クマタカが「渡り鳥」を食べる?

クマタカが「渡り鳥」を食べる?_b0060239_9301927.jpg
このニュース,鳥屋や生態屋が誰も触れないので。苛つきとともに。

 クマタカは熱帯起原の森林性の猛禽類です。
器用に,数多ある「渡り鳥」を捕るなんてことは,ほとんどありません。
メニューのほとんどは,ヘビ類や哺乳類を中心としています。これは,一つのデータですが多くの知見が,それを示しています。
「渡り鳥」というのが何をイメージしているのか明確ではないのですが,インフルエンザの平衡感染を考えると湿地性の混群を想定しやすいと思います。枝をばきばきへし折りながら林内を飛行したりする,山林の上空を餌を探して飛行するクマタカとは利用環境が異なります。
 このニホンザルの親子も,運が悪ければ,まな板に載せられて,30分もしないうちに解体されてしまう,そういう猛禽類がクマタカです。イメージ違うでしょう?
 そういった中型以上の哺乳類も利用できるので,開発圧が高く,低山が多い常緑樹林の森林でも結構分布しているのです。そういった種イメージが理解できない人が解釈しているとしか思えません。
 ‘専門家は「渡り鳥が大陸からH5N1型ウイルスを運んだとのシナリオを支持する状況証拠だ」としている。’
 多分もしも,本気でそう云う話をするには,他のデータが必要です。何処のなんという専門家なのか不明ですが,この発言だけを取り上げれば,生態屋,生物屋とはおよそ思えません。多少皮肉を申し上げれば,本人もきわめて不本意ではないでしょうか。どの「専門家」なのか,分かる状況になれば,なぜこのようなテキストになったのか理解できると思います。
要するに,「人間が運んだのではない」ということが言いたいのでしょうけれど,そこの部分が舌足らずで曲解されてしまっています。

 朝のニュース番組で,テリー伊藤さんが,クマタカはネズミなども食べるはずと指摘されていましたが,流石です。彼はその業界での能力のべらぼうに高い方ですが,論理的科学的な直観や思考にいつも感動します。彼の車評も大好きです。発想が柔軟ですが,論理的なセオリーから矛盾しないセンスをお持ちの方です。コメンテーターの作法として分野外の人間であることなど何ら問題とせず,ちゃんとチェックされたのでしょう。こんなものは,素人でも本格的な論文のデータベースに当たらなくてもネット検索で数分で検証ができます。やらないのは,そのままの大本営発表を伝えるだけのテキストを配信するだけのメディアです。責任を問えるメディアが必要ないという世界は,ホリエモンが提唱していた話ですが,私自身は,最初からアホかと思っております。自分で読み取れと言うことなのでしょうけど,自分でも分野外の方面は正否の判断など無理な部分が多く,そんなに人間,器用じゃないし,一旦変な話が回れば,それを取り消す方は,何万倍の労力を払っても,簡単ではありません。

 テリーさんの場合は,この分析結果から以下の解釈が成り立たないのではとちゃんと分かっておられたのだと思います。
 クマタカのような広範囲にいろいろな餌を利用できる特性のある種では,食物網が集約的にこの頂上種で結ばれるわけで,利用餌が鳥類にはあまり縁がない本種の結果から読み取れることは,逆に少ないのです。この話,たとえば,農薬汚染で頂上種のクマタカが死んだとして,「渡り鳥」が農薬に汚染されているからという話になれば,誰でも冗談だと思うでしょう。

 ハヤブサとかハイタカなど草原やオープンな場所で採餌する猛禽なら,件の‘専門家’の言葉もある程度許されるでしょう。
 このクマタカのH5感染確認個体から渡り鳥によりインフルエンザが持ち込まれていたことが証明されたのではなく,既に日本の自然界において,局所的に常在化している場所があるかもしれないという可能性が示されただけです。
 しかも件の個体は,インフルエンザが死亡要因なのかどうかも明確にされていません。他の野鳥でも持っていることが確認されていても,発症していないという例は知られております。
鶏などと違って。一般鳥類で発症が確認されている種は驚くほど少ないのです。ニュースの肝心な部分が分かりませんが,弱って落ちた個体を調べたら,インフルエンザを持っていただけという可能性も考えられます。
 大陸から日本への移動については,間違いなく渡り鳥が効いているでしょう。当たり前です。他は重汚染地域をさきほどまで彷徨いていた観光旅行者しかありません。しかし,養鶏場と彼らを結ぶ点については,多種多様な生物において常在化している状況が生じた結果なのかもしれないと考える材料になりますが,それ以上の話は難しいでしょう。むしろ,中型・小型哺乳類の血液検査をやって,ネガティブなデータを示しておく必要があるでしょう。哺乳類まで手が回らないのと,そっち関係の感や緑のある人間と認められる研究者が現在までほとんど関わっていないようなので,何とも分かりません。
 ちなみにクマタカは,サルやイノシシも捕獲して30分あれば,解体して幼鳥に餌として運んでしまえる能力のある猛禽類です。ばくばく「渡り鳥」を襲って食べているようなイメージの動物とはおよそ縁遠いのです。むしろ渡り鳥と鶏舎を結ぶ哺乳類種や小動物にインフルエンザ・ウイルスが存在している可能性を示唆した話と考えられます。
 そして,この事実を持ってして,「渡り鳥が運んでいるから」と云うことにするには,現時点では,まだまだ問題がありそうです。結果的に正解かもしれなくても,直接鶏舎にインフルエンザウイルスを運んだルートにおいて,複数のルートが存在する可能性が依然あるわけですから。
 そもそも,この解釈では,FOOD WEBについての理解がなさ過ぎると言わざるを得ません。



