違いの分かる男ー我が名は鼠猟師

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クマネズミか?と思ったら,アカネズミでした。この辺り,ネズミが生きて動き回っていると見間違う確率は低いのですが,死んで物体になってしまうと,歯式や頭骨のフォルムなどの世話にならないと自信が持てなくなります。
Canon IXY 50



 分野の学生さんは哺乳類学の基礎で,長細いホームベース形の厚紙を入れて伸ばしたスキン(毛皮)になったものだけの標本を作らされたりしますが,それになると,実は,それをしげしげと見ていると,もっと分からなくなったりします。
 このチコが捕まえてきたネズミの場合も,アカネズミ,クマネズミ双方の可能性を考えて,はっきり言えることは大きさから,幼獣であるということです。この時点で,ヒメネズミの可能性は無いと判断しています。ちなみに,ヒメネズミは,保全度の高い自然林を基本的生息地としますが,夏緑樹林帯や常緑樹林でも良いしいの林が残っていると,普通に農家まで遠征してきます。ただ,かなり雰囲気は異なりますし,足の大きさが余り大きくなることはありません。てなわけで,それぞれの幼獣の体毛やプロポーションなどを認識しておかないと,同定は不可能です。
 私自身,生態屋ですが(というか,高等動物で分類屋も仕事でやっていると名乗れる人はほとんど居ませんし,昆虫分類屋でも,論文生産や分類のための基本情報,その他諸々の理由で,生態の論文を一本も書かないなどと言うことはありません),鳥でも,生態屋さんの書いた記録の記載が間違っていることはよくあります。

 ネズミ屋だと自称する人たちでもクマネズミ≒アカネズミ,アカネズミ≒ヒメネズミの分類をよく間違えます。例えば,ヒメネズミは,糞尿の匂いが特異的なので,経験があれば,生け捕り罠を持ち上げた瞬間にそれと分かるのですが,生体反応が失われた死体からは,その情報はかなり欠損します。実際のところ,人間は,特定の生物を同定するとき,本人があまり自覚していない場合もあるくらい,遙かに多くの情報を元に総合的に判断しています。

 例えば,植物の同定などでは,葉っぱの色だけにとどまらず,手触り,匂い,味,爪を押し込んだときの感じなどや消去法のための採集地などの情報無しで同定するのは,ほとんど不可能だったりします。それを超えて,ヘロヘロに乾燥した一枚の葉っぱから同定が可能な「達人」には全国から問い合わせがあるわけです。

 また,生息地についての情報も絶対的ではないので,その方面からの推理もかなり経験が必要です。基本的にアカネズミは森林性野鼠なのですが,大きな河川敷など,ハタネズミが優占するような場所で,個体群が激増したり,夏緑樹林帯では,森林に餌のない冬期には畑まで移動して暮らしています。

追記ーなお、照葉樹林帯では、夏枯れと呼ばれる現象(餌昆虫、種子生産の端境期)で夏季の山林での餌が減少する時期などでは、農耕地帯まで移動して暮らしたりしています(これは2012年に初めて画期的とも言える証拠を掴みました。通常、森林性野ネズミの調査を研究者は林分内でしか行いませんので、盲点です)。

 我が家周辺は,近くに森林がありますから,森林性のアカネズミやヒメネズミが通えない距離ではありません。一方,人間の居住空間深く進入したクマネズミは,本来は森林性で,奄美大島には,森の中に,クマネズミが生息しているを見ると,森林を使えないわけではないと云うことが分かりますので,さらにやっかいです。実際にアカネズミの採集に行った先の森の中で,クマネズミが捕れることが希にはあります。もちろん近くに住居があったりしますが,同じ事です。
 てなわけで,生きているネズミはともかく,こういうのをちゃんと確認できるようにPCRを使って,体の部位のDNAから,簡単に種の同定ができるキットがあれば,凄くありがたいなと思うことがあります。

 多分,チコは,微妙な感触や匂いで,獲物の区別が出来ていると思います。獲物の違いは,彼らの猟の戦略にフィードバックされる情報を含んでいるので,これらのネズミの判別は,おそらく彼らはすることが可能ではないかと思います。ハンターは探査像=獲物のプロファイルが明確でないと狩りは出来ませんから。微妙な味や匂いの違いが分かるだけの能力を持っているわけで,それらは,栄養摂取や採餌効率の情報と組み合わされて,彼らの頭の中で彼らなりに整理されているのだろうと,私は思っています。

