悲惨な戦い

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試合見終わってあきれ顔のユッチ,というわけではないけど。

 チャンプ・内藤大助選手は,責任を果たした。予想されたとおり,試合運びとしてはエキサイティングな見せ場はほとんど作れなかったが,挑戦者の今までの試合相手が如何に酷かったかということを白日の下に曝して見せたということでは,十分だったかなと思う。しかし,少なくとも目録以上の亀田選手がパンチも出さず(出せず)まともなピーカブースタイルですらなく,ガード固めて頭突きだしているわけだから,あれ以上追い込むことは出来なかったろう。すこし欲求不満が残ったがしょうがない。相手が,打たれることを避けてパンチを出さず頭突きでくるのだから,それでペースを崩されることなく最適な戦いをしたと言った方が良いのかも知れない。



 経過の分析は,既にトラックバックを見ても感じるが,目の肥えた格闘系ブロガーに任せればいいと思っているけど,家族全員,ユッチも一緒に試合を見ていたが,久し振りに無惨なものを見た気分だった。それは,サッカーなどでの中国でのホームでの試合もかくやというようなアナウンサーの身贔屓の台詞やアニメの範馬勇次郎?に褒めちぎらせるという,お子ちゃまの演出だ。でも,日本の格闘技ファンは,まともな人が多いので,「国民」の意識は違っていたということか。日本人の多くのフェアプレーを愛する正義感や潔癖性的な部分は,虐め文化に転用される幼さと表裏一体だけど。「反逆のカリスマ」には,次男君はなれなかったな。
 武術・格闘好きであっても,ボクシングは縁遠かった私に,Oscar De La HoyaやNaseem Hamedなど,深い世界を開いてくれたボクサーはたくさん居る。40年前のプロレス興業なら今の亀田ファミリーとTBSのプロモーションでも良いのだろうけれど,質の高いボクシングが地上波では無理だが,普通に見られる今の時代,実際の所,辛かったなあ。

 亀田ファミリーのように,叩かれ続けているエリカ様だが,彼女の場合は,女優としての才能には,人によって好みの違いはあっても,とりあえず嘘はない。彼女の本来戦うべき舞台(映画,ドラマ,唄)においての才能やパフォーマンスは,作られたものではないし,作りようがない。それ故,才能を惜しんでバッシングがあってもそれに対して擁護派も出てくるのも分かる。

 亀田(次男君)は,ほとんど何も出来なかった。ともかく打たれないような低いクラウチングで,パンチもほとんど出さずにビーカーブーで固めた上で,バッティング狙いの戦闘スタイルが長かった。この異形とも呼べるスタイルで,本当に勝てると思っていたようだ。誰もあんなことやらないよ。確かに攻めるの大変だ。彼の「fixed俺ルール」で戦えないことが前提の,初めての高次ボクサーとの試合でこれをやるというのは,自らがどういうレベルなのか明確にしているのと変わらないだろう。本当は固めて頭突き,チャンプの弱点とも言える目の上を流血させて,焦ったところをカウンター狙いてのが相場だったのだろう。この稚拙な戦術は,父親が考えたのかな。

 タクティクス,テクニック,若い中にも光る才能というものが,一つでもあったかといわれれば,申し訳ないが,私は見いだすことが出来なかった。それだけチャンプが自分のペースで仕事をしたと「亀田選手側の擁護として書けば」そういうことになるだろうが,彼に価値を見いだせない人間は,「もともとまともな試合など出来る実力など無いのさ」,「あんな格下の何にも出来ない選手を倒せないなんて,内藤選手もこの先,防衛が大変だ」ということになるだろう。
 そう言われても仕方がないほど酷い試合内容だった。実際に拳を交えたチャンプがいうのだから,目録以上の選手だとは思うけど,あまりにも変形されたTV局のボクシング・ビジネスの中で,彼の成長はスポイルされていったのではないかと思う。こういう状況は,他のプロスポーツでは,あまり聞いたことがない酷さで,ボクシングにとっては大いなるマイナス。いや,オリンピックやワールドカップでのマスコミの「持ち上げて落とす」という技としては,いつものやり方かもしれない。そうそう,亀田選手もやっていたな。持ち上げて落とす。マスコミへの抗議のメタファーか。

