コガタスズメバチ〜柔軟な平和主義者

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我が家のジャスミンの中に巣を作ったコガタスズメバチ。
台風4号通過時に落下。しかし,その後も,蟻に襲われることなく元気。どんな風に観察しようと,個体がぶつかろうと,全く攻撃性を示さず,完全に我が家の庭の市民権を得て,息子は毎日観察中。私が見て感動した排水行動(巣の内外に付いた水滴を吸い込んで飛びながら排出する)を子供達にも見せることが出来たので,ちょっと嬉しい。写真に撮るのは・・・かなり難しそう。チャレンジングしがいのある被写体です。リング・ストロボで撮れないかな。
Canon EOS Kiss Digital N, Carl Zeiss Macro Planar 2.8/100 T*
 画像は他の画と同様,クリックすると大きくなります。最後に等倍画像をアップしましたので,重いですけど,最後のクリックしてみてください。

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通常オオスズメバチやキイロスズメバチなど,巣の近く10m付近に近づいても襲われたりしますが,これだけ大人しいなら,ちゃんと撮影してやろうとMacro Planarを引っ張り出しました。軽くトントンとノックしてやると,何匹かが外に出てきて巣の周りをチェックして,また中に入ります。
Canon EOS Kiss Digital N, Carl Zeiss Macro Planar 2.8/100 T*
 スズメバチの巣のパターンと質感は,被写体としてちゃんと描写するには結構ハードルが高いです。コンデジ高性能機のF11とF31fdと携帯デジ,Sonyのデジタルビデオのスティル機能などで撮影してみましたが,流石に,デジイチとZeissの組み合わせによる画は別格。

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それでは撮影時間が稼げないので,そっとシャワーで水をかけたら,ワーカーがこんなに残っていたのかと思うほど,ぞろぞろ出てきました。餌集めにかなりの数が出て行っていると思いますので,やはり二,三十個体はいそうです。時間があれば,カウントしたいところですが,暴露されているアシナガ系の巣と違って,巣はエンクロージャーになっているのでカウントは大変そうです。
Sony DCR-HC90

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コガタスズメバチは,ハナバチや訪花昆虫が専門のようです。人工環境下によく適応した蜂のようです。ただ,一文,営巣環境にはもの凄く柔軟性があると書いてあるのが,気になりました。

 私が間違えたヒメスズメバチは,アシナガバチの蛹、幼虫を専食するのですが,他のスズメバチのように肉団子にしてではではなく、獲物を噛み砕いて体液を嗉嚢に飲み込み,これを幼虫に与えるということですが,決定的に違うのは,地下に巣を作るというまるで地蜂のような営巣行動。なるほど,ずいぶん特殊化してます。もちろんこういう特殊化は,スズメバチにおける競争の結果であります。ただ,Wikiによると人間への攻撃性は極小の癖に,人的被害トップで結構凶暴なキイロスズメバチVespa simillima xanthopteraやコガタスズメバチ Vespa analisの幼虫も襲うと書いてありますので,これらの巣を襲いに行くわけでなかなかの豪傑。コガタスズメバチの方は,剪定中に襲われたりすると云う事例もあるようです。油断は禁物ですね。
HITACHI W52H

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台風後,太陽光発電パネルとアンテナのチェックのため屋根に登り,そこより我が家のジャングルのような庭を撮影。
 真中よりやや左上の草の生えていない場所の右下の境界に,台風の時,巣は軟着陸しましてそのままです。不時着した宇宙船のクルーのように頑張ってます。
HITACHI W52H
 左上のグラスは,ススキではなく,レモン・グラスです。公陳丸,ナッチ,ユッチは他の草を食べませんので,冬場はしょうがないとして,春から秋までは絶やさないようにしております。C4植物なので,光合成についてはリミッターが外れておりますので,南国ではかなり繁茂しますね。
 新しい携帯のデジカメ機能,使ってみて安心しました。AFが付いてもというか,期待していなかったとおりのヘロヘロの画なので,これで何とか撮ろうという気にならず,これしか持っていないときにだけ使おうという気になるという意味で。
 しかし,最初の発見時,これは困ったと除去方法を考え,コガタスズメバチの性格が分かるにつれ,以前のフタモンアシナガバチ同様,庭の住民として受け入れることにして,更に巣が落ちたとき,「何とか元に戻せないのか?」と家族で心配しました。異種間でも理解が可能なら,こういう結末もあるのです。面白いものです。結果,まだコロニーは健全なので,皆,喜んでおります。唯一気になったのは,何も知らない義母が何か植えに来て,ぎょっとしたということぐらいでしょうか。それも,ワイフが説明して事なきを得たようです。変な家族かな。




