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屋久杉工芸

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屋久杉(樹齢1000年以上の屋久島産のスギCryptomeria japonica)の工芸品は,危機に瀕しております。既に伐採が禁止されて久しく,かつて伐採された後の切り株(土埋木)も尽きようとしております。

 本来,屋久杉と呼ばれるスギの品種は,もの凄く成長が遅いのを特徴とします。大量の雨で土壌性分が流出する貧栄養の土壌にあって極相林を形成するまでに適応したため,5mmもない未生のようなスギを年輪解析すると20年ぐらいの寿命を既に持っていたりします。この屋久杉,宝の樹なので,当然本土で育てたらと考える人もいるわけで,実際それをやってみると,じゃんじゃん大きくなるそうですが,材として,全く使い物にならないということです。まさに,「屋久杉」とは,この島の固有品種と屋久島の環境,そして悠久の年月のコラボがあって初めて作り出されるというものです。
 これだけ貴重な材であっても,本土で加工した方が付加価値が着いた製品を作り出しやすいため,材料を横流しして食いつないだ現地の工房も少なくありませんでした。その結果,ちゃんとした材料を向こう何年も十分に確保している工房はごく僅かです。
 また,民芸風のワンパターンの製品は,若い消費者の注意を引き留めることなく,その桁違いの値札を見ても,どうやっても欲しいと思うようなデザイン,製品はどこを見渡してもなかなか見つけられません。
 ただ,やはりあるのです。日本全国レベルで考えても,高度な木工の技術を持ち,屋久杉という素材の特性をギリギリまで引き出して,見事なアートに仕立て上げるレベルの工房が。

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左甚五郎の逸話に,彼が鉋を二種類だけ使って加工した何の変哲もない板っ切れ二枚,合わせたまま上を持ち上げようとしたら,くっついて離れないという話がありますが,鉋,二種類はともかく,同じことが出来る方が屋久島においでです。
 画像は寸分の隙もない花台。


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屋久杉の緻密な木目を読み,それを生かして,信じられない精度で加工をされておられます。虫食いや長い年月が刻まれた腐食の穴を生かした壺など,通常はパテで埋めて球面を出すと,その境界部分が若干凹んだりするのですが,全くそれがないのです。
 このデザイン,いろいろな方が真似をして今では,一般化しておりますが,オリジナルの作品は,全く別の次元のものです。値段は,やはりそれなりですが,気が狂いそうな工程数がかかっております。

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この広葉樹のような緻密な木目をご覧下さい。大きな壺,蓋を抜けば,低い空気の抜ける音がするという,ミクロン単位の加工技術です。もちろん蓋は全方向どの様に填めてもそうなるということです。

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工房を拝見して,マーティンのギターのメイプル材やライカの硝材の数十年の野ざらしと同じ,その技術を支える,乾燥=agingにおける妥協の無さをかいま見ました。この工房だけは,土埋木の蓄材はかなりのものらしく,少なくとも後,2代分は確保されているとのことです。しかしながら,屋久島のスギ工芸というジャンル自体が岐路に立たされていると云うことには変わりありません。

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Commented by benebello55 at 2005-11-21 13:03
すごい、何も言われなければケヤキなどの堅木に見えますね。
以前長良川の支流の板取川で氾濫寸前の大雨が降った後に流れてきた巨大な檜の株を見ましたが、やはり緻密で玉杢のような木目が出てました。何百年、何千年、も地中に埋まっていると何かの作用でこうなるんでしょうか?しかし材料がもう採れないのはいかんともしがたいですね。
Commented by complex_cat at 2005-11-21 13:10
benebello55さん,件の檜ですが,恐らく源流の環境を考えると,降雨が多く,土壌栄養も少ない場所で,ごく僅かずつの成長をしたヒノキ,それをかなり前に伐採したものの地下部に残っていた株が,数十年のタイムラグを経て落ちてきたものと考えられます。もちろん屋久杉は,フレッシュなものを切っても,こういった木目になっております。
 屋久島でも同様のこと(台風直後,巨大な切り株が河口に流れ着く)がかつてありまして,伐採禁止処置以降,秘密裏に切られていた地域の「遺産」が流れてきたのではないかという噂が立ちました。
Commented by ayrton_7 at 2005-11-21 19:00
最近音楽をゆっくりと聴いていないですが
なにやら木で作られたスピーカーのコーンなんてのを電気屋さんの店頭で見ました。
屋久杉で作ったら贅沢な音が響きそうな気がします。
Commented by ゆう at 2005-11-21 20:46
屋久杉工芸のお話、とても興味深く拝見しました。

>大きな壷、蓋を抜けば、低い空気の抜ける音がする
いいですね。で、誰か壷から現われたりして、、。(おいおい)
Commented by kyoko_fiddler at 2005-11-21 20:52
この木で楽器を作ったら、どんな音になるだろうかと思います。
Commented by complex_cat at 2005-11-21 21:40
ayrton_7さん,今やオーディオに費やせるお金は0円なので,諦めてますがビクターが長年にわたる研究開発の結晶として生み出したカバ材の「ウッドコーンスピーカー」,欲しいのですよ〜。スピーカーはいよいよ楽器に近いものになったと思います。
Commented by complex_cat at 2005-11-21 21:41
ゆうさん,大壺の全体写真は別の機会にお見せしますね。
Commented by complex_cat at 2005-11-21 21:42
kyoko_fiddlerさん,そうかぁ。楽器なんて考えもしませんでした。そういった意味で,いろいろな可能性が試されると良いですね。
Commented by Lilywhites at 2005-11-21 22:03
良い品を拝見しました~、最後の画のデスク?欲しいです。人形(ヒトガタ)もいいな~。
Commented by complex_cat at 2005-11-21 22:41
Lilywhitesさん,この手のデスクは,木工のレベルがもう少し落ちても大体130万円以上しますね。手が出ません。
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by complex_cat | 2005-11-21 08:07 | Nature Islands | Trackback | Comments(10)

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