マクロ系研究者で、フィールド屋としても、ダニとの闘いみたいものにはずっと関わってきた。今は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS; Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)リスクがここ10年ぐらいでずっと上がってきている。フィールドではマダニに咬着されないよう、頻繁にチェックするし殺虫剤は長靴を着用してそれにしっかり噴霧する。この異常にクソ暑い日々、長袖だし、衣服はかなりぴっちり着込んでいる。 20年前、この画を撮影したときにはSFTSといった病害については、難の情報もなかったし、そもそもそれで騒がれたりしなかった。おそらく山野から戻って調子を悪くする人は、悪性の風邪ぐらいに思ったりする状況もあったろう。高齢者が亡くなるのも悪性の風邪をこじらせた多臓器不全のように解釈された事例もあるかもしれない。今、色々医療対応はわかってきているが、それでも感染がわかっても基本的に対処療法で闘うしかないので、劇症になりやすい高齢者は不利になる。 専用のダニリムーバーはとても便利だが、簡単なプラスティック製品なので、デッドコピー品が作られまくった。これはオリジンだったはず。プラモデルの枠の切れっ端みたいな僅かなボリュームの製品だが、そう考えると1,000円弱の値段は特許料みたいなものだ。多分、金属などで作らない方が良いと思う。使った印象では、安っぽいプラスティック素材で作るのが正解という気がする。 Tick removerなるやすいプラスティックのアイテムは、一度チコが、フタトゲチマダニに咬着されたときに、彼の主治医に教えてもらったのが最初だった。とても効果的で便利だったので、これはじゃまになるものでもないので、いつもフィールドワークでは必携にしている。
憎まれっ子世に憚ると言われるが、いざ基礎研究のために飼育しようとすると、観察用シャーレの蓋を開けて机の上においておいた後輩が呟いた。「・・・・あ、死んでる。」。蓋を開けて数時間放置しておいただけで乾燥して死んでしまうとか、なんと脆弱な生き物かと思ったりした。 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2025年1月31日更新)より SFTSの感染者は年々増加している。医師でもそれを思いつかないこともあるから、実際に研究者や医療現場での知識や経験から今まで見過ごされていた事例が拾われていることもあると思う。
その他、ここあたりが、参考になる。
西日本を中心に感染者が確認されながら、気がついたらかなり東進しているというデータが出ていた。おそらく広がり方は、感染野生獣の拡散により広がっているだろうし、知らずに人為による移動もあるかもしれない。SNSでアライグマの感染率が最も高いという話が出ていて、値を見ると30%を超えていた。アライグマは、行動圏が固定的ではなくかなりワンでリングをするから、非常に面倒な動物だ。ちなみに感染率の値としてアナグマも二番目だったがこれも30%を超えていた。どちらも人為環境に進出するからここから他の哺乳類、ノネコを通して飼い猫にまで行き着く事例も確認されている。チコがマダニを受けてきたときには、SFTSを持ったマダニの頻度はまだ低い時代で、もちろん情報もなくのんびりした時代だったが、今や獣医師は、この病原生物リスクがかなり跳ね上がった。実際、感染した猫を治療中の獣医師が感染して亡くなられている事例さえ出てしまった。
チコが、マダニをつけてきたのは2017年で、当時はまだまだこのあたりでは、SFTSの発症者も出ていなかった。それ以前もそれ以降もなかったし、幸いにトラブルにならなかった。確認された都道府県図ではこっちの県全体が塗り塗りされてしまうが、実際に感染者が出た地域は、まだまだ限られる。また発生地域は、すごくざっくりと報告が上がるため、どこの話なのか外部には伝わりにくいようになているのだが、今のところピンポイントではある。感染者発生地点のピンポイント情報は、色々問題があるので、得られないが、県によってわりと広い範囲でマダニからSFTSウイルスが確認されたりもしている。分布域が狭まる方向にはいかないのが厄介なところだ。
感染者の分布地図を見ていて、一つ気になったことがあった。私がお世話になった方が屋久島でSFTSに感染して、命のやり取りをされたのは今から4年前だった。実際に、種子島、屋久島、奄美大島では、SFTSウイルス遺伝子が確認されている。