参照先は消されてしまうので,関連のテキストを貼り付けておきます。

 環境省は十八日夜、熊本県相良村で一月四日に見つかった絶滅危惧(きぐ)種のクマタカ一羽から、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が検出されたと発表した。鳥取大の検査で判明した。

 専門家は宮崎県や岡山県で検出されたのと同じ強毒型との見方を強めているが、同大が病原性の確認検査を進めている。

 クマタカは猛禽(もうきん)類のため、H5N1型を保有した渡り鳥など小動物を捕食し、感染した可能性がある。発見時期も宮崎で鶏の大量死が最初に判明した一月十日ごろに近いことから、専門家は「渡り鳥が大陸からH5N1型ウイルスを運んだとのシナリオを支持する状況証拠だ」としている。

 鳥取大はウイルス遺伝子を詳しく検査して宮崎県や岡山県と同タイプかどうかを調べ鶏大量死との関連調査に役立てる。

 環境省によるとクマタカは雌で、一月四日に衰弱した状態で見つかり、直後に死んだ。クマタカが発見された周辺で、あらためて野鳥のウイルス保有状況を調査するとともに、近畿地方以西で実施しているカモ類の調査も四月まで継続する。

Commented by K at 2007-03-21 14:19 x
なんとも乱暴な、というか無謀感のある解釈ですね・・。
鳥インフルエンザの『鳥』だけをキーとして考えているんでは?
そう本気で思ってしまいます、このテの記事をみると。
ウィルスを運ぶのは、鳥だけに限ったことではない筈ですが。

公陳くん、かなりよくなったみたいですね。
ちょっとほっとしました。
添い寝の長男くん、御苦労さま。
とっても微笑ましい光景ですね。
Commented by complex_cat at 2007-03-21 19:01
Kさん,書きコメ有り難うございます。
重汚染地域から人間が鶏舎まで持ってきたと云うことではなく,一旦鶏舎周りの自然の中に入って・・・ということが云いたかったのではないかと思うのですが,周りに常在していようが,鶏舎との関係は依然不明のままですね。ハエ説は,結構あり得るかなと思っています。他の動物で,接触するほどそれも高頻度でと考えるとハエぐらいしか思いつきませんので。
 このアーティクルメモとしてすっきり書いておくつもりだったのですが・・・
 コウチンについては,家族はとりあえず安心しました。後は彼が個室に閉じこめられるのにこれ以上耐えられるかという問題だけです。
Commented by white_001 at 2007-03-21 21:06
こんばんは・:*:・゚

鳥のことというか、生物の生態のことには、とても疎いので
今日のお話は、うなづけることばかりで・・・
とても勉強になりました
あまりに単純で、びっくりなされるかもしれませんが、
鳥インフルエンザが、渡り鳥によって、運ばれて、我が家の近くの鳥に
感染したら、うちのナァコなんて、近所のスズメやメジロも捕獲して
ときどき食している様子なので、
当然、飼い主の私たちにもナァコからの感染もありうるのかなぁ
なんて、たまに考えたりすることもあります
杞憂で終われば、それで良しですが
素人考えでも、そんなことを想像します
今日の記事を読んで、そんなことを言ってみたくなりました

しばらく、お伺いしないあいだに、コウチンマルちゃん、たいへんだったんですね
どうぞ、お大事にしてくださいね。。。
モノも言わないネコさんの怪我や病気は、ほんと心配ですね
無事の回復、お祈りいたします

Commented by complex_cat at 2007-03-21 21:37
white_001さん,仰るとおりなのです。チコもいろいろ咥えてきます。インフルエンザの季節では,ほとんどありませんが,今時,全くあてになりません。
 分からない状況で,耐えるしかない部分があります。身の回りから全ての危険を遠ざけて生きていくことは出来ませんし。
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by complex_cat | 2007-03-21 09:43 | Unscientific News | Trackback | Comments(4)

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