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安旨オーディオ紀行 #20 FMチューナー

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 家の屋根に、廃棄しかけたVHF TVアンテナを逆相にしてFMアンテナに仕立てて使おうって思った頃、コロナ禍の時、チコはまだ元気だった。チコは屋根の上の私を見つけて、そこにきたがった。彼をなだめるために下に降りて少し散歩した。彼との影のツーショットは、これが最後だったかもしれない。彼のことは、その影すら、今も愛おしい。
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 アナログTVアンテナ、トラブルになるので外して倉庫に放り込んでいたが、指向性がFMラジオバンドでは逆になるので、向きをひっくり返して使えている。
 安旨なオーディオ機器について、碌でもない忘備録を綴ったシリーズ。基本的には、必要最低限のものが揃ったので、新たに購入するものも無くなって、おもちゃにする機器もなく、安旨なオーディオ機器について、碌でもない忘備録を綴ったシリーズはネタ切れ中。
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 それで思いついたのだが、ちょっとFMチューナーの話から。
 最初はフィンランド放送局のモジュール評価も高いPioneer F120Dを入れたのだが、この個体の調子があまり良くないのと、ワイドFMには当然対応していないし、シンセサイザーチューナーは、改造も簡単ではない。
 当時は、またFM補完放送対応のワイドFM/AMチューナーに興味があったぐらいだったのだが、カタログ数値としては、1970年代レベルのSN比というショボいYAMAHA T-S501を入れることにした。チューナーもかつては重要なオーディオソースの一つであるFMステレオ放送受信のためのデバイスだった。今も、移動体オーディオ受信装置とインフラとしてはそれなりの意味と性能を持っており、そんなにディスることはないと思う。ただ、今どきFM放送をFMチューナー入れて視聴しようというニーズは確かに極少だろうなと思う。


Modelusable sensitivitycomment
Pioneer F-7570.8μV/75Ω(9.3dBf)1980年代チューナー
Pioneer F-120D0.8μV/75Ω(10.8dBf)1980年代の名機
DENON TU-1500AE1.2μV/75Ω(12.8dBf)近年生産終了
YAMAHA DSP-AX4632.8 ∝V(20.2 dBf)2004年のAVレシーバー
YAMAHA T-5D1.2μV(12.8dBf)実家の1980年代モデル
YAMAHA T-S5011.5μV当該機種
YAMAHA T-S501とかつての名機その他、FMチューナーを持つ製品群の感度の比較
古いAVアンプ内蔵チューナーは別として、各メーカー鎬を削っていたあの時代の性能は戻らない。

 比較のために作った表を見てもらえれば分かるが実用感度も1,5μVって往年の名機に比べるとやや落ちるが先のAVレシーバーに比べれば専用機の矜持として性能は上である。SN比は、コストをかけた凝った回路を持っているわけではないのであまり良くないが、実用上エアチェックで音質にこだわるなんて使い方をすることもないからいいかなと考えた。
 ある意味、アナログ時代の高音質とされたオーディオ資産は、そろそろ限界点が来ているかもしれない。この先はオーパーツになってしまうのだろうな。ネットを見ていると、とんでもなく高額現行製品のオーディオアンプやスピーカー、LPプレーヤーなどのネットショップ情報が流れていく。流石にチューナーはない。該当する高額製品はAccuphase T-1200ぐらいか。

 特に、安旨(やすうま)なオーディオ機器について、碌でもない備忘録を綴る本シリーズでは、基本的には必要最低限のシステムが揃ってしまい、新たに買い足すものも、弄んで壊すおもちゃもなく、絶賛ネタ切れ中である。
 で、思い出したのは、オーディオ装置としてのFMチューナーについて考え直すことになったのは割と前なのだが、これについてはこの安旨シリーズでは扱っていなかった。

 最初のチューナー専用機は、かつての名機Pioneer F-120Dを導入した。それ以前は古いYAMAHAのAVアンプの1FMチューナー機能をちゃんと使っていたのだが、それも壊れた。Pioneer F-120Dはフィンランド放送協会の評価用モジュールに採用されたという逸話を持つ、パルスカウント検波の名品だ。しかし、いかんせん数十年選手のヴィンテージ。個体のコンディションが芳しくなく潰れた。そこで、現在「新品で買える数少ない単体チューナー」であるYAMAHA T-S501の中古を、諦めて手に入れた。
 カタログ数値を眺めれば、T-S501のSN比は1970年代の入門機レベルという「ショボい」代物だ。実用感度も1.5μVと、往年の名機たちが競った0.9μVといった極限値には及ばない。だが、AVレシーバーの「おまけ」のような受信部と比較すれば、専用機としての矜持は保っている。

