私的原体験武術コミック
2008年 06月 09日
忍風カムイ外伝 DVD-BOX collection 2
/ エイベックス・トラックス
ISBN : B00067SRUM
このエントリ(カムイ外伝実写版)で触れた忍風「カムイ外伝」ですが,「霞切り」とともに,カムイの二大必殺技の一つ「飯縄落とし」は,たぶん私の人生に最も影響を与えた技でしょう。
木の上から一緒に落ちるのは無理だとして,相手の後ろに回って持ち上げて地面にたたきつける応用系は,高校生の時にひらめいて,マットレスで練習してました。
プロレスは,大学にはいるまで,あまり興味がなかったので,その形が,ジャーマン・スープレックス・ホールドと収斂現象を起こしているとは,気が付きませんでした。故プロレスの神さまの必殺技と,飯綱おとしと,どっちが先?偉大なる格闘家,カール・ゴッチのジャーマン・スープレックス・ホールド(開始から5分辺りに炸裂します)
日本の誇る或数理生態学者が,マトリックスを使った解析方法の話で「術者はその技を開発したときに,破り方も一緒に考えるものだ」,とカムイの「飯綱落とし」のエピソードを引用しておられました。その話で盛り上げるとは思っておりませんでした。外伝ではともかく,カムイ(本)伝では,実は,飯綱落としは「空身の手風」を始め強力な敵に,二回ほど破られております。それは,カムイが予想もしなかった方法によります。
私のソウルに響く?演歌歌手水原裕によるエンディング曲「忍びのマーチ」。
中国拳法 太極拳入門
笠尾 恭二 / / 日東書院本社
ISBN : 4528001810
この方の太極拳の教本は,日本にまだ,本格的な陳式太極拳の情報がほとんどないときに発行され,後で見れば,空手の術理とスタイルで套路(型)をミスリードしてしまった結果に過ぎないのですが,男組にしてもこの辺りからスケッチを起こして戦闘理論をでっち上げるしかなかった時代の数少ない資料でした。
しかし,空手家としてちゃんとした武技を持っておられた方なので,隙がないちゃんとした形にはなっています。勁道が異なるので,太極拳とは全然違うのではとしか言いようがないですけど。
某空手流派3年連続チャンプであった私の最初の師の兄弟子である方が,套路の1式(1動作)=10万円払って,研究を始められたという時期です。中学生だった私には,この教本は黄金の価値がありました(と思っていました)。それが,まぁ,遠回りになってしまったことは否めないにしても,興味を繋いでくれた貴重な本であることは確かです。申し訳ありませんが,現在の日本にあって,当時とは比べものにならないほど技術も知識も高くなった太極拳修行者が参考に出来る本ではありません。
それでも,中国武術本については,明確にコア情報を研究されていて,それなりの技を見せていながら,詐欺罪や強姦罪で捕まった人,或いは無断借用の著作などがありまして,やはり「神聖な拳法の真贋は出自ではなく,その精神に正当性を見る」という,コミックの主人公である流全次郎の台詞に従えば,この時代のエポックである笠尾先生の本のみご紹介します。いまどきネット通販でもYouTubeでも,結構な動画が手に入ります。口訣とともに体系的に学ぶ必要があるものですので,それで何とかなると云うことではありませんが,隔世の感があります。
ああ,「男組」でしたね。
男組 (1) (小学館文庫)
雁屋 哲 / 池上遼一 / 小学館
ISBN : 409193031X
恐らく中国武術で戦うヒーローを描いた,最初のエポック的コミックですね。この作品のヒットにより,稼いだ金でグルメ放浪をした経験が,雁屋 哲氏による,後の「美味しんぼ」の原作に繋がっていきます。「男組」は,ある意味で,日本のグルメ文化の礎に影響したコミック生み出しちゃったわけです。運命の不思議さを感じさせる存在ですな。ちなみに「ちゃ」っと日本刀を構えて,「そこに直れ!」と叫ぶ,うる星やつらのキャラの一人面倒君は,主人公流全次郎の宿敵,神竜剛次のパロディで,その後,少年コミックで権力金を持つ非力じゃない跡継ぎを描くに際して,この「神竜剛次」は,一つのモデルになりました。ケロロ軍曹に出てくる西澤家のゴージャスさは面倒君からですが,お母さんが,バキの父ちゃんみたいな超絶格闘家であるところの設定も,何となく神竜剛次とは無縁でないような。
