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音声解析クロニクル~音は世に連れ


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 Macで音声可視化できるソフトを使ったのは、Sound Edit 16が最初だった。鳥類の音声解析用としてAppleのMaCintoshは日本語化される以前にデバイスと一緒に販売されいたりした。ツートラサンパチのオープンリールの録音と低速再生でコウモリの音声解析などもやられていた。野外での鳥類の声を使った研究ではラジカセが結構活躍した時代もあった。周波数表示で1/10になっているから、30kHあたりにピークが見られるヒナコウモリの波形。こうやって見ると、わかりやすい三次元表示になっているなと思う。単純な等高線型ではなく、鳥瞰型で周波数とエネルギーの大きさを示している。レチナモニター表示のはるか以前、当時のPowerBookの画面解像度から少し粗いが、今見てもよくできてるなって思う。

SoundEdit 16 Macintosh対応 日本語版

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 驚いたのは、一応品切れになっていたが、この30年前の、今動かせるMacが存在しないソフトウェアが、Amazonで検索にかかったこと。これ自体がネタみたいなけど、私の作り話ではないことが示せてありがたい。
 Mac用ソフトのAll about みたいなサイトがあって、そこでもこのソフトは述べられている。ひょっとしてDLできる?え?

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 その後、コーネル大学鳥類学研究室のRaven Liteのお世話になった。

追記ー実際にはそのラボの鳥類音声用解析ソフトについてはCanaryが先にあって、これは、今では当該ラボでも跡地になっている(「またあらじー Never more」)。このソフトが先進的だったのは、二つの音声データを比較して類似度を出して、同じ個体かどうか検証するための機能まで着いていたことだが、実際、それほど音圧などそろえた録音データが録れることもないので、まあ参考程度にしかならなかったというところだ。Raven Liteからはその機能は外されている。

 この間に、一般の音楽視聴用ソフトやそのフォーマットは色々変化が生じて、サブスクリプションとネット環境が一般的になって、ほとんどの人は、データフォーマットなど気にせずに音楽を楽しめるようになった。音楽ソフトが―みたいな部分は意識する必要がなくなった。
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 超音波領域については、iPhone/iPadの積んでいるCPUの処理速度がすさまじいことになったので、リアルタイム・タイムエキスパンジョンが当たり前になった。つまり私たちが手にしているデバイスのCPUの内部処理速度があまりにも早いので、入力音声(超音波)→1/10低速度再生処理→可聴域で聴けると同時にスペクトログラム表示して記録→音声パターンをデータベースと検証→データがあればコウモリの同定を瞬時に行うことができるアプリが出現し、それによる探査が一般的になった。何しろ、アナログ回路で弄ってノイズと歪だらけの音声信号ではなく、デジタル録音処理によるもので、こんな、教科書に乗せられるようなキクガシラコウモリの見事なホッチキスの形みたいな典型的なCF波の波形が手に入るのだから、完全に違う世界になったと言えよう。
 私はテクノロジー賛歌はあまり無批判に受け入れる方の人間ではないけれど、そんなに高速なCPUで何がしたいの?って言ったりする人も1990年代でも、現在でもおられるけど、演算処理速度が上がると今まで見ることができなかった世界を見ることができるとはいえるし、既に当たり前になっているものも、そのすさまじい演算速度のお陰によるものは沢山ある。
 フルレンジどころか、ヘテロダイン(設定した周波数からのズレを可聴音に変換するもっとも石器みたいなバットディテクター)方式のバットディテクターだと学んで、周波数特性なども自分で見たこともない人にこれを見せても何が何だか理解できないようであった。因みにもちろん「石器」にも良いところがあって、高度デジタル処理を必要としないアナログ信号のためのマイクとアンプシステムによるヘテロダイン方式のバットディテクターは、感度がとても良いのである。だから、私などもフィールドでは両持ちである。

 100万円近いディスクリートの集積の塊みたいな周波数を1/10に落とす回路を搭載したバットディテクターをコウモリ探索に使ってきてもしたわけだが(音声信号の時間を10倍にに伸長するタイムエクスパンジョンモードも一応あったが使えるのは数秒間でリアルタイムは無理だった。)、既に、Ecometerというちょっと名前がいけてない数万円のソフトウェアが、それを凌駕する世界が現実になっている。
 実際には、コウモリの場合200kHzまでのデータを持ちかえってコウモリの場合は更に解析用のソフトにかけるみたいなことをやっている。38㎝/秒で流れるオープンリールテープの出番はないが、音声データの取り扱われ方や作業の内容はその延長だ。録音⇒低速再生がリアルタイムで連続的に瞬時にできている。CPUの演算速度やメモリー、更に記録媒体の性能が飛躍的に上がったおかげではあるが、最初から見ていると、まるで魔法だ。
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 最近はAudacityで全部済ませている。1kHzのところにパワースペクトルが確認できる、マナヅルの声。囀りとは言わない、縄張り宣言の番によるユニゾンコール。

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 某ソースによるミソサザイのさえずりの波形。くっきりすっきりで、流石、良い機材を使っていて、高S/N比、歪率が低いと感じられる良質な録音データだった。
 以前、ピアニストのKatia Buniatišviliの作品における無音演奏曲の中に含まれるブラックバードの話を書いた(「Songs of 4'33"」、「Blackbird」)が、Audacityのお陰でもある。いろいろ重宝している音声ソフトだが、数分間のデータなら、ほとんど数秒で鳥の声が入っている領域を確認できる。

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 私のようなものでも、録音機材の進化の恩恵にあずかれる。数十年前なら、特に超音波領域など、超高額専用機材がないと無理だったものが、数万円のデバイスと、デスクトップで解析まで可能になっている。

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 REWのこの表現では、音圧(dB)の縦軸と周波数(Hz/kHz)の横軸に置くから手前への時間軸が加わって独特のwaterfall表現になっている。これを頭上から見下ろしたら、上のAudacityのスペクトル表示の縦横を逆にしたものになると思うと理解しやすいだろうか。



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by complex_cat | 2025-06-02 15:13 | My Tools | Trackback | Comments(0)

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