 正直なところ、今さらFM放送で「究極のエアチェック(死語か)」をしようという気はない。現代におけるFMの価値は、もっと別のところにあるのではないかと考えたのだ。調べたら今の地元で受信できるFM局も意外とあることに気がついた(「FM受信再び」)。

 FMチューナーの周波数特性の上限、15kHzの壁は、FM放送は規格上、19kHzにあるステレオパイロット信号を除去するため、音声周波数は15,000Hz(15kHz)でスパッと切られている。ハイレゾが100kHzに迫り、CDですら20kHzまでカバーする現代において、「15kHz」という数字は貧弱に見えるかもしれない。しかし、人の聴覚限界はほとんどこれでカバーされている。たとえそれ以上の音が鳴っていたとしても、人間の聴覚は、加齢とともに高域から衰えて40代を過ぎれば15kHz以上が聞こえる人は稀だ。つまり、十分なほど「鳴ってくれる」。だって、カセットデンスケが屋外に持ち出せるハイファイ録音可能なカセットデッキとして売り出された時の周波数特性の上限は15kHzであったんだぜ。それで音楽録音、視聴は十分という時代があったんだ。音楽のエネルギーの大部分は15kHzよりもっと低い帯域に集中している。むしろ、急峻なフィルターで高域をカットすることで、中低域の厚みや、ラジオ特有の「声の生々しさ」が強調されるという側面もあるかも。FM放送を通じて視聴できたコンサートファイブで音質的にうーむなんて思ったことは当時もなかった。深夜のFMラジヲをステレオセットで視聴していた頃、確かにそのライブ感のある生々しさを感じていた。

 「ハイレゾ以前」のこのFM放送のスペックは、今の聴いても決して「不足」ではない。むしろ、無機質なデジタル音源に疲れた時、FMから流れる「ほどよくレンジの制限された、しかし活気のある音」は、心地よいもんだ。小音量でミニスピーカーで視聴していたら、デジタルソースと判別がつく人がどれくらいいるだろう。
 現在、FMチューナーを取り巻く環境は変化して、滅び、限界集落的な感覚も漂っている印象すらある。それでもトピックとして「ワイドFM(FM補完放送)」だ。AM放送の難聴地域対策、やがては停波対策?としてなのか、FMの帯域(90.1~94.9MHz)を使ってAM番組を放送するこの仕組みにより、かつての「90MHzまで」しか受信できない名機たちは、事実上、最新のラジオ番組をフルに楽しむことができなくなってしまった。

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右下角が現在利用中のチューナーとアンテナ。

 現在の、FMチューナーの製品ラインナップは絶望的だ。国内で新品の単体コンポーネントチューナーを作っているのは、ハイエンドのAccuphase T-1200という、もはや芸術品のような40万円の機種か、私が今使っているこのYAMAHA T-S501くらいしかない。あとは、数千円の中華製デジタルレシーバーだ。最近はSDR(Software Defined Radio)技術を用いた特定用途向けの完成度の高いラジオ受信チップSI4730を使ったFMチューナー/ラジオを目にするようになった。安い小さい、全く今までのFMチューナーとは異なるテクノロジーだ。
 FM放送なんて、プレーヤーの付加機能としてのインターネットラジオ(radiko等)でなんでも聴けるじゃんていうのは、全く異なるデジタルインフラからの視聴になる。それゆえに、空気中を飛んでくるFM電波を捕まえて音楽を視聴するというのは、とても特殊な世界になってしまった。ラジオ自体がそういう存在になりつつある。

 ネットを見れば、オーディオ世界が生き残る方向としての、天文学的な価格の現行アンプやスピーカー、あるいはアナログ回帰で高騰するレコードプレーヤーの情報が溢れている。しかし、FMチューナーに大金を投じる時代は、流石にもう終わった。
 だからこそ、このYAMAHA T-S501のような「普通に動く、普通に良い音の現行機」や、メンテナンスされた往年の名機で、夕暮れ時にぼんやりとFMを流すのは、最高の贅沢かもしれない。プリセット方式のシンセサイザーチューナーだが、あたかも「チューニングダイヤル」で局に同調させるようなギミックになっている。