全次郎が神竜の刀身の峰の上に立って放つ蹴り技は,足たんと呼ばれるもので日本の古武術の秘技にもあります。最初は,何とか集まった資料で武技を描いていたのでしょうけど,後の方ではかなりネタが枯渇していたのを全次郎の武術使いの部下の一人である高柳秀次郎の繰り出すヌンチャクが,ブルース・リーが書いた初心者向けのヌンチャク・テクニック教本からの抜粋(コピペ)であったことを思うと,感じるのですが,そんなことを微塵も感じさせない池上氏の画力とスピード感あるストーリー運びでした。
男組については,黎明期の中国武術雑誌編集部などでも,取り上げたくてしょうがない方々がおいでになったようですが,残念ながら文化論的研究対象として私を唸らせるようなサイトはありませんでした。データ整理レベルですな。サンプル1
サンプル2
あれは,武術漫画の一時代を築いた「空手馬鹿一代」という漫画への挑戦として,中国武術というガジェットが使われたと云うことだと思います。それにもろに惹きつけられてしまった男がここにおります。恐らく,現在私のような半端もんではなく,完全にそのシーンで活躍する礎となった中間世代において,この漫画は大いなる影響力を持っていたと思います。今時は,あまり知っている若い人はおいでにならないでしょう。多少はご存じの型がおいでであれば,古典化してんのかなと思いますが。今の時代,無理かも。
それから,陳氏太極拳が空手に対抗できるレベルの高次実戦武術として,本当の意味で日本で認知され,体現できる日本人が現れるまでには,数十年を経過してまだ現れておりません。まだ現れていないというのは,レベルを低く見ているからではなく,頂きが雲の上にあるからです。
ちなみに,中国政府が白兵戦のコア・テクノロジーとして,国家としてそのノウハウを管理秘匿すべき対象中国武術のリストをちらと見たことがある知人の話では,その中には,陳家太極拳ですら入っていなかったそうです。ちょっと恐ろしさを感じたものです。
武術の構造もしくは太極拳を実際に使うために―もしくは太極拳を実際に使うために
山田 英司 / 流星社
拳児 (1)
松田 隆智 / 藤原芳秀 / 小学館
ISBN : 4091221114
時代は,太極拳から八極拳にトレンドを移し始めました。高速CPUの御陰で発達した格闘技ゲームの素材として八極拳が取り上げられるほど,それなりの情報が流布し始める少し前の時代です。套路や風格を適当に作り上げるには,少なくとも套路を学んだものがそれなりに現れないといけません。
中国武術研究家(中国武術家とはご本人も言いません。なぜかは書きませんが)松田氏が集積した中国武術の情報を披瀝しながら,これ以前の分野の漫画とは一線を画した内容になっています,中国武術修行少年(高校生)の冒険を描いた作品です。「男組」の池上遼一氏にしても,この藤原芳秀氏にしても,中国武術コミックにおいては圧倒的な画力が必要だと感じます。正確や風格のリアリティは別にして,それなりに納得させられるだけの動的な人体を表現する画力が必要だと思われるからです。その辺り失敗した作品は・・・・辞めておこう。このコミックは,編集担当者の感覚が良かったのでしょう。それなりに,長編化して,最後まで読める作品になっています。
史上最強の弟子ケンイチ 25 (25) (少年サンデーコミックス)
松江名 俊 / / 小学館
ISBN : 4091210767
さて,この辺りの血脈の正式継承者は,やはり,少年サンデー作品です。私の場合,間違っても「北斗の拳」を上げることはありません。あれは,ドラゴンボール,魁男塾と同じ,描かれる武術はSF,スーパーファンタジーです。エアマスター 26 (26) (ジェッツコミックス)
柴田 ヨクサル / / 白泉社
ISBN : 4592137825
「ハチワンダイバー」で,ブレイクした柴田 ヨクサル氏による「格闘少女」コミック。今時なので,ゲーム的,巨乳的要素は,外せないみたいですが,勝負のシビアさやアヤみたいなものを書き込むのは,この作者得意なようです。
ちなみに「ハチワン・・」は,連載時からのファンで,作者の才能は,凄く買っております。
へ~、ほとんどというか知らないんですよね~
なるほど。。ちょっとネットや本屋さん(ブックオフも含めて)
散歩がてら覗いてみましょっと。
チコちゃんは戻ってきて熟睡体勢ですか?雨がやみました。
土砂降りチコべえちゃんタオルでふきふき^^
ジャーマンスープレックスはゴッチ考案が定説ですが、あの動き自体はアマチュアフリースタイルにある「後ろ反りなげ」が元になっているのは確実だと思います。(プロレス用に見栄えの良い軌道と3秒間のホールドを追加)