 そういう意味で,今までの試合では,まともな才能を次男君は見せる機会がなかったので,試合後,チャンプ・内藤が「思ったより使えるので驚いた」という主旨のことを話したのも理解できる。切腹がどうのこうのとかいう枝葉の問題にならずに,ちゃんとした世界を見せていかないといけないという世界に立たないと,日本のボクシング界,TV局もだけど,結果的に衰退するよ。ある意味自分の強さを見せたいなら,本当に強い相手とやらないとダメという当たり前のこと。今までの試合で,彼が強そうに見えた試合は一つもなかったということが,本人も理解できるレベルにあると思うのだが。
 これほどTV局が好き勝手に作ってしまった世界,もはや丸ごとリセットした方が良いような気もする。「宇宙一のパンチ」の片鱗でもと見られないかと思ったが,幻だった。世の中をちゃんと見て生きていくということをしないと。まだ,若いのだから。そうしないと,彼は,本当の実力者が集うメジャーなボクシング・タイトルに関わって生きていくことは出来なくなる。少なくとも「屈辱から○(年)ヶ月」とか,「生まれ変わった」とかのK-1的コピーで,もう一度ぐらいは客を呼べるかも知れないけど,まともな実力者に対して,今回みたいな試合しかできないのであれば,その先はないだろう。
 まだ若いのに,せこい反則技を使ってどうすんの。付け焼き刃のような汚い作戦に対しても平然と対処して試合を終えたチャンプが何枚も上手だった。試合は,一度もぶれずにその世界と向き合ってきた内藤選手の,当然の勝利である。この人,苦労されただけあるわ,やはり。派手なKOは無かったが,老練なチャンプ(といっても私よりずいぶん若いが)は,太ももの急所攻撃,サミング,肘入れによる目つぶし,頭突き攻撃,などを狙う若い癖に何でもありの挑戦者とセコンドのせこい戦術を,ことごとく潰しながら試合を組み立てたわけで,それは彼の技術と経験があって出来たことだろう。

 政治の世界でもそうだが,もっと誠実に生きて,ちゃんとものを見ている若者もたくさん居るのに,チルドレンと称してなぜこんな人々が公募で出てくるのとか疑問を感じたりした。人材は枯渇しているのではない。本当の意味での人の価値など気にしてない者が三味線を弾いているだけなのではないだろうか。ちゃんとした才能のある人間に光を当てないやり方を続けて,その分野の本当の価値などないがしろにして,TVセットの奥で「シナリオ書いている」やつだけが薄笑いを浮かべながら儲けるシステムは,いわゆる一部の芸能界(全てといっているわけではない)のやり方で,それを平然と恥もなくボクシングという世界に持ち込んだところが亀田ファミリーを使ったプロジェクトなのだろうが,そろそろ「悲惨な戦い」止めた方が良い。これを機に,このビジネスモデルは一緒に潰れて欲しい。視聴率稼げるTVコンテンツを生み出すキャラは,貴重なんだろうけど。一応,大人と思われる人たちが,若い才能を勘違いさせて食い物にして稼ぐシステムを見ているのは,気持ちの良いものではない。どうせ「それで,あいつらも潤っているし,良い目を見ているから,いいんだ」と言うだろうけど,まぁ,チンピラヤクザの馬鹿餓鬼の理屈だ。ボクシング界としては,本質的な部分で不利益を被っている部分もあると思う。ボクシングに耳目が集まることは一見よいように見えるけどね。
 次男君も才能を潰したくなかったら,反則のバッティングで顔を腫らされながらも「切腹発言などであとあとまでネチネチやる趣味は無い。見えない反則などしなくてもちゃんと戦えるボクサーだと分かった」という,大人の発言をしてくれるありがたいチャンプに感謝して,今のやり方は止めた方が良いよ。しかし,普通の良識持った人が普通に出てくると,びっくりするな。亀田戦でなかったら,コメントがマスコミで聞かれることもほとんどなかっただろう。居るじゃん,ちゃんと,まともな人が。
 チャンプは通常の大人の良識として,挑戦者に気を使ってくれていたと思う。子を持つ親として思うけど私が彼の親なら感謝するけどあの父ちゃんには無理だろう。TV局のために特訓と称して,奇体な練習を息子(あのケースは長男だったか)にさせる時間があるなら,やることは沢山あると思う。私は民放はあまり見なくて,出張中の相部屋の時だけだから,相当な時間をTV局取材に投じているのではないかと思ったりするけど。
 目録以上の才能もあるし(私にはそうは思えなかったが,デラホーヤや,ハメドなど高いレベルを考え過ぎか)まだ18歳というのだけど,アスリート人生は短いのだから時間がモッタイナイよ。世間一般の常識に照らし合わせれば,一種のモンスター・ペアレントであるお父ちゃんに加え,ボクシングなんて分からなくても関係ない,ともかくファンだという人たちがついている彼には,簡単ではないだろうけど。指導する側が,ちゃんとしたレールを敷いてやれるなら,そのレールの上を全力で走ることは悪いことではないと思うが,そのレール自体の危うさが暴露されてしまった,そんな一戦だったと思う。ちなみに,本人がそのレールと決別する勇気を持ったとしても,1流のアスリートとして成功できるかどうかはまた別の問題だけど。例え全て計算尽くでこのキャラで押して行くにしても,悪い材料が集まりすぎた感がある。屈辱をバネにして,とか言うのは簡単だが,そもそも立ち位置が,分かってないのではと,あの試合を見た後では思ったりも出来る。ゼロからのやり直しではなくマイナスからだと思う。潰れてしまうのには早すぎるし,それはもったいないけれど,もっといろいろな意味でまともな選手を日の当たる舞台に立てるように投資して伸ばした方が,業界のためじゃないかと思ったりするが。

