ペットはなぜ飼い主に似るかー配偶者選択における類友志向が犬選びにも影響している?!

ペットはなぜ飼い主に似るかー配偶者選択における類友志向が犬選びにも影響している?!_b0060239_21251980.jpg
我が家の異種同型兄弟。レトロウィルスかトランスポゾン(自己増殖するしないに関わらず、次々と他の染色体に移動できる遺伝単位,レトロウイルスの起原であるという説もあり)による異種個体間遺伝子の水平移動か。なんにせよ,そっくり。一緒に寝起きしてれば,似たってしょうがない?!
 昨日はワイフが,チコを指さして「この子,キッチンの上に乗ったままご飯待っているものだから,忙しいときで,コラッ降りなさい!て怒ったんだけど,公陳やナッチ,ユッチと違って,全然反応がないのよ。他の子は怒るとキッチンから降りるのだけれど,全然平気でこっちの顔を見るものだから,怒っている方が馬鹿馬鹿しくなっちゃった。」
 そういえば,チコに甘い私は,彼を叱ったことがほとんどありません。普通に叱っても何も聞いてません。どうしようもないときに強く叱ると激しく落ち込みます。一緒に育った末っ子と,似たもの同士かもしれませんね。

ペットはなぜ飼い主に似るかー配偶者選択における類友志向が犬選びにも影響している?!_b0060239_21491337.jpg公陳丸やチコが私に似てるかって? 痩せていた20代はカムイ的危ない兄ちゃん系,おっさんになった今は猫バス系美男子?だそうですが,ご想像にお任せします。

 さてタイトルですが,1年半前のジャーエソの論文から。
Payne, C. and K. Jaffe (2005) Self seeks like: many humans choose their dog pets following rules used for assortative mating. J.Ethol., 23: 15-18.

ヒトには,自分の配偶者選択において,自分と似たタイプのものを選ぶ傾向があるとのこと。これについては,もちろん全ての個体においてということではありませんが,種としてそういった傾向が見いだされると云うことです。で,この同種交配assortative matingの適応的な意味については,「近親交配のリスクを最小化する一方,淘汰圧に有利な多様な遺伝子を得る」ための最適の方法であるということを実験的に検証している仕事があります(Jaffe, 1999; 2000)。ここで「同種」というのはspeciesの意味ではなく,同じ輩という意味で,「類友交配」というと分かりやすいと思ったので以下「類友交配」とします。
 類友交配には自分と共通の遺伝子を持った個体を配偶者にすることで,いわゆる,血縁淘汰的に類友遺伝子が次世代に伝えられることをサポートする効果もあるとされています。この理論は血縁的に近いことのみで遺伝的類似性が達成されるわけではなく,血縁関係がない個体同士でも遺伝的類似性が存在すると云うことを前提にしています。




ペットはなぜ飼い主に似るかー配偶者選択における類友志向が犬選びにも影響している?!_b0060239_20554514.jpg
つまり,個体にとって最適の配偶者選択は,遺伝的に遠いけれど,自分に似ているという,二つの矛盾する性格を持った個体を選択することであるというわけで,その結果が,「類友交配」であるということです。配偶者における「類友交配」傾向は遺伝的なレベルでのデータも存在し(Tregenza and Wedell, 2000),ヒト(i.e., Buston and Emlen, 2003)や爬虫類(Dickinson and Koenig, 2003)ではいくつかの実験的に証明された研究例があります。
 「類友交配」論者は,いわゆる,「似たもの夫婦」という現象は明確であるという立場をとるわけです。

