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右回し蹴り

右回し蹴り_b0060239_21161733.jpg長男が空手の試合に出ると言いだしたくだりは,この新カテゴリでの前回アーティクル「大会に出る?」に書きました。まぁ,幼年部は,突き蹴りの威力も大したことはないので,今時のプロテクターを着けていれば,そんなに酷い目には合わないですむでしょう。斜め後ろから良い蹴りを貰えば,運が悪ければあばらにヒビぐらい入りますが,それよりも問題は,押されたり引き倒されたりして転倒したときの受け身の問題です。スーパーセーフ型のヘッドギアも後頭部は弱いし,小さな子供がもつれて倒れるときはちょっとヒヤッとしますね。
Canon EOS Kiss Digital N, Carl Zeiss Distagon 1:1.4/35 T*

画像は,ヘッドギアのその横であまりにも気持ちよさそうに寝ているチコです。
 ヘッドギアは,練習用のものは購入しましたけれど,幼年部の試合では試合用は借りられるそうですが,本人が本気で続けるならば,そっちも買わねばならなくなるかも知れません。

 てなことを親はいろいろ考えたりしているのですが,本日,長男が道場からニコニコ顔で帰ってきました。
 どうしたの?って聞くと「今日ねぇ,蹴ったらいい音がしたんだよ」
「それ,組み手で?」
「違うよ」
「ミット打ち?」
「そう,それだよ」
「左回し蹴りで?」
「違うよ,こっち,右」
「右で?」
 長男は左利き。鉛筆や箸を右に強制したりしているせいか,利き腕とか利き足とかいうこと自体を,話してみるとどうやら余りちゃんと理解していないのです。確かに左回し蹴りは,それなりに蹴ることが出来ていたのですが,それに比べて右回し蹴りは,先週,自宅で蹴らしたときでも,前蹴りにもならないぎごちなさでした。現在の何とか蹴っているとしかいいようがない左回し蹴りのレベルであっても,しばらくかかるだろうなぁと思っておりました。

「先生がねぇ,100点だって」
「へ〜」と私は,あの,子供達に対してもの凄く優しい師範なら多少の教育的リップサービスはあるだろうと思うものの半信半疑。

風邪の微熱がまだあるので伏せっていたのですが,起き出して,
「ほら,右で蹴ってみ」
「ほい」


右回し蹴り_b0060239_2192653.jpg驚きました。今までの左より遙かに良い,まともな右回し蹴りです。始めてまだ1ヶ月目の道場通いで,これだけ蹴ることが出来れば,先生も褒めてくれるはずです。
 熱惚けしていたので,時計填めたまま受けちゃいました。子供の蹴りとは言え,衝撃で,バンドのロックがはじけ飛んだ瞬間です。右膝から足首までが十分に返っております。




 長男は,もともと鈍足でスポーツも得意とは言い難い,筋力もあんまりない少年なのですが,そのせいか逆に技の出し方が速いのです。力が強い子は,体を確実に安定させてという動作が先に入る傾向があって,体が地面に居着きやすい(固定点が出来る)のです。これは,人間が二本足で立って倒れないように,もの凄い複雑な制御で姿勢維持をやっているために,速い動きや力強い動きをしようと思うほど,倒れないように絶えず姿勢制御を無意識にしている動きのため,地面との固定点を強固にしたくなるということによるものです。
 武における歩法の共通点は,押されてもぶれない安定性と居着かない(地面との間に常に固定点を持たせない)という矛盾のある動きを同時に実現することでもあるのです。 
 長男の蹴りは,思いの外,速いリズムで繰り出されます。この一拍子の動き,道場で身につけてきたとすると,大したものです。例えば,人の肩に着いた埃をさっと取るような動きのタイミングが維持されたまま,もしも威力が上がっていくとしたなら理想的です。私自身,一拍子の打ち込みをどうやったら体現できるか,もの凄く苦労しました。大抵は,何処かに固定点を作って打ち出してしまうので,どうしても1.5拍子になってしまうのです。1拍子ならば,それは意識の間隙を縫って打ち込むことができます。相手が身構えるための予備動作をした瞬間に入るからです。結局,練習しかありませんでしたが。
 長男は,この年齢から,曲がりなりにも武という巨大な多面体の一部に触れたわけで,少なくとも私よりは,間違いなく,強くなる環境と素質を持っています。