日本で確認されているSFTSウイルスの遺伝子タイプは、J1、J2、J3の3種類で、宮崎県では、なぜかすべてが確認されている。屋久島のSFTSウイルスタイプが難だったか失念したので、後で文献を探す。
岩元由佳、浦元千織、山本真実、穂積和佳、中山浩一郎、御供田睦代 (2017) マダニのSFTSウイルス保有状況等に関する調査研究 Research on SFTS Virus Holdings Such as Ticks. 鹿児島県環境保健センター所報 第18号 「鹿児島県内におけるマダニの分布状況や季節消長及び ウイルス(以下「 」という )保有状 SFTS SFTSV 。 況について3年間調査を実施した。県本土では4属11種のマダニが採集され,そのうち3属8種から SFTSV遺伝子が検出された。県本土のマダニの 遺伝子検出率は約7%であることが分かった。また,奄美大 SFTSV 島,種子島及び屋久島でも 遺伝子を保有するマダニの存在が確認された。」 南九州では、シリーズとなる調査で、フタトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴチマダニ、ヤマアラシチマダニ、ヒゲナガチマダニ、マゲシマチマダニ、アカコッコマダニ、タネガタマダニ、ヤマトマダニ、タカサゴキララマダニ、タイワンカクマダニの11種が挙げられている論文があったから、その気になって専門家が採集したら、それなりの種類が見つかる。 2. マダニ類(マダニ目)Ixodida(日本産ダニ類目録(2019年9月版)ver. Sep. 2019 日本ダニ学会編) 現在専門学会では日本にマダニ科は、シノニムで消されたものもあるので、41種ということになっているようだ。ここのリストのとおりだと、マダニ目はヒメダニ科4種を加えて45種。こんなに種類があると思っている人は少ないかも。ちなみに日本語だと全部「ダニ」だが、英語では、吸血性のダニはtick、自由生活をしている非吸血性のダニはmiteという一般名詞で呼ばれる。なんかそっちの方が良いような気がする。「バラバラのマイト!ラーリホー!」 マダニ科は基本、幼ダニ、若ダニ、成ダニの3ステージで、吸血して膨らみ、脱皮をして次のステージに進む。成ダニになると吸血前と後では、体積比で300倍ほど違う。どれだけ血液吸うのかという話で、たっぷり吸ってたっぷり卵を産む。外骨格生物だが、これほどのドラスティックな体積の変化となるので、膨らむときにはクチクラも軟クチクラに変化して膨張を助ける。よくできている。 ちなみにアカネズミについては、マダニよりもツツガムシをつけていることの方がリスクがあるとされきたが、実際に耳の付け根によく付けているのは、調べ直すと、ザトウムシがよく取りつかれているLeptus クモタカラダニの仲間じゃないかと思う。 なにか音楽動画を張りたくなったが、ダニをモチーフにした歌とか流石に内容だし、Back-Tickとかダニー・ケイとかチック・コリアとかのダジャレも、叱られそうなので、ダニによるライム病についてのタイトルが付いているが、なにやらヒーリングミュージックを見つけたので、貼っておく。なかなか心乱される衛生害虫と病気の話なので、心穏やかに終わりたい方はどうぞクリックしてください。アヌガマとかフィリップ&イーノを思い出す。 VIDEO
追記ー確証がないので、ここに書くか迷ったが、一度、県内で最初に報告のあったSFTSの感染地帯での野生動物の調査後、高熱と吐き気、何よりも激しい悪寒に捕まったことがある。当時は、私にはSFTSの知識は最低限あったが、まさか私も信頼する主治医も、その可能性には流石に思い当たらず、インフルエンザチェックだけを受けて、結果ネガティブで、一応、症状からインフルエンザの可能性が高いからと処方をしてもらったことがあったが、全く症状が改善されず1周間ぐらい家で安静にしているしかなかったことがあった。あれはSFTSであろうがなかろうが、もしも私が高齢のみであったら、相当きつかったと思うくらい、それまでにない体験だった。何故か、私のふせっている状況を気にしてくれたのか、自分がくつろぎたいと思った場所に私が転がっていた結果だったのか、どうだったんだろう。
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