 さて,当該論文に寄れば,この「類友交配」論を前提として,著者らは純血種の犬とその飼い主の顔写真36組72枚のカードにしました。この主従カード作りにおいて,恣意的に似せようとしたりする要素が入らないように,顔の部分を機械的にCorelDrawにより切り出しております。この処理で上手くいかなかった写真の組み合わせは排除してあります。
 さて,被験者側ですが,6つのグループに分けて,二重盲検法により各グループで似ていると思われる飼い主と犬のカードを6組選択して貰い,正解となったカードの組み合わせがランダムに選択した組み合わせ(この分野よく使われるモンテカルロ・シミュレーションによるものです)の正解率よりも,高い確率となるかどうかを統計的に調べました。
 つまり,人目から見ても似ていると評価された組み合わせが,実際の飼い主ーペットと一致するかどうかということを見たわけです。
 手法は至って簡単で怪しげなESPカードの統計的確率有意性証明実験とでも良く行われた手法ですが,結果は,モンテカルロシミュレーションよりも2組目,3組目,4組目,6組目に正解を選ぶ確率が高いことが示されました。また6グループの被験者ですが,男性2グループ,女性2グループ,混合2グループの6グループに分けて同じ実験が行われました。その内5グループでランダムに組み合わせたにおける正解率よりも優位に高い確率で正解が得られたことを統計的に証明しました(χ2-tests, p s<0.03-0.001)。ヒトの「類友交配」志向は,ペット選びにまで影響を与えているというのが,この論文の結論です。

 ここで,飼い犬を純血種に規定しているのは,飼い主が明確な好みの上で選択したということを前提にするためだと思います。偶然に拾われた犬とかというのは無しということで,あくまで好みの結果選択されている犬と云うことです。わざわざCorel Draw7.0を使って,背景や衣服などを消して顔の部分だけ抽出してカードを作ってます。
 また,この論文にある飼い主と犬のサンプル写真が,まぁ,笑ってしまうほど似ていることは確かです。著作権の関係もありますのでアップを控えたいと思いますが,PDFダウンロードは$32です。
 純血種に限るという条件設定を考えると,ネコの場合,難しそうです。特に日本ではピュア・ブリーディングのネコと暮らされている方よりも偶然拾ったというような経緯の方が凄く多いと思いますので,飼い主本人ではなく運命的なものが多いと云うことだと思います。また,ネコの場合は,ワイルドタイプの生態が単独生活なので,適応スーツの多様性が少なく,犬ほどは多様な遺伝形質が残りにくく(それでも猫の純血種を見るとかなり多様だと思いますけど),同様の実験になじまないと著者らが判断したのではないかと思います。
 それにでも,失礼ながら,かー君のところとか,十分カードに混ぜても良いと思われるほど似ている主従関係もあることを確信しております。
 神さまも,類友が好きなのかもしれませんね。

 件の論文のモンテカルロシミュレーションとの差は最大で10%を切る程度です。統計的有意差があるとはいえ,「類友選択」以外の部分で飼い主がペットを選んでいる寄与率も相当高いと考えた方がよいと思います。当たり前ですな。
 生態学データにおける統計的なものの見方は,検量線などが,ずばっと一直線に載らねば,そもそも分析の力量など皆無とするような分析化学などの教育を受けた方がしばしば勘違いすることです。内燃機関の複雑さといったら,工学系の方には,訴求する説明でしょうか。いや,どんな科学でも100%,こうだというような事例だけを扱えるわけではありません。万物は様々な要因が絡み合っておりますし,それらの要因全てを観測,定量化できないことも普通です。シミュレーションも,複雑な系において,ある一定の確率での現象の予測しかできないわけです。ボールがどっちに転がるかと云うことについて,高い予測確立99.99999%を立証出来ても100%確実なものはないのです。ましてや,実験系とは違って,他のパラメータをニュートラルに調整するなど不可能な開放系自然の世界の話です。
 
 というわけで,竹●久美子氏的に,実験によって明らかになった傾向を絶対視して何か強引にネタを云えと言われれば,面食いの方は,顔の各部位のディメンジョンから,顔相類似度を計算して高い類似度の相手を口説けば,戦績は上がるやもしれません。
 ちなみに彼女の話は,研究経験に裏打ちされていない思いつき特有の誤謬が多いので,信用しちゃいけませんぞよ。

 あるいは,嫁にしたい候補者の画像を取り込んで,外部形態的に遺伝的類似度を数値化して,勝算のより高い相手にプッシュするとか良いかもしれません。あぁ,その冗談ソフトは,売れるかも。「最新の研究が明らかにしたAssortative theory」を用いた,配偶者獲得のための秘密兵器!
 最も,あなたが浮気性のくせに焼き餅焼きとか,満月見ると啼くとか,ちょっと困った資質,自分でもうんざりする資質をお持ちだとして,そういう負の類似度も高い可能性もありますね。配偶者獲得のためには,まず自分を愛しましょう。おお,とても哲学的且つ科学的結論?!


