸産のオオカミの話であり、そのまま日本に生息したであろう島嶼型のニホンオオカミに当てはめようとすると多少は過大評価だとも考えられるが(エゾオオカミは問題ないと思う)、自然の餌動物だけでオオカミの群れを維持するには、広大な面積が必要だ。そもそもオオカミが群れを形成するのは、単独では獲物を探索・狩猟し、生存する可能性が極めて低いからである。1か月や1年程度生き延びられるかどうかというレベルの話ではなく、持続的な生存とその結果の次世代を生み出す繁殖成功、子育てができることが前提となる。
この点では、雑食性で植物も多く食べるツキノワグマやヒグマとは根本的に異なる。現在、狩猟圧や人為活動の縮小により、野生動物の生息域は低地の市街地まで拡大している。現地はいろいろ苦労しているが、単独行動するツキノワグマやヒグマでさえ適切なゾーニングがうまくいかず、「人と野生動物の共存」が困難な状況で騒ぎになっているのに、オオカミが人間とトラブルを起こさずに生きていくことは、日本の自然環境や土地利用の現状では不可能と判断した方がいい。もしも可能なら、ヒトとのトラブルや居住区への進出で何が起きても放置、家畜やペットが襲われても、オオカミ生息のための年貢みたいに放置するみたいな世紀末的個体群管理なら、短期的には何とかなるかもしれない。その状況はそれを導入すると言い出した愚かな人しか喜ばせないだろう。
山野の獲物だけで生きていくのは非常に厳しいため、オオカミが家畜やペットを襲う方が容易だと学習すれば、行動圏は人の居住域にシフトしていく。そうなれば群れの存続も難しくなる。たとえ時々シカを襲うことがあっても、その時点で管理は破綻している可能性が高い。オオカミの再導入を考えるなら、本土では原種のニホンオオカミの適応スーツを持つことを前提とし、入念な調整と適地選定、問題発生時の保証体制が不可欠だ。無理やろ。
過去には、動物学者を名乗る人物が「離島」の対馬へのオオカミ放逐を口にしたことがある。これは実績のある生態学者との議論も成り立たない荒唐無稽な話で、地元住民の生活を軽視した発想だ。むしろ、地方蔑視があるからこそ、こうした無責任な提案ができるのではないかとすら思える。いずれにせよ現実的ではない。対馬は日本のウナギが太平洋の深海深くで産卵、再生産されているということを突き止めた東大のチーム出身の水産学者二人が、現地で新たな持続可能な漁業の実践者としての漁師生活を始めた島でもある。哺乳類種では、最小の島嶼に生息するベンガルヤマネコの亜種、ツシマヤマネコが生息し、問題発生しまくりだがツシマジカ、ツシマテン、さらに朝鮮半島からの自然移入タイプのカワウソまで圧倒的な多様性を誇る島を乱暴な実験候補地として選ぶ最低のセンスもすごいと思うが、普通に多くの人の生活もある島だ。それ以前の話だ。
今回の「ダイアウルフ」(と言っているが遺伝子編集されたオオカミの変種)の誕生は、技術的な成功ではあるが、あくまでペット産業を目的とした品種生産に過ぎない。野生動物の保護や生態系管理が目的ではなく、そのための技術開発でもない。将来的に生態系保護に応用できる可能性はあるにせよ、現段階では話が飛躍しすぎている。
また、この分野は、いろいろ今論議されていて、絶滅させても復活できるから大丈夫だろうみたいに生物多様性保護分野で有害な勘違いが広がることを懸念する意見もある。私も同様の考え方だ。生態系機能維持、回復が重要なので、カードのカテゴリーを揃えれば問題がないなんてことはないのだが、そういうのも「生物多様性保護」以前の「生態系保護」論理を理解していないと危うい。生態系という言葉が廃れて、生物多様性という言葉が走り出した時にぼんやり考えた懸念がそのままという感じだ。
多くの肉食獣は人を襲う事例が少ないが、これは彼らもリスクを避けているためだ。しかし、オオカミとの遭遇機会が増えれば、意図せぬ事故や人的被害が発生する可能性は高まる。オオカミの不幸を望まないのであれば、この点は容易に理解できるはずだ。
大陸産のオオカミ導入を主張する人々の計画について考えてみよう。エゾオオカミはともかく、ニホンオオカミは日本列島に適応した小型のオオカミだった。大陸産オオカミは生態的なニッチが異なり、採餌などで苦労するだろう。この計画は最初から自己満足的な発想に基づいている。
ところで、最近のシカの遺伝的な解析では、世代を遡っての個体群の増減をシミュレートすることができるが、過去500世代ぐらいさかのぼれるという話で、日本におけるシカの増減はオオカミのような天敵の存在や減少・消滅や気候変動とは全く関係なく、ひたすら人間の狩猟圧の影響であることが示唆されている
(Iijima et. al., 2023 )。
実際、多くの動物にとってヒトという生物以上に強力な天敵は存在しない。どのような動物でも捕獲してしまうし、捕獲できるまで別の方法で食いつなげるからとてもしつこい。北米大陸のメガファウナ(巨大哺乳類)はほとんどヒトによって滅ぼされたという話もあるくらいだ。そして、シカのような中型の草食獣は、より大型のメガファウナの草食獣によるプレッシャーや餌をめぐる競争によって個体数が抑制されていたと考えられる。ヒトが現れた後、多くのメガファウナはヒトによって滅ぼされて、増えるニッチが拡大した。逆に、氷河期以降、ヒトの狩猟圧に抗して今まで生存してきたシカは、いかに生存能力が高い動物かっていうことを示している。今の日本、オオカミ(それも島嶼型のニホンオオカミ)を放ったとしても、シカの個体群を減少させるような機能は期待できない。能力があってもかみ合わないのだし、解析結果はそのことを示唆している。だから、シカ問題にしても、ヒトが氷河期以降行ってきたように、腹をくくってシカを捕獲していくしかないのだ。
とりあえずなんか画像が欲しくて、AIにニホンオオカミとして指示して描かせたが、最初、なんとなく普通に移動中の大陸産オオカミのパックの画が出てきたので、変化を持たせようと?猫をメンバーに加えてみた。妙なもので変な物語性が出てしまった。科学考証全く関係なく、遺伝子操作でニホンオオカミを復活させて放獣します見たいな、相当なトンデモ(本人は理解していないけれど)を言い出さない限り、フィクション語りなら何でも勝手に作ってみてもらっても問題ありません。猫かわいい。オオカミも可愛さがなんか倍増。
AI作画では、全個体保護管理のための測位とアクティビティデータとっている大盤振る舞いの衛星通信型のGPSテレメトリー首輪もscriptで指定したわけだが、最初'collar'をてtypoしてしまったら、色鮮やかな衛星通信型のGPSテレメトリー首輪という二重の意味みたいに解釈してもらって、ちょっと面白いことになった。