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Nightingaleとblack birdと

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 以前のエントリで、ピアノ界のビヨンセと呼ばれたこともあるジョージア出身のKhatia Buniatishviliによる無演奏曲Glass-4'33"の中に、鳥類の声が入っていることに気が付いた話を書いた(Songs of 4'33")。
これはジョン・ケージの有名な作品だが、これについての解説は、こちらの薮田氏のものが詳しい。その後の、エントリ、「Blackbird」では,、一種は、クロウタドリ(黒歌鳥 Turdus merula、英語名:Blackbird)であることはわかったという話を描いた。
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 クロウタドリのさえずりは2~3kHzあたりにピークがある。4'33"で発見できた鳥のさえずりのソナグラムとしては、低い方の帯域の声だ。
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 当たり前だが、本当にかすかに聞こえるというレベルですらない。本来、無演奏の特殊な曲で、意図して環境を入れるみたいな作品ではない。ぎりぎりの小さい音圧で入っているので、上と下をオミットして、その部分だけデジタル処理で増幅したのだ。だから解像度の低いアナログ音として、同じ、さえずりだなと認識できる限界の音だ。

 さてもう一つの、2.5~5kHz当たりにエネルギーがある方のさえずりの主だが、いくつかあてずっぽで、ヨーロッパの鳥の鳴き声のデータと比較したら、あっさり分かった。

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 おそらくKhatiaの録音スタジオの環境からそんなに特異な種は出てこないだろうと思ったのだ。非常に一般的な種だった。サヨナキドリ (小夜啼鳥、Luscinia megarhynchos、英語名:Nightingale)、偉人の名前なので、誰でもその名を知っているNightingaleだった。Nightingaleとblack birdと、錠剤度が高い鳥類なので、作品の録音の現場が、それほど特異な環境にあるわけではないと感じた。まあ、そうだよね。

 この鳥は夜に囀るため、そのままの意味のNightingale(夜囀る者)と名付けられたのだが、もちろんこのように昼間も盛んに囀る。これについては、近年の研究で夜囀る雄の個体は、夜、パートナーを探して飛び回っているメスのための雄のさえずりであることが分かっている。そしてこれとは別に、昼間のさえずりは、なわばりを成立させる必要がある個体による囀りだということが明らかにされた。オスのサヨナキドリがメスと番(つがい)になると毎晩歌っていたセレナーデを謳わなくなるが、昼間は、繁殖縄張りを守るために、歌い続けるということのようだ。

もともと、別の研究で、夜間の鳴き声のパターンには 以下の2 つの明確なタイプがあることが知られていた。

Robert J. Thomas (2002) Seasonal changes in the nocturnal singing routines of Common Nightingales Luscinia megarhynchos. Volume144(2): E105-E112.

 このようなヒタキ科の小さな鳥が、夜もガンガン配偶者獲得のために活動しているというのは、割とユニークだと思う。関連する文献を見つけた。

Tobias Roth, Philipp Sprau, Rouven Schmidt, Marc Naguib and Valentin Amrhein (2008) Sex-specific timing of mate searching and territory prospecting in the nightingale: nocturnal life of females. Published:04 March 2009https://doi.org/10.1098/rspb.2008.1726.

 かつて0.4gぐらいの発信機を動物に装着したりしていたけれど、今はバッテリーやGPS技術が上がっていてコウモリなどでも研究事例があるが、これはどうやらラジオテレメトリータイプのようだ。これで、夜、囀っている雄を品定めに来るメスの動きをパターン化した仕事だ。

 このことが明らかになってから、Nightingaleに関する、昼と夜のさえずりに関する研究は進んだ。
 即ち、(1) 夕暮れと夜明けの合唱で、真夜中はほとんどまたはまったく鳴かない; (2) 夕暮れ後に鳴き声が急速に増加し、真夜中に広いピークに達し、夜明けに向かって減少し、その後夜明けの合唱が続くという二つのパターンだ。
 種明かしがされた後で、この研究結果を見れば、当然、繁殖期の早い時期には、ペアリングはまだ進んでおらず、カップルが形成される途上にあるので、ほとんどのオスが、メスのお眼鏡にあずかろうと、タイプ 2 のパターンで夜頑張って歌う状況になっているわけだが、この当時は、そこまでは明らかにされていないので、なぜそんなパターンが生じるのかという謎がもう少しで解ける手前だったわけだ。それらいくつかの研究が下敷きになり、パズルのピースがはまっていくように、この仮説の証明にたどり着いたわけだ。
 Khatiaがこの特別な曲の「演奏」を録音した時の時期はどうだったのか、ソングのソナグラムから、専門家が見たら時期ぐらいは予想ができるかもしれない。