武技カテゴリーにしたので,書いておく。
 1ラウンドも保たないが,ボクサーの前に立って,実際に戦うのと同じ意識状態に持って行くという技を,1流のボクサーとの対戦経験のある,著名な流派の空手家の先生のある言葉をきっかけとして,去年あたりから出来るようになった。達人クラスの空手家が変性意識状態に入ってクロックアップした状態にあっても,一流のボクサーはいとも簡単に,その加速スイッチ分をひっくり返す脅威の世界に立っている。その意識状態に立つトレーニングをやっていて,唐突に発見したスカウター機能。それをきっかけとして,一流どころでなくてもプロの前に立てば,少々の武術経験があってもほとんど何も出来ない,パンチをいとも簡単に食らい続ける,それを恐ろしいほど実感することだけは出来るようになった。自分より相手が強いかどうか,ちゃんとリサーチできることは大切だ。要するに,武技に絶対的に必要な「スカウター機能」が多少は磨かれただけということで,本人は全く腕は上がっていない。それとこれをやると,俯瞰的客観的に,試合を見ることが出来なくなるから試合を楽しめないし,もの凄く消耗するので正直に話すと,1分どころか30秒も保たない。私レベルでは当たり前だが。

 実は試合前,内藤選手と亀田選手,その方法を使って二人の繰り出すパンチの前に自分を曝してみて,両者の実力を図ろうとした。スカウター状態にトランスできるようになって初めて,次男君の仕事,実は初めてまともに拝見した。バーチャルで,彼の前に立って身をさらしたのだ。で,VTRからの動画を見ても,情報が全然伝わってこないので???となった。普通はそんなことはない。スパーリングの動画などでは違っていたが,試合の動画は駄目だった。彼の動きが別の意味で理解不能となった。言葉にならなかった。
Commented by pon at 2007-10-12 21:59 x
人生の先輩を「ゴキブリ」呼ばわりする少年に未来派ないと思います。
反則技かかられるたび、苦笑いしていた内藤さんが対戦相手でよかったね、って感じです。こういうのを観ると「親としての良識・責任」を痛切に感じますね。彼(次男君)は人間として大切なの物をお父ちゃんに教えてもらっていないのだから。マスコミも悪いけど、おとうちゃんが一番悪い、と思います。息子を金儲けの道具にするな!!!!
正直、亀田家の面々の発言にはムカツクので昨日の試合は溜飲が下がる重いでした(リアルタイムでは見てませんが)。
持ち上げていたマスコミがこぞって、攻撃するのもなんだかな、とは思いますが。
内藤さん、ナイスでした。真面目にボクシングをなさっているのですね。
次の元チャンプとの防衛線、ぜひ頑張って欲しいです。
Commented by jinsei-rarara at 2007-10-12 22:31
こんばんは^^
後半から最後まで見ましたよ。
内籐さんの挨拶が耳に優しく聞きやすくてほっとしました。
逆だと挨拶の時にはシッカリ消してます^^;
Commented by complex_cat at 2007-10-13 08:16
ponさん,試合前に亀田兄弟の挑発を見事に受け流した力量を見ても,亀田サイドのペースに填められない強さを初めて感じさえてくれたチャンプです。試合後「負けても亀田格好良い」と叫ぶファンが居ても構わないと思いますが,海外のボクシングシーンは,そういうおこちゃまの意見をことさらひっぱりだしたり,それが主流となる浅い文化ではあり得ません。その辺りが,日本ボクシング界における不幸だと思っていました。TBSもヒールとか云うレベルではなく,犯罪者が忌み嫌われているのに近い状況であることが理解できたので,亀田ファミリーを使ったビジネスは少し修正されるでしょう。内藤選手は,もう亀田兄弟には関わりたくないというのが本音でしょうが,ただ,諸処の事情で兄ちゃんとはやらざるを得ないかも知れませんね。
Commented by complex_cat at 2007-10-13 08:21
jinsei-rararaさん,「ゴングが鳴ったらボクサーってのはそれまでのことは全部水に流せるんですよ・・・・・いや,やっぱ腹立つなぁ」など,この人の惚けたジョークは楽しいですね。
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by complex_cat | 2007-10-12 00:16 | Cat Kick Dragon Fist | Trackback | Comments(4)

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