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画像をクリックしていただくと1枚目の等倍画像になります。久しぶりにMacro Planar +リングストロボによる撮影。触角の造形にちょっとうっとりしてしまいました。
Canon EOS Kiss Digital N, Carl Zeiss Macro Planar 2.8/100 T*
 競争関係には数値化されて解析する方法があります。単純なものでは,資源の重なりの割合をαとすると,これがそのまま競争係数αとなります。同種間では当然全ての利用資源は一致するので α=1
なのですが,これと比較して例えばA種とB種の競争係数は,飽くまで相対的な目安として考えるべきですのでαの値に絶対的な意味はありませんが,α>0.70とかとなれば,かなりの競争関系にあることになって,逆にα<0.30とかになれば,資源重複が少なく潜在的な競争関係にはなりにくいという推定が出来ます。また,この競争係数の考え方は,最も強力な資源重複が生じる存在は同種の他個体(他コロニー)であるという進化における競争圧力による淘汰の単位が種ではなく個体間であるという,トンデモ系の進化論論評をしている人たちが全然理解していない部分をちゃんとこのパラメーターが示唆していることを示しております。
 現実的に,ヒメスズメバチは他のスズメバチと餌を基本とした競争係数に関しては限りなく0に近いと思われます。ヒメスズメバチはアシナガバチ専食と云うことで,スズメバチの仲閒としてはかなり特殊なニッチェにある種のようです。但し,ここで競争という話を取り扱おうするとき問題になるのは重なりがないこと自体が,過去の進化的な時間スケールの中で競争が存在したことの裏返しでもあるということですが,ここらが,競争や共存システムを扱う場合,混乱を生じる弱点と言っても良い部分となります。今西進化論は,私のような世代においては,トンデモ仮説に近い話ですが,彼は素晴らしい観察を沢山しています。ただ,それを誰とも論議せずに独自の理屈で展開してしまったと言って良いでしょう。彼の「理論」と呼ばれる話の中でコアになる部分,分野外の方が感化されてしまう話,棲み分けについては,基本的に過去の競争圧を回避した結果として,なぜ説明できないのか,当時にあってネーチャー誌で今西進化論を紹介した柴谷さんらが散々説明されたようであっても,その部分,私にとって明確な答はありませんでした。

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ちなみにスズメバチにおける天敵は,ヒトを除けばクマ,ハチクマといったところのようですが,黒いものを攻撃する性向はクマの襲撃に対する適応とされますが,これほど大人しいハチが存在すると,そんなに簡単でもないような気がします。また,クマはハチの攻撃は気にせず,巣毎採餌すると思われますし,ハチクマに至っては無抵抗という話もあります。この攻撃性の強弱が生活史におけるいかなる特性とどのように関連しているのか,知りたいところです。
Canon EOS Kiss Digital N, Carl Zeiss Macro Planar 2.8/100 T*