 FMチューナーについて、現在、特殊な価値を見出せるか見たいな設問をAIに投げたら「15kHzの先にある見えない何かを追うのではなく、15kHzの中に凝縮された「放送という名のライブ感」を味わう。」見たいなコピーを吐き出してきた。なるほどねぇ。
 アナログ時代の高音質とされたオーディオ資産は、そろそろ限界点が来ている。でも、実験的にLPやカセットテープデッキを入れ直して試聴したのだが、当時のオーディオマニアが十分幸せになれるレベルの音質は、今の私にとっても十分に幸せな音を運んできてくれた。「その中で、その限界点ギリギリのところで鳴っているFMの音には、最新のデジタル技術が置き去りにしてきた「温もり」が、まだ確かに残っている気になるかな。そうかもしれない。表現提案してくるAIは小癪なやつだな。
 ちなみに中古市場で「ワイドFM(FM補完放送)」対応の単体チューナーを探す場合、実は「ワイドFM対応」と銘打たれた現行品を探すよりも、少し前の時代の『アナログTV放送(1〜3ch)が受信できたモデル』を狙うのが、安旨オーディオ的攻略法の王道の一つかも。
 かつてのアナログテレビの1〜3チャンネルは90〜108MHzの帯域を使っていたため、これを受信できるチューナーは、現在のワイドFM(90.1〜94.9MHz)を完璧にカバーできるからだ。そういう製品はラジカセには結構あっが気がするが、オーディオ用チューナーとなるとパッと思いつかないのだが、確認できたら追記しようと思う。

 「安くて旨い」中古で手に入るワイドFM仕様候補をいくつか挙げる。

1. DENON TU-1500AE
 2000年代中盤の製品。フルサイズコンポとして非常に完成度が高く、デザインも現代的。FM帯域が108MHzまで対応しているため、設定なしでそのままワイドFMが受信可能。音質・コスパともデノンらしい厚みのある音質とされる。中古市場では1万円前後〜と手頃。停波秒読みのAMの受信感度も比較的良くたってあまり関係ないが、実用機として非常に優秀。間違ってTU-1500を買わないように。そっちはさらに古く、当然ワイドFMには対応していない。

2. ONKYO T-433
 INTEC 275シリーズの単体チューナー。横幅275mmのハーフサイズオーディオ。108MHzまで受信可能。「安旨」の代表格で小さいながらもしっかりとした電源部を持っており、SN比が非常に高いとされる。クリアで現代的な音。中古では5,000円〜8,000円程度、コストパフォーマンスは最強。シンセサイザーチューナーは機械的動作部分が仕組み的にほとんどないので、変なことをやらなければ壊れにく製品と言える。

3. SONY ST-SA5ES / ST-SA50ES
 ソニーの「ESシリーズ」晩年の名機であるアンプやカセットデッキのシリーズのチューナー製品。この時代のソニーの上位機種は、TV(1-3ch)受信機能を備えており、108MHzまでカバーしている。当時の定価に見合った物量が投入されており、音の解像度、セパレーション共に優秀で、「FM放送にまだこれだけの情報量があったのか」と驚かされるが、中古相場は2〜3万円とかなり上がる。所有満足度は高いかもとされてる。個人的にはっこのモデル、あまり記憶がないのでちょっと確認が甘いかも。

4. SANSUI TU-α507 / TU-α707 (Extra以降)
 サンスイといえばアンプだが、伏兵としてアンプ以外にも名機が時々存在する。チューナーも非常に真面目な作りで、デザインも良い。晩年のモデル(Extra以降のモデルなど)には、TV 1-3chを受信できる機能が付いているため対応している。重心が低く馬力のある音が楽しめるとされるが、黒い筐体のイメージはやはり強い。特にα707クラスになると、中低域の押し出しが強く、15kHzの壁を感じさせないエネルギー感があるなんてベタ褒めしたテキストもあるようだ。オークションを眺めると、5,000円ぐらいで、ちょっと博打になる出品が目立っていた。