 楽しいのだろうなぁ。きっと。
Commented by kyoko_fiddler at 2005-10-01 23:02
いいですねぇ~!(^^)
よくわからないけど、きれいな蹴りだと感じます。
すごいですね、予備動作なしって。もうすでに達人の域じゃないですか。
猫拳の師匠がふたり、お手本をみせてくれているからかも。
Commented by complex_cat at 2005-10-01 23:44
kyoko_fiddlerさん,いやいや,息子が,そこまでの天才なら,K-1にでも出して,私は楽できるのですが(笑)。
 こういったものの進歩は,楽器でも何でも双ですが,スパイラル構造みたいなもので,彼の今の小学校低学年の土俵の上では,そういう風に評価できるということです。
 ためがない,フッと自然に手足が出るのは,彼の長所だと思います。画で分かると思いますが,微笑みながら蹴っていられるのも,力みのないレフパワーが使えているせいですが,逆に言えば,鍛えられた筋肉がないので,それ自体が邪魔にならないということですね。太極拳の初期段階,圧倒的に筋力が劣る女性の方が,スキルが上になります。しかし漰撼突撃(ほうかんとつげき=山をも崩し 揺るがす威力)という言葉が八極拳の動きの特徴としてありますが,世界に誇れる空手の世界でも,絶対的な威力を身につけられないと武にはなりえません。これから,息子の動きがどう変わっていくのか楽しみです。
Commented by summilux35 at 2005-10-02 00:01
無骨な防具と、無防備なチコちゃん。いい対比ですね。
上達していることが自分でもわかっていると、楽しくてしょうがない時期ですよね。
スポーツも絵もそうですが、前回よりも確実に良くなっている、そしてそれを先生なり仲間なりが褒めてくれる。これほど充実した気持ちを知ったことは、とても有意義なことだと思います。
これからが楽しみですね。多少の心配はあるでしょうけれど。
Commented by complex_cat at 2005-10-02 19:56
summilux35さん,ベッドに何か置いておくと,何故かその横で眠ってます。息子は,相当の運動音痴で,実はかけっこも学年で一番遅いのです。でも,武術をやっている人間は,不思議なことにこういう人が決して少なくありません。そういう意味でも,彼がこれからどのように変わるのか,とても興味があります。
Commented by oratie at 2005-10-03 20:46
おっ、腰の入ったいい蹴りですねぇ。
やっぱり空手の蹴りが好きですねぇ。ムエタイよりも。
Commented by complex_cat at 2005-10-03 21:10
oratieさん,どうも,ムエタイの蹴りは,タイの人の体の柔らかさで体現できる部分もあるような気がしますね。映画“マッハ”は楽しめましたけど。
 あと,私自信は,膝ごと外から廻さず,膝を真っ直ぐ引き上げて,そこから絞り込んで蹴るタイプの回し蹴りをずっと習ったので,どうも外から廻すのは,中に入られたり,軌道を読まれやすいような気がして,自分で使うのは駄目です。達人クラスなら,そんなこと気にしないのでしょうけれど。
Commented by oratie at 2005-10-03 23:32
ブラジルタイプですか?
昔、道場の仲間の間で中段の前蹴りを途中で止めて上段の回し蹴りにもっていくのが流行りました。でも全員が膝を痛めてましたね。
Commented by complex_cat at 2005-10-04 02:13
oratieさん,南九州のとある流派です。ブラジルタイプというのは,初めて知りました。テコンドー系も同じですね。仰られているのは,練習させられました。極真系でもその練習を見たことがあります。相手に膝でブロックさせておいて,回し蹴りに持っていくやつ。膝は痛めませんでした。練習回数,適当だったせいかな(笑)。
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by complex_cat | 2005-10-01 14:28 | Cat Kick Dragon Fist | Trackback | Comments(8)

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