追記-ブコメを拝読して,補足する必要を感じました。この辺りは,いつもありがたいと思います。
 攻撃性ですが,オオスズメバチやキイロスズメバチなら,通常,この巣のある距離から考えて,ドアを開けた瞬間からテリトリー領域を侵したと,攻撃してくる距離にありますし,巣をノックするなんてのは,アナフェラキシーショックの過激な実験をするような行為ですが,コガタスズメバチやヒメスズメバチの場合,そういうことにはなりにくい性質があることは確かなようです。特にg-hopさんからもご指摘があったヒメスズメバチの攻撃性の低さは特筆して良いと思いますが,定性的なことでもあるので,特にマクロ系では余り資料として存在しなかったりしますね。
 ただ,シーズンや個体差などを考えて,私自身,ずっと性質について警告ランプがつくのでは,或いは付く状況を見落としているのではと,モニタリングしていたことも確かです。また,この巣ではありませんが,撮影した後に,コガタスズメバチに10mほど追撃されて刺されたこともあります。見事に服の切れ目を狙ってきて脇腹を一発。斥候の個体だけだったので,このあたりも大事になりにくい部分だと思います。
 別の年には,お隣さんとの境界域に作ってしまったので,トラブルがあってはいけないと巣毎除去して食べたのですが,その除去の感じでも,大型哺乳類型の捕食者に対してチームで当たる術を持っていない印象を持ちました。いずれにせよ,コガタスズメバチへのアプローチや観察については,オオスズメバチやキイロスズメバチのニトログリセリンのような攻撃性は無いものの,十分に注意して当たる必要がありますし,当然,自宅の庭内にほっておいて大丈夫だと判断するのは,状況を勘案して自己責任と言うことでお願いしたいと思います。
 ただ,ムシ,ハチと乱暴なカテゴリーでしか彼らを観察しないで,性質や生態的な行動の背景など思いをはせることなく,全部一緒くた,何もそういった視点での話がないこと,それらは自然科学離れといいつつ,何も現物を見ずに文献やWeb資料がないことをいいことにさっぱり知見を広める楽しさに言及することもない状況がもしもあるとするのならば,それに対するささやかな問題提起の意味もあって,自らこのエントリを上げたということもご理解して欲しいと思っています。
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Commented by jinsei-rarara at 2007-08-05 01:32
本当に大丈夫なんでしょうか???
Commented by Lilywhites at 2007-08-05 07:02
凶暴なキイロスズメバチの幼虫まで食べるっていうのが興味深いですね~♪ スズメバチの巣、何故だか判りませんが子供の頃から造形的にとても好きです。 MP100、いいですね~♪ でも高くて手がでません(笑)
Commented by kyoko_fiddler at 2007-08-05 10:15
うーん…うぎゃぁを発する前に、つくづく不思議だー…と鳥肌最大値までたてつつ見入ってしまいました。
Commented by beatlose_z at 2007-08-05 21:42
最近、学童の子ども達と蝉取りに行くのですが、蝉の近くに蜂が群れている木があるのです。
その木に蜂の巣があるのかといえば、そうではないのですが、その木に留まっている蝉(クマ蝉)の近くを蜂が旋回しているので、一応子ども達には手を出さないように注意しています。
蜂は・・・アシナガ蜂ですかね?何ていう種類かわからないのですが^^;
蝉と蜂の関係ってどうなんだろうと、子ども達と不思議がっています。
Commented by complex_cat at 2007-08-05 22:45
jinsei-rararaさん,大丈夫のようですね。逆に言えば,こういう場所に巣を作っても彼ら自身がストレスを感じにくいため,彼らは,人間の住宅地内近くでもやっていけるのではと思ったりします。攻撃性の高いハチは,そもそもこんなところに巣を作れないかも知れませんね。こちらも困りますけどあちらも大変と云うことかなと思いました。
Commented by complex_cat at 2007-08-05 22:47
Lilywhitesさん,久しぶりにMP100+リングストロボで頑張ってみました。良いレンズです。私のキスデジNのファインダーは,実はこのレンズに合わせてあるのです。そうすると広角側がいつも合わなくなってしまいます。
Commented by complex_cat at 2007-08-05 22:49
kyoko_fiddlerさん,見入っていただいて光栄です。生物としてみても,不思議な造形と感じてしまいますね。人間とあまりに違いすぎてますから。
Commented by complex_cat at 2007-08-05 22:51
beatlose_zさん,それはとても興味深いです。カリュウドバチの仲閒では無さそうだし・・・スズメバチは自分自身のエネルギー源として樹液をなめたりしますが,セミに何らかのアクションをかける蜂って何だろう。
Commented by g-hop at 2007-08-06 08:55
 今になって、腹端の色を見て気付きました。どうもこのスズメバチはヒメスズメバチではなくて、コガタスズメバチのような気がします(ヒメは腹端が黒)。コガタも大人しく、巣をノックしてもワーカーが出てくるだけで、私は刺されたことがありません。
Commented by complex_cat at 2007-08-06 09:31
g-hopさん,有り難う。確かに先端が黒くないですね。とっくり型の巣の黎明期を見ていなかったので,てっきり姫だと思ってしまいました。
確認したのに,訂正いたします。
Commented by complex_cat at 2007-08-07 00:20
腹端は黄色。複眼後部は膨らまない。コガタスズメバチのようです。ヒメスズメバチ,記述を読み飛ばしていましたが,なんと巣は土中に作ると云うことで,間違いでした。エントリー大幅に修正しなければ。
Commented by dojou7 at 2007-08-07 00:42 x
う〜〜ん。すばらしいですね。いいな〜。
Commented by g-hop at 2007-08-07 09:28
 申し訳ないというか、恥ずかしいというか。これが他の虫であれば良いのですが、ハチは思い入れある虫です。研究を主に室内でやるようになって久しいのですが、ここまで呆けているとは思いませんでした。虫の研究をしているものの端くれとして、面目ない気持ちで一杯です。

 ヒメスズメバチは、思い出してきましたが、樹洞やちょっとした窪みなどに営巣していました。そういえば先輩は受動内で待機している雄を素手で採っても襲われないくらいおとなしいと言っていました。私にはできませんでしたが。
Commented by complex_cat at 2007-08-07 22:06
dojou7さん,有り難うございます。やはりリングストロボとMP100とEOS系デジイチの組み合わせは良いですね。私でもこんなの撮れますから。
Commented by complex_cat at 2007-08-07 22:09
g-hopさん,いえいえ,勘違いしていたのは私なので。蜂の仲閒は気楽に捕まえて,甲虫のように手にとってひっくり返したり出来ないので,以前もフタモンアシナガとセグロアシナガを間違えたままずっとエントリーを書いておりました。
土中と書いてありましたが,クロスズメバチとはちょっと違う感じですね。素手で獲るのは,エラブウミヘビみたいな話ですね。あっちも咬まないと云われても,よう真似できません。
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by complex_cat | 2007-08-04 09:00 | Wonderful Life | Trackback | Comments(15)

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