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Commented by yuu8972 at 2006-12-02 17:03
やっぱりチコちゃんは、猫だったんだ。いやあ、すっかり人間の子供
だと思っていたから、ネズミをくわえる姿からは、野生生物の雰囲気が
感じられますう。
Commented by hamarie_februar at 2006-12-02 21:13 x
絶命の顔をまじまじと観察するのは悪趣味だと思いましたが...開いているのは口ですよね?その上は鼻の穴ですか?チコちゃんとしては警備のお仕事というより,C_Cさんの助手をしているつもりなのかも^^;;;
Commented by complex_cat at 2006-12-02 21:16
ゆうさん,今の子供はともかく,本来オトコノコは,やばい遊びの一つや二つは知っているものです。あんまり変わらないかも知れませんし,人間も,地の暖かい生き物を,生活の中でしとめるということが生活から無縁になったのは,ほんのここ数十年ぐらいの話だと思います。
Commented by complex_cat at 2006-12-02 21:21
hamarie_februaryさん,いえいえ,悪趣味ではありません。そういいものをまじまじと見てひっくり返して・・・子供時代にそういうことをやっていて当たり前だった時代から,人間の本質はそんなに乖離しておりません。
 善でも悪でもない,そういう世界があっても良いと思います。それと,バリ島で,子猫を投げ殺して,スピリチュアル勘違いの馬鹿エッセイを書いていた某直木賞作家がいましたが,そういうのとこの世界とを判別できるセンスを子供に持って欲しいものです。
Commented at 2006-12-02 23:48
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by Lilywhites at 2006-12-03 07:45
匂いや触感で判るのだろうな~と納得です♪ チコちゃんがもしランダムに捕まえてくるようになれば、体調に変化があるとか、そんな見方ができるかもしれないですね♪
Commented by kyoko_fiddler at 2006-12-03 08:42
ネズミの顔を、モウダメダア というユーモラスな顔に見えてしまう自分の感覚がちょっと恐ろしいです。
このチコちゃんの写真を見ているかぎりでは、私は、もしかーがネズミを仕留めてきても(ありえないなー)、それが仕留め方がヘタクソでスプラッタ状態の「お土産」だったとしても、褒めこそすれ、絶叫はしないのだろうな、と思いました。なるほどネズミは猫の格好の獲物なのだと 妙に納得。
Commented at 2006-12-03 09:09 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by complex_cat at 2006-12-03 09:55
Lilywhitesさん,本日も彼は絶好調です。
Commented by complex_cat at 2006-12-03 09:59
kyoko_fiddlerさん,TVで,ライオンやチータが獲物を倒すシーンは,最近では,皆,受け入れてみていますね。頭がおかしくなるように事件ばかり起こす人に比べれば,残酷でもないシーンだと,皆さん理解されているのだと思います。
 冬生まれの子は,探査像がネズミに固定されるので,狩猟に関しては,メクラヘビから雨蛙,ヤモリ,トカゲやヒヨドリなどチコはオールマイティのようですが,やはり鼠を捕るのが一番楽しそうです。
 それと,住所がカギコメになっておりませんでしたので,こちらで記録しまして,消しました。
Commented by complex_cat at 2006-12-03 10:05
カギコメさん,お手数をおかけしました。
WORDをWEBエディターに使ったことがないので,私には,ちょっと分かりかねます。フリーで手に入るネットスケープ
http://wp.netscape.com/ja/downloads/index.html
がエディターを持っているので,それで開いて,修正を掛けてセーブし直してはいかがでしょうか。
Commented by kyoko_fiddler at 2006-12-03 10:06
わはははは すみません またやっちゃったー(^^;
今、気がついて慌てて消しにきました
すみませんー。
Commented by nezumineko at 2006-12-06 19:55 x
ひょっとしたら、猫がネズミを加えている写真なんて、初めて見たかもしれません。
Commented by complex_cat at 2006-12-06 20:08
nezuminekoさん,どうもです。
 生態屋が猫を養子にしたら,どんな画を撮ろうと考えるかという当たりを考えてこのブログを始めました。
良い顔してます。ネズミ君は無念そうですけど。
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by complex_cat | 2006-12-02 14:32 | Cat Family | Trackback | Comments(14)

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