5. Accuphase T-1200(安旨じゃないので参考)
 ハイエンド。現行品だ。40万ぐらいで手に入る。安旨ではないので半分ジョークです。
 今どき、まともな性能の製品を作って売るとなると、数も出ないし、この値段になります、って言われたらしょうがないのかも。カスタムICとディスクリートカイロの化け物だが、もちろん視聴したことなどない。お金で悩まず、性能で妥協したくないのなら、これ一択かも。ポタオデの世界では、30万ぐらいの中華製イヤーホン、TANGZU「斉天大聖」が話題になるくらいだが、こっちはいかがでしょうか。

 ちなみに、安旨チューナー、選定のアドバイスとして中古で狙う際の「落とし穴」があって、中古でワイドFM環境を構築する場合、以下の点に注意。
 古いバンド対応+「TV 1-3ch」ボタンの有無を確認。古いデジタルシンセサイザー方式のチューナーで、受信帯域が「90.0MHz」で止まってしまうものはワイドFMが聴けない。「TV」という切り替えスイッチがあるか、仕様表で「108MHzまで」と書かれていることを必ず確認する必要がある。
 一方で、海外仕様(輸出モデル)という選択肢もあるように思えるが、ヤフオク等でたまに見かける海外仕様のチューナー(MaranzやPioneerの海外モデル)は、もともと88〜108MHzが標準で、ワイドFMには最適に見えるけど、逆に日本のFM本放送(76〜88MHz)が受信できない。だから「日本仕様で108MHzまでカバーしているもの」を選ばないとやっぱり無理だ、諦めよう。90年代以前の古い機種は、経年変化で検波回路やステレオセパレーションがズレている個体が多いです。T-S501のような現行機と比較して「なんだか音がこもるな、ノイズっぽいな」と感じたら、それはFMの限界ではなく、個体の寿命(調整不足)の可能性がある。
 よく安い旨いでイチオシされるのは、ONKYO T-433らしい。あのサイズからは想像以上のSN感の良さと、中古価格の安さは大きな魅力かも。もし「オーディオ機器としての佇まい」を重視されるなら、DENON TU-1500AEか。個人的にはTU-α707 (Extra以降)だ。

 YAMAHA T-S501を手に入れた時、こんなスカスカで、あまり金もかかってない製品で大丈夫かと思ったけれど、元々防災意識からもあるので、専用オーディオチューナーとなると他に選択肢はなさそう。AVレシーバーがデカく重すぎたのにうんざりしたのもある。専用チューナーは、チューナー部品だけで構成されている中身スッカスカで軽いのも逆に悪くないって思う。

 サイトに繋げばPCでもradikoが使える時代、FMチューナーにこだわったのは、災害時ネット接続リスクが生じても、情報が取れるかもというのと、私が大好きなのこのコミックがFM放送を扱っているわけだが、特に7年前の、平成30年北海道胆振東部地震の回で、改めてFM局と災害対応の親和性の話を思い出したというのもある。その後の話では、反社カルトの残党との闘いのリターンの巻があったり、遭難しかけたり、相変わらず主人公は、マイペースでありながら口も災いとなる巻き込まれ型、ハードモードである。
 沙村氏にとって、この作品は、もはやライフワークなのか、いきなり終わるのか、ちょっとわからないが、不思議なリアリティとファンタジーの間を彷徨う話。大好きである。

波よ聞いてくれ(12) (アフタヌーンコミックス)

沙村広明/講談社

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

 そして、繰り返し書くのだけれど、まあ、FM局なんか今どきいらないでしょみたいな価値観の合わないインフルエンサーのディスりへの反動もあって、判官びいき、逆張りみたいな意識も働いている。FM曲をチューナーで流せるのは、他局のブラウジングなどはradikoで聴くより、面倒がなかったりすることも大きい。DC-ACコンバーター内蔵のバッテリーも容量が上がったし、今のデジタルアンプもチューナーも電力小さくて作動するから、そのうち、停電時ステレオセットでFM放送を聴くつもりでいる。そのくらいなら、我が家の場合、昼間なら太陽電池パネルからのACコンセント直結で行ける(はず)。

RADIOの話なら、やっぱり今回の楽曲はこれだよね。
RADIOという存在は、下手すると多くの人々の意識からほとんど消える時代なのかもしれない。


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by complex_cat | 2026-03-09 23:47 | My Tools | Trackback | Comments(0)

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