面白いのはゴッチはグレコローマン出身であり、後ろ反りなげはフリースタイル(で多用される)の技だという事です。
とすると、ゴッチがジャーマンを考案/習得したのは、蛇の穴におけるランカシャースタイル修行時の2年間の間ではないかと想像します。蛇の穴出身レスラーは(広い意味で)スープレックスが得意な選手が多数いますし。
上の想像がもし正しければ、飯綱おとしよりジャーマンスープレックスの方が多少、先ですね。
#ゴッチはアマチュア時代、フリースタイルの試合にも出ていますが、プロ転向後、片足タックルによるテイクダウンなどは行わず(後の弟子、UWF勢も使える者はフリー経験者の桜庭以外はおらず)、必ずロックアップした状態から攻防を始めた事から見ても、「ゴッチはグレコの人」であったのが見て取れます。
ご心配痛み入ります。朝,彼に起こされました。
仰るとおりだと思います。グレコローマンスタイルは,名前の通り古代ギリシャにおけるレスリングの系統ですから,基本頭から投げ落とす殺人技が入っていても,おかしくないと思います。畳やマットが無ければ,普通は殺人技ですから。
恐らく古武術系(忍術)においてもそういう技はあったかも知れませんね。というわけで,ギリシャ時代からの系譜でゴッチ先生の方が先かな。ただ,武技は収斂しますので,同時発生的だったりします。あ,白土先生は古武術家ではないか。
蛇の穴,懐かしいな。ビル・ロビンソンとか・・・
ですが、グレコ式ではよほどの実力差がなければ「後ろ反りなげ」は決まらない気がします。
フリー式ならバックをとった状態から、足首を取るフェイントや、足を絡める(バランスを崩させる)等が可能なので、グレコ式よりは「後ろ反り投げ」がやりやすいと思います。
なので、ゴッチがジャーマンを完成させるには蛇の穴での修行が必要だったと想像します。
>恐らく古武術系(忍術)において
柔道や柔術には「裏投」というバックドロップそのままの投げ技があります。
「飯縄落とし」は良く知りませんが、
>相手の後ろに回って持ち上げて地面にたたきつける応用系
この言葉から想像するにジャーマンよりは「裏投」の方が近いような気がします。
ジャーマンはあくまでフォールを奪う為の固め技ですから。
>蛇の穴,懐かしいな。ビル・ロビンソンとか・・・
ロビンソン先生は、高円寺UWFスネークピットにて、今でも直接指導されているようです。
古式の柔術系や中国武術では掴んだり抱えたりして投げる形はとらないのです。それは何よりも体力勝負になる技であるのと,一瞬の接触で崩して頭から落とすときには既に反撃が出来ない絶命状態が理想と考える戦闘体系であること,そして刀剣槍などの兵器術の延長だからです。また,凶器,金的攻撃なんでもありの場合,後ろから抱きつく格闘技系の技では,無防備に曝すリスクを排除できないからです。
格闘技と武術を一緒に語るのは,少し混乱するのですが,レスリングや柔道の裏投げは,一定のルールのある試合のもとで発達したものだと思います。近代柔道は,当時の古武術に対して圧倒的なアドバンテイジを持っていたことも確かですが,金的蹴りや目つぶしまで入った本来の意味でのバリートードで,というのと少し意味が違います。
なお,urlはスパムが酷いので,頭を削らないと書き込みできないようになっています。
多分,普通の人間には無理かも(笑)。
ご紹介していただいたサイト,ありがたいです。裏投げもしっかり見ました。柔道有段者の高次の技だと,少々の腕では,打撃や凶器攻撃を仕掛けるまもなく,あえなく地面にたたきつけられるのが普通だと思います。古武術や中国武術のマスターを標榜する人が,ただの格闘技だとなめてかかった柔道にあっさりやられる話は,普通に聞きます。マスタークラスの柔道技は打突系のスピードと同じレベルで決まりますね。
なるほど、やはり道場内で行われるのが前提の物と、いわゆる「戦闘術」では、全然違う物なのでしょうね。
例えば、現代の総合格闘技ではルールで「肘打ち禁止」になっている場合が多いですが、これを有りとした場合、レスリングの片足タックルなど入れませんものね。(脊椎に一撃を食らう/まぁ脊椎への攻撃も今は禁止ですが)
私は古武術も中国武術もまるでわかりませんが、肘ひとつでこれですから、「兵器術の延長であり凶器,金的攻撃なんでもあり」状態で発展した技術とはかなり違う事は想像できます。
カムイは今度読んでみます。(確か図書館にあったような)