Labyrinth

Buniatishvili, Khatia/Sony Classical

⭐⭐⭐⭐🌟


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 AI描画でこの難局の演奏を描かせようとするとなかなかいうことを聞いてくれず、休止符しか存在しな楽譜に適当に音譜は並べるし、楽譜も4'33"と指定しているのに、4'333となぜか3を三つ並べてくるし、AIお前、有料版使わないと、眼が悪いやつが出てくるのか?訳が分からないとつぶやきながら、トライアンドえらーをやる羽目になる。「演奏しない演奏なので、両手は膝の上」とスクリプトに書いても、鍵盤の上に手を載せてる画をかなりの確率でひねり出してくる。
 ピアノに STEINWAYとか描かずにJOHN CAGEとか刻印を入れてきたのもあったり、やっぱりAIは笑いを取ろうとしているのかもしれない。描かれたピアニストらしき女性はKhatiaに少し似ているが、まあ偶然だろう。

 ところで、この4'33"の曲についてだが、このクラシック音楽史(【ガチ音楽史】クラシックの歴史:それホント?編④ ~ 完結! 激化する "クラシック対ポップス" 戦争…ナチスに翻弄され、現代音楽はどこへ向かう?)を頭に入れた後、同じyoutuberのアカウントの動画を見ると、かなり理解が進んだ。

この分野全く門外なので、あくまで鳥類の話として書いているけど、Google Scholarで検索すると、いくらでもヒットして、読める。読めるぞ。
Julian MurphetJohn Cage and 4’33” (https://australianhumanitiesreview.org/wp-content/uploads/2022/11/AHR70_14_Murphet.pdf)
Karl KatschthalerAbsence, Presence and Potentiality:John Cage’s 4'33" Revisited (https://brill.com/display/book/9789004314863/B9789004314863-s011.xml)



ちなみにAIに質問してみた結果も、大体そんな解釈になっている。
現代の音楽分野の音楽史、学術的解釈においてJohon cageの4'33"はどのように評価、総括されているか?
現代の音楽(学)および音楽哲学におけるジョン・ケージの《4分33秒》(4'33") の評価と総括は、極めて高く、また多角的です。この作品は単なる奇抜なアイデアではなく、20世紀音楽における最も重要な転回点の一つとして、以下のような形で学術的に位置づけられています。

1. 音楽の定義の拡張と問い直し
最も核心的な評価は、「音楽とは何か?」という根本的な問いを芸術の領域で突き付けた点にあります。
従来の音楽観の打破: それまでの西洋音楽が「楽音(組織化された音)」を素材としていたのに対し、ケージは《4分33秒》を通じて「沈黙(無音)」と「偶然に発生する環境音」を音楽の本質として提示しました。
聴取行為の変容: この作品は、演奏者ではなく聴衆の聴く態度そのものを作品の核心に据えています。聴衆は「無音」のなかで、自分自身の呼吸音、隣人の服の擦れる音、会場外の車の音、自分の心音など、通常は「ノイズ」として排除されていた音を「音楽」として能動的に聴くことを強いられます。これにより、「聴く」という行為が能動的で創造的な営みであることを明らかにしました。
非人間主義でアナーキストのJohn Cageらしい発想だが、

2. 偶然性の音楽(チャンス・オペレーション)の極致として
ケージは東洋哲学(特に禅)や易学の影響を受け、作曲過程に「偶然性」を導入する「チャンス・オペレーション」の手法を発展させました。《4分33秒》はこれを最も純粋な形で実現した作品です。楽譜は時間の構造(3楽章の長さ)のみを指定し、そこで起こる音の内容は完全に演奏時の環境と偶然に委ねられています。これにより、作曲家の意図や感情の表現を極力排し、音それ自体の在りように任せるというケージの美学が頂点に達しました。
このチャンスオペレーションというのは、よくわからなかったが、彼は「易」を乱数表のように使ったということみたいだ。実際にそういう曲も作曲したようだ。
これについては、物理学の学位を持っている易に精通された北斗柄氏に伺って確認した。要約すると以下の通り。おかげさまで、気になっていたピースが埋まった。ある意味、一時期流行った1/f揺らぎみたいな音楽とは対極にある。それもまあ、そうなるだろうなという話。
占いは大きく3つに分けることができる。
・何かの形状から判断する相術
・乱数系(易、骨卜、亀卜やタロット)
・時刻トリガ

易は乱数系の代表的な存在。現代の易だと多くは、
・1~8の乱数を6回発生させる。
・1~8の乱数を2回、1~6の乱数を1回発生させる。
のどちらかで、易の卦を得ている。

3. パフォーマンスアートとコンセプチュアル・アートの先駆け
《4分33秒》は「音楽」の領域を超え、現代美術の文脈でも極めて重要視されています。
行為の芸術: 演奏者がピアノの前に座り、鍵盤に触れずにページをめくるという「行為」そのものが作品の本質です。これは後のパフォーマンスアートの重要な先駆的な事例と見なされています。
概念の優位性: 作品の価値が、視覚や聴覚的な「美しさ」ではなく、背後にある「概念」や「アイデア」 にあるという点で、コンセプチュアル・アートの始祖の一つとしての地位を確立しています。
解説動画にあったように、絵画で言えば、何も描かれてないキャンバスを作品とするのに似ている、