「自分を愛せない奴に,誰かを愛せるものか!」
真理?は1970年代青春ドラマも真っ青,顔が真っ赤になるくらいベタですな。

 なんにしても,タカラさん,トミーさん,任天堂さん,いつでも,ご相談に乗りますぜ。お待ちしてます。

 そういえば,コンパ,合コンの度に自分が気に入った女の子が自分に似ているとか言い張る奴,居ませんでした? あれは一種の心理的錯覚を引き起こすように誘導する戦略だったのか。親近感を持たせるように,とかよく言いますが,遠いけれど近しい存在だと思わせるという深い意味があったのです(ホントか)。でも,勘違い男の「俺たちって,似たもの同士だと思うんだ…(ふっ)」という口説き文句ほど,痛い台詞はないという事実もあります。或いは,評価の高そうな同性に,「自分は似ている部分がある」と言い張る奴(類友誘導?)とか。これは,類友を当て込んだ,全て繁殖戦略ですな。

 空気を読めずに評判を下げても,私は責任を持ちません。あしからずご了承下さい。
トラックバックURL : https://complexcat.exblog.jp/tb/6417758
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented by kyoko_fiddler at 2007-02-02 11:19
カードに混ぜていただいて光栄でございます~。
かーの場合、お互いにお互いを「選んだ」感もないではありません。
4匹兄弟のなかで、いっちばん性格的に「可愛がってもらえそうにない」から、気になっていたら、しっかり出戻ってきましたから。「こいつが一番可愛がってくれそうだ」とでも思ったのかもしれません。
…って、でも、顔似てますか???
dojou7さんとか、syukosyuさんに 似てるって言われるけど…。
Commented by complex_cat at 2007-02-02 22:11
kyoko_fiddlerさん、私だって、そっくりとしか言いようがありません(笑)。
Commented by hamarie_februar at 2007-02-03 15:45 x
同じく愛情を注いでもらって,チコちゃんたち,シアワセです.ただ類が違うってだけですものね.とってもよくわかります.
ところで類友交配,面白いですねぇ.夫婦は長年連れ添うと似たもの同士になるっていいますが,そもそも似たタイプを選ぶんですね.人とペット間でもそうだったとは!そういえば,私,「なまけもの」が飼いた~いってすごく思いました.「まったくしょうがないな」という部分で繋がって,それが継続されていくっていう言い方もありえるんかな.でも「家族」「夫婦」はそれでいいのかもしれませんね.
ところで(part2),C_Cさんて美男子だったんですねっ!....て,フツー自分では書かへんと思います(←ツッコミです~)
Commented by complex_cat at 2007-02-03 18:15
hamarie_februaryさん,夫婦がなぜ似るのか,ちなみに今から30年以上前に,雄の精子を経口投与され続けた雌の雁の遺伝形質が変化したという論文の話が畑正憲氏のエッセイにありました。学友が,夫婦は似ているという現象を見て研究しようとして,先に海外の研究者に出し抜かれたということでした。当時の生命科学では,トロンスポゾンやレトロウイルスなどの水平伝達に言及できないし,厳密な遺伝形質の変化などは分からなかったと思うので,私は,かなり怪しい仕事ではないかと思っております。「ティッシュでくるまれて捨てられるだけの精子」(「ムツゴロウの博物誌」からの表現)から,雌の体内で水平伝達が生じることにより「似たもの夫婦」現象が生じるものなのか,検証されたかどうかも私には分かりません。
 もちろんもう一つの話は,あまりつっこまないように。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by complex_cat | 2007-02-01 10:29 | Cat Brother & Sister | Trackback | Comments(4)

Necology(=猫+Ecology) and Nature Photo Essay, Camera classic, Martial arts & etc. 本サイトはhttp://complexcat.exblog.jp/です。画像はクリックすると大きくなります


by complex_cat
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30