4. 社会・文化的文脈における批判性
学術的には、この作品が持つ批判的な側面も指摘されます。
コンサートホールという制度への問い: 厳かなコンサートホールという空間と、そこで行われている「演奏」と「聴衆」の儀式的な関係性を、逆説的に浮き彫りにし、風刺しました。
資本主義的な作品消費への批判: 楽譜が売られ、演奏権が管理され、著名なピアニストが演奏するという「美術品」としての流通構造そのものを内側から突き破ろうとする試みでもありました。
Khatiaは、著名なピアニストになった段階で、この作品を「演奏」してCDの中に入れた。これは割と、演奏家としての挑戦だったかもしれない。このCDは映画音楽が含まれていたり、選曲もポピュラー音楽のアーティストみたいな小品集にもなっている。音楽史をたどっていると、そのあたりも面白いなと思う。
総括
現代の学術的解釈では、《4分33秒》は以下のように総括されます。
《4分33秒》は、単なる前衛的な挑発ではなく、音楽の定義を「組織化された音」から「時間の知覚」と「聴取の意識」へと根本からシフトさせた哲学的宣言である。それは20世紀後半の音楽(前衛音楽、ミニマルミュージック、環境音楽、サウンドアートなど)のみならず、現代アート全体に決定的な影響を与え、あらゆる芸術表現の可能性を解放するきっかけを作った、極めて重要な里程碑(マイルストーンのこの表現は知らなかった)である。
つまり、その価値は「無音の曲」という表面的な奇抜さにあるのではなく、それを通じて我々の「芸術観」「知覚」「環境との関係」を根底から問い直したその哲学的・概念的な深みにあり、現代においてもその影響力は色あせていません。音楽の教科書や美学の論文では、必ずと言っていいほど言及される、現代藝術を理解する上で避けては通れない核心的作品としての地位を確立しています。
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このAI生成画の猫が一番チコに近かった。猫馬鹿はそんなところしか気にしていない。

Commented by umi_bari at 2025-08-22 07:37
本当に音楽とオーディオにお詳しくていつも
見入ってしまいます。
アラック、ただ聞くだけなんです。
お見事バグースです。
Commented by complex_cat at 2025-08-22 08:08
> アラックさん
私がある程度まともにわかるのは生物分野だけです。
他は、適当です。
ただ、私の好きな音楽についての書き散らしと素人オーディオ遊び、エンジニアでポータブルオーディオやってる方が、ちょっと面白いと言ってくださったので、ちょっとモチベーションが上がりました。
Commented by sknys at 2025-08-22 12:09
山査子の実が熟すと、宿木鶫や脇赤鶫・黒歌鳥の群れが寄り集まって、真っ赤な実をもぎ取り、田園一帯に食い散らかす。このときバサバサ民の貪欲な大喰いは、先のことを考えないありさまで、そのあとおなかいっぱいで眠くなった鳥たちが大挙してロックデーンへ一休みしにくる。だから日が暮れるとグリマルキンは、うとうとした鳥たちが降りてきた茂みに下から忍び寄っては、その餌食にしてきたわけだ。
モード・D・ハヴィランド

フレームに金色のペンキでミシン会社の名前、ナイチンゲールを書き入れるのがわたしの仕事だった。/ この仕事に就いたばかりのころ、どのミシンにもナイチンゲールと書くのは退屈だし残酷なことのように思えた。怯えた黒猫みたいなミシンたちに、みんなまったく同じ名前をつけるなんて。
カミラ・グルドーヴァ

先月読んだ2冊の本から。
英語で書かれた最初の小説『猫にご用心』(日本印刷出版 2025)に併録されている 「猫王グリマルキン伝より」 に 「黒歌鳥」 、短篇集『人形のアルファベット』(河出書房新社 2025)所収の 「ワクシー」 に 「ナイチンゲール」 が出て来ました。
この猫絡みの偶然性というか、シンクロニシティー(?)が面白かったりして。
(https://womensprize.com/app/uploads/2024/01/Camilla-Grudova-.jpeg)
Commented by complex_cat at 2025-08-22 13:34
sknysさん、
多方面に造詣深く、いつも話題提供ありがとうございます。
グリルマルキンがヨーロッパにおける不可思議な力を持つ猫やイギリスにおいては猫の王の名前になっている設定を知りました。
猫岳の猫王みたい。
画像生成、ともかく猫の出来は一定水準なので、毎回、画の中に加えております。
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by complex_cat | 2025-08-22 07:22 | Wonderful Life | Trackback | Comments(4)

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